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大人のブログのアーカイブ(抄)

サカタ類の酒場放浪記

2012-02-11 | 日記
「吉田類の酒場放浪記」という番組がありますね。そこで(どこで?)「サカタ類の酒場放浪記」と題して、今回もヨタ話をお届けします。酒場、酒場で思い出すのは……ある海辺の盛り場でぶらりと立ち寄った、立派な構えのお寿司屋さん。どこか居酒屋のように気楽に入れる雰囲気があったので、「よしよし地魚をつまみに土地のお酒でのどを湿らせて、最後はにぎりを……」と妄想をふくらませカウンターに座ったら、奥から「いらっしゃい! ちょっとだけ待ってくださいね」と威勢よく出てきたのは、マクドナルドのTシャツを着た長髪のお兄さん。まったく気取らないところが素敵。だけど、どうしても赤と黄色のMのロゴが気になって、うまく酔えませんでした。いいネタをそろえているし、おいしい地酒も出してくれるのに、まだまだ自分が未熟でした。東日本大震災のとき被災している可能性が高いエリアなので、その後お兄さんがどうしているか気がかりです。

もっとも、マクドナルドのお兄さんが握るふしぎな寿司を口にしたのは、いまから20年ほど昔のこと。ちょうど同じころ、中央線の沿線にある居酒屋で、めずらしいお酒が冷蔵庫にあるのを目ざとく見つけて「それください」とお願いしたら、バイトのかわいいお姉さんが愛想よく「こちらでよろしいですか?」と冷蔵庫から出してきて、枡に入った冷酒用のグラスに注いでくれます。薄く色づいた液体は、言葉では形容できない枯れた美しさ。薄緑と薄茶と薄黄が混ざったような、見たことのない色合い。「いい色ですね」とお姉さんに話しかけると、「たくさん注いでおきますね~」とグラスから枡にたっぷり盛りこぼしてくれます。いろいろな期待が胸の内に高まるのを押し殺し、グラスに口をつけると、日本酒とは思えない香り高さ。木の香り、魚の香り、区別つかない多様な風味が口いっぱいに広がります。感銘を受けながら飲んでいると、お姉さんが勢いよく翔け寄ってきて「すみません! それお酒じゃなくてダシ汁でした」と、料理の味付けに使うお店のダシ汁を一升瓶で冷やしてたこと、詫びながら話してくれました。いえいえ、いけないのは未熟な自分のほうです。

あれから、ほぼ20年。バイトのお姉さんも、いいお母さんになっている頃でしょうか。中央線の沿線も様変わりして、あの店があるかどうか確かめようにも場所がうまく思い出せません。だいたい、あのへんなんですけどね……。そこから3つぐらい離れた駅の界隈は、思わず放浪したくなる酒場がどこまでも軒を連ねる夢の盛り場です。近くに住んでた頃はよく飲み歩いたけど、先日ひさびさに通りかかったら、どこもかしこも居抜きで違う店に変わってて、生まれて初めてリバースした店も、生まれて初めて意識なくした店も消えてなくなってます。リバースした事実も、意識なくした事実もすっかり消えてなくなったみたいで淋しい。どこにも居場所がなくなって放浪してる設定で酒場をさまよい歩いてみるのも、安上がりな夜の楽しみ方です。そのうち適当な店にひっかかって、すぐ酔っ払っちゃうんですけどね~! いっさい飲まずに酒場放浪するようになったら本物、まだまだ自分など未熟もいいところです。

壁に貼ってある酒場のメニューも、席に置いてある酒場のメニューも同じようなこと書いてあるものながら、どっちかっていうと壁のメニュー眺めて注文するほうが性に合ってます。初めて壁のメニューみて頼んだのは……メンチカツとしか思えません。詳しい経緯は覚えてないものの、中1のとき父親が駅前の小さな酒場につれてってくれて、(いまにして思えば不自然な流れだったから父と母がつまらないケンカでもしてたんじゃないかと思いますが)好きなものを食べていいことになりました。それでメンチを頼んだらキツネ色の大きな丸いのが皿に2コ乗ってきて、うれしかったです。中1だからお酒は飲まず、ごはんをどんぶりで食べて帰ったと思うけど、カウンター数席とテーブルが2つぐらいの小さな店で、いちばん放浪感があったのは人生であの酒場がピークだったかもしれません。テレビばかり見ていて、隣で父が何を食べて何を飲んだか記憶に一切ない。足の届かないスツールでカウンターに座ったことは覚えています。こんなこと書くつもりじゃなかったけど、書いてしまったものは仕方ないから「サカタ類の酒場放浪記」……ぽちっと更新します。


ぼくがみた夢

2012-01-02 | 日記
2012年1月2日の朝であります。初夢の内容に多少は期待していたのですが、ありのまま……今、みてた夢を話すと……「眠ってる夢みたよ」……ということになります。われながら覇気のない夢で、こんなことでいいのかと思わなくもありませんが、カッコつけても仕方ないですもんね。

日頃どんな夢みてるか振り返ろうと、つぶやきを「夢」で検索してみたら出てくるわ出てくるわ。

最初の夢は2010年、5月23日(日)

「ファイトォォォ!」「いっぱあぁぁつ!」と叫びながら、汗で手が滑って崖から落ちていく夢をみたよ。

いやな夢ですね。次の夢は5月25日(火)……

スタジオの開かずのドアってこんなところにつながってたんだという夢です。どこにつながっていたのかはもう忘れました。

会社の地下スタジオが居酒屋につながってるとか、そんな夢だったんじゃないかと。6月11日(金)の夢は、いくらか健康的で……

ストレッチしてる夢をみたよ。

夢だけじゃなくて、起きてからもストレッチするといいんですけどね。6月22日(火)は……

売れるアイデアを求める。そのアプローチはマズイやり方で、ともかく面白いアイデアをたくさん集めて、売れる方策は後から考えたほうが結局は効率がいい。創作意欲のないところに企画は生まれない、という夢を見て夜中に目が覚めた。

意味わかりません。うなされたんじゃないでしょうか。しばらく空いて、7月18日(日)……

能楽の舞かなにか習い覚えて、人前で披露するようになったある日、代役かなにかに引っ張り出されたものの、稽古を1週間ほどサボっていて舞をすっかり忘れてる夢みたよ。

なに寝言いってるんでしょうか。どうも夢でピンチに陥ることが多いようです。7月20日(火)も……

昨夜みた夢は・・・仕事帰りに「1軒行く?」って人を誘って、やんわり断られ、それなら帰るかと思ったところまで覚えているが寝落ちして、気がつくと荷物がない。手帳も、財布も、カードも、携帯も何もない。どうしようかな・・・油断したな・・・と弱ったところで目が覚めて、いやー助かったよ!

大切なものを失う夢は、よくみるような気がします。翌日、7月21日(水)は打って変わって……

会う女性がみんなアヒル口してる悪夢にうなされて、半端な時間に目覚めた。デザイナーさん全員、オペレーターさん、ライターさんやスタイリストさん、バイトさん、同じ階の編集さん、外国人モデル、フォトクリ部の人、受付嬢までアヒル口。お願いだから普通にしててくれる? 寝直すから。

「アヒル口=ゾンビ」のイメージですね。



まだまだあります。2010年8月1日(日)……

1日に3つ撮影を組むと、いろいろ厄介だという夢をみた。

2010年8月3日(火)……

昨日みた夢でおぼえているのは、「氷の上はすべるから気をつけて」というところ。

2010年8月10日(火)……

昨夜見た夢は、やっとできた手作りのシャトルに編集部のみんなを乗せて宇宙に行き、フクロウを一羽つれて帰りました。

2010年8月20日(金)……

桜の夢を見ていたよ、機内でうたた寝。

2010年8月24日(火)……

白木屋のとなりに、まいど屋(だったかな?)という焼き鳥の店が・・・。しかし、まいど屋の取り皿には白木屋と書いてあり、どちらも経営はモンテローザだったという夢をみた。

2010年10月13日(水)……

メガマーケットで清算前のアイス食べながらレジの列に並んだら、通報されて手帳と財布とカード類を押収された。いくら頼んでも返してくれず、証拠品として押収される夢をきのう見たよ。気の毒に思った店員さんが、鍋でもてなしてくれたけど、そのあいだに現金もカード類もすっかり使われて、手帳だけ翌朝ポイッと返される夢をきのう見たよ。

いい夢みてないのか、みても忘れてるのか。……続きまして、昨年の初夢の発表です!



2011年1月2日(日)にみた初夢は……

喫茶フロリダ大喜利でうけるまで風呂に入って帰れま10という初夢みたよ。

テレビの見すぎですね。番組いくつか混ざってるし。さて、2月6日(日)は……

よく夢に出てくるのはこの道だよ。

どの道のことか、まったく思い出せません。2月11日(金)は……

パリの安ホテルで寝てたら掃除の人が入ってきて、急いでチェックアウトする夢で目が覚めると雪だったよ。

2月12日(土)の夢は切なかった……

「夏休みだから明日から潜水艦でサンマ漁にでるの」って言われる夢をみてショックで目が覚めたよ。

2月14日(月)……

テニスコートでレスリングの練習して帰ろうとしたらトレイルランニング用のシューズがない! しかしレスリング仲間を疑うのは気まずいから、靴下だけ履いて帰ろうかと思ったら、そとは霙まじりの雨で困ったな・・・という夢をみたことを、今、唐突に思い出したよ。

レスリングもトレランもやってないです。2月17日(木)の夢は変態っぽくて……

緋色のバスタオルにくるまって湖畔を歩く夢をみたよ。

2月19日(土)は二度寝して二度夢みてます……

神社のバーで飲む夢をみたよ。

SLで近鉄を走る夢をみたよ。奈良のへん。

3月10日(木)東日本大震災の前日にみた夢は……

廃校でオオカミいっぱい飼ってる夢みたよ。

3月21日(月)震災後はじめての夢は……

プリンスが来日して柔道の大会に出場する夢をみたよ。団体戦の先鋒で小さいのに強くて快進撃。

3月22日(火)……

こどもだけは何としても守るって思ってる夢を見たよ。

3月23日(水)……

ひなびた温泉宿の仲居さんがモンゴル人で朝ごはんが乳製品という夢をみたよ。

しばらく空いて、7月18日(月)はダブルです……

モデルは普通ひとりで来るけど取り巻きが大勢ついていて集合時間に遅れ、スタッフに先に行ってセッティングしてもらって迎えに出たら携帯で連絡つかず、大声を出して見つけると足場が崩れて取り巻きごと転落、救急車で運ばれていく夢をみたよ。

しらみ駆除のかき氷が1杯500円のところ2杯め400円3杯め300円で、顔をケガして病院に運ばれたモデルにおごったら大勢の取り巻きが自分らのかき氷も要求、かき氷製造マシンがオーバーヒートする夢をみたよ。



7月23日(土)……

昨夜は猫を抱いて東京タワーを階段で上る夢みたよ。

8月7日(日)……

バカリズムがポリリズムのメロディーで「くりかえすこのバカリズム」って歌って踊る夢をみたよ。バカリズム、バカループ、ループ、ループ・・・・・・♪

8月27日(土)……

これから金曜日はゴリラ迎雨の日とする法案が衆参両院でスピード採決される夢をみて苦しくて目が覚めたよ。

10月1日(土)……

そういえば昨日ぼくは混雑した電車に乗っていて、お婆さんにさりげなく席をゆずる夢をみたよ。(ドヤ顔)

10月2日(日)……

八重歯が薄くはがれて、ふつうの脱皮なのか、それとも剥落なのか考える夢をみたよ。

10月18日(火)……

ゆうべはカツ丼ばかり20杯、いろんな店で取材する夢をみたよ。最後は自分の食欲に驚いて目が覚めたよ。久々にドキドキしたね。

11月30日(水)……

わずかに日の光が差し込む窓辺の金箔の夢みてたら猫が足に飛びついて驚いたよ。

12月20日(火)……

チェック項目を増やすの減らすの、伸ばすの縮めるのって話してる夢みたよ。

12月28日(水)……

りんご数えてる夢みたよ。

12月29日(木)……

昨夜は紙切れのように薄っぺらくなってヒラヒラどこまでも飛んでゆく夢をみておりました。昔テレビでみたタイムボカンの時間移動のような感じ。

12月31日(土)……

ゆうべは究極のたまごかけごはんが普通だった夢みたよ。


以上、「ぼくがみた夢」でした。

チュー

2011-11-20 | 日記
大人ですから、ひとりになりたくて知らない店のカウンターで焼き鳥を食べることもあります。先月……先々月だったかな……初めての店で焼き鳥を隠れ蓑に気配を殺していると、隣に女が座った。ウーロン茶ひとつ頼んだきり、携帯でキャハキャハ誰かと話してる。焼き鳥は? 姉さん焼き鳥は注文しないのか? という目で隣の女を見つめると、こう言っちゃ悪いけど頭の悪そうな化粧をしている。はちきれそうな胸をしている。ときどき英語がまじる。発音はいいが内容がない。携帯ごしにチューしはじめた。焼き鳥が穢れる。酒も飲まず焼き鳥も食わず、焼き場で渋いオヤジが炭火の加減を見つつ女の傍若無人ぶりを見て見ぬふりしてるのにも気づかず、さっきから何回チューチュー音を立てているだろう。チューチューされるiPhoneが気の毒。

やがて電話の相手が現われて、女の向こう側に腰を下ろす。薄々そうじゃないかと思ってたけど英語をしゃべる外国人男性で、Tシャツなんか着てるからアメリカ人だろう。白ワインをグラスで頼んで、焼き鳥は頼まない。女は夕方お腹がすいて、ステーキを400g焼いて食べたという。日本の肉は信用できないから、放射能に汚染されていないオーストラリアの肉を焼いたと証言している。魚も汚染されているから食べない、焼き鳥も心配だって渋いオヤジの目の前で述べる。アメリカ人は「大丈夫?」とオヤジにウインクして、正肉としいたけを頼んだ。それからチューチューはじまった。笑いながらチューチューお互いの口を吸っている。もういいから早く帰って、やることやって寝なさい。

ところがチューチューするばかりで、いっこうにやることやりに帰らない。まさか、やらないつもり? なわけないし、なんかギャラリーとして前戯を手伝わされているようで気持ち悪いから、お会計して外に出た。えらいめにあったよ。普通なら他人の顔なんて、その場かぎりで忘れちゃう。ところが昨日、駅のエスカレーターで自分の前に立っているのが、どこかで見覚えのあるカップルで、まさかと思ったらチューチューしはじめた。また、あなたたちなの?

ぼくの一段上に男が立ち、その上の段に女が立つと、高さがちょうどチューしやすいゾーンに入る。見たくないけど見上げていたら、チューしながら薄目を開けた女と目が合っちゃった。マスカラの量すごい。アイライン黒い。エジプトの壁画か。舌を使うな公衆の面前で。大江戸線のエスカレーターまた長いこと。今度は完全に顔を覚えてしまった。あのバカップル、毎日チューチュー口を吸い合って都内をめぐっているのかな? 意外と長く交際が続いているのは、もしや人前でチューチューする点において利害関係が一致しているのか。ということは、これからもどこかで遭遇するかも。キモイよ、キモすぎるよ。

モンゴル人の仲居さん

2011-09-18 | 日記
秋の山道を歩いていたら日が暮れてきた。瘤取り爺さんの昔話みたいに木の洞で休めたらと思う間もなく人家の灯が見えたので、近づいていくと鄙びた旅館が一軒。あまり人の気配がしない。泊めてもらえるかどうか聞いてみようと中に入ると、奥がバタバタする。外国語で何か声をかけあっているみたいだが、きっと訛りが強くてそう聞こえるだけで、建物が純和風だから日本人が出てくるだろうと思ったら全然違った。

「うちは温泉宿ですが、食事は予約がないとモンゴルの料理だけ」と仲居さんの格好したモンゴル人が、意外に上手な日本語で話す。社長は日本人だけど今日は不在らしい。大勢のモンゴル人が住み込みで働いてるから泊まりはOKだけど、和食は予約の分の材料しか買わないから、従業員と同じモンゴルの食事なら作ってあげる。

他に人家もない山奥だし、むしろモンゴル料理に好奇心が刺激されるから泊めてもらう。部屋は青々とした畳敷きで、想像したより清潔感がある。浴衣に何だか見慣れない文字がプリントされているのは、きっとモンゴル語なんだろう。お風呂の場所を聞いたから、さっそく汗を流しにいく。乳白色のお湯で、馬の乳が入っていると温泉成分表示に書いてある。何か変だけど我慢して入る。それなりに気持ちいい。

「湯上りにどうぞ」とモンゴル人の仲居さんが、馬の乳を発酵させた酒を食事と一緒に出してくれる。「おかわりはいくらでもありますから」と言い残して、どこかに下がってしまう。手桶ぐらいの大きな器に入って微発泡してる、白く濁った馬乳酒をきっと全部は飲みきれないだろう。さあ食べようと思ったところで目が覚めたから、どんな料理だったか残念ながらわからない。

逆さまのおじさん

2011-09-11 | 日記
田舎の体育館でボクシングの興行があって、まぐれでタイトルを獲ってしまったとき、表彰まであと何試合もあるから体育館を抜け出してアイスでも食べようと思ったんだけど店がない。暗くて心細い道を歩いて歩いて、とうとう駅前に出たのはいいが、田舎のことでコンビニもなければ喫茶店も居酒屋も何もなくて、電車も2時間から3時間に1本あるかどうか。

そんな場所でも床屋さんがある。自動販売機があるのを見かけてアイスの類いか、そうでなければ冷たい飲み物ぐらい買えると思って近寄ると、明るい家族計画に使う何かの箱しかなくて心底がっかり。どうしてこんな田舎でボクシングの興行やるんだろう。罰ゲームで出てタイトル獲れるなんて。

空腹のまま街灯もない暗い夜道を後戻り。向こうから興行を終えたボクシング団体の人たちが、後片付けを終えたのか三々五々、さっきの駅をめざして歩いてくる。表彰すっぽかしたことになり心苦しい。荷物はまだ体育館に置きっぱなしだろうか。完全にすれ違い、人通りが絶えた田舎の道が急に淋しくなった。

悲鳴のような不快な音で軋む自転車に追い抜かれ、荷台に足を縛られた逆さまのおじさんが笑顔で引き摺られていく。暗くてわからないけど死んでる。後ろから婦警さんが1人、なぜかスクーターで徐行してきて前方の不審者に追いつく。人を引き摺ってるのが見えてますよ。そんな声の掛け方をして暗がりで殺されるのを察した。犯人が軋む自転車で引き返してくる。脇道の物陰に隠れ、怖すぎると思ったところで目が覚めた。朝方だった。

世田谷のタクシー

2011-04-27 | 日記
そんなかたちでニッポンを応援するの、あまり感心しないな・・・というのは東日本大震災後、復興資金を公的に捻出するために交通違反の取り締まりが強化されて、狙い撃ちに遭ってるタクシー業界が戦々恐々としているらしい。世田谷で乗ったタクシーの運転手さんは静岡の出身で、2年前に東京でタクシー乗務を始めた頃は規制緩和でタクシー増えすぎてタイミング最悪・・・といった身の上話は聞き流しても、強引な罰金の徴収の話は聞き捨てならなかったので耳を傾けることにした。

なぜか一般車両じゃなくてタクシーが目の仇にされている、と運転手さんは憤った。左折車線で乗車したお客さんが「まっすぐ!」って言ったら断れないのを熟知していて、曲がり角で違反を切ろうと警察が手ぐすね引いて待っている。世田谷公園はタクシーの休憩場所なのに、警察のタクシーいじめがひどいから休憩場所を変えなくちゃいけない。会社からも、そのへんで休憩すると危ないから面倒でも営業所にいちど戻って休むことが公式に推奨されている。

どんなにひどいかというとですね、トイレにいってる間に駐禁切られちゃうんですよ。時間を計っていてね、タバコ吸う人なんかトイレついでに一服するじゃないですか。それで5分超えると容赦なく切符切られますからね。そこまでしなくてもいいと思うけど、東北の復興のためにお金がいるから、タクシーから強引に罰金を徴収しようとしているんだって会社も考えて警戒してますよ。営業所で休めなんて、普通じゃ言わないことを指示するのは緊急事態だからです。どうしてタクシー会社が東京電力の事故の犠牲にならなくちゃいけないんですか?

「ひとつになってがんばろう」って言われても納得できないですよ。こっちは少しのことで大きなペナルティ課せられて、あっちは大きな事故を起こしておいて年収が何千万とか、トップは何億とかでしょ? 事故を起こした会社の社員がボーナスを世間より多く受け取って、事故を起こしていない私達ばかり罰金を取られなきゃいけない理由が、全然わかりませんよ。・・・あまり道を知らない運転手さんなので、ときどきコースの説明をしながら、目的地に着くまで大体こんなような話を聞いた。

エンゼル街の老婆

2011-04-11 | 日記
エンゼル街を知ってるかい? それは山手線の田町駅前にある、森永製菓の本社ビルお膝元の飲食店街さ。ある日ぼくは森永製菓が経営してる、やる気をあまり感じないベーカリー&カフェで本を読んでいた。桜庭一樹の『GOSICKs Ⅲ』・・・ふと、気がつくと目の前に足の不自由そうな老婆がいる。歩行器で体を支えた状態からテーブルに両手をついて、小刻みに震えながら隣の席に滑り込んだ。「今日はポイント5倍だって!」と、実の息子らしいサングラスの中年が、トレーに菓子パンを3つと、水か何か入った紙コップを乗せて席に運んでくる。「じゃあ、ラーメン食べたら戻ってくるから!」って言い残して、サングラスはどこかへ消えた。



残された老婆は藤色の上着に白いブラウス、辛子色のズボンに黒い靴で、髪の毛は真っ白だけど眉毛は黒くて太い。年齢は70代くらいだろうか? 1人で菓子パンを3つ食べるようには見えないけど、人は見かけによらないもの。放っておいて本の続きを読んでいると、隣で悲鳴が上がった。「アア~~!」どうやら水の入った紙コップをトレーの中で倒してしまったようで、震える両手で頭を抱えて困り果てている。「ごめんなさい、ごめんなさい。すみません、すみません。咄嗟にどうしたらいいかわからなくて、頭が真っ白になっちゃって」・・・あわてなくても、水はトレーの外にこぼれないから大丈夫。幸い、パンも皿に乗ってるから濡れない。「手が痺れるもんですからね、本当はお店になんか出てきちゃいけないんだけど、食べたくて」・・・誰にともなく大声で謝罪するから、気の毒になってくる。



そのとき、やや感動的な出来事は起こった。お婆さんをはさんだ向こう側の席で通販雑誌を読んでいた、グリーンのアイラインが印象的な丸顔の社会人一年生(あとの会話で上京したばかりと判明)が、「大丈夫ですか?」と声をかけたのだ。「すみません、すみません。足も不自由だから自分では何もできなくて、手が痺れるから水こぼしちゃって、息子がラーメン食べたら帰ってくるんですけど」・・・社会人一年生は老婆の話に耳を傾けて、「新しいトレーを持ってきます」と立ち上がり、パンが3つ乗った皿をテーブルに残してトレーを持ち去り、新しいトレーと新しい水を運んできた。「ありがとうございます、ありがとうございます」・・・老婆は仏様を拝むように、グリーンのアイラインが印象的な丸顔に手を合わせて、百万遍も祈祷を繰り返す。



老婆「耳がよく聞こえなくて、目もよく見えないんですけど、口だけはよく回るもんですから、お使い立てしてごめんなさい」グリーン「口が回るってことは頭も回るってことですから、口だけで十分ですよ。うちの祖母も足が不自由で耳が遠くて目もよく見えないけど、口だけは達者です」老婆「あなたのお婆さん、おいくつ?」・・・いつまでもサングラスが戻ってこないから、どんどん話が弾んでいく。満州から九州に引き上げてきたこと。九州の友達に誘われても足が不自由で行けないから、実家の金沢に九州の友達を招いて花見をすること。人生は一念発起、夢は努力すれば叶うから若いあなたは頑張らなくちゃいけないこと。最終的になぜか説教になったのも、グリーンのアイラインは両親が共働きで根っからのお婆ちゃん子みたいだから、お互いに相性ピッタリでよかった、よかった。

オレンジジュースの怪

2011-03-08 | 日記
オレンジジュースというのは、ごくありふれたものだけど、ふとした瞬間に奇怪な場所で目撃することがある。以前とある繁華街のスターバックスでコーヒーを飲んでいたら、オレンジジュースの注文を受けた店員さんが、客席に出てきて階段の下にある扉の鍵をあけた。「?」と思って見ていると、扉の奥にコンクリート打ちっ放しで直角三角形の空間があり、そこに透明のカップに入ったオレンジジュースが10杯ぐらい並んでいた。店員さんは、きびきびと1杯のオレンジジュースを取り出すと鍵を閉め、カウンターに戻って氷をカップに入れると、ランプの下で待っているお客さんにオレンジジュースを手渡した。階段の下の直角三角形のコンクリート打ちっ放しの空間は、どう見ても冷蔵庫ではなかったし、氷室になっているわけでもなくて、ただのデットスペースだった。いつからオレンジジュースがそこに置かれたか知らないが、常温で放置したものに氷を入れてお客さんに出しても大丈夫なものだろうか? 半日ぐらいなら大丈夫かな・・・・・・

そういうことって案外よくある。以前とある喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、オレンジジュースの注文を受けた店員さんが、和箪笥の引き出しから1リットルの紙パックに入ったオレンジジュースを取り出して、コップに注いで氷を入れてお客さんの席に運んだ。紙パックの封は最初から切られていたから、いまからでも冷蔵庫に入れておいたほうがいいんじゃないかと思ったけど、やっぱりオレンジジュースは和箪笥の引き出しに仕舞われた。あんなところにオレンジジュースが!? 冷蔵庫がないわけじゃなくて、昭和30年代から使ってるような懐かしのナショナル冷蔵庫がこれ見よがしに置いてあるのに、どうして入れないんだろう? 瓶入りのコーラとかを出して和箪笥に入れれば、封を開けたオレンジジュースの紙パックぐらいナショナル冷蔵庫に入りそうなのに、そうしなくても大丈夫なのは半日ぐらいかな・・・・・・

飲食店においてオレンジジュースというのは虐げられやすい品物なのかもしれない。ある夜カウンターで焼き鳥を食べていたら、テーブル席のお客さんがカクテルでも注文したのだろうか? 主人が脚立に乗って、天袋からオレンジジュースの紙パックを引っ張り出し、焼き場の脇で何やらグラスに注いだり混ぜたりしていた。大きなホシザキの業務用冷蔵庫があるのに、どうして天袋にオレンジジュースを? そこにはグレープフルーツジュースや烏龍茶の紙パックも並んでいるのを、酔眼といえども見逃さなかった。酒は大切に冷蔵しているようだが、ソフトドリンクは封を開けたまま天袋に置いてあるなんて、気づいてしまったからにはサワーやカクテルは頼まない。甘いお酒はもともと好きじゃないからいいけど、天袋に置いてあるソフトドリンクは開封されて何日ぐらい大丈夫なものだろうか? 次の日ぐらいまでかな・・・・・・

オレンジジュースの保管場所って、どうやら奥が深いらしい。いろいろな飲食店でどんな空間からオレンジジュースが出てくるか、これからも注目するともなく横目でチェックを入れたい。

神社のバー

2011-02-19 | 日記


神社のバーで飲む夢をみたよ。神棚に八百万の酒が並んで、その上に注連縄が張られているんだ。洋酒も結構あるよ。シングルモルトを頼むと、白い盃で出してくれる。ロックなどは白い陶磁のグラスで、水割りやソーダ割りには榊の葉のマドラーがついてくる。バーテンの権禰宜さんがカクテルを作るしぐさは御祓いのよう。笙や鉦の音が低く鳴っている。よく見ると注連縄の向きが逆で、そのことを客が指摘すると、権禰宜さんが「うちは出雲ですから」と答えて静かにグラスを拭く。巫女さんはアルバイトでフロアに配膳したり、灰皿を取り替えたり、おみくじを引かせたり、洗い物をしたり忙しそうだけど電車のある時間に早く上がる。巫女バーじゃないから客とじゃんけんゲームとかしないし、アニメ声でしゃべらないし、アヒル口でもない。ひとりで飲んでいると知り合いが千鳥足で入ってきて「一緒に飲もう」と肩をたたく。そのうち「親子丼のうまい店があるから行かないか?」と言い出し、あまり行きたくなかったけど腰を上げたところで目が覚めたよ。

トイレの水

2010-12-21 | 日記
あれは京都の八坂神社で、たしか小学校3年生か4年生のとき、ぼくは便意を催して公衆トイレにかけこんだ。和式だったと思う。用をすませて、水を流そうと思って見回すと金属のビーズを連ねたヒモ状のものが、頭上のタンクから下がっている。これを引けば、水が流れるのだろうと考えて、力いっぱい引いてみた。勢いよく水が流れ・・・・・・みるみるうちに便器からあふれそうになる。ぼくは飛びのいた。どうやら便器がつまっている。止まれ水よ、止まれ時よ!

時は止まらない。水も止まらない。便器からあふれた水は床をつたい、個室の中をたちまち水浸しにする。カギを開けるのに手間取って逃げ遅れたぼくは長ズボンの裾を濡らし、気持ち悪さに飛び上がって爪先立ちになったまま、途方に暮れてしまった。神さま、八坂神社の神さま! どうして我を見捨てたのですか? 個室のドアの下の隙間から、あふれた水が外に流れ出していく。やがて個室の中に陸地が再び現われ、ぼくはカギを開けて外に出た。トイレがその後どうなったか、30年も昔のことだし、子供だったので覚えていない。

それからというもの、今日にいたるまでトイレで水を流すときは必ず「逃走経路を確保してから」流すようにしていることを知っている人は誰もいない。誰にも教えられていないし、仲間がいるとも思えないけど、ぼくはこのやり方を変えるつもりは未来永劫、金輪際ない。おかげで2回、トイレで命拾いしている。配水管がつまって水があふれてくることが10年かそこらに1回ぐらいはあるものだから、水の用心は欠かせない。火の用心より大切じゃないかと個人的に思ってる。とくにカラオケボックスのトイレがあぶない。

泡で洗浄するタイプのトイレに初めて遭遇したときは、便器にモコモコ勝手に盛り上がる白い泡を見て、この泡がもし個室の中を満たしたら大変なことになる! 早く止めなければ! でも止め方がわからない! いざとなったら、逃走経路から自分だけでも逃げ出そう! といった思いが一度に脳内を駆け巡った。やがてモコモコとした泡が穴の奥に吸い込まれて消えていくのを見届けたときの安堵感は、何と書いていいかわからない・・・・・・というより、べつに書かなくていいんじゃないか?