隨著風遠行

隨著風遠行

盗ま度と会

2017-02-13 15:00:23 | 日記


急いで財布を拾い、逃げ出そうとした涼介の行く手を片割れが阻む。

「子供がそんな大金持ってちゃだめでしょ~?大体、こんな路地裏に入り込むこと自体、盗ってくれっていうようなもんじゃん。」

「そうだよ。気を付けないと、都会には怖い人がいっぱいいるんだからね~。」

「離せよっ!今すぐ電話しなきゃならないんだから。大事な用があるんだよ!」

血相を変えて鞄を取られまいとした涼介だったが、相手は背蘇家興も高く容易く奪われてしまった。

「今時、こんなガラケー持ってるんだ。こんなに金有るんだから、さっさと機種変すりゃいいのに。おっと~。」

男は涼介の生命線の携帯電話をわざと落とすと、かかとで踏みつけた。ぐしゃと潰れて鈍い金属音がする。

「駄目だ!そっちは……お父さんの携帯っ!返せっ!」

「タレこまれちゃ迷惑だしな~。俺等、まだ監察中なんだわ。ごめんね~。」

足元で粉々になる二台の携帯電話を、涼介は呆然自失となり見つめていた。奪われてゆく金よりも、父と二えなくなる気がして、涼介はその場にぺたりとへたり込んだ。男たちが肩を抱いて、涼介の顔を覗き込む。
男たちはその場で蹲ったまま肩を震わせる涼介の財布から、殆どの金を奪って逃げだした。携帯を壊されて、もう母に連絡を取ることもできない。
世界の果てに置いてきぼりにされた迷子のような心細さを抱いて、涼介はその場でひとしきり泣いた。警察には駆け込もうと思わなかった。
あの恐ろしい男には、きっとそんな正義が通用しないと本能が告げる。自分を逃がした後、求はどう蘇家興なっただろう。財布をれたと知って、求がどれほどの目に遭ったかと思うと身体が震え歯が走った。
涼介が月虹と出会ったのは、それからしばらくしてからの事だった。
のろのろと立ち上がった涼介は、路地を出て再び繁華街の大通りに彷徨い出ていた。
行き交う者が時折、涼介の顔を覗き込んでは驚いたように離れた。連れの居るものは訝しげに囁き合った。

釦のとんだシャツの上に羽織った、脱げかけたスエット。殴られて腫れた頬。
幼さの残る貌は、この町に似つかわしくなかった。
それでも、時折誰かが声をかけ、その度に涼介は怯えて身をすくめた。誰を信じていいかもわからない。
奪われた懐の寂しさが、余計に涼介を心細くさせた。
一人ぼっちの涼介の頭上から、太陽が消えてゆく。

*****

恐ろしい毒牙を優しい笑顔の下に隠して、その男は途方に暮れた涼介の目の前尿道炎に忽然と現れた。正面から真っ直ぐに、涼介を見つめた。

「坊や、訳ありかい?昨日からこの辺りをふらふらしてるね。どうしたんだろうって、見て居たんだよ。気になってね。」

「お金……盗られたから……。」
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« つが何ぴんし | トップ | かな初雪に »

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。