アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

英霊は、今の日本の何に腹を立てるのか

2009年06月24日 | Weblog
 棟田博の小説、「サイパンから来た列車」をもとに、倉本聰さんが7年ぶりに脚本を書き下ろした。題名は、「歸國」(富良野演劇工場で、6月17日から7月5日まで上演)。小説は、昭和30年発表なので、サイパン島で玉砕した師団の兵士の幽霊が10年ぶりに東京へ帰ってきた話になっている。「歸國」では、60年ぶりに帰って来たという設定。

 英霊達は、8月15日の終戦記念日の深夜、東京駅のホームに1両の軍用列車で到着。東京の親類知人を訪ねて回る。発想が奇抜だが、ストーリーは、むしろ平板。

 倉本さんは「今の発展した日本を英霊たちが見たらどうだろう。安心するだろうか。僕はがっかりするのではないかという気がしてしようがなかった」「英霊の側の視点に立ったとき、今の日本の何に腹を立てるのか。それを探っていった」と…。

○ 金に狂い、倫理観を失った日本人
○ 近くにいてもメールで会話する日本人
○ 崩壊した家庭
○ 乱開発で喪失した故郷
○ 使えるもの、食べられるものが廃棄されているゴミ処理場
○ 病院の生命維持装置で生かされる人間

 これらの日本の現状を、英霊たちは歓迎し、感心し、安心して南の海へ帰るか?
 戦後60年間で変貌した日本人への批判…ともとれるが…私としては、批判ではなく、現状は現状として受け入れ、「これでいいのか?忘れているものはないのか?」と、再考、熟考を促しているととらえました。
 ありがたかったのは、英霊が出てきているにもかかわらず反戦を出さず、人物に焦点を当てていること。観ていて気楽でした。「靖国神社」も出てきますが、なんらの主張も入れずに現状を伝えていました。
 「反戦」は、敢えて強調する必要はないのです。なぜなら、日本人の全員が、「戦争反対」ですから。分かっているのに「反戦」を言われると、「ハイ、ゴメンナサイ」と謝るしかありません。それは、重くてめんどうくさい。父の日に何でこんな目に遭わされるんだって感じになりますよ。

 英霊達は、帰り際に、「自分たちの犠牲を犬死にしないでくれ」と…どうしたらいいでしょうか?この答えは、私の持論の十八番です。
 「日本人が、高い倫理観と高い学力を身につけること」です。

 私が、「歸國」から得た素晴らしい言葉があります。「貧幸(ひんこう)」です。広辞苑には載っていません。この言葉との邂逅は衝撃的です。「貧しい幸せ」「貧しくとも幸せ」「貧しいことが幸せ」…どのように捉えてもいいでしょう。

 「日本は豊かになったが、日本人は貧乏になった…」日本人も豊かにならなければ!そのためには、高い倫理観と高い学力を身につけなければなりません。
 「便利」とはどういうことか?「サボルこと」。つまり、便利を求めると人間は貧しくなっていく…。

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