なぜ立ち入り調査なのか
格安航空券を売りに鳴り物入りで航空業界に進出してきた企業の一つがスカイマークエアラインズだ。しかし、1996年設立当初は新しい航空関連企業の参入でエア・ドゥとともに世間の注目を浴びてきた。10年以上日本の空を飛び続けてきたスカイマークエアラインズに何が起きていたのかちょっとネットで調べてみた。
・2006年4月 整備不良が何件か発覚し、国土交通省の立ち入りを受ける
立ち入りなどの調査で
1.90日定期点検整備を4か月以上実施せず運航した
2.整備士が相次いで退職し、整備体制の不備が見つかる
これらにより、安全管理体制の不備があるとし業務改善勧告を受けた
・2007年4月 ボーイング767-300型機の高揚力装置に関連する定期点検を実施せず運航を続けた(未整備発覚後も運航を続けていた)
・2008年3月 機材に搭載されている気象レーダーが故障していることを承知したまま4便を就航させていた
・2010年3月9日 風邪で声がでない客室乗務員の交代を進言した機長に対し、社長自ら常務うできると判断し応じなかったうえに、当該機長の契約を解除した
・2010年3月12日 前原国土交通省大臣が運航中の機内(操縦室)で副操縦士と客室乗務員が記念撮影したことに対して国会で言語道断と述べた
特に、2006年と2008年の整備不良や定期点検の未実施が発覚したのは時期的に、毎年航空業界で実施される「航空局の安全点検」立ち入りで発覚したものと思われ、企業体質として安全性を軽視する実態があったことは間違いない事実である。
なぜこんなことが起きるか
航空業界で仕事をしていた者として嘘偽りなく書くが、航空運送事業そのものがなかなか「黒字体質」とはなりえない性質を持っている。
航空機の安全性はメーカーが指定する点検項目に従い、厳密に計画された周期で定期点検を実施しなければ安全を担保することができない。これは世界中の航空運送事業すべてについて同じである。
航空機の整備はいわゆる機械化ができない労働集約型の作業である。よって人件費を削減するためには少人数でやるか、海外の安い労働力で整備を受注している会社へ任せるかということになるが、そうであっても整備点検項目の実施時期、検査方法、修理方法の規定が異なるため、発注した整備会社に対する膨大な資料作成と検査要員を送る必要がある。
整備という分野だけでもどれだけ大変かということが少し垣間見えると思う。
さらに、航空機は燃料(ジェットエンジンの場合ケロシン)を使って飛行する。運航にあたって運航計画・乗員などの運航要員の配置・機材の配置、さらには飛行先での整備要員の確保と尽きることなくお金がかかるのだ。
ではなぜスカイマークエアラインズやエアドゥが「格安」なのか?
その答えは
・整備体制の一部を自社で持たず、ANAやJALに委託で対応してもらうなど外注でコスト削減
・機材を一つにし整備に必要な部品ストックをできるだけ減らす
(実はストックそのものも少ないためANAやJALからの購入もある)
・外国人パイロットを契約で雇い、安い労働コストに抑える
・旅行会社と提携し、定期便より臨時便(乗客確保が容易)で利益率を確保
・定期便については幹線以外の路線への参入を避け、利益率を確保
これらは目に見える形で「国土交通省」も認可してきた内容であるため表に出せる部分だが裏にいけばこれらの企業の労働者は労働組合への組織化もされておらず、記事にもあるように経営者の意のままに「辞めさせられる」恐怖統治の体質があることも事実である。
体質は変えられるか?
やるべき整備をやらなかったり、交換部品を交換せず運航させるような明らかに航空法違反の条項については「絶対守らせる必要がある」項目である。
利益が出るとかでないとか整備体制がないとか、そんな言い訳は通じないのである。
この部分ができないというのであれば即刻、認可停止すべき運航会社という認識で国土交通省は見ているはずである。
しかし、2006年から度重なって起きている事態の責任は重く、どのように立ち入り後対応を迫るのかが注目される。
もうひとつは、そうはいってもすぐに整備士を増やすこともできず、恐怖統治体質の上層部が意識改革をするなど「あり得ない」のである。
その意味で国土交通省は「安全確保」に向けて毅然とした対応で立ち入り検査と指導をしてもらいたい。
その他の航空会社は大丈夫か?
残念ながら明確には答えられない。内部事情を知るだけにANAであれJALであれ整備に関する事情は「重整備のほとんどは海外」で、「黒字体質になりえない」実情は同じなのだ。
かつて私のいた会社はその当時大きな墜落事故を起こしたことがきっかけで当時の航空局から「勧告」を受けその「解」として設立された航空機整備専門の会社だったのだ。
それほどセンセーショナルな事件によってまがいなりにも安全を守り続けてきたが、私が代謝した当時ごろから「偽装請負による下請け化」や「下請け会社への技術者派遣」を繰り返し、いまや下請け会社にその本業を乗っ取られようとしているくらいだ。
表向きに見えないだけであって、どの運航会社も厳しい「赤字体質」に喘ぎながら経営していることは明確で、同じようなことは起きないとは言えない。
その意味で、航空業界の再編はもうしばらくの間様々変遷することになると思うが、真に信頼される業界として返り咲くときを私は望みたい。
私の誇りは、24年間仕事をしたが、自分の整備したものが影響しての事故はなく、人の命を奪うようなことが起きなかったことにホッとしていると同時に、「安全・品質が第一」と胸を張って取締役と渡りあえた当時の整備士魂である。
今、現場で大変な思いをしている関係者にすでに離れてしまった私が偉そうに言えないが、航空業界のモラルと品位を取り戻し、このようなことが二度と起きないよう一丸となって取り組むようにお願いしたい。










