ヘルンの趣味日記

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手塚治虫の職業マンガ

2017年10月10日 | 日記


手塚治虫のマンガはあまり読みませんが、やはりすごい才能だと思います。

手塚作品で好きなのはブラック・ジャックです。
これは、前にも書いた「王様の仕立て屋」のように、職人が人を幸せにしていく路線のはしりかなと思います。

天才外科医の主人公のところに様々な患者がくる。
そして主人公の仕事で幸せになる。

このマンガは、手塚治虫が低迷していたころにもう手塚先生の連載はやめにしようとして、出版社がつくった最後の花道としての掲載だったらしいです。
ところがヒットして、手塚復活のきっかけになったとウィキペディアにありました。

たしかに手塚作品は初期の頃からのドラマ性の強い長編はセンスが少し古いように思います。
映画でも、往年の名作を今、そのまま新作として発表しても受け入れられないでしょう。
でも一話完結のスタイルで発表されたこのマンガはとても面白い。
彼のセンスの古さが出ないのです。
一話で終わらせるために、あまり思想性とかキャラクターの描写などにこだわることができない、それがかえってよく作用しているみたいです。

一話完結だけでなく、ある職業の主人公がその仕事を通じて客の人生に関わる形式。
これは大変面白くて、私はこのタイプのマンガが大好きです。
「王様の仕立て屋」「美味しんぼ」とか職業を変えてたくさんあります。知る限りどれもブラック・ジャック以後みたいです。
結構ご都合主義で、現実はそんなにうまくいくはずはないのですがそこはフィクションです。

原則、一話完結で その中でお客の事情説明とその解決が展開されます。

客が困ってやってくる
職人とか医者はヒアリングして問題を把握する
仕事をするけれど、客には不信感しかもてないようなやり方
でも実は主人公が正しいことが判明して解決する
幸せになった客の後日談で終了する。

という感じが基本形みたいです。ホームズのような感じです。

医術で問題を抱えた人を治すのですが、その結果、必ずしも幸せにしないこともあります。
でも彼はマザコンというか、母親を慕い続けているので、母である患者には甘いのです。
マザコンのせいか、女運はどうも悪いみたいです。
あまり恋愛に興味がない、たまに好きになっても、うまくいかない。
なんとなく、男性としても人間としてもちょっと欠けているところがあるようです。
そのかわり、医師としては、信念をもって全力を尽くします。
本気で悩むのも苦しむのも医師としてで、プライベートで悩むことはあまりないようです。

職業マンガは、わりとこの傾向があります。
悩みをもっているのは客であり、主人公はなによりも解決するための卓越した専門家です。
これが、職業人として一人前になるための成長の話なら、主人公のプライベートな悩みも大事なエピソードになります

前に「ハッスルで行こう」というイタリアンシェフの卵のマンガを紹介しました。
主人公はまだ半人前なので、恋をしながら成長します。

ホームズ系の職業マンガはすでにキャリアを確立しているので、あとは能力で人を幸せにすることになります。
みせたいのは、訪問してきた客(患者)の人生のアップダウンだからです。
職人や医師の人生はあまりアップダウンしないのです。

手塚治虫はどこから一話完結の職業人による問題解決マンガを思いついたのでしょうか。

彼が最初かどうかわかりませんが、ブラック・ジャックの成功が後続の職業マンガを生んだのではないかと思います。

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