時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

およばれ

2010年05月28日 | Bloomingtonにて
このあいだの土曜日、近所のモニカ(インド人、MBAの学生)のお宅の夕食に家族で呼んでもらって、彼女の手料理をいただきました。写真の通り、カレー2種。器に入ってるのが、レンズマメをすりつぶしたものがメインのカレー。コリアンダーが効いてました。もう一つは、キャベツがメインで、ジャガイモやグリーンピース等も入ったもの。いずれも、辛さを抑えてくれたそうです(でも辛い)。

白いのは、米の粉に香草を入れて固めたもの。丸いナンのようなのは、一つは小麦粉で、もう一つはレンズマメを練りこんである。さすがは慣れたもので、ふつうのコンロの上であぶって上手に膨らませ、オイルを塗って仕上げてました。私はこれがいちばん好き。その他、どれも説明してもらったのですが、名前等は忘れてしまいました。たくさん出してくれて、食べすぎ。あくる日は突然体重が1Kg近く上がりました。

何でおよばれに与ったかというと、いつも娘同士が仲良く遊んでいるから、ということもありますが、自転車を安く手に入れたかったモニカのため、自転車オークションの情報を私が見つけてきて、家族で付き合ったことのお礼という気持ちもあったようです。

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このオークションは、大学の駐車場管理部の主催。売りに出すのは学内の放置自転車。「学期も終わってるし、たいして来ないだろう」と思ってたらとんでもない、200人はいたでしょう。本当に市場みたいなことをするわけじゃなかろう、と思ってたら、これもさにあらず。自転車を一つ一つ台の上に持ってきて、職員のおっちゃんたちが、まさしく競りのように、「Now, twenty-five, twenty-five, twenty-five, ... thirty!」ってな感じで、値を吊り上げ、声がかからなくなったところで、売約済。おじさんたちの声の出し方がこれまた堂に入ってる。自転車オークションは毎年やるそうで、すっかり慣れてるんでしょう。

自転車の質はピンキリ。いいものは200ドル以上で売れる。壊れてて修理が必要なものも、10ドルとか、20ドルとかで買う人あり。何で中古にそんな金を? と私などは思ってしまうのですが、それはすぐ新品を買う日本人的感覚なのかも。新しそうできれいな、でもカギが付いていないスクーターを買った人もいましたが、これは一か八か。開けてスタータの部分を作り直すしかないんでしょうが、上手くいくか? そんなわけで、集まった人たちには、必要に迫られて、というだけでなく、そもそもオークションを楽しんでる雰囲気がありました。

9時に始まったオークションは、11時過ぎに終了。ほとんど売りつくし。たぶん、数千ドル売り上げたんじゃないでしょうか。廃棄せずリサイクル、という意味でいい催しだなと。モニカも20ドルほどで安い自転車をゲット。かなりさびてて、変速機がまともに動かないかもしれないけど、通学用にはこれで十分、ということのようです。

0勝3敗

2010年05月27日 | サッカー
W杯に向けて日本代表の状況が悪いことは明白なのですが、Webを見ると、「3戦全敗まちがいなし!」という意見をけっこう見かけます。たしかに勝つ、あるいは引き分けることは難しそうな相手であり、こちら側の状況ではありますが、だからって、3連敗ってそんなに確率高いか? と、思ったので試算してみました。

非常に極端な仮定をしてみましょう。対戦相手の3チームとも、日本との力の差が大きくて、

日本勝ち  5%
引き分け 10%
日本負け 85%

だと。3連敗の確率は、「日本負けの3乗」なので、

0.85^3 = 0.614 (およそ)

つまり、61%ほどの確率で0勝3敗。もちろん、他と比べて最も高い確率の結果で、もし賭けをするならこれにはるのがいいのでしょうが、逆に言えば40%近く、別の勝敗になる可能性があるわけで、そんなに簡単に0勝3敗に「間違いない」とは言えません。負けの確率が全試合100%近ければともかく、9割負けだとしても、3連敗は約73%、1/4以上、別の目がありえるわけで。

「3戦全敗だ!」は情緒的な反応なのでしょうから、こういう確率問題とは馴染まない話ではあるのですが、こんな簡単な計算からでも、相手チームの勝敗も含めさまざまな可能性があることが思い出せるわけで、あまり予断を強く持ちすぎずに戦いぶりを見守ったらどうか、と思います。

でも、1998年フランス大会(第一次岡田JAPAN)については、W杯出場決定後、岡田サンを続投させるので驚いて、「彼は一時しのぎでしょ、ぎりぎり出場のチームなんだから、経験のある人を起用して作り直さなきゃ、0勝3敗もあるぞ~」と思ってて、ホントにそうなっちゃいましたけど...

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サッカーの記事が多いので、サッカーというカテゴリーを設けました。たまたま訪れ、他に書いたものを見てやろうかと思ってくださった方がいたら幸い、ということで。40以上ありました。まー、アホだこと。

おすそわけ

2010年05月26日 | Bloomingtonにて
先日、ご近所のLiHuaさん(たぶん麗華さんと書く、中国人)がちまきを作って持ってきてくれました。このおすそわけをいただくのはこれで2回目ですが、今回は娘が食べやすいようにと、豚肉ではなく、豆を入れてくれました。ナッツ入りと、小豆入り。アジア系のスーパーに行くと、笹の葉も買えるようです。小さいのは娘のために、ということらしい。やさしい味でおいしい。

彼女はニョーボが英語学校で知り合った人。同じアパートに住んでいて、しばしば会う。彼女はこの8月に出産予定。おなかの中にいるのは男の子ですが、LiHuaさん自身はできれば女の子がいいな、と思っていたこともあってか、娘をとてもかわいがってくれます。我々は半月後に引っ越しますが、彼女も同じところへふた月遅れで引っ越すので、楽しいご近所づきあいが続けられられそうです。

W杯2010の予想1 勝負を決める要因 

2010年05月25日 | サッカー
欧州のサッカーシーズンが終わり、W杯が近づいてきました。W杯を楽しむために、予想を書きとめておきたいと思います。個人的に考える、勝敗を左右するいくつかの要因(思い込みの可能性も大)から、いけるのではないか、というチームを導き出してみたい。

■1 主力選手が消耗してない

何といっても重要なのは選手のコンディション。たとえば、シーズン最後まで優勝争いで主力になり、働きまくった選手は消耗してるだろう、と。逆に、一時怪我で戦列を離れた選手は適度に休めているだろうから、時間的に間に合えばコンディションを上げてW杯を迎えられる。

でも、その点で強豪国にばっちりのところがない。スペインはなんたってトーレスが心配。イニエスタの調子が戻るか、セスク間に合うか、と不安が多い。オランダは、ファン・ペルシーは間に合いそうだけど、ファン・デル・ファールト大丈夫か? スネイデルもCL決勝まで頑張りまくったし。イングランドも、ルーニーはシーズン中の絶好調まではもどらないのでは。ドイツもなんだか怪我で離脱が多い。比較でいうとフランスがマシかも。リベリーはCL決勝出られなかったし、負けたし、気合入るのでは。

■2 開催地の気候に対応できる

開催国の気候への対応が大きく選手のコンディションを左右すること、たとえば日韓大会では顕著でした。で、南アフリカ。冬だし、ずいぶん南だから、赤道直下のアフリカ勢が有利、という気もしないし。あえて言えば南米の国? 「欧州以外の大会だと南米が勝つ」という法則、南米びいきの私はけっこう信じてるんだけど、アフリカはどうなのか、治安の悪さも最近では一番だろうし、開催地はとても重要な要因だと思うけど、どう作用するか予測不能。

■3 W杯2回目の選手が主力

前回のW杯に初めて出たけど、まだ経験不足で力を出し切れず終わった。それから経験も積んでピークにある、という選手が主力のチームがいいのでは。日韓大会のロナウドとか。メキシコのマラドーナとか。スペイン、ドイツ、オランダ、アルゼンチンあたりに、前回若くしてデビューしたいい選手が多い。2回目のコートジボワールも。この要因は期待が半分。ドイツ大会のような新鮮味のない決勝戦は勘弁してほしい。

■4 GKがいい!

トーナメントだし、PK戦あるし、ふだんよりもGKの比重が増すと。いいと思うのはフランスのロリス。GKの層が厚いスペイン(たぶん、やっぱりカシジャス)。フィードも素晴らしいブラジルのセザール。逆に、その点でやっぱりイングランド、アルゼンチンは落ちる気がする。それからドイツ、レギュラーGKとして育ってきたアドラーが抜けたのは響くかも。

■5 不幸な出来事があった

スポーツ競技に怪我は付き物とはいえ、一生に数回しか巡ってこないチャンスを怪我などで棒に振るのはホントに気の毒。ただ、喜ぶつもりはないけど、チームとしては士気が高まったり、その選手が抜けたせいで、むしろバランスが良くなる、なんてケースもあるのでは。今回ではイングランド。ベッカムがアキレス腱断裂でW杯絶望が判明して、カペッロさんが即座に「連れて行きたい」と言ったのは上手いなーと。戦力としての痛手と天秤にかけるとメリットが勝ると思う。それからドイツ。バラックが抜けたおかげで、シュバインシュタイガー等が遠慮なく力を発揮できて、こっちもむしろプラスと予想(そうせねばならない、とレーブ監督が言ったらしい)。不幸のもう一つはスキャンダル。前回でいうとイタリア。八百長スキャンダルの危機感で逆にチームがまとまれたかも。この点ではフランス。あのハンド勝ち抜けでブーイング浴びるかもしれないけど、逆に発奮材料にできれば。

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当然ながら全部好条件、というチームはないんだけど、総合すると戦力以上にいい目が出そうなのは、フランス。苦しんだ予戦とは逆の目が出ていいところまで行くかも。グループA、ラクだし。アルゼンチンもいいけど、あの監督では... イングランドもわりと好材料があるんだけど、力量的にはベスト4が精一杯かと。

好材料がないと思う強豪は、イタリア。やっと若返りを図ったみたいなので、良くなるのは本大会以降では。ポルトガル、開き直ってC・ロナルドのためのチームにしたら面白いとは思うけど、今回はグループGでコートジボワールに食われると読む。いちばん分からないのがブラジル。挙げた範囲で、悪い材料はなさそう。今回のような本命不在、非ヨーロッパの大会では強いかも、でも逆にコロっといくかもしれない。

強豪以外でいいところ見せそうな気がするのは、韓国。グループリーグ突破すると見ます。つぎにパラグアイ。イタリアを食ってグループF一位といかないかな。とにかく今度こそサンタクルス頑張れ。最後にコートジボワール、前回も素晴らしかったし、経験も積んで、強豪にも伍せるのでは。

日本については、ひどい状況みたいでちょっと唖然としてます。上記に照らすと、主力のコンディションが悪い、油の乗った出場2回目がいない...と、好材料なし。「めちゃくちゃ逆境」という点で、5番目は当てはまるかも。こういうとき選手たちがまとまって...って、アトランタ五輪とか、北京五輪のときにあったような。でも、結果はグループリーグ敗退。選手だけでうまく行くなら監督要らないですね。チームとして頑張ってください。

読めない名前

2010年05月20日 | 
昨日、娘を初めての歯科検診に連れて行きました。歯磨きが大嫌いな娘がどれだけ抵抗するかと父親のほうがドキドキしてましたが、手馴れた小児歯科の先生が上手く対処してくれて、無事終了(もちろん泣きましたが)。優しそうな女性の先生だったのもよかったか。

こういう場面でよく問題になるのが、娘の名前。「楓」(かえで)という名ですが、米国籍ではもちろんアルファベット。日本のローマ字綴りに従って「Kaede」としました。ところがこれ、英語ネイティブのアメリカ人には「どう発音していいかわからない」らしいのです。悩んだ挙句、「ケイド[keid]?」とか「ケイディ[keidi:]?」のように発音して、「ごめんなさいね、どう発音するの?」と聞かれる(発音間違いは失礼、という考えがあるようです)。で、「かえで」と日本語式の発音を聞いてもらうと、まあなんとかできる。

名前を決めたときには、こんな単純な構造の、よくある音の連続が発音できないとは予想しませんでした。でもたとえば、Ninaばーちゃんは発音以前に処理できず、だから覚えられず、すぐ諦めてミドルネーム一辺倒に。「アメリカで生まれた記念に」と思って(アメリカ国籍にだけ)付けておいただけなのに、実際に使われることになるとは。

さて、昨日の小児歯科でも、呼び出しに来た助手さんが悩み、発音を聞いてきました。診察室で待っている間に書類をのぞくと、彼女が「かえで」を聞いて書き留めたらしい文字列発見。それがこれ。

K'y-ah-day

簡略IPAで書くと[kai ei dei]ってな感じでしょうか(アポストロフィの意味は不明)。それが彼らにとって、聞かされた日本語の音声にいちばん似てると。子音で終わらない音節が続くと、それぞれ二重母音にしないと発音しづらいもよう。2つ目の母音だけの音節はことに厄介なのかも。

実は以前にも似たことが。言語学科のある食事会で娘の名前の話になり、周りの英語ネイティブが、「Kaedeでは「かえで」とは読めない」と言い出しました。3人で合議の結果、これならそう読める、と見せてくれたのが、

Ky ai dey

上のとほぼ同じ変換システムが働いた結果のようです。こういうのが、音韻論でさかんな「loan-word phonology」が明らかにしたい、「他言語音声の知覚 → 母語音声・音韻システムへのマッピング」のメカニズム発動の一例でしょうか。でも今思うと、「言語学者なら、「かえで」をIPAで書いてみな。[kaede]になるでしょ」とか「KaedeをIPAだと思って発音してみな。俺が発音してるとおりになるから」とか言ってやればよかった。日本語の音声システムが類型的に見てより一般的であること、一方、英語の綴りがめっちゃくちゃ(というか歴史的推移が原因でねじれまくっている)ことを英語ネイティブに悟らせてやれる絶好のチャンスだったのに。「英語がヘンなんだよ」と。

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ところで、いとこに子供が生まれたそうで、名前を知らされました。よその子なので名前を書くのは差し控えますが.........読めない。知り合いにも、教わらないと想像つかない読みの名前、「おそらくこう読むんだろうけど、それは無理だろ」と思われる名前が多数。熟字訓をあてた漢字列をぶった切るとか。漢字には、常用漢字を定めたとき絞り込んだ以上にさまざまな訓よみがあるのは確かで、その漢字と訓とのルーズな関係のせいで、命名のための漢字使用の自由度がめちゃくちゃ高い。だから、こういうことができちゃう(それすら逸脱した「狼藉」もよく見るが)。まあ、好きにすればいいんだけど。。。

聞いた範囲から理解したところでは、まず音を決めて、当てる漢字を考える人が多い。その際に「平凡でない、かっこいい(かわいい)、漢字列」とか「画数の組み合わせがよい」とかいう条件にこだわるあまり、珍妙なものが出来上がるようです。珍しくはない名前であっても、音と漢字の対応に無理がなく、だから音を聞いても、漢字を見ても同じ意味がすっと浮かぶ名前のほうが、その名前に込められた意図も、つけた人の思慮もうかがえて感じがいい、と思うんですが・・・

HONDA

2010年05月13日 | Bloomingtonにて
このあいだの日曜、トマトの苗を買いに、近所にある「Hilltop Garden」というIUの農園に行ったところ、写真のHONDAスーパーカブに目が釘付けになりました。こういうものに疎いので、何年ごろのモデルかとか、元の製品そのままかどうかとかは分かりませんが、休日の農園の風景にはまってるし、状態の良さにも感心して、ながめ回していると、作業中のお兄さんが「そのHONDAいいだろう?」。所有者でした。

友人から$23で買ったもので、ミラーのジョイントの部品を自作し、エンジンをオーバーホールし(ピストンリングとかも替えたそう)、オリジナルに近い色をさがして塗装し、リムなどもぴかぴかに磨き、専用のかばんを作り、と、大変な手間をかけたそう。ホンダのカブの完成度の高さは聞かされていましたが、ここBloomingtonにも惚れこんだ人がいたもよう。

代表チームを「作る」

2010年05月12日 | サッカー
W杯南アフリカ大会に向けての代表チームが発表され、一部サッカーファンの間では話題になったよう。私はぱっと見て、ちょっと驚いたのですが、よく考えると、まあ、こんなもんなんだろう、という選考だったのではないかと。

あれこれとネット上の議論を眺めてみたのですが、戦術的な観点からこれこれの選手を選ぶべきだった、という意見が多かったようです。正当な議論の仕方にはちがいないんだけど、そこのところはもう、現監督が思い描けて、かつ使いこなせる戦術の範囲で決まってしまうものだろうから、しょうがない。

しかし、選ばれた顔ぶれとここまでの経緯を振り返ると、「なんと選択肢が狭まってしまったことか」と思います。「サプライズ」なんて言葉が使われるほど、「この期に及んで突然この選手が選ばれたらびっくり」という状況になっていたわけで。公式戦、親善試合を通じて、新たな選手が頭角を現し、それがチームの戦い方をじょじょに変え、中心選手は入れ替わり、気がつくと数年前とはかなり違うチームに.........ということはまるでなく、中心選手も戦い方もそのままで(最後には戦い方がぐらついてきたようですが)、その中心選手たちが力を落とした分だけ弱くなり、他国との相対的戦力差も開き、という現状を再確認させられます。宇都宮徹壱さんの記事(Sportsnavi)にあったとおり、4年前のジーコのチームがメンバーの若返りに失敗(ってかそんな気まるでなかった)していただけに、次の4年を担当する監督にはなおさらそれを求めたかったのですが。

トルシエさんが、2002年日韓W杯を2年後に控え、ユース準優勝組(~五輪代表)に切り替えたとき、彼らは現代表よりその時点では力が劣っていたでしょう。でも代表として使われ続けることで自覚を持ち、力を伸ばし、前世代では到達できないレベルに達し、全体として代表のスケールを一段大きくしたと考えます。そういう新陳代謝による「進化」を繰り返さない限り、チームの力が先細るのは、代表だろうと、クラブチームだろうと(またどのスポーツでも)、同じことでしょう。

もちろん、トルシエさんの思い切った世代交代は、自国開催で、予選に勝たなくていい状況だったからこそ可能だったことですが、2、3年先(2010年のこと)を見据えて伸びしろのある選手を見出し、現代表に守ってもらいながら鍛え、主力に押し上げる、ということができなかったものか(長友くらいでしょうか)。目先の状況への対応に精一杯で、新戦力を試すなどという余裕もない現監督の戦いぶりを見る限り、若い選手たちが情けなかった、競争に勝てなかっただけ、とは思えないのです。

こういう健康な新陳代謝のない澱んだ状況では、大きく伸びる可能性を秘めた選手たちが精神的に(よくわかりませんがひょっとしたら技量の上でも)スポイルされていくような気がしてなりません。それは、世界の強豪を目指すはずの日本サッカーにとって、取り返すのに何年もかかるほどの大変な損失であり、「とりあえず今回勝てば」なんてことで埋められるようなことではない、と思うのです。育成枠を設けろ、ということではありません。戦いつつ、新しい才能を導入し、「今回の戦力」として引っ張り上げられる手腕を持つ人でなきゃダメだろう、とくに日本のような発展途上のチームの監督には、ということです。

以上、選抜の最終発表を振り返って、あの監督選びはやはり、間違いなく失敗だった。今回のW杯の結果がどう出ようとも、そう結論付けられる、と思っています。

おばあちゃんの帰国

2010年05月11日 | Bloomingtonにて
一つ前の記事のつづき、その家におじゃましたのは、そのお宅のおばあちゃんにお別れを言うためでした。その人はその夫婦の夫のほうのお母さんで、MBAのため忙しく勉強する嫁さんの育児を助けるために、インドから出てきたのですが、学期も終わり、先日「10日にインドに帰る」と教えてくれました。

彼女はほとんど英語が話せず、我々とも身振り手振り。たぶん、ほとんどどこへも出かけることなく、毎日孫の相手だけをして、数ヶ月をすごしたはず。うちの娘とも何度も遊んでくれたのですが、1歳7ヶ月の彼女が覚えているはずもない。せめて写真を取らせてもらって、大きくなったとき「この人に可愛がってもらったんだよ」と見せたい。

午後はずっといなくて、「もう帰っちゃったか」と思っていたら、夕方帰宅。出かけていた理由は、奥さん(ビジネススクールの学生、NBA)のお土産の買い物でした。買ったものはほとんどが服。弟に、弟の嫁さんに、父に、母に、妹に・・・・ と延々続く。さらに、袋いっぱいのチョコレート。「今お金はあまりないんだけどね」と言いながら、みんなに選んだものを一つ一つ見せてくれるのをみて、彼女が祖国の家族に対して負っているものが伝わってきました。思えば私だってそうで、送り出し、サポートしてくれる人が何人いることか。実はその前の週末の発表が上手くいかなくて、週末は何もする気にならずしょぼんとしていたのですが、こんなことじゃいかんと、気持ちが引き締まりました。

お宅を訪ねると、いつもおばあちゃんがチャイを作ってくれました。うちでは私の知り合いのインド人(学生)に教わったとおりカルダモンを入れるのですが、彼女はシナモンと生姜を入れる。教わったとおりにやってるつもりだけど、やっぱり彼女が作ったほうがずっと美味しい。昨日も一杯いただきました。

たぶんもう会えないでしょうから、お別れを言えてよかった。英語の話せないおばあちゃんは、米国内の乗り継ぎは難しい、ということで、つぎの朝、シカゴまで車で送っていきました(そこからはデリーまで直行便がある)。われわれはベランダから見送ってお別れ。「この2人をよろしく、グングン(お嬢さんの愛称)と遊んであげて」と(身振りで)言ってました。

母って誰?

2010年05月10日 | Bloomingtonにて
昨日、娘がよく遊びに行く近所のお宅(インド人、お嬢さんが2歳)を家族でたずねました。そこのお母さん(IUの学生、夫はフランスに留学中)が、話の途中でふと思い出して「そういえば今日は母の日ね」と、うちのニョーボと盛り上がりはじめました。「お宅では母の日に何かしてもらったか(してあげたか)」ということらしい。(何もしてません)

そこで初めて「自分の妻は母の日にいたわる対象でありうる」ということに気づきました。考えてみれば、母としての労を夫もねぎらう、ということ、世間ではあったような。

そのことを話すと、その友人は「じゃあWife's dayってのがあるといいんだよね」。個人的には、そうしてくれたほうがありがたい。自分の母親と、自分の妻を同日に、同じ意味でねぎらえ、というのは、なんだかしっくりきません。私にとってニョーボは妻であって、自分の娘の母ではあっても、自分にとっては母ではないから、というようなことでしょうか。。。 まあ、そんなことごちゃごちゃ言わずに、労わればいいのでしょうけど。

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写真は、母の日とは関係なく、別の女の子の誕生日に持って行ったもの。Farmer's marketなら、$7も出せばこんな立派なのが買えるらしい。

読書録3 

2010年05月03日 | Indiana大学
春学期終了。読書録として、今学期、Teaching Assistantとして働いた授業Introduction to statisticsで使用した教科書を。著者は、担当のTrosset先生。長年、統計学入門を教えて使ってきた教材を最近出版したもので、今回初めて授業で使われました。

Michael W. Trosset Introduction to statistical inference and its application with R. Chapman & Hall, 2009.

まず、とてもバランスのいい本だと思います。統計学科の授業のための教科書ながら、理論に偏りすぎず、具体的な統計分析をするためにそのまま使える手順・数式・Rコマンドが手際よく説明されていて、かなり実践的。とはいえ、確率論に数章を割いて、数学的な基盤もおろそかにしていない。カバーしている統計手法は、t検定、一要因分散分析、予測変数が一つの回帰分析までですが、正規分布が仮定できないときの対処も丁寧に解説してあって、見た目より内容がつまってる。分割表の検定も、カイ2乗値によるのでなくて、一般化線形モデルへの発展を考えてG検定を中心に議論する、など統計学を専門にする第一歩としての役割も十分果たすと思います。

この本の一番の美点は、Exercisesでは。教授職に就く前にしていた、統計コンサルタントとしての仕事の経験を生かして、実際の研究例に基づく練習問題を豊富に収録してあって、入門の教科書を超えた味わい深さがあります。宿題は全て、中間・期末試験もほとんどがこのExercisesから出されるので、私はそれを採点するため、分かるまで読んで、問題を解き、学生の誤答にコメントをつけるためあれこれ見直したりと、徹底的にこの本を使ったので、かなり内容に精通したと思います。

一方、この本は本当の入門書ではないかもしれません。数学のバックグラウンドがちょっとあり、統計も多少の経験がある人が、もっと厳密な理解を目指す、という状況が最適か(日本人はアメリカの学生よりそういう人が多い気がするので、英語さえ苦にならなければ、読める方は多いのでは)。私は、ちょうどそういう段階にあったようで、いちばん勉強になった学生かも。Wilcoxonの符号付順位和検定のリクツがどうも分からず、三重大学の奥村晴彦先生のWebを参考させていただいて、やっと問題が解けたということもありました。理解してから読んでみると、教科書はちゃんと分かるように書いてあったのですが。

もう一つの問題は、Rに関する説明がちょっと簡単なこと。Trosset先生は十分だと思っているでしょうし、私もそう思わなくもありませんが、やっぱり経験がない人は面食らうかも。そのためか、手計算でやろうとした学生もいましたが、どうしてもどこかで間違う。Excelを使った人が、ExcelのLOG()関数のデフォルトがlog10である(自然対数ではない)ことを知らずに使って全然違う答えを出したり。。。

そんなわけで苦しんだ学生も多くて、こっちも採点には大変な時間がかかったし、「統計って難しいんだな」と再認識させられた、という面もあります。450ページほどのこの本を、15週間で隅から隅までカバーした先生も、付いてきた学生も立派。有名になることはない本なのかもしれませんが、良書だと思います。本のWebsiteのURLは以下。データセットと正誤表(たくさんある。いくつかは私が見つけた)がダウンロードできます。

http://mypage.iu.edu/~mtrosset/StatInfeR.html

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読書録というか、今学期の仕事を振り返った記事になりました。今日、一学期の合計点を報告して、私の仕事は終わりました。