
読了日:2012年3月29日
感 想:ここ数年、読む小説はことごとく時代物か歴史関係でした。それ以外の小説を読むのって超久し振り。
んで、いきなり唐突に宮本輝。
Twitterで仲良くして頂いている方の影響もあって流転の海シリーズに手を出す(付和雷同な性格です。わはは)。
でも、この「流転の海 第一部」は刊行当初、単行本で買ってすでに読了済み。調べてみたら新潮社から出たのが1992年11月。今から約20年も前。当時の私、26歳。まだ独身の頃。
そのときの読んだ感想は、主人公の松坂熊吾がガサツだけど優しくて、奥さんや子供を心から愛していて、結構やることがハチャメチャで、いろいろな仲間に裏切られる可愛そうなおじさんの奮闘記っていうくらい(←大筋は合ってた!)。まあ、あんまり中身は覚えていないけどね。
そして今回再度、読んでみた。
いやぁ、この本ってこんなに面白かったっけ?が率直な感想。
きっと自分が熊吾と年齢が近くなり、結婚して子供も出来て境遇が似てきたからだと思う。
妙に気持ちが入ってしまう。
太平洋戦争が終わって間もない昭和22年から物語は始まる。
50歳にして熊吾は妻の房江が妊娠していることを知る。無事に伸仁という男の子を授かるが、病弱で実に心もとない。そこで熊吾は決心をする。「お前が二十歳になるまでは絶対に死なんけんのう」と。
伸仁が20歳になる頃、熊吾は70歳。ちょっと微妙な年齢。
一粒種が無事に成人して、どうにか独り立ちして生きていけることを見届けたいという願い。
ここら辺の感情は、当時独身だった自分は解ったようでいて多分表面的にしか理解していなかったと思う。
狂おしいくらいの子供への愛情。そしてどうすることも出来ない自分の年齢という壁。
その板挟みにあいながらも子供を慈しみ、妻を愛する。
第一部なので、熊吾や妻の房江の過去の回想シーンに結構な枚数を費やす。
さらに熊吾の会社、松坂商会のパートナーである辻堂忠の過去も読んでいてかなり切ない。
それぞれがそれぞれなりに不幸を背負い、暗い過去やつらい経験を引きづり戦後の日本を一生懸命に生きていく。
戦前、松坂商会で熊吾に可愛がってもらった海老原太一が戦後に独立して熊吾を裏切る。
海老原を山へ連れ出し、殴り倒す。そして彼に向かって、
「(前略)芦屋か御影に、結構なお屋敷を建てて、虎の剥製を飾った部屋にふんぞりかえって、儲けた金の勘定をしとるのが、人生の勝利者の姿やくらいに思うちょる男よ。しかし五十になり六十になり、人生最後のときが来たら、お前は寂しいて苦しいて、どうしようもなくなるぞ。金も屋敷も、世間の肩書きも、持っては死ねんのじゃ」
と言う場面が結構好き。人を裏切ることが平気で、それで成り上がっていった海老原への厳しい忠告。
お人好しで人を陥れることが大嫌いな熊吾ならではのセリフ。
裏切られても心のどこかで海老原のことを気にかけている優しさが感じられる。
そんな松坂熊吾の善意と情の深さが妙に心に沁みる。
たまにいるよね、こんな人の善い親分肌の人って。
ある日、房江が体調を崩す。
さらに、伸仁の身体のことも考え、悩んだ挙げ句に熊吾は郷里の伊予へ帰ることを決意する。
会社を畳み、自宅も親戚へ預け、家族三人で四国へ向かうという決断。
自分の右腕である辻堂へ熊吾はこう言う、
「約束じゃ。わしが死んだら、伸仁を助けてやってくれ。頼んだぞ」
と。なんだか最晩年の秀吉みたい。秀頼を頼むぞ的な。
旅立ちの日、その辻堂が熊吾に向かって、
「私は、約束をきっと守ります。きっとです」
「二十年後が楽しみじゃ」
これまたジーンとくる場面。
やっぱり流転の海シリーズは、歳を食った大人が読んでこそその面白さが解る小説なのかも知れません。
評 価:★★★★★































