高杉晋作(奈良本辰也著)

2014-07-02 00:00:58 | 歴史
古い中公新書のシリーズに「維新前夜の群像」というのがあって、7人:8冊シリーズである。

高杉晋作
坂本龍馬
勝海舟
木戸孝允
大久保利通
西郷隆盛(上)
西郷隆盛(下)
岩倉具視

西郷だけ2冊というのは妥当な感じがするが、実はこの中で幕末の主役の中心だった長州藩というのは、意外に地味だ。実際には明治以降の日本を長州×薩摩という文脈で読むことは戦後のある時期に流行っていて、よく考えると現在の安倍首相も色濃く長州藩の脈略の中にいるのではないかと仮説を立ててみたのである。

takasugi


で、手頃のところにあった一冊を手に入れ読んでみたわけだ。まず高杉晋作。といっても、このシリーズを読破しようと思っているわけではない。一冊しかないし、入門書だし。

で、幕末から維新の状況を、経済的革新×経済的保守、政治的革新×政治的保守とわけると、水戸藩(経済的保守・政治的保守)、幕府(経済的革新・政治的保守)、薩摩(経済的革新・政治的革新)、長州(経済的革新・政治的保守)という脈略なのだろうか。

一冊だけ読んで評価するのは早計だが、高杉晋作は、ぐずぐずと自らの進退を決めかねているうちに、長州藩をとりまく激動の中で、消去法的に奇兵隊のボスになってしまったというような人生のように思える。

長州が強い影響を持つ戦前陸軍というのも、結構持久戦、消耗戦パターンになっていて「本土決戦論」だったし、薩摩的だった海軍の方は、決戦方式で沖縄戦ですべてを決しようと考えていたらしい。(そうはならなかったが)

たぶん、安倍総理も山県有朋のような方向が好みなのだろう。富国強兵方式。