Organic Life Circle

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殺菌剤に注意!

2006年02月18日 | 科 学


農薬には、殺虫剤 pesticide、殺菌剤 fungicide、除草剤 herbicide がありますが、体内に吸収されてもすぐに影響が出ない急性毒性の低い殺菌剤については、危険性が軽視されているように思われます。
実は、殺菌剤の90%、除草剤の60%、殺虫剤の30%には発癌性があるといわれ、最も癌を起こしやすいのは殺菌剤なのです。今回は殺菌剤に焦点を当て、なぜ危険なのか、農業の現場ではどう使われているのか、どんな野菜や果物に残留しやすいのかを解説してみたいと思います。


<殺菌剤はなぜ危険なのか>

殺虫剤のほとんどには、神経信号の伝達を狂わせ、虫に心不全を起こさせて殺す、すなわち神経毒があるのです。除草剤には様々な仕組みがありますが、植物の呼吸を止めるものがあり、人間などの動物も、大量に吸収すると急死することがあります。

ところが、殺菌剤の対象となる菌には、神経もなく酸素呼吸の仕組みもないものが多いので、作物を傷めないで菌を殺すのは大変難しいのです。

そのため、菌の分裂増殖を狂わせて次世代を作らせない方法が採られます。これらは化学殺菌剤と呼ばれ、急性毒性は小さいものの、人間の体内に蓄積して長い間に癌を発生させたり、奇形や突然変異を起こしたりする慢性毒性が大きいのです。


<農業の現場での使われ方>

オ-ガニック農法では、輪作 crop rotation をし、同じ場所で同じ作物を作ることを極力避けていますが、一般農法の大産地では、毎年同じ作物を同じ場所で大量に作るため、病気や虫が蔓延しやすくなります。

そこで産地を維持するために、殺菌剤や殺虫剤が大量に使われます。さらにまた、腐敗菌が蔓延するとすぐに腐りやすくなるため、長距離の輸送に耐え、また店頭での棚持ち shelf life を長くするため、収穫直前まで殺菌剤を使用することが勧められているのです。

具体例として、収穫前日まで使用可能とされている殺菌剤のトップジンMについて見てみましょう。これはリンゴやナシ、ミカン、モモなどの果物、ピーマンやキュウリ、スイカ、メロン、タマネギ、レタスなどの野菜によく使用されています。

しかし、この一般的な殺菌剤は生体内でMBCと呼ばれる物質に変化し、動物実験では催奇形性(胎児に奇形をもたらす)が極めて強いと指摘されています。また、MBCが窒素過多の野菜に含まれる亜硝酸と一緒になると、発癌性が著しく高まることもわかっています。

このほか、ベリー類には殺菌剤の散布が欠かせず、日本では国内産のイチゴでも、殺菌剤の散布が日課とされています。特に輸入イチゴには、収穫後に殺菌剤が付加され、高濃度で残留していることが多いので注意が必要です。

日本で健康ブームになっているブルーベリーですが、その最大の輸出産地はBC州です。ここでも油虫 aphids 対策に殺虫剤、カビ病・炭素病対策に殺菌剤が散布されています。
 

<残留農薬レポート>

東京都衛生研究所は、1989年から90年にかけて、一般に市販されている野菜や果物の残留農薬検査を行いました。少し資料は古いのですが、その結果を一部紹介し、どんな作物にどんな農薬が残留しやすいのかを調べてみましょう。

◎ 野 菜

アオジソ  (殺菌剤が高濃度で残留)
カブ    (殺虫剤が葉に多く残留)
カボチャ  (殺虫剤、特にメキシコ産カボチャ)
キュウリ  (殺虫剤、殺菌剤)
ゴボウ   (除草剤、殺菌剤、殺虫剤)
サツマイモ (殺菌剤)
サニーレタス(別名リーフレタス、殺菌剤が高濃度で残留)
サヤインゲン(殺虫剤)
サヤエンドウ(殺虫剤)
ジャガイモ (発芽を抑制する除草剤が残留)
シュンギク (殺虫剤)
セロリ   (非常に多くの殺虫剤、殺菌剤を検出)
ダイコン  (葉に各種の殺虫剤が残留)
トマト   (殺虫剤、殺菌剤、土壌燻蒸剤の臭素が残留)
ニンジン  (殺虫剤、土壌燻蒸剤の臭素が高濃度で残留)
葉野菜類  (殺虫剤)
ピーマン  (殺虫剤が高濃度で残留)
ホウレンソウ(各種殺虫剤が高濃度で残留)
ミツバ   (殺菌剤が高濃度で残留)
レタス   (結球型、多くの殺菌剤、殺虫剤が残留)

◎ 果 物

イチゴ   (連作障害を防ぐ土壌殺菌剤を大量使用)
サクランボ (米国産に殺虫剤、燻蒸剤が残留)
ナシ    (各種の殺菌剤、殺虫剤が残留)
バナナ   (出荷時に添加された殺虫剤、殺菌剤が高濃度で残留)
ブドウ   (国産から殺虫剤、米国産・チリ産から殺菌剤を検出)
ミカン   (皮に各種の殺虫剤が残留)
メロン   (殺虫剤が残留)
モモ    (殺虫剤)
ライチ   (台湾産から殺虫剤を高濃度で検出)
リンゴ   (殺虫剤と多くの殺菌剤を検出)


<農薬の恐ろしさに目覚めて>

私が農薬、特に殺菌剤の怖さを理解したのは、1983年ごろ、二度目に行った東京農業大学農芸化学科での農薬学の講義からでした。

私は、宮沢賢治の恩師、関教授が開設した土壌学研究室で学びたいと思っていたのですが、農芸化学ではビタミンの研究や農薬の研究が盛んに行われていたので、ついついそちらのほうの講義も熱心に聴くことになりました。おかげで、栄養学にも農薬学にも詳しくなりました。

しかし、卒業の単位は取ったものの、土壌学研究室とは合わず、かといってビタミンや農薬の研究室に入るのも気が乗らず、自主退学して世界放浪の旅に出てしまいました。一年後、日本に帰国し、無農薬の野菜を入41手するのが難しいことを知り、生まれ故郷に戻って自分で作ることにしました。以来、ずっと反農薬の運動をしながら、無農薬の野菜作りをしているわけです。

日本では殺菌剤や殺虫剤を空からヘリコプターで散布していたので、早速反対運動を始めました。しかし、農家や農協、行政の反応は極悪で、「この農薬は人畜無害だ」などといわれ、反対すると「過激派」とのレッテルを貼られてしまいました。農家や行政の意識はこの程度ですので、殺菌剤がいかに安易に利用されているか想像がつくと思います。

ですから、農家が自ら無農薬(オーガニック)といっても、いちがいに信用できないのです。農家の多くは、殺菌剤は農薬ではないと思っている向きがあるのですから。温室キュウリの宣伝文句に No Pesticide などと書かれているのを見ると「殺菌剤はどうなのか」と問いたくなります。


<オーガニック認定の必要性>

農家の立場としては、オーガニックの認定を受けるのは、第三者に全部チェックされ面倒なのですが、消費者の立場としては、どうしても第三者によるオーガニック(無農薬)認定か信用できる農家でないと安心できないのです。

野菜や果物をたくさん食べる方、ベジタリアンの方は、普通の野菜を食べていると、殺菌剤をかなり摂りこむことになるので、なるべくオーガニックのものを選ぶように注意しましょう。

最近聞いた話に、オーガニックを選んで食べているというフィリピン系の移民の方が乳癌になったという例がありました。そこで食生活を詳しく聞いてみると、オーガニックでない普通栽培のバナナをパンのように食べていたといいます。輸入バナナは特に殺菌剤の残留度が高いことを知っておくべきです。

(海波農園 菅波 任)


<参考> 

反農薬シリーズ「残留農薬レポート」(1990年反農薬東京グループ発行)


オーガニック・ライフ・サークル会報
2005年8月・9月・10月号(No.64)掲載

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