バレエのお稽古仲間から「是非観て!」とのお奨めでお借りしたDVD。
「バヤデール」とは神殿の舞姫(字幕ではTemple Dancerとなっていました。)のこと。舞台は古代インド。神殿の舞姫ニキヤは、兵士のソロルと道ならぬ恋。しかしニキヤに横恋慕の大僧正はソロルへの腹いせに、藩主の美しい娘、ガムサッティとの結婚を命じます。ガムサッティは高慢な気質ながらもソロルを愛し、ソロルも美しいガムサッティに心惹かれた様子…。ソロルとガムサッティの婚約祝いの席で、ニキヤは踊るように促され、気持ちを押し殺して花篭を持ち踊ります。しかし、ニキヤの存在を快く思わないガムサッティの策略で毒蛇にかまれてニキヤは毒死してしまいます。(ここまで1幕)
絶望したソロルはアヘンに逃避。幻覚のなかでソロルはニキヤに会い、逢瀬を楽しみます。(「影の王国」ここまで2幕)
現実に引き戻されたソロルはガムサッティと神殿で結婚式を挙げることに。そこへニキヤの亡霊が現れ、神殿が崩れ落ちます。ソロルの魂はニキヤに導かれ、永遠の愛で結ばれるのでした。(ここまで3幕。)The End!
ニキヤと愛を誓っておきながら、美しくお金持ちの娘さんを紹介されたら心ときめいてしまい(身分制度が絡んでいるようですが)、ニキヤを裏切ったり…。ニキヤが死んでからは絶望してアヘンに走ったり…。何とも不甲斐ないソロル…

。(でも、バレエに出てくる王子、って、いつも何処となく不甲斐ないかんじがするのは私だけでしょうか。)
ストーリーはさておき、バレエは音楽を感じて踊りを魅せる&観るもの!(このあたり、歌舞伎に通じるところがあるような…。)英国ロイヤル・バレエ団に、客演のプリンシパルを加えたカンパニーの踊りは流石に素晴らしいです!
主演女優ともいうべき、タイトルロールを務めたのは、アルティナイ・アスィルムラートワ。この当時はキーロフ・バレエ団から客演。現在はワガノワ・バレエ学校の芸術監督をなさっているそうです。悲哀に満ちた表現力も抜群。なのに、存在感のある踊り方でもありました。愛しさあまって亡霊になってしまう…。そんな情熱的な愛が感じられました。まるで歌舞伎「道成寺」の清姫の世界ですね(笑)。
不甲斐ない、と陰口してしまいましたソロルですが、イレク・ムハメドの踊りには大感激

! 元ボリショイ・バレエ団、そして英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル。線が太い、それこそ存在感のある体躯。しかし、軽々としたジャンプや、いつまでも回り続けるピルエットには重力を感じません。ジャンプは、空中で一瞬、形をキープしているかのように見えます。本当に美しい線を描いてのジャンプです!
助演女優のポジションのガムサッティですが、見せ場も数多くあり、また踊り手のダーシー・バッセルの魅力・技術もあり、主演なみの活躍です。細く、長い手足、そして愛くるしい表情がとても魅力的で、ガムサッティの役どころをうまく表現し、ソロルが惹かれてしまうのが分かる、そして思わずガムサッティの肩を持ちたくなってしまいました。細いながら、キープ力に優れ、男性舞踊手に支えられなくても踊っていられるように感じられます。女性としての嫉妬が強いのですが、令嬢らしい気品や気高さが底にあることが分かる表現力、そして技術。個人的には、アスィルムラートワより、バッセルの踊り方のほうが好きです。
さぁそして日本が誇る、世界の熊川哲也氏! '89年に東洋人として始めて英国ロイヤル・バレエ団に入団。入団後数ヵ月後で同バレエ団最年少でソリストに昇進、といいますから、世界が認める才能、そして努力の人でございますね。役どころは特にストーリーには関わらない「ブロンズ・アイドル」。金色の仏像、といったところでしょうか。神殿の結婚式の冒頭に登場するのですが、格好は頭の先から足の先まで金色一色! さながら、「スター・ウォーズ」に出てくる
プロトコル・ドロイドのような拵え。筋繊維まで見えるかのような、体に密着したコスチュームは一体、どうなっているのでしょう…(しかも顔面まで)。その彼の踊りといったら…! 他を圧倒する身体能力ですね。本当に仏像が動きだしたような、「堅さ」のなかに強力なバネがあるような。まさに神がかり的なブロンズ・アイドルでした。これは一見に値しますね!
あぁ、まさに夢の世界! 衣裳も素敵、音楽も素敵、踊り手も素敵。DVDですからバリエーションを何度も繰り返し拝見しました。お借りしました知人殿、この場を借りて御礼申し上げます!