杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

EMへの疑問(12) ~ちゃんと検証しているの?(追補)~ (追記あり)

2009年12月25日 | EM
平成13年3月の四日市市議会3月定例会の中で質疑に登場した、三重県によるEM実証試験の結果が平成15年3月に公開されています。

三重県では,平成13年(2001年)8月2日から翌14年(2002年)8月29日までの約1年間、英虞湾内の神明干潟と片田養殖場でEM投入試験を行いました。
EM投入量は、神明干潟でEM活性液が106トン、EMセラミックス106㎏、その投入回数は各々2トン×53回、2㎏×53回にも及びます。
片田養殖漁場では、EM活性液が530トン、EMセラミックス240㎏、投入回数はEM活性液10トン×53回、EMセラミックス200㎏1回、10㎏4回というものです。
実験にかかった費用は、平成13年度138万9,640円、平成14年度397万6,000円、合計で536万5,640円にも及ぶかなり本格的な実証試験でした。
注目すべきは、この試験では実験地の選定、実験方法にあたり、比嘉照夫氏本人と「㈱EM研究機構」、「㈱イーエム総合ネット」とが共に検討を行った事、活性液の調整と投入・散布は「㈱EM研究機構」が担当したという事です。
その調査結果は下記で見る事ができます。

特定プロジェクト研究事業:「閉鎖性内湾漁場の環境改善対策調査研究事業」:研究報告書
(2013年6月25日追記:上記リンクが切れていますので、新たにこちら→(PDF)をリンクしておきます)

気になる検証結果ですが、神明干潟では、
    「1年間の短期間で化学的な指標の追跡により、EM活性液による干潟底泥の
    改善効果を判断することは難しいと考えられた。
    また、底生生物も前記した複雑な環境要因に左右されるものと考えられ、今回
    の結果でEM活性液による影響を判断することは難しいと考えられる。」
との結論となり、片田養殖漁場でも、
    「養殖漁場においても干潟と同様に現時点で、化学的な指標の追跡により、EM
    活性液による養殖漁場底泥の改善効果を判断することは難しいと考えられる。
    また、底生生物の調査結果についても同様と考えられる。」
となっており、最後に
    「今回の実証実験においても気象をはじめとしたさまざまな外的要因の影響により
    1年間の短期間のデータで現象の変化を正確に把握し評価することが困難であっ
    た。」
としています。
つまりEMによる環境改善効果はあったのかなかったのかと言えば
「よう分からん」
という事であり、ひいき目に見たとしても、
「あったとしてもEMの効果より外部環境の影響の方が遥かに大きい」
と言えるような結果でした。
逆の見方をすれば、たかだか2~3ヶ月で顕著な効果などは現れるべくもないとも言える訳です。

実際、中を詳しく見てみますと、実験が始まった年の平成13年9月10日に台風15号が上陸しており、また10月10日には集中豪雨に襲われ、その直後のデータではそれまでのとは顕著な違いが現れています。
特に目視の項目では、汚泥に埋まっていたカキ殻が、台風や集中豪雨後に露出が目立ったと報告されています(こちらのp.5の③)。
どこかで聞いた事ありますね。

さらにこちらの報告ではもっと興味深い考察が述べられています。
報告書p.61の〔まとめ〕を紹介します。
4 まとめ
海域底質中の細菌の群集構造について、PCR-DGGE 法を利用しバンドパターンから検討した。その結果、EM活性液中の細菌に相当するバンドが室内実験及び実証実験フィールド試料の底質から確認されなかった。このことから、添加したEM 活性液中の細菌は、優占種としてこれら両底質に定着していない可能性が高いと考えられる。

  (参考)PCR-DGGE法について
  微生物群集解析のための分子生物学的手法。土壌・底質など種々のサンプルから直接DNA を
  抽出し、これらをPCR(Polymerase Chain Reaction)により増幅後、濃度勾配のついた精密な電
  気泳動法(DGGE 法:変成ゲル濃度勾配電気泳動法)で細菌の種ごとに分離してバンドパターン
  として見ることができる。微生物を培養して調べるのではなく直接DNA を抽出して解析するので、
  培養不可能な微生物についても検出ができ、その存在を知ることができる。


  ちゃんと検証してみたら、こんな結果になったとさ!
(終わり) 


(2010年5月30日 追記)
引用した論文が非公開となり、リンク先がすべて not found となってしまいました。
それでも一応内容はお分かりになれるかと思いますが、どうしても詳しい内容が知りたい方はこちらに申し込めば手に入れる事が出来ます(但し有料)。
まあ、抄録を読んでいただくだけでも結構ですけどね。

(2013年6月25日 追記)
本文中に「閉鎖性内湾漁場の環境改善対策調査」の新たなリンクを追加しました。
ジャンル:
環境
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4 コメント

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Unknown (ハブハン)
2009-12-27 21:35:05
 こんにちは。

 一連のエントリ、大変勉強になりました。ありがとうございます。
 いや、これ、かなり決定的に見えますね(汗)

 自然を相手にすることの難しさと同時に、自分が信じるものを覆されたときに、それを受け入れることの難しさを感じました。
 何十年も取り組んでいることを否定される気持ちって、なんとなく分かるような気もします。もっとも、科学の分野に足を踏み入れた時点で、当然受け入れているべきリスクですけどね。

 EM菌は、有用であるにしても、ナニに適用出来るのかを基礎からきっちり検証しなおすべきですね。
考えさせられます (OSATO)
2009-12-27 23:59:53
いらっしゃいませ、ハブハンさん。こちらでは初めまして。

正直言いますと、実はこのネタは自分としてはもう2年前のものだったのですよ。
ただ当時僕も表ではBlogを持っていなかったため、今回ようやく公開の運びとなった訳です。
ただ、公開するに当たってはその後追加の聞き取りも行っていたのですが、「大人の事情」によりその部分はカットしました。その辺の事情はお察し下さるようお願いします。

> 何十年も取り組んでいることを否定される気持ちって、なんとなく分かるような気もします。

実際活動をしている人達は、本当に真面目に取り組んでいる訳です。ただその視点が、実は地道な部分こそが一番重要であるという事に気付かせない事がEMの問題点であると思っています。
だから今回の一連のエントリーでも、住民達の行動をすべて否定するのではなく、実際行っていた地道な河川清掃こそ本当に周囲に誇れる事であるという認識でいます。

>科学の分野に足を踏み入れた時点で、当然受け入れているべきリスクですけどね。

環境問題を考える時、これは純粋に科学の分野の問題だと思っています。
しかしこれが身近な問題として展開される時、それを扱う人すべてに科学的視点を持たせる事はまた無理な事です。
この辺の難しさが、実は行政側が悩んでいる部分でもある所なのですね。

この試験結果の後、比嘉さんの「効くまで使う」、「ジャブジャブ使う」発言がやたら目立つようになり、EM効果の宣伝はますますエスカレートしていったのです。
駄目出し、と、正答 (松井 萌)
2010-02-06 09:20:20
生命体の挙動を万人が納得する解釈は難しいのかもしれません。私は、EMなるものを相手にしないものです。勿論、相手にしないために、ざっとは見ましたが。EMとは別に、何らかの処理に際して、継続して資材を販売したがる輩は多く、生物処理に際しては雲霞の如く類例があります。
また、これは耕種農業の場においても同様です。困った風潮です。

このような風潮を絶つためには、正しくはない、とする見方も大切ですが、「答えはこっち」というようなものがあれば便利です。
「1+1=5は誤りだ」「1+1=9は誤りだ」と末長く議論をするより「1+1=2が正解だ」と広めた方が実効があります。

21世紀になって、新しい風潮があります。有機液肥です。ウエブ検索で簡単に判ります。今世紀になって爆発しています。その中身をみると「植物が有機物を直接吸収する」とあります。植物が光合成を経ないで有機炭素を獲得する考えです。「液状堆肥」というものもあります。男性用女性衣類、というような表現です。堆肥とは平地に堆積できる肥料だと思います。この液状堆肥には全国組織があり、そこには日本を代表する化学会社の関連企業が名を連ねます。即ち、「植物が有機物を直接吸収する」とする現象が魅力と思われます。植物が動物や材木を吸収する・食べてしまう・とは俄かに信じがたいことです。吸収される有機物は低分子量・水に溶ける・電荷を持たないという制約があるようです。即ち、固体ではなく液体のようです。

それで、著名な栽培方法の現状をみると、かなりのものが「液肥」「有機液肥」へスライドしています。固体の堆肥を標榜しているものは少ないようです。

長くなりました、21世紀は、本質が判ってきたのではないでしょうか。
「植物が吸収できる有機物=分子量が小さく、水に溶解し、電荷を持たない有機物」へ転換する処理のトレンドだと思います。
そして、20世紀の堆肥は完璧に間違っていたように感じます。

それで、EMに疑問があることは判りますが、正しくは、こちらではないか・・・という見方を追加されては如何でしょうか。
正解はないのです (OSATO)
2010-02-06 12:09:13
いらっしゃいませ、松井萌さん、初めまして。

まず初めにお断りしておきたいのですが、これまでのEMのエントリーについては「河川浄化活動」に限定して書いており、農業分野については敢えて取り上げてはおりません。
また、農業での利用についても私はすべて否定している訳ではありません。その事は「EMへの疑問(3)~EMはニセ科学か?~」で述べています。その点をぜひご理解下さい。↓
http://blog.goo.ne.jp/osato512/e/cc5370084f212711985474d25fa38005

その上でご意見を伺いますが、

>「答えはこっち」というようなものがあれば便利です。

というものがあれば確かに便利ではありますが、実際は相手が自然という事もあり、こちらではうまくいっても別な環境では失敗するというのが現状かと思われます。
結局、農業というものは試行錯誤の繰り返しであり、その中からやがてはその土地に適した農法が取捨選択されていくものであるという認識でおります。

松井さんは「有機液肥」というものに注目されているようですが、液肥であろうと従来型の堆肥であろうと植物の成長に関わる栄養素は同じもので、ただその効率の違いだけかと思われます。
微生物が乏しい環境においては確かに液肥は有効な手段となるでしょう。
しかし微生物相が豊富な所では、その液肥と同様の養分は微生物達が作ってくれます。そしてその豊かな微生物相を作るために「土作り」が行われ、それでも不足する栄養素については肥料で補うという訳です。

このように多様な農業形態がある中で、「正しくはこちら」というものは私自身の口から示す事は困難であり、ましてや農業のプロでもない私の立場では「正解はない」としか言えないという事をご理解下さい。

ただ、気になった点を少々。

>「植物が有機物を直接吸収する」とあります。植物が光合成を経ないで有機炭素を獲得する考えです。

という部分が意味不明です。
光合成とは二酸化炭素から炭水化物を合成する反応と理解しています。↓
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/photosyn.htm
また「有機炭素」というのは主に環境分野で使われる単語で、有機物に含まれる炭素全般の事をいいその数は数百種類あると言われています。↓
http://www.nies.go.jp/kanko/news/21/21-5/21-5-04.html
これが農業とどう結び付くのかが理解出来ませんでした。
また、

>植物が動物や材木を吸収する・食べてしまう・とは俄かに信じがたいことです。

というのは、その考えそのものに決定的な誤解があるのではと思われます。
動物や植物が朽ち果て、それが微生物に分解されて土の養分となり、それを植物が吸収するというのは太古の昔から当たり前に行われてきた自然の循環作用です。

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