2009年11月号(通巻450号):目次

《V時評》
ボランティアコーディネーション力検定が意味するもの
 社会関係の創出と協働の基盤づくりへ
 ・・・筒井のり子

《特集》
記録は、人の中にこそ
 生かし続けるための市民的アプローチ

《だから私はこれを買う・選りすぐりソーシャルビジネス商品》
ウガンダコーヒー
 Cafe de Terra Renaissance[カフェ・ド・テラ・ルネッサンス]
 ・・・北川真理子

《うぉろ君の気にな~る☆ゼミナ~ル》
草食系男子
 ・・・ラッキー植松&華房ひろ子

《語り下ろし市民活動》
武器になる文字とコトバを
 夜間中学運動40年を語る(1)
野雅夫さん(東京都荒川区立第九中学夜間学級卒、
         立教大学大学院文学研究科・特任教授)
 ・・・牧口明

《ゆき@》
北海道・当別町 “ごちゃまぜ福祉”のお茶の間で(*^^*)
 ・・・大熊由紀子(福祉と医療、現場と政策をつなぐ「えにし」ネット)

《この人に》
姫田忠義さん(民族文化映像研究所・所長)
 ・・・村岡正司

《ファンドレイジングが社会を変える》
日本社会のファンドレイジング5要素
 ・・・鵜尾雅隆(日本ファンドレイジング協会)

《コーディネートの現場から・現場は語る》
災害ボランティアセンターにおけるコーディネーション
 ~「派遣」と「活動紹介」の間で
 ・・・長谷部治(神戸市長田区社会福祉協議会・長田ボランティアセンター) 

《ぼいす&シャウト!大阪ボランティア協会・事務局スタッフの仕事場から》
自分たちの活動のウリって?
 ~NPOの会員集めを考えながら
 ・・・水谷綾(大阪ボランティア協会)

《リレーエッセイ 昼の月》
ロートル魂

《わたしのライブラリー》
大阪町人学の伝統-真なる自己の発見?それとも、ものずき?
 ・・・小笠原慶彰

《おしゃべりアゴラ》
Bookshelf Bar いんたあばる(大阪市北区)
 ・・・金治宏(大阪ボランティア協会)

《私の市民論》
NPOよ、市民与党たれ!
 ~NPOの4段階発展・私論
 ・・・長井美知夫(NPO法人 シニア自然大学校 会長
           大阪府高齢者大学校 理事長)

《市民活動で知っておきたい労務》
試用期間とは
 ・・・石田信隆

《パラボラ・NEWS》
レジ袋の有料化は、いまどうなっているのか?

《某覧提案》
 ・・・浅石ようじ

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2009年11月号(通巻450号):V時評

ボランティアコーディネーション力検定が意味するもの


 社会関係の創出と協働の基盤づくりへ

編集委員 筒井のり子

■連携ではなく“ぐるみ”?

 「“連携”とは少し違うんです。あえて言うなら“ぐるみ”かなあ。ちょっとニュアンスが違うかもしれないけれど、“連携”という言葉では軽すぎるように思うんです」。子ども達への福祉教育のあり方をテーマに卒業研究を進めている学生が、その論文題目の相談にやってきた。当初は、「学校と社会福祉協議会」、あるいは「学校とNPO」の“連携”について書こうと思っていたのだが、いろいろな実践事例を検証するうちに少しずつ視点が変わってきたという。
 本当に、子どもへの福祉教育を考えるなら、親の考え方も変える必要があるかもしれないし、地域の人たちの福祉意識や人権意識も気になる。学校が、ある1つの団体と連携して
単発の授業・イベントをするだけではなく、それを子どもたちの日常生活にどうつなげるのかが重要なのではないか。そのためには、より多くの人や組織間、より多様な場面の間のつながりを創っていくことが必要なのではないか…。
 こうした思いが、“地域ぐるみ”という表現になったようだ。“ぐるみ”という言葉に対しては、一人ひとりの意思や異論を考慮せず、集団として強引に動く…というイメージを感じる読者もいるかもしれないが、この学生の思いは別のところにある。つまりこの学生は、福祉教育の実践を、子ども、おとな、学校、地域の様々な団体、そして出来事の「関係性」という面的な広がりの中で捉え直していきたいというのである。

■道具にしない・手段化しない

 その少し前、文化庁事業の「文化ボランティアフォーラム」に参加する機会があった。“芸術と教育の連携”がテーマで、ここでも「学校とアーティスト」、あるいは「学校と博物館」の連携について、多様な角度から議論されていた。これらの連携によって生み出された、大変ユニークで刺激的な授業例もたくさん紹介される一方で、子どもがアーティストの道具になってしまう危険性や、「教育の外注化」「芸術の手段化」が起きてしまっているのではないかという、厳しい指摘もなされていた。
 “美術館と学校”といった単体で考えるのではなく、子どもたちを取り巻く人・モノ・出来事がどのように関係し合い、どのように相互に変化を与えあうのかという視点、すなわち「生態系」を意識して学習をデザインしていくことが重要であるという指摘は、先の福祉教育に関する学生の問題意識と見事に重なるものだった。
 「福祉」と「芸術」、一見まったく異なる分野だが、人育てやまちづくりから見るとき、そこには共通する何かが存在している。

■新たな「参加」と「関係性」を紡ぎ出す力

 このような中、この夏、日本で初めて「ボランティアコーディネーション力検定」なるものが誕生した。これは、特定非営利活動法人日本ボランティアコーディネーター協会が主催するもので、09年度はまず「3級検定」が実施された。
 その内容は本誌09年5月号の特集でも紹介したが、検定という仕組みだけに、公式テキスト作成にあたっては正確な記述をはかるため、これまでにはない厳密な作業が重ねられた。この作成プロセス自体が、ボランティアコーディネーションの質を高める上で意味があった。
 その第1回検定は8月に実施されたが、東京、大阪会場ともに定員を大幅に上回る申込みがあり、145人の合格者が誕生。今年は10月に第2回(東京)、第3回(大阪)、11月に福岡で第4回、そして12月に横浜、大阪で第5回の検定が実施され、来年度は実践力を問う「2級検定」の実施が予定されている。
 しかし、なぜ、今、この時代に「ボランティアコーディネーション力」(以下、VCo力)なのか。
 VCo力とは、「ボランティア活動を理解し意義を認め、その活動のプロセスで多様な人や組織が対等な関係でつながり、新たな力を生み出せるように調整することで、一人ひとりが市民社会づくりに参加することを可能にする力」のことである。
 先に見てきたように、今、福祉、教育、アート、環境、まちづくり、多文化共生などあらゆる分野で、物事を関係性の中で受け止め、多様な人々の参加と新たな関係性を紡ぎ出す力が、切実に求められている。人々を何かの道具にしたり手段化したりするのではなく、一人ひとりの存在の重さを理解し合い、つながり合うことの実践が必要とされているのである。
 増加する一方の虐待、孤独死、自殺などの背景にある癒し難い孤立感や閉塞感を思うと、こうした「新たな社会関係」(ソーシャルキャピタル)を創出していく力は、この時代にますます重要になっている。そうした関係性による総合力でしか、現代の多様で複雑化した課題は、解決できないからである。

■協働のための基盤づくり

 「コーディネーション」という言葉は、単に「つなぐ」または「調整」と訳されることが多いが、本来は、「調整する」と「対等にする」という二つの意味を持つ言葉だ。“市民社会づくり”の観点から、このコーディネーション機能を表すと、社会の中に「総合力や新たな解決力を生み出す働き」と、それぞれの間に「対等な関係をつくり出す働き」ということになる。
 今、市民、NPO、行政、企業間での「協働」推進が盛んに言われている。一方で、実際には関係者間の感覚や意識のズレが大きく、「協働」以前の問題が大きいとの声もよく聞く。そもそも同じ言葉を使っていながら、それぞれがイメージするものが違っていることもよくある。
 そこで、こうした協働作業の際のキーワードとなる「ボランティア」「市民参加」「コーディネーション」「協働」といった言葉が持つ意味や本質について、異なる団体やスタッフの間で、互いに共通するイメージをもっておれば、よりスムーズに、そしてより建設的に議論をスタートさせ、プログラム開発や事業展開ができるだろう。
 研修と試験がセットになっているVCo力検定には、テキスト講読や研修受講を通して、この「ボランティア」や「コーディネーション」についての知識やセンスを共有したい、とのねらいがある。
 ボランティアの応援を受ける人とボランティアといった、元来、対等な関係づくりがとても難しい人々の協働関係づくりを進めるために培われてきた視点や技術、知識の体系が応用できる範囲は多いはずだ。より多様な立場の人々が検定に参加することで、社会関係の創出と協働の基盤づくりが進むことを期待したい。
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2009年11月号(通巻450号):特集

《特集》記録は、人の中にこそ



■特集「こぼらばなし」 ウォロ編集委員・談

アジア図書館の取材が終わったのは3時ちょっと過ぎ。ということで、作業中のボランティアの方たちと一緒におしゃべりしながらコーヒーをご馳走になりました。著者名、出版社などの書誌情報をカードに書き込んでおられる姿を拝見。その細やかな作業の積み重ねが記録のリレーにつながっているのだなぁ。(久)

昨年2月に誕生した橋下大阪府政は図書館や資料館といった文化遺産の継承と伝達を担う基礎的営為に冷淡なようだ。その一方で知事は、全国学力テストの成績を上げることにはご熱心なようだが、子どもたちの知的好奇心を刺激し、真の学力を高めるためには、もっと文化遺産を尊重する姿勢が必要ではないだろうか。(流)

たとえば1941 年12 月8 日、この日、日本とアメリカとの戦争が始まった。この日を境に……だったら、12月7 日は平和だったの?そんなことはないでしょ? 戦争の準備は平和なときにやっている。なのに、どうしても、人は境目を作りたがる。今回の取材で、関西沖縄文庫の金城さんにそう教わりました。(杉)
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2009年11月号(通巻450号):この人に

映像で記録する。
それは「生きる手がかり」を
積み重ねていくことです。

民族文化映像研究所・所長
姫田忠義 さん

●プロフィール●
1928 年兵庫県神戸市生まれ。48 年旧制神戸高商(現兵庫県立大学)卒。住友金属工業勤務後、54 年に上京、新劇活動、テレビのシナリオライターのかたわら民俗学者宮本常一に師事。61 年から映像による民族文化の記録作業を始め、76 年民族文化映像研究所設立。以来、同研究所所長。代表作は『越後奥三み おもて面第一部・第二部(84・96)』、『イヨマンテ―熊おくり―(77)』、『椿山―焼畑に生きる―(77)』など。著書に『ほんとうの自分を求めて(77・筑摩書房)』、『野にありて目め みみ耳をすます 姫田忠義対談集1、2(86・はる書房)』、『忘れられた日本の文化―撮りつづけて三十年―(91・岩波ブックレット№ 193)』など多数。


大阪湾を一望する垂た るみ水塩屋のゲストハウス(注1)。
「昔はこの海を見ながら毎日学校(注2)に通っていたんだねえ…」
窓辺で、海の向こうに目をやりながら語る姫田さん。
視線の先に見えていたものは何だろう。
48 年間撮り続けた日本各地の情景、出会った人びと、
それとも旅を続ける自分の姿なのか。


■サラリーマン時代、職場演劇のサークルに入られていたんですね。でも結果的にそれが原因で、会社を辞めてしまわれたとか…。

 親父は終生の肉体労働者でしたから、工場で働く人に親近感があったんですね。だから卒業したら、そういう人たちがいるところで働きたいと常々思ってたんです。ところが垂水の神戸高商を出てますから、求人欄は、銀行か、貿易関係か、商事会社かっていう系統だけ。そん中にひとつだけあった「新扶桑金属工業株式会社(注3)」。ここだったら親父のような人がいるかもしれないと、どういう会社かもよくわからないままに入社したんです。そこで職場演劇に引っ張り込まれたんですが。でも中に居おると、知らず知らずのうちに会社に遠慮しながら生きてる自分に気づいてきたんです。
 たとえば、どうしても殺人事件が書けない。普通の作家だったらなんぼでも書くじゃないですか。それができないんですよ。住友は“お家のご法度”も多く、なかなか体制の厳しいところですから。もし書けば社内論議の的になるだろうし、何よりも演じるのは会社の同僚なわけでしょう。お前なんであんな台本書いたんだ、って攻撃されるのは目に見えてる。でもそんな中、あるストーリーをつくって兵庫県の職場演劇コンクールで優勝したなんてこともあったんですよ。ただそのときにすごく思ったのは、やっぱりおれは会社に遠慮してる、もっと自由になりたいっていう強い実感でした。それでとうとう辞めてしまったわけなんですが、親は泣きましたね。なんで、どうして住友さん辞めてしもたんや…って。

■初めから映画志望ではなかったんですか。

 東京へ出てから、ある新劇の劇団に入ったものの、いろいろあって方向転換しました。自分の生きる方向性につながる仕事を模索して、食うためにいろんなことやってた中で出会ったのが宮本常一先生であり、そして記録映画だったんです。映画館での映画じゃないんですね。54(昭和29)年頃、すでにテレビジョン放送が日本に登場していた時代でしたが、当時のテレビカメラはせいぜい首を動かすくらいで、スタジオの中でしか使えなかったんです。だからテレビに乗せる画像は全部映画フィルムで撮ってたんですね。映画は好きだからもちろんそれまでも見てるんですよ。でも、自分から映画をつくるなんて考えたこともなかったですから

■それから48年間、「歩き、見、聞く旅」を一筋に続けてこられた。

 民族文化映像研究所(以下民映研)は、日本列島の中での庶民の生活文化の基層を記録するんや、と、日々刻々やっているんですが、自問の連続ですよ、今もずっと。ときに「ずぼら(注4)」をしてるのに気づき、自分を叱咤するわけです。おまえはこんな大義名分を言ってるけど、どれほどのもんなんや、と。最近、ある有名な人が僕の活動のことを「渋い」とブログに書いてたらしくて(笑)。世の中の目というものですな。なんで今頃こんな古めかしいことをごそごそやってんねんとか、いろいろ言われます。で、それを聞くと、やっぱり揺さぶられますよね、人間ですから。しかしそこから立ち直ろうとするわけですよ。でないと死んでも死に切れんわ、とか思うわけ(笑)。
 こんなこともありました。今度の総選挙ではあんまり話題にならなかったですけどね。主要政党の公開討論会の席上、ある経済団体のリーダーの最近の発言を引用した「焼畑耕作(注5)のような遅れた経営じゃなくて、ちゃんとした管理ができる稲作農法のようなものをやれ」というような談話があった。相手の政党のマニフェストを揶揄するためのたとえとして焼畑が出てきたんです。僕ね、もう本当に仰天しましたよ。今まで日本経済がお手本にしてきたのはすべて工業、電子機器でしょ。その結果どんな問題、弊害をもたらしたかということは横に置いといて、まるで焼畑、すなわち農業を敵かたきにしたような言い方を経済界のトップともあろう人がやっている。現在、日本の多くの企業が第一次産業である農業に目を向け、さかんに投資をはじめていますね。日本の農業のさまざまなかたち、ひいては伝統農法についても深く考える土壌が企業内にも拡がりつつある時代なんです。かつて僕らは『椿つば山―焼畑に生きる―』の製作を通じて多くの学びを得ましたが、今や学界では、日本の焼畑のエコロジカルな特性について、多くの専門研究者たちが真剣な検討をやり始めています。つまり、大地に火を放つのは決して自然破壊の元凶などではなく、自然の循環に対応した意味の深い手法なんだということです。
 今は歴史の再評価の時代になってきていると思います。そのときどういうデータをもとに考えるべきなのか。間違った歴史認識、事実認識ではなくて、あるいは強者が弱者をばかにするような論法ではなくて、これから日本が歩む道を真剣に考えていかないと、10年20年の間にまた同じことをやりますよ。僕の生きてきたわずか80年間の中でも、よくない歴史、愚なる歴史が繰り返されてきてますから。

■人が人に会う。それを映像によって深めていくのが、民映研の映像表現の仕事と言えるでしょうか。

 つまり英雄物語はいらないということです。その時代の表舞台、つまり最先端と目される人ではなく、世の中から取り残され無視されている、さらに言えば基層にある人たちに、僕らは学んできました。農山漁村の人たちや、アイヌ民族の人たちですね。
 最近はテレビチームがどかどかと出かけて行って、カメラ向けて、やあやと聞きますよね。そんとき本当に当事者の話を聞いてるのか。自分たちの言いたいこと言ってるだけじゃないのか。いわば「ショー」。人の土俵で、人の生活の場でショーをしている。それでいいのか、と僕らは絶えず自戒するわけです。
 僕の場合、ひとつの記録作業に3年、5年、7年、14年、20年…というように、時間をかけてきたけど、それは、その「自戒」の結果です。名のあるテレビ局、新聞社、大学などではない、「一民間人」のできることです。そんな僕らが「お前、よう来たね」とか、むこうから言ってもらえるのは容易じゃない。内心うるさいなあと思いつつもとりあえずは迎えてくれますが、本当のところ、どう思われているか。極端に言えば死ぬまでわからんことです。
 で、僕らの場合は、記録した内容を映像作品として、まず現地の人に提出します。不特定多数の観衆に向けてではない。まずご本人に、僕らは何をしてきたか、というのを観ていただくんです。それでああお前、そういうことをしてたんか、と初めて解る。で、ずっとあとになって、ああ、あの人はこんな映像作品置いていったね、と思い出すとします。その時点で、その人が非常な苦しみを持っていたり、弱い立場にいたりしたとき、自分たちの映像を観ることによって、「よし、がんばろう!」と奮い立てるような手がかり。それを僕は「記録」だと思うわけですよ。「記録」することは、生きる手がかりなんです。それを積み重ねていくことなんです。そして、その感動がまわりの人間にも伝播する。たとえば農業やらない人でも、農業の話を聞いたりしてると、ああそうかね、すごいね、と思えてくるんですね。人類というのはそういうセンスというか、他者に共感できるひとつの精神作用というのを与えられ、培ってきていますから。他人が鏡になってくるんですよ。だから僕らの作品は、常にそういうような質のものにしないとだめだな、といつも思います。

■世の中の変化にさらされながら、「志」を持ち続けるということはなかなか大変です…。

 これは本当に大事なことと思ってやる活動も、時間の推移とともに変化していきます。とても非情なことでもあるんですが。やってる人が年を取る。変化していく。自分がなんとしてで
も、と思ったことが、だんだんできなくなる。決してずぼらしなくてもね。だから「物事は絶えず変化してるんだ」ということをわきまえてないと、「いつも同じ状態であってくれなければ困る」という意識から逃れられなくなってしまいます。それはどう考えても不可能なわけですから。それを心得つつ、活動を持続させていける「志」を持たなければいけないと思いますね。つまり「心」「指し」ということですな。「心が指す」というのは、「心が方向性を持つ」ことだと僕は理解しています。そしてその「心」はいつも、時代の変化変容にさらされ、絶えず動かされているものなんですね。
 「初心忘るべからず」というでしょ。「ぐらぐらしていて未熟だけれども素直だったころの心を忘れるなよ」ということですね。ボランティアの作業も「志」と言えますね。今は揺らいでいるから、最初の思いを忘れたかも知れんから、ここでひとつ洗いなおしてみようよ、という以
外にないんですね。僕の研究所も、いつもそのことを思って活動しています。

インタビュー・執筆 
編集委員 村岡 正司
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2009年11月号(通巻450号):わたしのライブラリー

大阪町人学の伝統
  真なる自己の発見? それとも、ものずき?

編集委員 小笠原 慶彰

 二〇〇三年に大阪ボランティア協会が開設した専門資料室「ボランティア・市民活動ライブラリー」の開設記念講演は、ノンフィクション作家、佐野眞一さんにお願いした。その著書『旅する巨人︱ 宮本常一と渋沢敬一』によって宮本ブームが到来したことは広く知られている。本書に「このけったいな人物との最初の出会いが姫田のその後の人生を決め、現在の仕事につかせる決定的な原動力となった」とある。「このけったいな人物」とは、宮本のことであるが、「姫田」とは誰か。前述のライブラリーによる蔵書データベース整備リニューアル記念イベントで講演をお願いし、本誌今号「この人に」にも登場いただいた姫田忠義さんである。
 ところで宮本は、山口県・周防大島の出身で、渋沢と出会う以前、大正末期から昭和初期に大阪の郵便局で電信技士や小学校の教師をしていた。その頃すでに柳田國男の影響を受けて、在阪の郷土史家らと近畿民俗談話会という集まりを持っていた。この頃、なぜか宮本は「大阪は学問の土地ではない。多くの博識家好事家はいる、だがこの人々は、その対象の中に真なる自己を見出そうとはしない。いわば一個の道楽である」と書いている。けれど、「対象の中に真なる自己を見出す」とは、宮本にとっての学問ではなかろうか。

 ちょっと話が飛ぶが、大阪市は、一九〇一(明治三四)年に全国に先駆けて自治体史刊行を決議し、幸田成友の編纂によって一九一五(大正四)年に『大阪市史』全七巻が完成した。その後も『明治大正大阪市史』、『昭和大阪市史』、『昭和大阪市史続編』、『新修大阪市史』と続くが、自治体史の圧巻で例は少ない。藤本篤『大阪市史物語︱二〇世紀の軌跡』という新書は、その市史編纂の物語とそれにまつわる秘話で埋められている(※1)。その本に、当時の大阪で著名な三人の編纂顧問が「満々たる自信をもって来阪した若き歴史家・幸田成友の目には、一介のディレッタント(※2)に過ぎないと映ったのであろうか」とされている。その三人とは、父東の泊園書院を再興した大儒・藤沢南岳、財界人にして大阪町人文化の代表たる大通・平瀬露香、粟おこし大黒の店主で古文書の保存家たる名士・小林林之助である。

 在野学者の代表宮本も帝大出の江戸っ子たる幸田も大阪のいわゆる町人学者を、ものずきと感じているところが、興を引く。
 近世・幕末の大阪では、儒学・国学系たる三宅石庵の「懐徳堂」、麻田剛立に発し緒方洪庵の「適塾」に続く洋学、石田梅岩が祖の心学系の七講舎といった町人学の伝統がある。富永仲基、山片蟠桃、井上宗甫、木村蒹葭堂らの町人学者も輩出した。その伝統は近代以降も受け継がれた。大阪毎日新聞学芸部が、一九三六(昭和十一)年に連載「変り学-だいがくがいのがくもん」をまとめ、河原書店から出た『變り學讀本』は、大阪を中心に三十九人の市井の学者を紹介している。それから三十年後、毎日新聞大阪版の連載では二十九人を取り上げた。一九六七(昭和四十二)年に毎日新聞社会部編『なにわ町人学者』として所書店から出ている。そのほとんどは、大学の先生ではなく、それぞれがその道の権威たる町人学者である。そこには「どの人も学者というのが言い過ぎならば、感嘆すべきディレッタント(好事家)たち、とでもいえようか。大阪町人の心意気は、少なくともこのディレッタント精神のなかには生きていた」とある。つまり、ものずきこそが町人学者の真骨頂ということだろう。

 もっと最近の町人学者のことにも触れよう。『方言と大阪』(梅田書房、一九四八年)の著者、猪飼九兵衛は、大鉄 百貨店(現・近鉄百貨店阿倍野店)の専務取締役であった。これを基礎とする大阪弁の研究は、大阪大倉商業学校(現・関西大倉高等学校)卒の町人学者である牧村史陽の編集した『大阪ことば事典』によって完成する。史陽の結成した郷土史研究グループが「佳陽会」である。戦前に元は道修町の商人、南木芳太郎が五十歳で始めた郷土誌『上方』があった。事実を重視した実証的研究の範となり、日本雑誌史の奇跡とされる。佳陽会からは、それに匹敵するとされる『大阪春秋』も芽生え、優秀な大阪学者も育った。『大阪春秋』We bサイト(※3)トップページには、「庶民の中に埋没している無数の文化にスポットライトをあて、それを記録保存し、未来への橋渡しの役割をつとめたいと考えております」とある。

 「対象の中に真なる自己を見出す」ためであろうが、「ものずき」であろうが、宮本も史陽も散逸している事物・事象を足で歩いて集め、記録して後世に残した。だが、その史料保存は至難である。史陽が南岳の孫、藤沢桓夫の母に貸した新聞の切り抜きがその没後に見つからず返せなかったという話が藤沢の史陽追悼文になっている。スクラップ帳は数千冊だが、南岳に関する記事をちゃんと覚えていて貸したらしい。藤沢の後悔が伝わってくる。宮本にも似たような話があり、網野善彦の『古文書返却の旅︱戦後史学史の一ひとこま齣』(中公新書、一九九九年)で紹介されている。借りたままになっていた大量の古文書を返す目途が立った時、宮本は「これで地獄からはいあがれる」と喜んだらしい。このような場合、実際は返されない方が多く、史料が所在不明になる。
 時は過ぎ、史陽にしても、すでに没して三十年である。もう大阪町人学の伝統も怪しくなってきた。ならば公はというと、たとえば橋下府政下では、府公文書館ですら独立の資料館としては存立の危機に立たされている。市も予算が削減されただけでなく、民間委託も検討されており、安穏な状態ではないようだ。さて、我がボランティア・市民活動ライブラリーは、「対象の中に真なる自己を見出す」人に役立つのか、ものずきと評価されるのか。
 どっちゃにしても、記録を保存して、未来に橋渡ししまんのやというとこだけは、負けとくなはれとはいきまへんな。
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ゆき@バックナンバー

ゆき@ウォロの読者会です(*^ ^*)。
2010年1月9日(土)14時~17時
大阪NPOプラザ

市民活動情報誌『ウォロ』・・・全国各地の読者のみなさんに支えられ
毎月、多様な情報と、熱いオピニオンをお届けしておりますが、
このたび、史上初! 読者のみなさんにお集まりいただき
読者会を開催いたします。

第1回のゲストには、好評連載中の「ゆき@」が連載80回(丸8年!)
をむかえた大熊由紀子さんにお越しいただき、
その広く、深いネットワーク力、2002年のスタート以来、毎月不眠不休で
連載が続けられている「ゆき@」の裏話? また、ウォロへのご意見など、伺います。

ウォロへのご意見、注文、感想などなど
読者のみなさんのリアルな声を、お寄せください。
よろしく、お願いいたします。

***
ゆき@ウォロの読者会です(*^^*)。
2010年1月9日(土)14時~17時
大阪NPOプラザ

内容:
・前半
「ゆき@」連載の秘密! ~広く!深く!ゆき先生のネットワーク
・後半
ウォロへのご意見、頂戴いたします!

参加費:
・ウォロ定期購読者は無料です。
(直近の09年12月号か、バックナンバーよりお気に入り、印象の深かった号を、当日、お持ちください。お手持ちのウォロをもちまして、購読者の証しとさせていただきます)
・一般の参加は、1,000円です。
(当日、ウォロの定期購読5,000円を申し込まれたら参加費1,000円は、無料とさせていただきます)

申込みは、先着順です!(限定30人まで)
お早めに、お申し込みください。

申込先
担当:影浦 kageura@osakavol.org
FAX:06-6465-8393
※メール、FAX等で、お申し込みください。

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《好評連載》ゆき@・・・です(*^^*)。

大熊 由紀子さん
ある日東京に生まれ、01 年までの17 年間、朝日新聞の福祉、医療、科学、技術分野の社説を担当。著書に『『恋するようにボランティアを~優しき挑戦者たち』寝たきり老人のいる国いない国』『福祉が変わる医療が変わる』(ぶどう社)『患者の声を医療に生かす』(医学書院)など。国際医療福祉大学大学院教授(医療福祉ジャーナリズム)、千葉県健康福祉政策担当参与。福祉と医療、現場と政策をつなぐ「えにし」ネット志の縁結び係。ゆき.えにしネット の「優しき挑戦者の部屋」などでバックナンバー読めます。


8■2009年(第71回~第80回)
11月号 北海道・当別町 “ごちゃまぜ福祉”のお茶の間で(*^^*)
10月号 伊丹・尼崎・西宮だれもが暮らせるまちです(*^^*)
9月号 聾の監督たちでつくった映画『ゆずり葉』に感動と、涙、涙です(*^^*)
7・8月号 やねだん、感動から奇跡が生まれました(*^^*)
6月号 デンマーク平らな国からのご報告ですp(^-^)q
5月号 審議会・検討会です(*^^*)
4月号 鹿児島、ITを道具に医療革命進行中です(*^^*)
3月号 大津、まちでの暮らしもとめる2つのフォーラムで(*^^*)。
1・2月号兵庫、千葉、東京 お医者さんをつつむボランティアたち(*^^*)

7■2008年(第61回~第70回)
12月号 宮城最期のときを輝かせるプロジェクト、です(*^^*)。
11月号 相模野、小さな病院の大きな挑戦、です(*^^*)。
10月号 患者と医療者の架け橋をもとめて
9月号 医療事故遺族がボランティアになるとき(*^^*)。
7・8月号 優しき挑戦者大集合です(*^^*)
6月号 「骨太」と経済財政諮問会議の呪い、です(/o\)
5月号 ボランティアの法則です(*^^*)
4月号 煙の上に30年(*^^*)
3月号 アルビノ、2万人にひとりの若者たちと(*^^*)
1・2月号 長崎、愛する人と故郷の町で(*^^*)

6■2007年(第51回~第60回)
12月号 東京・小平、日本中にあったらいいなのコミュニティケアです(*^^*)
11月号 山形、目からウロコの歯の話です(*^^*)
10月号 滋賀と京都、輝きのケア最前線です(*^^*)
9月号 命の輪をつなぐ遺児たちです(*^^*)
7・8月号 患者さんをつなぐ、政策につなぐ、です(*^^*)
6月号 男の子育て、です(*^^*)
5月号 政治家とボランティア魂です(*^^*)
4月号 患者のための図書室です(*^^*)
3月号 「条令のある街」です(*^^*)
1・2月号 ながの発 地域で暮らすということ フォーラムです(*^^*)。

5■2006年(第41回~第50回)
12月号 デンマークのホンモノの自律支援法です(*^^*)。
11月号 運転免許とケッカク条項(*^^*) 
10月号 おしっこボランティア、です(*^^*)。 
9月号 「Cネットふくい」の仕事で元気、です(*^^*)。
7・8月号 嵐の中の差別をなくす条例です(;´_`;)
6月号 志の縁結び係です(*^^*)
5月号 “内部告発”という名のボランティアです(*^^*)。
4月号 サポートハウス年輪です(*^^*)
3月号 ゆき@「ふわり現象」です(*^^*)
1・2月号 デンマーク ユーザーデモクラシー です(*^^*)

4■2005年(第31回~第40回)
12月号 和製ヨンさま3つの奇跡です(*^^*)
11月号 千葉・市川のご近所プロジェクトです(*^^*)
10月号 子育てを男女で楽しむノルウェーです(*^^*)
9月号 和製でんぐりがえしプロジェクトです(*^^*)
7・8月号 帯広 志のネットワークです(*^^*)。
6月号 医療事故&尼崎脱線事故です(>_<)
5月号 遺族ボランティア「小さないのち」です(*^^*)
4月号 徳島、全焼したパイオニア太陽と緑の会です(>_<)
3月号 まちで、みんなで、認知症をつつむ大牟田です(*^^*)
1・2月号 家族の会&女性の会です(*^^*)

3■2004年(第21回~第30回)
12月号 こどもの救急が危ない、です(>_<)
11月号 ぼけても心は生きている、国際会議です(*^^*)  
10月号 KENさんのホームページで政策ボランティアです(*^^*) 
9月号 べてるの家と幻聴さんです(*^^*)
7・8月号 福祉と医療・現場と政策をつなぐ「えにし」ネットです(*^^*)
6月号 「あの池田市」の咲笑です(*^^*)
5月号 中毒110番+心臓移植です(*^^*)
4月号 介護保険と支援費の結婚話です(*^^*)
3月号 えにし・イン・逢坂です(*^^*)
1・2月号 脱お役所仕事千葉方式です(*^^*)

2■2003年(第11回~第20回)
12月号 インターネット禁煙マラソンです(*^^*)
11月号 このゆびとーまれ、富山です(*^^*)
10月号 鷹巣異変です(*^^*)
9月号 福祉の町、鷹巣町です(*^^*)
7・8月号 ドーナツ&ダスキンです(*^^*)
6月号 西宮メインストリーム協会です(*^^*)
5月号 虹の家&あしなが運動です(*^^*)
4月号 星子ちゃんと枚方市民病院です(*^^*)
3月号 西宮&北欧&大津です(*^^*)
1・2月号 宮城&長崎も面白い、です (*^ ^*)

1■2002年(第1回~第10回)
12月号 みなのしゅう神宮寺です (*^ ^*)
11月号 千葉&長野が面白い、です (*^ ^*)
10月号 どこでもゼミ福祉革命部です (*^ ^*)
9月号 ユニットケア全国セミナーです(*^ ^*)
7・8月号 平成桃太郎の会です(*^ ^*)
6月号 新たな「えにし」を結ぶ会です(*^ ^*)
5月号 滋賀のカリスマ職員群に感動、です(*^ ^*)
4月号 人の中に、街の中に、です(*^ ^*)
3月号 精神医療をよくする市民ネットワークです(*^ ^*)
1・2月号 阪大ボランティア人間科学です(*^^*)
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