ヘルンの趣味日記

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シビル・ヴェインの演技

2017年01月18日 | 日記
 

ドリアン・グレイの肖像について感想を書いたとき、シビル・ヴェインという女優のことにふれました。
恋をするまでは達者な女優だったのに、本当に恋をしたら、虚構がばからしくなり演技ができなくなった女優でした。
現実にそんな人は知りませんでしたが、何年か前にちょっと連想した人がいます。

韓国のフィギュアスケート選手のキム・ヨナです。

あまり流行のことはとりあげないつもりでしたが、すでに引退しているので。
このスケーターで興味深かったのは、オリンピックで金メダルを獲得した前後で表現が違って見えたことです。

金メダルまではどちらかというと、技巧派で、色々計算して、自分とかけ離れた役。
死神、ボンドガールとかを演じて巧みでした。
本人はわりと融通のきかなそうな平凡な容姿の少女でしたが。

自分と違った人物を演じて観客を惑わすのは、たぶん、面白いと思います。


ところが、金メダル以後、それがうまくできなくなったようにみえました。
(ブログを書いている人間にはそうみえました)

五輪の翌年に、ジゼルの1幕ラストを演じたときに思いました。
よく勉強して、きちんと演じているけれど、面白くはない。

理性の勝った現代人には失恋で狂死するというのは理解できないでしょう。
彼女の中にはそうした要素がなかったと思います。

選手であるキム・ヨナにとっては、オリンピックで優勝することが、シビルの恋の成就にあたるのか。
現実の喜びを手に入れて、嘘を演じても楽しく思えなくなったのかもしれません。


ところが少し試合を離れてから、復帰しました。
そのときの演技はミュージカルのレ・ミゼラブルでした。
片思いの男のために命を落とす女性の役の場面では、大変情感がこもっていて、説得力がありました。

以前の計算された技巧的な面白さでなく、自分自身をうまく役にいかした演技でした。
自分を虚構の役柄に融合させることに成功したと感じました。


その翌年で引退したのですが、ジゼルをもう一度演じたらどうだったか見たい気がします。

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