社会保険労務士日記

ほんとうのさいわいってなんだろう?
「社会保険労務士」の存在意義を探し求めて彷徨う日々

始末書の提出を制裁の内容とすべきでない理由

2012-07-25 12:43:28 | 徒然

以下、自分の仕事で利用しているエントリーを少々整理して再アップ

始末書の提出を制裁の内容とすべきでない理由

○ 制裁の実効性を当該労働者に委ねてしまうことになる

たとえば譴責を「始末書を提出させ将来を戒める」としていた場合
当該労働者が始末書を提出しない限り制裁が完結しないことになり
制裁が実効あるものとなるための条件を当該労働者に委ねてしまうことになります

しかし制裁は過去の行為に対する評価として会社が主体的に行うものですから
当該労働者の始末書提出の有無と制裁の成否とは無関係であるべきです

譴責処分が上記のような内容で定められていれば
当該労働者が制裁処分を不服として始末書を提出しない場合には
この譴責処分が繰り返されて最終的に懲戒解雇となったケースを考えると
労働者側からすると
「始末書の提出を要件とする譴責処分は完結してない」
「従って譴責処分の繰り返しによる制裁の加重という会社主張は根拠がない」
「従って最終的処分としての懲戒解雇はそもそも合理性を欠き無効」
との主張を展開することも可能です

○ 明示的な制裁以上の制裁を労働者に課す不当な処分になりかねない

「始末書の提出」を制裁の内容にするとすれば
当該労働者が「会社に始末書を提出する」ことではなく
会社が「当該労働者に始末書を提出させる」ことになります

当該労働者の不始末に対する「罰」として書かせるのであれば
確かに始末書は制裁と言えるのかもしれません

しかし当該労働者の時間を本来の労務提供以外に費やさせることが
会社が始末書を作成させる目的になっているとすれば
これは減給や出勤停止よりも制裁としては重いものになります

まして始末書の書き直しを何回も命じるなど
いつ制裁が完了するかわからないような状況があるとすれば
労働者側から「不当な制裁」であると主張することも可能です

このような制裁の意味で始末書を書かせたりすることが
再発防止のために問題を追及することにつながらず
却って行為を隠蔽したりより悪い方向に進むことは
JR西日本福知山線の脱線事故に最悪の形で現れています

○ 始末書の本来の目的

始末書の本来の目的は
問題発生の原因から顛末をもう一度見つめ直し
将来どうするのか、どうすべきかを明らかにすることです

当該労働者に始末書の提出を求めるのであれば
過去の制裁の意味としてではなく
将来に向け自分はどう働くのかの視点で書いてもらうことです

始末書に労務管理上の意味があるとすれば
会社がそのような始末書の提出を促し
当該労働者がそれに応じたときでしょう

始末書の提出とその内容は過去の行為を無にできるものではない
始末書の提出とその内容で無罪になることはない
逆に始末書の提出を拒んだからといって有罪になるものでもない

始末書はその行為の有無、有罪無罪の判断とは無関係です
その行為に対する制裁の軽重を判断する場合の材料です

被害者との民事上の和解が成立していることは
刑事裁判での有罪無罪の判断に直接的に影響するものではない
しかし実刑か執行猶予がつくかの判断には影響するはずです

始末書の意味もそう考えるべきでしょう

○ 実際の規定例

それでもなお制裁に絡めて始末書の提出を盛り込みたい、
業務命令としての始末書提出の根拠を明示したいのであれば
私なら制裁の内容とは切り離した形で以下のようにします

第○○条(懲戒の種類)

1.懲戒の種類は次のとおりとする。
(1)口頭注意-口頭で注意しその内容を記録する。
(2)譴責-文書により将来を戒める。
(3)減給-・・・・・・・・・・
(4)出勤停止-・・・・・・・・
(5)懲戒解雇-・・・・・・・・

2.会社は前項の懲戒に併せ、
過去の事実を把握した上で将来の管理に生かすため
また当該従業員の反省の意思を確認するため
始末書の提出を求めることがある。



人気ブログランキング 法律・法学へ にほんブログ村 士業ブログ 社会保険労務士(社労士)へ  ぽちっとな

ここまでお読みいただきありがとうございます
この「社会保険労務士日記」は 
上記2つのランキングサイトにエントリーしています 
どちらもぽちっとするとランキングがちょっと上がり
私のモチベーションもちょっとアップします

ジャンル:
ウェブログ
コメント (1)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 最近こんなの使ってます | トップ | コメント御礼(711) »
最近の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
けん責処分は組織の知恵? (sr-ta3)
2012-07-26 11:26:47
なるほど、勉強になります・・・

多分、大元は国家公務員の国家公務員法82条が根拠でしょう。
それによると法律上の処分としては次の4種類となっています。
免職
停職
減給
戒告=本人の将来を戒める旨の申し渡しをする処分

しかしながら、これだけでは足らない?ので実務上の処分として訓告、厳重注意などがあります。
訓告=公務員部内において監督の地位にある者が、職員の義務違反に対してその責任を確認し、将来を戒めるために行う行為
厳重注意・・・戒告よりもさらに軽い処分

どこから譴責などという「処分」が出てきたのでしょうねえ・・・組織の知恵?的なモノかも
まさか異議を唱える者が出てくるとは・・・的な・・・

譴責=組織における懲戒処分の方法のうち、始末書を書かせるなどして丸くおさめる知恵・・・

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。