ヘルンの趣味日記

好きなもののことを書いていきます。

羽衣

2017年07月14日 | 日記
大分昔に読んだ短編マンガで印象に残った話です。
以前記事に書いたことのある「忍者武芸帳」の作者の白土三平の短編です。
江戸時代の農民が、コメが不作のときの食糧としてサツマイモの苗を別の村からとってこようとする話でした。
産業スパイですが、そのスパイは親のいない少女が志願します。
そして忍者のもとで修行して美しい娘に成長して凧にのって山の向こうの村に潜入します。
そしてパラシュートで降下(このパラシュートが羽衣です)します。

村人に手を貸す忍者は、この役目は若い女性でなくてはだめだといいます。
それは、この次の展開にかかわります。
美しい娘が天から降りてきたのをみた村の青年が彼女に恋を して羽衣をとりあげて二人は結婚します。
可愛い男の子が生まれて幸せにくらしますが、その間にサツマイモの秘密をおそわり、羽衣をみつけだして娘は自分の村に帰ります。
見事に任務に成功しますが、彼女はスパイになりきれず、本当に夫と子供を愛していたので任務の成功も喜べず、結局山の向こうにもう一度行こうとして凧にのります。
失敗して死んだのでは、またうまく帰れても裏切り者として扱われるのでは、と心配されつつ終わります。

ほかにも短編があったのですが、これが一番印象的でした。
娘が任務と家族への愛情の間で苦悩しながら元の村に帰るところ、成功して豊かな村になったのに悲しんでいる場面。

彼女は自分は孤児なので身軽だからと志願したのですが、
そのときの単純な使命感から、家庭をもちスパイの苦しみをしるようになり、最後は本当に切ない話になりました。
「おら、親もいないし死んでも悲しむものはいない、村の役に立ちたい」といって
まっすぐな目をして村のために命を賭けていた単純で勇気のある少女が村にサツマイモをもちかえるときには、一人の人間として迷います。
可愛い子供をみて涙ぐみ、夫にすまないと悩みます。

この役は若い女性でなければ、といった時点で忍者はこの結末を想像していたかもしれません。

娘が村から消えて村人たちが心配して言葉を失ってしまうのですが、
逆に言えば、村のために命をかけた娘を大事にしていたのだろうと、一抹の救いになります。

農民の切実な話を幻想的な羽衣伝説と結びつけ て余韻のある美しい話になっていました。

この作者のマンガは思想色が強くてドラマに無理が出てしまうため、あまり興味をもてない作品が多いのですが、
メロドラマを扱うと生き生きとした人物描写をするような気がします。



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