大阪ボランティア協会・事業レポート

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裁判員ACT通信 24号 裁判官出張説明会報告その2

2015-06-05 21:44:24 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
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 4月15日(水)夜、大阪地方裁判所から裁判官に出張していただき、裁判員制度 出張説明会を開催しました。「裁判員裁判の手続の流れ」の説明に 続く質疑応 答の時間も、次々に飛び出す質問にわかりやすく答えていただきました。
 遠藤邦彦判事の回答から一部を紹介します。
 (出張説明会前半は「裁判員ACT通信23号」をご参照ください)



質問「裁判員裁判の判決が上級審で覆るのをどう考えたらよいのでしょう。裁判 員の意見を尊重することと、一方でバランスということを考えるとどう かとも 思います。市民感覚を入れるということで導入されたのなら、今までの量刑がお かしかったのではないかという見方はできないのでしょうか。」

 最高裁の判決で、一審を維持した高裁の判断を破る、あるいは一審を破棄した 高裁の判断を維持するなど、一審と最高裁とで違う判断が出ることがあ りま す。量刑についての判断が多いと思います。
 これらの最高裁の判例は、単にこれまでの裁判を尊重しなさいと言っているわ けではありません。刑の重さを決める法律的な判断枠組みについて裁判 員に しっかりわかってもらっていますか、裁判官はきちんと裁判員に説明しないとだ めですよということを言っていると思います。裁判官の説明が不十 分なため に、刑の枠組みについて不十分な理解のまま刑が決まっているとしたらそれは問 題ですよね。
 裁判員制度が導入された1つの大きな理由として量刑に市民感覚を導入すると いうことがあったと思います。ただ、ここで考えてほしいのは、市民感 覚は大 事なのですが、その内容は漠然としたものです。選ばれた個々の裁判員の方が市 民感覚を代表しているかというとわかりません。実際には裁判官 も裁判員も刑 の重さについての感覚はバラバラな時があります。
 大事なことは、裁判官が法律的な判断枠組みをしっかりご説明した上で、その 枠組みを踏まえつつ、こういう事情についてはもっと重く評価していい のでは ないかといった議論をし、刑の分布状況のグラフ等も見て、公平ということも意 識して刑を決めることなので、その上で刑の傾向が変わっていく のは問題ない と思います。裸の感情論だけで刑が重くなったり、軽くなったりするとむしろ説 得力が欠けるのではないでしょうか。

 量刑評議ではかなりいろんな議論をしています。一人ひとりがその事件に関し て感じた事柄を法的な判断枠組みを意識して議論しています。そのよう な議論 の中で、場合によってはプチカミングアウトのような、実は私にはこんなことが あったんです、うちの家族にはこんなことがありましたという意 見も出されま す。そのような意見は重いものがあります。そういう重さを評議の中で共有し て、裁判官も、裁判員の方達もいろんな意見を出し合い、 う~んと悩みながら 決めていきます。全員一致の場合もあれば多数決になることもありますが、裁判 官も裁判員も各自が持っているバックグラウンドを 含めた意見を出しながら議 論しているという印象を持っています。
 そのようなやり方で量刑を決めていますが、一審だけで決まってしまう制度が いいとも限りません。日本は三審制ですから、高裁で1回チェック、最 高裁で もう1回最終チェックがある方が安定した制度ではないかと思います。
 被告人を裁くことはできません。その人のやった行為を、社会的に評価すると どのくらい重いのかを決めるのが私たちの仕事です。人を裁くことは誰 にもで きません。その上で、この行為をどのくらい悪いと考えますかということで議論 することが多いです。

質問「裁判員が参加するなら、刑についてより具体的にわかりやすく説明する方 が、市民の意見が尊重されるのではないでしょうか。」

 実は刑を決める基準は、法律にはっきり書かれておらず、殺人罪なら5年から 20年、無期懲役、死刑としか書いていません。その中でどのように公 平な量刑 をしたらよいか、これまで裁判官は殺人事件の判決をたくさん読んで公平な量刑 判断ができる感覚を培ってきました。しかし、裁判員にはそん なことを求める ことはできませんし、その意味もありません。
 量刑検索システムという平成20年4月以降の量刑のデータがあって、このデー タに基づく、同種事件の刑の分布状況を見ながら、今回の事件がどの くらいの 位置づけになるか、重い事案を見たり軽いものを見たりして傾向について意見交 換しています。その上で刺し方は1回だけど傷が深いとか、た くさん刺したけ ど傷が浅いとか、そのどっちが重いかとか、今回のものはどうかといった議論を しながら、犯罪事実に関する事情をベースにして、その 分布グラフの中で、だ いたいこのあたりかなあ、何年から何年の幅かなあという議論をします。そこか ら反省の程度など詳細の要素を含めて最終的な量 刑を考えていきます。
 実際の裁判員裁判の判決から量刑理由の部分をご紹介します。ここから量刑評 議のイメージをお持ちいただければと思います。
 妻が夫を背中から包丁で刺した傷害致死事件です。夫は体が悪くて仕事ができ ないために妻が居酒屋で働いていたのですが、妻が店で男性客と仲良く すると 夫が怒る。それがある日エスカレートしてお客さんの面前で夫が妻を罵倒したの で妻が怒り、包丁で刺してしまったという事件です。

判決理由
 「本件において使用された包丁は、刃体の長さ約21センチメートルの刺身包丁 であり、被告人はそのような殺傷能力の高い危険な凶器で、被害者の 背中とい う無防備でかつ心臓などに近い部位を1回突き刺し被害者を死亡させている。こ のような被告人の犯行態様は、一刺しで死に直結する危険性の 高い悪質な行為 というべきである。ただ被告人の攻撃は、この一刺しのみであり、犯行は一時の 感情にまかせた偶発的なものであって、被告人の犯罪意 思は瞬間的なものであ る。したがって複数回危険な暴行を加えた事案や、むごたらしい暴行態様の事案 と同列には評価できない。
 次に本件直前の経緯をみると、被害者は、被告人に暴力を振るったことはな く、店から出て行こうとしており、被告人に背中を向けていたのであるか ら、 被告人が包丁で攻撃を加える必要性はまったくなかったから、本件は感情にまか せた短絡的な犯行といえ、この点は被告人に対する非難を強める事 情といえ る。ただ、被告人が被害者に対して強い憤りを抱いたのは被害者の理不尽な言動 が原因であり、被害者はその行動をエスカレートさせているか ら、家計のため にがんばろうと思っていた被告人が、いわば足をひっぱるような被害者の行動に 強い憤りを抱いたことは理解できる。この点は被告人に 対する非難の程度を考 える上でいくぶん考慮する必要がある。なお被害者も、被告人が店を出た後、被 告人に多数回電話をかけたり厨房で洗い物をする など、被告人や店のことを気 にかけていた点は指摘できる。
 以上によれば、本件は、傷害致死事案全体の中ではとくに悪質な部類に入ると はいえないものの、犯行態様の悪質さや感情にまかせた犯行であること を考え ると到底軽い評価ができる事案ではなく、中間的な部類に入る事案であるとして 刑の重さを考えるべきである。
 そして、その中で、被告人が119番通報を要請して病院に同行するなど被害 者の救命のための努力をしていること、前科がないこと、被害者が身内 ではな い第三者で遺族が強い処罰感情を抱いている事案とは異なること等の事情を考慮 して主文の刑が相当と判断した。」

 評議ではこんな作業をして意見交換しています。裁判官は、従来の傾向を押し つけるような発言は絶対にしません。裁判員と同じ土俵で議論できる力 量をつ けることが必要だと、日々感じているところです。

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メンバーは裁判員経験者を含む市民、弁護士、記者など。
月1回、CANVAS谷町に集まっての例会を中心に活動しています。
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