デミング博士のニューエコノミクスって

デミング博士の”ニューエコノミクス”に書かれた内容と,それに関連する内容を,「マターリ」と理解するページ

ブロック線図変換・ラプラス変換表

2005-12-25 14:42:22 | システムについて
ブロック線図変換・ラプラス変換表をさらします.

ブロック線図変換






番号 変換内容 変換前 変換後
1 加え合わせ点交換
2 引き出し点交換
3 加え合わせ点移動
4 引き出し点移動
5 直列接続
6 並列接続
7 フィードバック接続


ラプラス変換表





番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9


ラプラス変換の定義式:


ラプラス逆変換の式:


時間微分のラプラス変換:


参考文献:
山口静馬 他, 制御工学の基礎, 1996, ISBN:4-627-91490-3

損失関数と工程フィードバック3

2005-12-25 13:29:03 | システムについて
4.システムの安定性とか
  • システムの状態(出力)は,無限大に発散するか,ある値に落ち着くかします.
  • システムの状態が,ある値に落ち着くことを「システムは安定している」といいます.通常は,安定している時にシステムの目標が達成されています.ちなみに,安定の判別は,ラウス・フルビッツの判定法やら,ナイキストの判定法やらがあります.
  • フィードバックゲインを大きくしすぎると,システム構成によりますが,システムが発散する事が多いのです.
  • すべての固有値(=特性方程式:伝達関数の分母の根)のs平面上の実数軸上で0未満であれば,システムは漸近安定です.
  • すべての状態(状態変数)をフィードバックでき,制御対象への入力が制御対象のすべてのモード(応答)に影響する事が出来れば,システムを漸近安定にもっていけます.
  • 伝達関数に極と零点の消去が起きた場合は,希望通りに制御できないか,出力に現れないモード(応答)が制御対象に存在してしまう.(可制御とか可観測とかです)
  • システムの種類により,色々な定常偏差(目標値とのズレ)を持っています.


 可観測で無い時とと可制御で無い時は,下記のブロック線図のような形の時に起きます.


Fig. 可制御でないシステムのブロック線図


Fig. 可観測で無いシステムのブロック線図

5.システム理論からいえること

 システム理論は,何も機械だけの話ではありません.組織の動きもシステムですので,上記の事から,ある程度の事は言えると思います.

  • 組織も発散したり,ある大きさに落ち着いたりすると思います.
  • 組織が安定している時は,通常目標を達成していると思います.もし,組織が安定していて目標が達成できていなければ,たぶん,目標が無茶か十分に検討されていないのでしょう.もちろん,無茶な目標(ゲイン高すぎとか)を強引に達成させようとすると,組織を発散させます.(上下に大きく波打つかもしれません)
  • 固有値とは基本的に入力と出力に関係する値なので,組織で考えるとコミュニケーションや,リソースに関係する事でしょう.たぶん,組織の浪費率(効率の逆)のことになりと思います.組織が保持するリソースやコミュニケーションは,実際に使用する物より多めにしておかないと,浪費率の改善に振り向けるリソースやコミュニケーションが不足すると思います.
  • 材料や機械・プロセス・資金繰りだけではなく,顧客・従業員・株主・組織の周りの人たち等のステークホルダの状態も重要な要素です.これらをすべて考慮し,いい影響を与えないと,組織の安定や目標達成は,長期的に不可能です.つまり,顧客・従業員・株主・組織の周りの人たち等のステークホルダに恐怖を与えたり,金で釣ったりして,これらの人々の内発的な動きを止めてしまえば,組織の目的達成を阻害したり(可制御で無くなる),それぞれの人々の相互のコミュニケーションを破壊したり(可観測で無くなる)すると思います.


6.参考文献
  • 吉田勝俊, 短期集中:振動論と制御理論, 2003, ISBN:4-535-78369-1
  • 木村英紀, 制御工学の考え方, 2002, ISBN:4-06-257396-2
  • 山口静馬 他, 制御工学の基礎, 1996, ISBN:4-627-91490-3
  • 高木章二, ディジタル制御入門, 1986, ISBN:4-274-08572-4
  • 大住晃, 確率システム入門, 2002, ISBN:4-254-20944-4
  • 宮川雅巳, 品質を獲得する技術 タグチメソッドがもたらしたもの, 2000, ISBN:4-8171-0399-6


損失関数と工程フィードバック2 【12/25 いちよう完成】

2005-12-25 13:22:33 | システムについて
フィードバックシステムの復習をさらします.

1.システム?
 前回の工程管理の話に,「フィードバックシステム」が出てきました.これらは,「自動制御」やら「システム制御」の話で出てきます.
 システムの話自体は,以前にしてますので繰り返しませんが,ここで,システム制御(自動制御)の話をちと復習します.
 私は,学生時代,この「自動制御」の算数がとても苦手で,ラプラス変換表やら,ブロック線図が無ければ,たぶん全滅したでしょう.
 いまだに「モヤッ」としているので,計算等は間違っているところがあると思います,「注意」してください.

2.フィードフォワードとフィードバック
 世の中には,フィードフォワードとフィードバックという制御(管理・コントロール)があります.これは,下記のようなものです.
  • フィードフォワード:これは,出力の量やら状態にお構いなしに,初めからのプログラム通りにやってしまう方式です.プログラムにバグが無く,出力もおかしくなければ,これが一番早く物事が出来るようです.
  • ポジティブ・フィードバック:これは,出力量や状態が+になれば入力も+に,出力が-になれば入力も-にしてしまう方式です.俗に言うポジティブスパイラル,ネガティブスパイラルの原因が,よくこうなっているそうです.
  • ネガティブ・フィードバック:これは,出力量や状態が+になれば入力を-に,出力が-になれば入力を+にしてしまう方式です.これだと,多少出力が変化しても,ある一定の範囲に出力を保ったり出来ます.もちろんフィードバックが遅かったり,フィードバックされた情報(信号)が不正確であれば,出力が一定の範囲に収まらず,最悪機械の故障や事故が発生することがあります.(これは技術屋の腕次第!!)


 自動的に何かをやる機械は,基本的に上記3つの方法を組み合わせてやっていますが,基本は「ネガティブフィードバック」にありということで,これを機械・電気工学では鬼の様にやらされます.(たぶん他の工学分野でも,やっているのではないでしょうか?)
 ここに書いた方法は,「古典的」なもので,私は,これしか知りません.(というか,これ自身怪しい…….虚数やeが出てきた瞬間,血の気が引いてしまうんです.ううっ….)
 でも,世の中にはカルマンフィルタやH∞やμやらのほとんど魔法のような制御理論(行列バリバリです…)があり,ここら辺も理解していないと田口メソッドの真髄が理解できないような気がしてます.(´・ω・`)(両方とも「ロバスト」をキーワードにしてますし)

3.倒立振子
 さて,実際のフィードバック制御を見ていきましょう.サンプルとしては,「倒立振子(とうりつしんし)」というものを見ていきます.
 これはどういうものかといえば,下の絵を見ていただければ解りますが,箒を手のひらに立てるように,台車に振り子をひっくり返った形で取り付け,台車を動かす事によって,振り子を台車の上に立てるというものです.
 もちろん,台車と振り子は扉のアームのようなジョイントでしか繋がっていないので,台車が動かなければ,振り子は倒れます.
 で,入力として台車の動き,出力として,振り子の角度を取り,最終的に振り子の角度がどの様に制御されるかどうかを見ていきます.


Fig. 3-1. 通常のフィードバック制御のブロック線図


Fig. 3-2 倒立振子

ここで,

f(x):
台車に加わる(台車が出す)力(台車には走行モータをつけているという前提です)

M:台車の質量
m:振り子の質量
l:振り子の重心位置
θ:振り子の角度

です.

 いつも通りの作戦として,下記のように進みます.

 倒立振子の運動方程式(ラグランジュ運動方程式)を立てる
  ↓
 それをラプラス変換して,伝達関数を求める.(伝達関数とは,出力/入力比で,そのシステムの特性等を表している関数です.これが解ればそのシステムの振る舞いが解ります.)
  ↓
 ラプラス逆変換して,実際の振り子の角度θの経過時間での動き(波形)を求める.

です.

 ずっとさらしていたものですが,見ていきましょう.





 これで求めた波形を下記にさらします.


K=9.79 実根の場合,θが大きくなって行きます.つまり倒れてしまったという事です.


K=9.81 虚根の場合です.ふらついていますが,立っている状態です.


K=9.9 上記よりKを多少大きくしても立っています.

 何で波形が振動するのかは,下記式で式を変換すれば,sinとcosの式が出て来るからです.



 ちなみにL・(dθ/dt)(角速度)もフィードバックしてあげたら,だんだん振動が収まり,ある程度の時間が経てばふらつきを微小にできます.

 面倒なので,教科書から2次システム式の単位ステップ関数の応答の式を引っ張ってきました.



 L・(dθ/dt)(角速度)をフィードバックしたら,上記のグラフのように角度θも減衰していきます.(このグラフは目標(θ)を1においていますが,倒立振子では目標(θ)は0です.)

4.システムの安定性とか

 続きは次ページへ.


損失関数と工程フィードバック【12/11 検査設計の項 追記】

2005-12-11 18:52:28 | システムについて
 タグチメソッドの損失関数と工程フィードバックについての内容をさらします.

1.損失関数
 タグチメソッドの損失関数とは,部品や製品のねらい値に対するバラツキで発生する製造側及び顧客側(社会側)の損失を表す関数で,下記に示す式になります.



 ここで,
y :製品,部品等のねらい値
m :製品,部品等の個々の実際の値
Δ0 :製品,部品が実際に機能しなくなる値(機能限界)
A0 :機能限界に達した場合の損失金額

 グラフにすると,下記のようになります.

Fig Loss Function Sample
 黒の線:損失関数
 赤の線:規格限界(公差)
 青の線:一様分布
 緑の線:正規分布

 この図を見れば判りますが,公差内でもバラツキが大きい場合は,損失が大きくなります.(正規分布に比べ,一様分布のほうがバラツキは大きいです)

 この式は2乗損失と呼ばれるもので,統計では実際の値の推計を,平均やら中央値(メディアン)やら,最小2乗法やら等々で推計しますが,その時の推計の外れ方を,(y-m)^2とかで評価(この式が一番簡単な評価方法)するそうです.(赤池情報量規準とかもこの仲間でしょうか)

 上記式に比例定数A0/Δ0を付け加えて,田口さんが損失関数を定義しました.

 この損失関数の意味は,デミングさんが言うとおり,「規格に合わせるだけでは不十分で,さらなるバラツキの低減が必要である」という事になると思います.

 ちなみに,上記の式を考えた安全率と公差は,下記のようになります

安全率:


 ここでAは手直しもしくは廃棄のコスト
 つまり,安全率は機能損失コストと不良品を処理するコストに比例するという事です.
 今まで1.2やら2やら4やら10とか経験に基づいて決めていたものに対し,経済的な観点も考慮して決めましょうという提案です.

公差:


 これは通常の公差の計算:±ねらい値×安全率と同じ考えだと思います.

2.工程フィードバック

 次に工程のフィードバックですが,これは,どの様に工程のねらい値を経済的にコントロールするかを示したものです.
 これはすでに工程設計にて,グチメソッドのパラメータ設計(直交表実験)を使い,工程のパラメータの把握にてバラツキ自体(共通原因のバラツキ)の低減及び,ねらい値調整のためのパラメータの把握が十分なされている事を前提としています.
 つまり,工程を稼動させる前に,きちんと工程設計がなされていれば,フィードバック制御が可能であるという事です.

 このフィードバックに必要な要素及び,式が下記になります.
 (品質特性によるフィードバック制御(計量値の場合))



 ここで,
 L0 :現行の損失関数(円/個またはバッチ)
 L :最適時の損失関数(円/個またはバッチ)
 Δ :目的特性値の許容差
 A :不良品損失(円)
 B :計測コスト(円)
 C :調整コスト(円)
 n0 :現行の計測間隔(個またはバッチ)
 n :最適計測間隔(個またはバッチ)
 D0 :現行の調整限界
 D :最適調整限界
 u0 :現行の平均調整間隔(個またはバッチ)
 u :最適平均調整間隔(個またはバッチ)
 l :計測方法のタイムラグ(個またはバッチ)
 σm :計測誤差の標準偏差

 上記を見ていただいて判るように,このフィードバックシステムは,常時出力を監視しているのではなく,監視(計測)費用と不良を出す損失とのバランスを見て,監視間隔を見ているわけです.(サンプリングによる制御と同じような感じでしょう)
 つまり,サンプリング回数が少なければ,正しい波形が取れないデジタル・オシロスコープみたいなな感じでしょうか.
 ちなみに調整は,下記式による調整量を用いないと,前に漏斗の実験の時のようなハンティング現象が起きる可能性があります.



 上記式は,製品のねらい値のバラツキが,調整限界より小さい場合は調整不要であるが,大きい場合は調整をかけなければならない.つまり,調整限界より大きなバラツキがあり調整しない場合は,大きく損をする可能性があるということです.
 これは,共通原因・特殊原因のバラツキ両方に言えることです.特殊原因の場合は,すでに調整方法がわかっているとの前提ですので,調整を行えばいいだけですが,共通原因の場合は,再度パラメータ設計等を行い,共通原因のバラツキをもっと提言する必要があるということになると思います.
 普通にシューハート図等による管理では,工程は安定しているが,損をしているかどうかは自明ではありません.しかし,調整限界も考慮する事により,損失まで管理しようというのが,この考え方の基だと思います.
 また,調整による工程の管理は,まさしくフードバック制御です.下記条件がそろっていれば,かなり効果的でしょう.
  • モデルがかなりしっかり出来ている.(モデルの選択・パラメータ設計が出来ている.
  • フィードバックをかける信号(通常は出力)の測定誤差が十分小さい.
  • フィードバックのタイミングも遅くない.


3.検査設計

 この場合は,トラブル単位(保証単位)(a)=検査単位(b)=処理単位(c)の場合を書きます.
 これは,通常の工業製品(例えば家電)等の場合は,製品1つ1つが保証されるもの(単位)であり,通常は製品1つ1つを検査しており,手直しや,破棄も製品1つ1つで行うからです.
 石油やジュースのようなものは,こうではありませんし,鉄ロールや,布とかも違います.



 ここで,
 D :出荷後トラブルを起こした時のトラブル1個あたりの平均損失(円)
 B :検査費用(選別費用)(円)
 A :品物に対し,破棄,手直し,値下げ,などの処置を出荷側が行った
 ときの1個あたりの経費や損失(円)
 p :不適合率(不良率)
 δ :その検査で不良となるものの中で,合格品の割合.不明の時はゼロとする.

 L0 :品物をそのまま出荷した時の損失.
 L :品物を選別して不良品は手直し,破棄などそのまま出荷せず,
 あるオペレーションをしたときの損失(円)
 pb :臨界不適合率(不良率)

 ここでの限界不良率とは,その不良率以上では全数検査しないと確実に(自社と顧客双方が)損をする率であり,限界不良率以下だから検査しないといっても,実際の不良率が限界不良率に近ければ近いほど自社・顧客双方の儲けは薄くなり,儲けが薄いため,やはり倒産という事になるやも知れません.
 もちろん限界不良率以下の場合に全数検査したら,検査費用や処理費用等の費用がかかり,やはり儲かりません.
 つまり,検査だけでは儲かる品質を維持するのはかなり難しいという結論になります.
 やはり,QCの基本通り,「品質はライン(研究開発・製造・販売・管理)で造り込み」実際の不良率を限界不良率よりかなり低く維持すること(=工程能力を高く維持する事)を行わないと,倒産への道を進む事になります.
 もちろん,工程能力が低く,限界不良率近い不良率の場合は,全数検査しか手がありません.

 ちなみに最終検査はどの工場でも全数行っているとは思います.これは,どちらかというと,全ラインの工程能力の確認のために行うためだと思います.
 最終検査ですから,すべての工程で作られた部品が組みつけられ,製品になったものを検査するので,ここでの検査はすべての部品を一度に検査しているのと同等になります(もちろん最終検査の検査項目しだいですが)ので,検査としては効率がいいと思います.不適合品の処理は一番費用がかかりますが.
 従って,最終検査は全数検査を行ったほうが,品質のモニタリング,品質向上のためのデータ収集のためにはいいと思います.(もちろん,最終検査の費用の低減は独自に図られるべきです.)

 QC=検査ではありません.海外の工場で必ず書かれている出荷検査の意味の"Out Going QC(Shipping QC)"の看板を見ると,毎回悲しくなってしまいます.
 そう,本当は"Shipping Inspection"と書いて欲しいのです.こう書かれない限り,QCのリーダやマネージャが事務所から出てきて,現場を見,現物に触れ,現実を感じることを自発的に行ってくれないような気がします.

 ただ,QCには検査は必要ですし,不適合品の管理も必要です.私は検査を,「品質向上のためのデータ収集及び,不適合品の解析のため」に行うことが第一義であると思っていますし,人と話す時もこう言っていたつもりです.(通じているかどうかは別にして)そして,そのデータ等を元に「継続的改善」を進めていくのです.

 また,「工程能力が高くなければ,儲かる品質を確保できない」という事の理解が必要であると思います.品質を考慮してないプロセス・リソースの計画や人材の投資等(ただ単純に需要数と釣合う投資)では,工程能力の低さから,必ず品質が不足すると思います.従って儲からないのです.コストを単純に低減するのでは儲からないのです.必要なのは,顧客の期待品質と釣合うための工程能力を確保するだけの投資だと思います.「品質は金がかかる」という人がいますが,本当は,「品質確保もできない程度の投資では,丸損:もっとお金がかかる」のです.そして,その損は,自社と顧客双方で支払わなければならないのです.

4.参考文献
  • Dening, W. Edwards, The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed., 1994, ISBN:0-262-54116-5
  • 田口玄一 他, 製造段階の品質工学, 1989, ISBN:4-542-51102-2
  • 宮川雅巳, 品質を獲得する技術 タグチメソッドがもたらしたもの, 2000, ISBN:4-8171-0399-6

Interdependence 相互依存

2005-11-20 16:26:46 | システムについて
 経営学の父:ピーター・ドラッカーさんが先週亡くなったようです.
 実はデミングさんとドラッカーさんは,NYU(ニューヨーク大学)での同僚でした.何でも,マネジメント科創設の時,教室が確保できなくて,市民プールが使用されていない時にそこを教室として講義をしていたそうです.(でも,この2人には何かぎこちなさがありますが…….やっぱりMBOがらみなんですかね?)
 そこで,デミングさんの本で,ピーター・ドラッカーさんに言及している部分を抜き出してさらします.

Interdependence 相互依存



The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed. P96より
<引用>

 コンポーネント間の相互依存の大きさは,彼らの間のコミュニケーションと協力の必要性による.
 Figure 9に,低から高までの依存度を示す.
 マネージメントの間違いは,コンポーネント間の相互依存を含んでおり,事実,M.B.O.の実践における損失の原因である.
 会社の事業部におけるそれぞれの仕事に与えられている努力は,足し合わされない.
彼らの努力は,相互依存的なものである.一つの事業部がゴールを達成できたとしても,それ自身が置き去りにされ,ほかの事業部を殺してしまう.ピーター・ドラッガー【Peter Drucker】はこの点を明確にしている.
Peter Drucker, Management Tasks, Responsibilities, Practices (Harper & Row, 1973)


Fig. 9 Interdependence, from low to high.


 良く最適化されたシステムの例として,オーケストラがある.演奏者は,プリ・マドンナのようにソロを演奏しないし,各人が,聴衆の耳を捉えようとしている.彼らは,お互いをサポートしている.
個人個人では,国のベストプレーヤである必要は無い.つまり,ロンドン王立交響楽団の140人各人の演奏者は、他の139人の演奏者をサポートしている.オーケストラは,聴衆に判断される.いつも輝かしい演奏者によってではなく.しかし,彼らは共に働くのだ.マネージャと同じ【役割である】指揮者は,システムである演奏者間に協力を生み出し,各演奏者はお互いをサポートする.
ここには,演奏者及び指揮者の働く喜びという,他のオーケストラの目的がある.

</引用>

もう一つ.

In MBO (management by objective) 目標管理



The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed. P30より
<引用>





現在の実践 ベター・プラクティス
M.B.O. (management by objective) システムの論理を学ぶこと.システムの目的の最適化により,コンポーネントをマネージすること.

 実践されているMBO,会社の目的は,いろいろな部署や事業部に配分されているものである.経験による通常の仮定は,もしすべてのコンポーネントや事業部が【目的の】共有化を成し遂げれば,全社で目標を成し遂げるであろう.この仮定は一般的な妥当性が無い:コンポーネントは大概の場合,相互依存している.
  不幸にも,いろいろなコンポーネントの努力は,足し合わされない.そこには 依存性がある.つまり,昨年度,購買の人間が10%のコストダウンを成し遂げたとしても,製造でコストアップと品質悪化があるであろう.彼ら【購買】が取るハイ・ボリューム・ディスカウントの優位とそれによる在庫の積み増しが,柔軟性とビジネス上の不測の事態に対する反応の邪魔になる.
 ビーター・ドラッカー【Peter Drucker】は,深い理解とともに,この点を明瞭にしている.
 不幸なことに,大勢の人々は,彼の警告を読んでも,悩むことは無い.
(Management Tasks, Responsibilities, Practices, Harper & Row, 1973)

</引用>

参考文献


  • Dening, W. Edwards, The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed., 1994, ISBN:0-262-54116-5
  • Peter Drucker, 牧野洋 訳,ドラッカー 20世紀を生きて, 2005, ISBN:4-532-31232-9


The Funnel 漏斗の実験

2005-11-20 16:23:00 | システムについて
 The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed. の第9章The Funnelの内容をさらします.

1.目的


 いつものように,目的と,実験方法を引用します.

The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed. Ch.9
<引用>

 この章の目的:この章の目的は,結果管理【Management By Results】(Ch.2)での損失の論理を示すことにある.
漏斗があれば誰でもこの実験を行うことが出来る.
 この実験に必要な材料は,大体家庭のキッチンにあるものである.

 【中略】

</引用>

 つまり,この実験では,バラツキがある場合に,固定した目標や目標を追いかけた方がいいのかどうかを確かめます.

2.実験方法



<引用>

ルール1
 漏斗を目標に向ける.そのまま目標に対し固定する。
 玉を50回ほど漏斗を通して落下させる.おのおのの玉が落ちたところにマークをつける.
 ルール1の結果には,がっかりする.我々の期待より大きなラフな円を描いている.
 【中略】

 【訳注:ルール1は,つまり,漏斗を固定して何もしないということです.】

ルール2
 玉を落とすたびに,最後の落下点に対し埋め合わせるように,漏斗を移動させる.
(例:落下点が目標に対し北東に30cmずれて落ちた場合,漏斗を南西に30cm移動する.)
 結果には,がっかりする.ルール1より悪い.
 【中略】

 【訳注:ルール2は,前の目標位置-前の結果位置=次の漏斗の位置です.】

ルール3
 落胆,我々は新しいルールに関し考察した.玉を落とすたびに補正するが,目標を
補正に使う.最後の落下点を補正するために、目標の反対側に漏斗を移動する.
 ルール3のやり方は,以下の通り:
 1.漏斗を目標の上にセットする.
 2.最後の目標に対する落下点を補正するように,漏斗を動かす.
 (Dr. Gipsie Ranneyの貢献を得た)

 この結果は,今までよりひどい.
 【中略】

 【訳注:ルール3は,固定目標位置-前の結果位置=次の漏斗の位置です.】

ルール4
 (最初の落下後),最後の落下点に対し,正の位置に漏斗をセットする.
 (i.e., 最後の玉が落ちた場所がそこである.)
 ますます落胆.結局天の川のような軌跡だ.
 【中略】

 【訳注:ルール4は,前の結果位置=次の漏斗の位置です.】

 ルール4は,1924年コロラド大学のWilliam Pietenpol教授によって下記のように
規定された.その時,彼の学生のひとりとして,私は数学と物理学修士【履修に】
努力していた.
 酔っ払いの男;どちらが北か東か南か西かわからない;家に帰りたがっていた.
 彼は数歩歩く,よろめく.彼が正しいと思っている方へ,どちらが北か東か南か西かわからない;彼は数歩歩く,よろめく.そしてこの調子で彼はハンディキャップを背負ったまま行動する.彼の試みが増えるとともに,家への距離を縮めるチャンスは少なくなる.
この結論は,1898年Lord Rayleighによって予測された.

</引用>

 上では,漏斗と玉(マーブルとか・ビーズとか)を使用して実験していますが,ここではRというソフトを使用して,シミュレーションして見ます.使用したプログラムは,後の方に記載しておきます.

3.実験結果



 ルール1


Fig. 3-1-1 Rule 1


Fig. 3-1-2 Rule 1 close
座標を拡大したもの


Fig. 3-1-3 Rule 1 Control Chart Y axis

ルール2


Fig. 3-2-1 Rule 2


Fig. 3-2-2 Rule 2 close
 座標を拡大したもの 


Fig. 3-2-3 Rule 2 Control Chart Y axis

 ルール1よりもコントロール・リミットが広がっています.
 (こういう風に目標を補正することを「ハンティング」というそうです.)

ルール3


Fig. 3-3-1 Rule 3 first


Fig. 3-3-2 Rule 3 second


Fig. 3-3-3 Rule 3 Control Chart Y axis

 固定値を目標として補正しているので,波打っています.

ルール4


Fig. 3-4-1 Rule 4 first


Fig. 3-4-2 Rule 4 second


Fig. 3-4-3 Rule 4 Control Chart Y axis

 激しいランダムウォークです.

4.考察・結論


  • ルール2:バラツキがある(目標に対してバラツキが大きい場合)目標を単純に補正した場合は,何もしない場合より大きくなる.(ハンティング:デミングさんは「干渉」と呼んでいます.)
  • ルール3:目標を1つに固定して(幅を持たせず),補正すると,波打つ.
  • ルール4:前の結果が積み重なる(履歴効果等)場合,ランダムウォークになる.


 つまり,下記のような結論になります.
  • 目標を立てる場合は,結果のバラツキを小さくする方法をまず実行し,バラツキを押さえ,バラツキの幅より大きな目標の幅を取るか,補正値を工夫する.
  • むやみやたらに目標値を固定しない.その時の状況を読み取り,目標の幅を考える.
  • 大きな目標を達成するためには,前の結果がうまく積み重なるように考える.もし,その目標が環境悪化等の負の結果の減少である場合,積み重ねが減少するように考える.


 結果管理や目標管理という方法論自体,上記のことを考えていないことが多いように思えます.また,「結果のバラツキを減らす方法」が出来なかったり(例えば,売上予測の精度を向上するためには,GDP(=需要予測)の予測精度の向上が必要だと思います.),履歴効果(教育・訓練等)を無視し,投資ではなくコストとして処理するため,大きな目標(長期的目標)を達成できない事が多々あるような気がします.

5.参考文献


5-1.参考文献


  • Dening, W. Edwards, The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed., 1994, ISBN:0-262-54116-5
  • R Development Core Team, R: A language and environment for statistical computing.(Ver. 2.1.1), 2005, ISBN:3-900051-07-0
  • 船尾暢男, The R Tips データ解析環境Rの基本技・グラフィック活用集, 2005, ISBN:4-86167-039-X
  • 田口玄一 他, 製造段階の品質工学, 1989, ISBN:4-542-51102-2
  • 宮川雅巳, 品質を獲得する技術 タグチメソッドがもたらしたもの, 2000, ISBN:4-8171-0399-6


5-2.使用プログラム


 下記に,(汚いですが)プログラムをさらします.
#
#Funnel demonstrates(experiments) program
#
#r		:漏斗の口の大きさ	funnel channel width
#j		:玉を落とす回数		Drop times of beads
#xlim		:描画エリアのX軸の大きさ(中心を0としているので
#		マイナス~プラスの値が必要,例:xlim=c(-10,10)
#		X-axis width of plot area. X-axis Center is 0. 
#		Require to set number from minus to plus.
#		e.g. xlim=c(-10,10) 
#		
#ylim		:描画エリアのy軸の大きさ(中心を0としているので
#		マイナス~プラスの値が必要,例:ylim=c(-10,10)
#		Y-axis width of plot area. Y-axis Center is 0. 
#		Require to set number from minus to plus.
#		e.g. ylim=c(-10,10) 
#		

funnel<-function(x,y,r){
funneldata<-rep(0,2)
rud<-runif(1,min=0,max=r)
sita<-runif(1,min=0,max=pi*2)
funneldata[1]<-(rud*cos(sita))+x
funneldata[2]<-(rud*sin(sita))+y
return(funneldata) } funnelexp1<-function(r=1,j=100,xlim=c(-10,10),ylim=c(-10,10)){
funneldata<-matrix(1:(j*2),ncol=2)
title= for(i in 1:j){ funneldata[i,]<-funnel(x=0,y=0,r)
} par(ask=TRUE) plot(x=funneldata[,1],y=funneldata[,2],xlim,ylim,type="p", main="Funnel demonstrate with Rule.1",xlab="",ylab="") qcc(funneldata[,1],type="xbar.one", title="Funnel demonstrate with Rule.1 x axis") qcc(funneldata[,2],type="xbar.one", title="Funnel demonstrate with Rule.1 y axis") } funnelexp2<-function(r=1,j=100,xlim=c(-10,10),ylim=c(-10,10)){
x<-rep(0,(j+1))
y<-rep(0,(j+1))
i<-0
funneldata<-matrix(1:((j+1)*2),ncol=2)
funneldata[1,]<-funnel(x=0,y=0,r)
for(i in 2:(j+1)){ x[i]<-x[(i-1)]-funneldata[(i-1),1]
y[i]<-y[(i-1)]-funneldata[(i-1),2]
funneldata[i,]<-funnel(x=x[i],y=y[i],r)
} par(ask=TRUE) plot(x=funneldata[1:j,1],y=funneldata[1:j,2],xlim,ylim,type="p", main="Funnel demonstrate with Rule.2",xlab="",ylab="") qcc(funneldata[1:j,1],type="xbar.one", title="Funnel demonstrate with Rule.2 x axis") qcc(funneldata[1:j,2],type="xbar.one", title="Funnel demonstrate with Rule.2 y axis") } funnelexp3<-function(r=1,j=100,xlim=c(-10,10),ylim=c(-10,10)){
funneldata<-matrix(1:(j*2),ncol=2)
funneldata[1,]<-funnel(x=0,y=0,r)
for(i in 2:(j)){ funneldata[i,]<-funnel(x=0-funneldata[(i-1),1],
y=0-funneldata[(i-1),2],r) } par(ask=TRUE) plot(x=funneldata[,1],y=funneldata[,2],xlim,ylim,type="p", main="Funnel demonstrate with Rule.3",xlab="",ylab="") qcc(funneldata[,1],type="xbar.one", title="Funnel demonstrate with Rule.3 x axis") qcc(funneldata[,2],type="xbar.one", title="Funnel demonstrate with Rule.3 y axis") } funnelexp4<-function(r=1,j=100,xlim=c(-10,10),ylim=c(-10,10)){
funneldata<-matrix(1:(j*2),ncol=2)
funneldata[1,]<-funnel(x=0,y=0,r)
for(i in 2:j){ funneldata[i,]<-funnel(x=funneldata[(i-1),1],
y=funneldata[(i-1),2],r) } par(ask=TRUE) plot(x=funneldata[,1],y=funneldata[,2],xlim,ylim,type="p", main="Funnel demonstrate with Rule.4",xlab="",ylab="") qcc(funneldata[,1],type="xbar.one", title="Funnel demonstrate with Rule.4 x axis") qcc(funneldata[,2],type="xbar.one", title="Funnel demonstrate with Rule.4 y axis") } funnelexp1() funnelexp2() funnelexp3() funnelexp4()


Common cause and Special cause 共通原因と特殊原因

2005-10-30 19:47:05 | システムについて
The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.の
8章 Shewhart and Control Chartsの内容をさらします.

 実は,この章には目的が書かれていません.シューハート博士と,
デミング博士の邂逅よりこの章が始まっています.

【】内訳注

1.シューハート博士とデミング博士


<引用>

 私が1925年,シカゴにあるウエスタン・エレクトリック・カンパニーに行った
時には,そこにいた人々は,ニューヨーク・ウエストストリート463にあるベル
研究所にいたシューハート博士の事を話していた.
(これは,ウエスタン・エレクトリックのホーソン工場で,この時約46,000人
が雇用されており,キャパシティは48,000であった.彼らの1/4は検査員で
あった.)
 人々の話では,シューハート博士が何をやったのかは人々は理解していなかっ
たが,彼が偉大な男で,人々の問題について働いていた【事を話していた】.
 ウエスタン・エレクトリック・カンパニーの目的は単一で,電話機会社であり,
購買する製品は,すべてそれに依存していた.彼らは,「二つの電話は瓜二つ」
という広告をしていた.
 彼らは誠実で,同一性に向けた最高の努力をしているが,しかし同一性は,
大体いつでも物事を悪くするものだ.彼らは十分にスマートに実現化するため
の助けを必要としていた.
 問題へ道を探り当てたのはシューハート博士だ.彼は,ウエスタン・エレクト
リックの人が【何事かを】行う事による特殊原因【special cause】に起因する
要らないバラツキと,通常の時の,彼らが観察したときには最多ではないケース
である事もある共通原因【common cause】によるバラツキに気づいた.プロセス
の改善は,もっと生産性を向上させ続けられる.これらはは安定している
システムに干渉し,物事を悪化させる.シューハート博士は,科学とマネージ
メントの世界に新しい見通し与えた.
 1927年にシューハート博士に出会えた事は,私にとっていい運命であり,それ
以来,ニューヨークにあるベル研究所で多くの時間を過ごした.私は,毎夕を
HobokenよりLackawanna鉄道で1時間のところにある,彼のマウンテン・レイクの
家で過ごした.

後略

</引用>

 ここからは,私のまとめです.

2.共通原因と特殊原因


 共通原因(Common cause)と特殊原因(Special cause)は,デミングさんが
名づけた名前で,教科書等では,共通原因は「偶然原因・偶発原因」,特殊原因
は,「異常原因」と呼ばれています.
 ちなみに,シューハートさんは,共通原因の事を,"Chance cause",特殊原因
の事を"Assignable cause"と言っていたそうです.
 ここではデミングさんに従って,共通原因と特殊原因でいきます.
 デミングさんは,共通原因と特殊原因という名は,教育上の配慮だけであり,
特に他意は無いそうです.

 共通原因とは,現在の工程で通常にオペレーションしたときにも発生する
バラツキで,特殊要因とは,工程の異常(工作機械の故障であるとか,冶具の
故障であるとか)があった場合に発生するバラツキです.
 そして,管理図(コントロール・チャート)は,工程状態が共通原因による
バラツキ=工程が安定状態なのか,特殊要因によるバラツキ=異常工程なのかを
判断する事が出来ます.

 ・共通原因の場合:
  ・管理図のコントロール・リミット線の内側にに各観測点が収まっている.
  ・上記点に上昇・下降等の癖がない,または,連続した点が,中心線の上
   または下に固まっていない.(これを連が無いとか言います)
 ・特殊要因の場合:
  ・管理図のコントロール・リミット線の外側に各観測点がはみ出ている.
   (まあ,1点ぐらいなら見逃してあげましょう)
  ・上記点に上昇・下降等の癖がある,または,連続した点が,中心線の上
   または下に固まっている.(これを連があるとか言います)

 上記のような管理図の見方の詳細は,JISのハンドブック「品質管理」や
品質管理の教科書に書いてありますので,興味のある方はそちらを参照して
ください.

Red beads control chart
Fig. 管理図のサンプル「赤ビーズ実験の管理図」
 
 そして,デミングさんは,この2つの原因を取り違えて対処すると,ますます
バラツキがひどくなるので,注意せよといっています.
 その2つの原因の取り違えとは,下記のようなものです.
 
 ・ミステーク1(第1種のエラー)
  本当は,共通原因なのに,特殊原因と間違えて反応してしまう.
 ・ミステーク2(第2種のエラー)
  本当は,特殊原因なのに,共通原因と間違えて反応してしまう.

3.2つの間違いからの教訓



 ・ミステーク1とミステーク2の両方のエラーは同時にゼロには出来ない.
 ・ミステーク1とミステーク2の両方のエラーはそれぞれ時々発生してしまう.
 ・特殊原因によるバラツキが発生した場合は,対策し,再発防止を行う事.
  (つまり,共通原因によるバラツキだけににしてしまう事を目的として
  います.)

4.安定したシステム:予測可能



 ・上記のように,共通原因のバラツキだけにしてしまえると,
  品質・コスト・納期の予測か可能になります.
 ・これらの予測が可能になると,ジャスト・イン・タイムを
  導入できます.(上記が出来ないと導入できません)
 ・TOC(制約理論)の導入を行う前に,上記のような予測可能
  状態まで持っていけると,導入が楽になるはずです.
  (バッファサイズをそんなに大きくする必要がなく,もし
  バッファ内に不良品があった場合でも,バッファサイズが
  小さいため,対処がしやすくなると思います.)
  
 ちなみに,デミングさんはJIT(ジャスト・イン・タイム)には言及してまし
たが,さすがにTOC(制約理論)までは言及していませんでした.
 最近では,品質管理とTOCの導入についての本「二大博士から経営を学ぶ」も
あります.

5.間違った信号(コントロール・リミットを越えること)
  はこう作られる



 ・有意水準をコントール・リミットにすること.
  (3σのリミットよりリミットを越えることが多くなる)
 ・根性リミット(つまり計算せずに,勘や義務でリミットを決める事)
  を採用する事.(すみません・・・私よくやってました・・・orz)
 ・公差や規準をリミットにすること.
  デミングさん曰く,公差とコントロールリミットの間には,何の
  論理的なつながりも無いそうです.(The New Economics P178)

6.次のステップ


 
 工程が共通原因だけになった時は,下記の項目の改善を行います.
 
 1.バラツキを小さくする.
 2.平均値を最適値に持っていく.
 3.その両方を行う.
 
 ここで,The New Economics P225を見よとの指示があります.
 その,P225ページは,「田口メソッドの損失関数」の説明です.

 今度,時間があるときに,田口メソッドの説明をしたいと思いますので
気長に待っていてください.
 (私は,田口メソッドの損失関数や,公差の計算及び,直行表実験のS/N比
 の概念はなんとなく判ったのですが,実際の計算がまだあまり理解できて
 いません.やっぱり,実験計画法からきちんとやった方がいいんでしょうか?)

おまけ・デミングさんが田口メソッドをいつ知ったか


 実は,1960年に東京で田口さんが論文を読んだそうです.

 実はネットに,このような公演録がありました.(PDFファイルです)

“Does anybody give a hoot about profit?” Deming Speaks to European Executives


 その中で,田口メソッドの損失関数に関する内容を引用します.

“Does anybody give a hoot about profit?” Deming Speaks to European Executives P7. 
<引用>

Delegate :
How does Taguchi's philosophy fit into your own theory?

Dr. Deming :
It's all I've been talking about!
Taguchi used the loss function(Figure 5【訳注:下に私が作図したのを掲げます】)
The loss function will be a parabola at the bottom. It can be steeper on one
side and not so steep on the other side. But the two halves will be parabolic at the bottom. So we don't need to precise optimization. Don't worry.
we'll never have it. If we had it, we'd not know it. If we move away from optimization, right or left,
a little bit, then the loss is imperceptible, Too tiny to measure. We only need to come close to optimization.

But when we fail to do that, we lose --- everybody loses. That was Taguchi's
theorem. I was there, in September 1960, when he read his paper in Tokyo.
This is exactly what I've been talking about. "How does Taguchi's philosophy fit into your own theory?"
It's same Thing!

</引用>
Taguchi's loss function
Fig. Taguchi's loss function

 という事で「田口さんの哲学とデミングさんの論理とはどの様にフィットするのですか?」という質問をすると,「同じ事だ!」と返されますので,御注意ください.

 ちなみにこの公演録,かなり面白いです.この公演録を読んだおかげで,経済学(特に競争)とデミング哲学の間には,何があるのかに興味を持ってしまいました.
 (もしかしたら,茨の道かも・・・)

参考文献


  • Dening, W. Edwards,Out of the crisis,1986,ISBN:0-262-54115-7
  • Dening, W. Edwards,The New Economics: for Industry, government, education -2nd ed.,1994,ISBN:0-262-54116-5
  • THE SWISS DEMING INSTITUTE, “Does anybody give a hoot about profit?” Deming Speaks to European Executives,2000,http://www.deming.ch/downloads/deming_speech_en.pdf
  • 鐵建治,新版 品質管理のための統計的方法入門,2000,ISBN:4-8171-0342-6
  • 荒木孝治 他,フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門,2005,ISBN:4-8171-9148-1
  • Lepore, Domenico et al.,三本木亮 訳,二大博士から経営を学ぶ,2005,ISBN:4-8201-1799-8
  • 田口玄一 他,開発・設計段階の品質工学,1988,ISBN:4-542-51101-4
  • 田口玄一 他,製造段階の品質工学,1988,ISBN:4-542-51102-2
  • 田口玄一 他,コンピュータによる情報設計の技術開発 <シミュレーションとMTシステム>,2004,ISBN:4-542-51115-4
  • 田口玄一,タグチメソッド わが発想法,1998,ISBN:4-7667-8193-7


11/3 typoハケーン arabolic=>parabolic 修正しました.

ルーレット・ホイールをぶちのめす

2005-10-16 19:02:30 | システムについて
 ジュラン博士の自伝「Architect of Quality」の中の1節をさらします.

 うーん,アル・カポネですか・・・. ジュランさんの自伝でこんな話が出てくるとは思いもしませんでした.
 が,良い子はこうゆう悪いトコに行ったり,ましてや,その場でヒストグラムやら管理図やらを書き出してはいけませんw.(何処連れてかれるか判りませんからw.)あくまで頭の中で(違.

Beating the roulette Whieel
ルーレット・ホイールをぶちのめす

【】内訳注

<引用>

 工場の前の道を挟んだ先のビルたちは,罪がなさそうな姿をしているが,後ろに入り口があるギャンブル・ハウスだ.
 もちろん,これらは違法だが,しかし,彼らはすでにCicero市政の側の境界に位置していて,Ciceroの政治機構はカポネ・ギャングによって乗っ取られている.
 これらのギャンブル・ハウスは,Ciceroの「El」駅より100ヤード以内に位置にあり,シカゴの郊外にいる彼らの顧客をひきつけている.
 私は,これらの中の1つのデン【ギャンブルハウス】に一度出かけ,引き付けられた,特にルーレットにだ.
 私はゲームと【ルーレットの】ホイール【に書かれている】番号の順序が示されているパンフレットを手に入れた.
 
-中略-

 私はギャンブルが好きだ.(ギャンブル好きの優性遺伝子をもらったような気がする)
 ルーレット遊びはムズムズする.その様なオッズに対してもギャンブルには将来が無いようにに見えた.【訳注:勝てそうに無いを見たのでしょう】そう私は,そこから記録を始めた.
 初めに,私はホイール自身に偏りがあるかどうかを学習した---傾いていないか等.データはNoと語った.ボールはランダム【な番号】のスロットに転がり落ちていた.私は疑問を持った,もしディーラ(元締め)が一定の癖を盛っていたら.それを発見するまで待った.今回はそれが当った.
 各プレイのたびに,そのディーラは,バラつかない動作を行っていた.ボールが止まる時には,彼は賭けに負けたチップをすべて取り除き,賭けに勝ったものに払い戻した.最後に彼はボールを(回る)ホイールのスロットから取り出し,水平に投げ入れ,ボールは止まるまで数回ほど回る.ここでのチャレンジは,私が次の回に止まるスロット【番号】を予測する事が出来るかどうかにある.もしホイールが一定のスピードで周り,ディーラーが前回と同じ時間のそれほど変わらない行動であれば,それは可能だと見た.
 私は再度,そこから記録を始め,安定性を捜し求めた.成功した回では,ボールがその前の回で落ちたスロット【番号】より,時計回りで約15番目のスロットにしばしば止まった.これはハウス側の平均5%【獲得】を,私がぶちのめすことが出来るのに十分な情報だ.
 私は,いくつかの10セントチップの山を運んでいき,賭けを始めた.前回ボールが止まった場所から時計回りで15スロット先の隣り合う5スロットに置いた.その結果は美味しかった.3回中の毎回,私の賭けた番号の一つに当った.この意味は,3回とも私は10チップを失ったが,35チップを得たという事だ.私はすぐに,賭け金が各番号ハーフダラー【50セント】になるまであげ続けた.勝ち金が100ドルを超えるまでになったため,私が「システム」を持っているぞ,と誰かに叫ばれ,つるし上げられるほどの注意を引くのに十分だった.確かに持っていた.
 それは,すぐに終わった.ハウスの規則によりディーラーが交替し,そのディーラーはいらいらするほど,不安定なのだ.私の勝ちはほとんど無くなり,換金した.私にとっては100ドルはいい結果であった.その時はボナンザで,週に約45ドルを使った.
 私は,二度と【ギャンブル・ハウスに】戻らなかった.友達と私の勝利を分かち合っていた時,私は,ホーソンの上の人たちが,横柄なギャンブル・ハウスの存在に眉をひそめている事を学習した.その様な行為は,人事ファイルに記録され,出世状況をスローダウンさせる理由を提供するのだ.それでも,カポネ・ギャングに彼らの商売で叩きのめした事は,うぬぼれた喜びを私に与えてくれた.

</引用>

参考文献


・Juran, M. Joseph,Architect of Quality,2004,0-07-142610-8

DQNなコンサルタント

2005-10-15 17:59:58 | システムについて
 Out of crisisの周辺を調べていて発見した,成果主義の話をさらします.

管理者の位置づけ(国際競争力の再生 P77参照):


 アメリカでは,なんと,自分の部下の評価をするのがマネージャの仕事・・・が伝統的な考え方だったそうです.
 なぜなら,日本では,社内の人が出世して,課長やら部長のポジションに着くわけですから,部下の仕事(つまり,昔の自分の仕事)をある程度理解していますよね.従って,評価だけではなく,その仕事の知識も持っているわけです.
 つまり,変な自意識(昔のオレの仕事を改善するということは,オレの昔の仕事のやり方が間違っていたということじゃないか.プライドが・・・)や,変な思い込み(部下は追い詰めないと働かない・改善しない)が無いと,改善にも口を出す(もちろん,その口出しが効果的な時も,悪影響を及ぼす時もあります)わけですが,アメリカのマネージャは,前職をやめてMBA等を取得する.その後,前職と関係ない会社や,仕事の管理職になる.という経路(つまり,今の部下の仕事を経験していない)が普通だったそうです.
 つまり,マネージャは,自分の目標を達成するためには,仕事を改善が必要であるとの認識を持ってはいますが,改善しようにも現在の仕事に対する知識が何も無いため,手も足も出ない.勢い,「お前ら自分で改善しろ.出来なければ評価を下げるぞ!!」という指示を部下に出す・・・.部下を評価すれば,勝手に仕事が改善される.これを当たり前に思ってしまうのではないかと.
 (過去形で書いているのは,現在のアメリカの状況はどうだか分からないためです.どうも,デミングセミナーやTOC,タグチメソッド等の改善手法の普及やら,当のデミングさんたちの考え方が広がってきたため,考え方の変化による行動の変化があるようです.)

・DQNなコンサルタント:


 一寸凄ましい話なので,当該場所を引用します.

<引用>

 日本人には信じられないような話だが,米国には最下位の10%の人々を毎年クビにする政策をとることを勧めるコンサルタントがいる.

 - 国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ- - P79
</引用>

 へぇー・へぇー・へぇー.
 さすがに日本人にこんな事言っていた人はいないでしょうが,(もしいたら豆腐の角に頭をぶつけるべきです.)
 あのアメリカで,こんな事言っていたDQN(しかもコンサル・・・ orz )がいるとは・・・.
 (ちなみに,絶対評価ではなく,相対評価です.上の話は.(まあ" % "と言った時には解っていると思いますが.)
 その他,アメリカでは,年単位(下手すると半期単位)で人事評価(日本みたいに成績が悪いと一寸給料が下がるなんてものじゃないそうです.成績が下がれば,クビになります.)されるので,サラリーマン(やパートさん)が落ち着かないとか,成果主義丸出し(というか,役員以外はみなフリーター状態)のアメリカは,日本人が考えるより激しい場所のようです.
 
と,思っていたら,GEの「ニュートロン」ジャック・ウエルチがやってたんですね・・・ orz
従業員を成績上位20%(A),中間層70%(B),下位10%(C)で区切り,給与や,「クビ」に利用しているそうです.
(何でも正規分布でつかw 大数の法則って,そんなにすぐ成り立つんかい・・・orz
 てか,何でそんなに短期で評価して,首切りしたいのかその理由がよう解らんです.首切りが趣味なの?)

 上記の評価はこんな感じのイメージです.



「ジャック・ウエルチ わが経営」で,こんな事かいてます.

<引用>

 下位10パーセントを切るのは冷酷だとか,残酷だとか言う声もある.そんなことはない.まったく逆だ.
成長や昇進の見込みのない人間を残しておく事こそ,残酷であり,「間違った親切」ではないか.
結論を先延ばしにしていると,本人の仕事の選択の幅が限られ,子供を大学に行かせたり,巨額のローンを払う時期になって,会社にはいられないということになる.これほど残酷な事はない.
 活性化カーブ【引用者注:正規分布(ベルカーブ)のことを活性化カーブと呼んでいます.】による評価が残酷だとする考えは,間違った理論にもとづいている.間違った親切を実践している文化から生まれている.
なぜ大学卒業後は,成績の評価をやめなければならないのか.

 -ジャック・ウエルチ わが経営(上)- P255
</引用>

 思いっきり,「ニュートロン」・ジャック理論が間違っていると思いますが.まず,下位10%の人が,本当にいつも下位10%にいるかどうかはわからないのでは?
 というか,評価が悪い人間がなぜ発生するのかわかっているのでしょうか?
 (大体,「ニュートロン」・ジャック自体,平均値ではなく,バラツキを減らす事について述べているのに*1,何で人間のバラツキは減らさんの?)

おまけに,学校の評価の話が出てますが,どうなんでしょう.大体,学校の成績が良かったので,お金が稼げた,仕事が出来た!!という話は周りでは聞きませんが.

すざましい話,デミングさんは,自分の大学院の学生全員に成績Aをつけたそうです.*2 何故かは解ると思いますが.

*1-ジャック・ウエルチ わが経営(下)- P180で平均値とバラツキについて講釈してますけど,6σって・・・orz
*2-国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ- - P95参照

参考文献


・吉田耕作,国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ-,2000,ISBN:4-8171-0338-8
・Welch, F. John, Jr. et. al,宮本喜一 訳,ジャック・ウェルチ わが経営(上),2001,ISBN:4-532-163400-1
・Welch, F. John, Jr. et. al,宮本喜一 訳,ジャック・ウェルチ わが経営(下),2001,ISBN:4-532-163401-X


The Red Beads Part2

2005-10-10 19:47:27 | システムについて
下記は,The Red Beads の続きです.

2.意欲ある作業者アンの考え



 このような状況の下で,人は何を考えるのでしょうか?
 以下にデミングさんが直接意見(クレーム)を受けた内容を訳します.

<引用>

意欲ある作業者アンの考え

意欲ある作業者,名前はアン.この実験の終了直後に,この怒りについての考察を私に意見した.どうぞその考察をレポートしてください.と私は彼女にお願いした.どうぞ私に話した内容を書いてください.彼女は書いた.これは,彼女からの手紙だ.

赤ビーズの意欲ある作業者をしてるとき,私は統計の理論以上のものを学びました.
システムは,私をゴールに向かわせられない事は知っていました.しかし,私は出来る.とまだ感じていたのです.願っていました.
私は,真剣に挑戦しました.私は,責任を感じていました.:ほかの人は,私にかかっている.私の理論と感情がぶつかり合い,そしてフラストレーションを感じていました.理論はこういいます.成功するすべは無い.感情はこういいます.トライすれば出来る.
【この実験の】終了後,私は自分の仕事の状況を考えました.どのくらいの頻度で,人々は自分たちが統制できないこのような状況で,ベストを尽くすことを望むのか?
そして,人々はベストを尽くすのです.その後,彼らが動かし,ケアし,望んでいるものに,何がおきるのか? 少数は,止めるでしょう.抜けるでしょう.
幸運にも,貢献するための機会と方法だけが必要な人々が大勢います.

</引用>

 私なんか,悲しみがこみ上げてきます.だめだと解っていても,「もしかして」という気持ちが人を動かしてしまう.
 詐欺師に騙されないようにとの注意勧告を受けても,つい騙されてしまうのと同じ心理が垣間見れます.
 でも,同じ騙されるのでも,このような管理の騙し(赤ビーズが絶対出てくるのに,「赤ビーズをなくせば給料UP,でも出てくればクビ」というのは,あたりが無いくじのようなものです)は,詐欺のような犯罪行為ではないので,逆に管理自体も正しいと看做されてしまうのではないのでしょうか.でも,いいたくなりませんか?
 「やっぱり詐欺でしょ?」って.

3.実験のまとめ



 上記実験のまとめを見てみましょう.デミングさんは,この章を14のポイントにまとめていますが,ここでは,それを4つのポイント(システムの理解・バラツキの知識・知識の論理・心理学)から私がまとめてみました.


  1. システム:  
    • 手段の固定化  
    • 成果主義(目標による管理)   
    • 監督者は,ただスローガン・説教をしているだけ.(業務への無参加) (実は,監督者と,作業者・検査員とでは,評価システムが違います.監督者は,スローガンや,ZD(無欠点) の日等を作業者に伝えるのが仕事ですから,赤ビーズの数量に評価が直接紐付けされていません.)  
    • 見習い時は,質問等は可能ですが,実作業に入ると,会話も禁止されますから,コミュニケーション自体がなされません.

      
  2. バラツキ:
       
    • 赤ビーズは,人によりばらついているのではなく,その掬った回によりばらついている.(偶然原因)    
    • 人が掬うという作業で,赤ビーズの数量はコントロールできない. (実は,この作業は,単なるサンプリング検査です.検査だけでは,品質を良く出来ません.)


  3. 知識の論理:
       
    • 改善活動がない.(手段の固定化のため)    
    • 一回掬うと,一回評価されてしまうので,これが偶然原因かどうか,確認できない. (回数を重ねてわかる頃には,既に人が入れ替わっているので,気づく事は無いでしょう.)    
    • もし,他人より少しは成績がいい人がいても,なぜ成績がいいか解らないので,改善のヒントにならない.    
    • 他人より少しは成績がいい人だからといって,次の回やその次の回等,将来も成績がいいとは限らない.


     
  4. 心理学:
       
    • 出来ないと頭でわかっていても,ついつい作業をがんばってしまうので,改善までに気持ちが回らない.    
    • 監督者は,目標が達成できないと,スローガン等を押し付ける力を増してしまう. (手段が固定化されているのであれば,なおさらです.)    
    • これが本当の業務なら,多分,喧嘩を売りたくなるか,逃避活動が増えるでしょう(笑).


  5. その他:
       
    • なぜ自社とサプライヤーとが協力しなければならないか,この実験でわかると思います. (値段だけで選んだサプライヤーであれば,赤ビーズの混入率を下げるための選別や,品質への投資をすると思いますか? 値段が合わないと,取引がなくなるわけですから.)



4.赤ビーズのシミュレーション



 Fig.7-2,3に,Rという統計ソフトで,赤ビーズのシミュレーションをしてみました.
横軸は,赤ビーズの数量,縦軸は度数のヒストグラムです.

 Fig.7-2のグラフは,一掬い50個のビーズ(1パドル分)を50回掬った時の赤ビーズの混入個数です.
 何か,ランダムすぎて異常要因でもありそうな雰囲気です.
 Fig.7-3は,一掬い50個のビーズ(1パドル分)を10,000掬った時のグラフです.
 さすがに正規分布していそうです.
(なぜ検査員が20個以上カウント出来なくてもOKかも解ります.)


 Fig7-2 Red Beads n=50 times





 Fig7-3 Red Beads n=10,000 times



という事で,R用のプログラムを下にさらします.(汚くてすみません)

 一掬い50個*50回のシミュレーション
#Red Beads Sample small w/Histgram

product<-rep(0,50) 
x<-numeric(50)
for (i in 1:50){ x<-rbinom(50,size=1,prob=0.2)
product[i]<-sum(x)
} hist(product,xlim=c(0,25),main="Result of Red Beads production n=50") mtext(paste("Mean=",mean(product)," 3sd=",3*sd(product)))


 800(赤ビーズ数)/4,000(赤+白=全体のビーズ数)=20% なので,20%の確率で裏が出る,ひん曲がったコインのコイン投げでビーズの代わりにしています.
(基本的には2項分布なので,50個×20%=10個が平均(最頻値とかいうやつ)ですが,3σとしては±8.5個位あります.
もちろん,裾野は,とても低い確率ですが,50個全部赤ビーズでもおかしくは無いので,時々23個とかも出てきます.)
 式としては,下記のようになります.



5.参考文献


  • Dening, W. Edwards Out of the crisis 1986 ISBN:0-262-54115-7
  • Dening, W. Edwards The New Economics: for Industry, government,education -2nd ed. 1994 ISBN:0-262-54116-5
  • 鐵建治 新版 品質管理のための統計的方法入門 2000 ISBN:4-8171-0342-6
  • 吉田耕作 国際競争力の再生 -Joy of Workから始まるTQMのすすめ- 2000 ISBN:4-8171-0338-8
  • R Development Core Team R: A language and environment for statistical computing.(Ver. 2.1.1) 2005 ISBN:3-900051-07-0
  • 荒木孝治 他 フリーソフトウェアRによる 統計的品質管理入門 2005 ISBN:4-8171-9148-1
  • 間瀬茂 他 工学のための データサイエンス入門 -フリーな統計環境Rを用いたデータ解析- 2004 ISBN:4-901683-12-8
  • 岡田昌史 他 The R Book データ解析環境Rの活用事例集 2004 ISBN:4-901676-97-0
  • 船尾暢男 The R Tips データ解析環境Rの基本技・グラフィック活用集 2005 ISBN:4-86167-039-X