前回に続いて、私の根付に関する話である。
この根付は、精細緻密という点では、むしろ裏側である。(写真)
見えないところに力を注いで技を凝らすとは、どういう意味なのだろう?
実に細い線が刻まれている。どの程度の腕前があれば、こんな線が彫れるのだろうか。
今は彫り物用の道具も進歩しているだろう。
この根付は、私の想像では、大正以後のものではないように思う。明治?あるいはそれ以前? よくは分からないが、年代としては、ちょっと古いもののように思う。
銘も浮かし彫りだし、技術がいりますよ、と田中氏は言われたが、そこに彫られた文字は読めないとのこと。
私の傍にいた長身の紳士が、どれ?といった感じで手に取り、ルーペを当ててしばらく眺めた挙句、上の字は「空」で、下の字は「有」であると、自信ありそうな様子で、解答をくださった。
田中氏も、「なるほど空有と読むのですか」と言い、「石見の根付ですか」と尋ねられた。
石見根付けではない。たぶん金沢? と、私は言葉を濁した。
それにしても、「空有」とは、どんな人なのか、依然として分からない。それでも、私自身幾度となくルーペを当て、目を凝らしても読めなかった文字を読み解いてもらったので、嬉しかった。
田中氏の作品を見に行こうと会場を出たところへ、先の紳士が追いかけてきて、紙切れを渡された。
それには、銘に彫られたとおりの書体(草書?)で、「空有」と書いてあった。
書家なのだろうか、美しい線の文字であった。
私は、その紙片を、貴重品として大事にしまった。だが、お礼の言葉が足りなかったと、今になって後悔している。
この根付は、精細緻密という点では、むしろ裏側である。(写真)
見えないところに力を注いで技を凝らすとは、どういう意味なのだろう?
実に細い線が刻まれている。どの程度の腕前があれば、こんな線が彫れるのだろうか。
今は彫り物用の道具も進歩しているだろう。
この根付は、私の想像では、大正以後のものではないように思う。明治?あるいはそれ以前? よくは分からないが、年代としては、ちょっと古いもののように思う。
銘も浮かし彫りだし、技術がいりますよ、と田中氏は言われたが、そこに彫られた文字は読めないとのこと。
私の傍にいた長身の紳士が、どれ?といった感じで手に取り、ルーペを当ててしばらく眺めた挙句、上の字は「空」で、下の字は「有」であると、自信ありそうな様子で、解答をくださった。
田中氏も、「なるほど空有と読むのですか」と言い、「石見の根付ですか」と尋ねられた。
石見根付けではない。たぶん金沢? と、私は言葉を濁した。
それにしても、「空有」とは、どんな人なのか、依然として分からない。それでも、私自身幾度となくルーペを当て、目を凝らしても読めなかった文字を読み解いてもらったので、嬉しかった。
田中氏の作品を見に行こうと会場を出たところへ、先の紳士が追いかけてきて、紙切れを渡された。
それには、銘に彫られたとおりの書体(草書?)で、「空有」と書いてあった。
書家なのだろうか、美しい線の文字であった。
私は、その紙片を、貴重品として大事にしまった。だが、お礼の言葉が足りなかったと、今になって後悔している。