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「蝦夷地別件(上・中・下)」船戸与一・小学館文庫

2016年11月19日 23時16分50秒 | ■時代小説

  


読了日:2016年11月3日
感 想:船戸与一の小説は久し振り。
しかも今回選んだのは
いつもの冒険小説ではなく時代小説。

私が初めて読んだ氏の作品は「砂のクロニクル」。 
壮大なストーリーに魅了され
一気に読み切った記憶がある。

他に読了したは「山猫の夏」「蟹喰い猿フーガ」くらい。
この程度でファンとはいいづらいが
それでも船戸ファンだと自負してる。


今回の「蝦夷地別件」は上中下巻合わせて1,962ページの大作。
これだけのページ数なのに
中だるみすることなく読ませてしまうのが船戸与一のすごさ。

登場人物は多いが
ひとりひとりの設定が明確なので
巻頭の「登場人物」を参照する必要はまずない。
そのこともまた、船戸与一の筆力のあらわれ。


作品の舞台は国後周辺。
実際にあった「国後・目梨の乱」を氏の視点で描く。


長年にわたって和人(日本人)から受けてきた搾取・暴力・暴行にアイヌたちが反乱を起こす。
その反乱計画は、ある事情により鉄砲が手に入らないことから破綻しはじめる。
一枚岩だと思われていたアイヌたちの連帯意識はあっけなく分裂・対立していく。 

この作品に描かれているアイヌたちには救いがない。

現地「飛騨屋」や松前藩の和人からの理不尽な要求。
仲間や家族の裏切りや変節。 
中にはアイヌに味方する和人もいるが、和人ですらも和人に傷つけられる始末。

唯一の救いは、下巻「風の譜」でのハルナフリの復讐くらいか。
しかしその復讐も暗くて冷たくて重い。
ひとつも爽快じゃない。
陰々鬱々とした殺戮が繰り返される。


それでも読後感は悪くない。
その理由はきっと最後に挿入された
静澄から洗元への書簡にあるのだと思う。


愚僧の瞼の裏にはいつも貴僧の存在が輝いている。
愚僧がこれまで逢ったどんな高僧よりも燦然としている。

貴僧は蝦夷地で人間とはかくあるべしと燃えた。
いくつもの痛みを引き受けながら動きつづけた。

蝦夷地でやるべきだと考えたことを
一心不乱にやり抜こうとした。


洗元の不器用で真っ直ぐな生き方を
静澄は書簡の中でたたえ
そして嫉妬する。

幕府の思惑に翻弄され
内妻を喪い
視力も失った洗元。

飄々とした静澄と
清々しき洗元
この二僧の生存がこの作品で
唯一の救いではないか。


史実に基づいているとはいえ
アイヌの蜂起は呆気なく終わり
やや充実感には欠けるが読んで損なし。

それにしても
あれほど頼もしかった葛西政信の後半のご乱心には
苦笑する他ない…。


評価:★★★☆☆ 

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