le drapeau~想いのままに・・・

今日の出来事を交えつつ
大好きな“ベルサイユのばら”への
想いを綴っていきます。
感想あり、二次創作あり…

SS-30~ アラン(出会いの日から/最終章)~

2017年07月14日 00時05分04秒 | SS~出会いの日からシリーズ~


~ ア ラ ン (出 会 い の 日 か ら / 最 終 章) ~


『従いましょう、貴女(あなた)の指揮なら……』

天女かと見まごうほどの神々しい貴女の立ち姿に俺は、きっぱりと宣言した。

それは俺の誇りでもあった。

俺達第1班は7月13日のパリ出動のメンバーに選ばれた。
第1及び第4中隊。合計18の班員と副官も含めた将校達をざっと数えると、おおよそ200人近い人数が貴女の直接の指揮の元、パリに向かう。

貴女は、黙ってついてきてくれる兵士はいないのか、と俺達に問い掛けた。

貴女が、パリへ……? 
たった200人の兵を率いる為に連隊長自らが指揮を執る、と。
周囲は一瞬ざわつき、そして……沈黙。

俺は言葉を発した。
それは、勿論俺個人の意思だけではなく選出された2個中隊の総意だった。
周りの連中の意見を聞いたわけでもなく、それは俺の気持ちそのものだったが、俺はそれがみんなの一致した意見だと確信していた。
本来なら一兵卒に過ぎない俺が発言するべき場面でない事など当然知ってはいた。
だが。俺は口火を切らずにはいられなかった。

貴女が、俺達と一緒に明日パリに向かう。
それが意味するところ……。

俺達は――。
俺はその意味を知っていたはずなのに……。


「アラン……」
「あっ……」
薄ぼんやりとした意識の中、俺は、また気を失っていたのかと、目覚めた事で自分の失神を確認させられるという失態を繰り返していた。

「少し強い鎮静剤を使ってもらおう」
心底眠りにつく事が出来ない俺を気遣ってベルナールが今にも医者を呼び寄せかねない勢いで立ち上がった。
「ベ……ル……」
腹に力が入らずか細い声しか出ない。ベルナールは振り向き俺の表情を見入ると、言わんとする事を悟ったようだった。
出会ってまだ数日しか経っていないというのに、この同胞は多くを語らずとも俺の意を察してくれた。
あいつと見間違いそうな黒髪のその風貌に、俺は、その横にあの女性(ひと)がいるような気がして、何度も瞬きを繰り返した。
俺のそんな気持ちまでもが分かったようで、頭を振り振り、
「どうせ……眠れないか?」
優しい口調で訊くベルナールに、俺は小さく頷いた。

……強くなりたかったんだ。

お袋や、妹や……。あいつや貴女や……。
みんな、みんな……守りたかったんだ、俺の手で……。

その手段を、貴女は教えてくれた。

『従いましょう、貴女の指揮なら……』

どんなに悔いても悔い足りない時がある。
なぜ止めなかったんだろう、貴女を……。
いや、あの時、あいつを止めてさえいれば……。

とことんまで貴女に従う事が出来たあいつ。そして、フランソワやジャンや……多くの仲間が俺の元からいなくなってしまった。

俺も……。
俺も、あの時、貴女に従う事が出来ていたなら……。

右腕でそっと目頭を隠す。それを反射条件とするかのように、また涙が溢れて来た。
ベルナールが何も言わずに部屋を出て行く気配が伝わって来た。

なぜ、俺だけが生き残ってしまったんだろう……。

もう何度目になるか数える事さえ出来なくなってしまった自問を、俺はまた俺自身に投げ掛ける。

俺の腕の中で旅立って行ったあいつと……貴女……。

もう、今の俺には守るべき人もいなければ、誰かにとって俺が守りの対象にさえならないと言うのに、なぜ俺は、あの日、貴女やあいつから置いてきぼりを食らってしまったのだろう。


「アラン……」

貴女の声が響く。俺は周囲を見渡すが、そこにはもう誰もいない……。

あと何回同じ夢を見たら、良いのだろう。

貴女の呼び声、貴女の黄金に輝く髪、ほんのりと桃色に染まった頬……。あいつの名を呼ぶ貴女にさえときめきを感じてしまう。

その同じ唇が、俺の名を発する。
俺はお決まりのように、めんどくせぇなぁ、と言いながら振り返る。

貴女が笑っている。
その隣で、あいつも一緒に笑っている。
そして、一瞬見つめ合った二人は、そのまま全く同じ仕草で俺に近づいて微笑みかける。

貴女が俺の名を呼ぶ。俺がめんどくせぇなぁと答える……。
そんな他愛のない日々が、もう戻らないなんて……。

「アラン……」
ああ。今度は今際の際のあいつの、とぎれとぎれの呼びかけ。

そうだ……。
俺はあいつのこの言葉を思い出したくなくて……だから眠りたくないのに……。
また、思い出してしまった。

何の迷いもなくあいつの為に走る貴女の背中を呆然と見つめる俺の腕を握り、あいつは言った。

「アラン……。オスカルの事……」

無駄に流れ出るあいつの血で、それ以上石畳を染めたくなかった。
貴女の、その迸(ほとばし)るほどの生命(いのち)の源を、こんな所で断ち切ってしまいたくなんかなかった。

「ああ、分かったから! もう喋るな。直に隊長がおまえの為に水を汲んで戻って来るから……」
「頼んだ……ぞ……」

近づいて来る足音。
その軽快な足音に安心したかのように、俺の腕を握りしめていたあいつの手がぽとりと落ちた。

ふざけるな、と……。
あの時、そんな事請け負えないとあいつを叱咤していたなら、今この瞬間の俺の居場所も違っていたのだろうか……。

割れるコップ。
泣き叫ぶ貴女の声……。

静寂の中、俺の耳の届いた、たったふたつの音……。


あと、いくつの眠れない夜を乗り越えたら、俺は楽になれるのだろう。
どれだけの苦しみに耐えたら、貴女やあいつの待つ場所に行けるのだろう。

……その時。
貴女から褒められる俺でありたいと思う。

貴女の背中が行く先を示している。
あの日。
パリの街中で怒りを爆発させていた貴女と、そんな貴女を見守っていたあいつ。

あの日の二人の背中が……。
金の髪が、紅の軍服が……。
黒髪と、靡(なび)くお仕着せの燕尾が……。
俺の行く先を教えてくれていた。

強くなりたかった、誰よりも。
その手段を、貴女が教えてくれた。

あいつと貴女の命の重みをこの腕に抱えて、俺は生きて行く。

≪fin≫

【あとがき・・・という名の言い訳】

ご訪問ありがとうございます。おれんぢぺこでございます。
7月14日です……。今年は6月にパソコンが壊れ、7月に入った途端、大雨による災害……と、何やら私の中で落ち着かない事が多すぎました。
仕事面でも、毎年8or9月に職場主催の研修会を行うのですが、今年はその主担当も仰せつかっておりまして……つまりは、ストレスマックス⇒妄想も最高潮……なのですが、実は本日UP致しました話の大筋は1年前、『出会いの日から』構想当初からあった物なのです。書き始めた頃には、いわゆる(去年の!)百合忌に最終話をお届けする予定でした。あくまでも、“予定”です。ところが、長々と進展しないままお付き合いいただいた結果、アランの記念日的な日に投稿する事が出来そうにない状況ばかりが続いてしまいました。
でも、やっぱり。シチュエーションは捨てたくないと(6割がた書き終わってもいたし…)思い直した結果、これは、じゃあ、この日でしょ、と逆に思った次第です。
私は『エロイカ』を途中で挫折してしまったので、実はOA亡き後のアランの事をあまり良く知りません。でも、二人が亡くなった後のアランの気持ちって、もしかしたら他の生き残りキャラよりも共感できるかもしれない、などと思っております。そんなわけで、7月14日にもかかわわらず、あえてアラン語りのOAで、今年の3が日終了でございます。
お付き合いありがとうございました。

暑さが厳しい日々です。
朝倉市では復旧作業どころか、まだ多く残る行方不明の方の捜索さえ難航している状況です。一日も早い発見を願うばかりです。

皆様もどうぞ熱中症、食中毒等々ご注意ください。
またお時間のある時にお立ち寄りくださいませ。



ジャンル:
小説
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14 コメント

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Unknown (マイエルリンク)
2017-07-14 04:07:25
おれんぢぺこ様


1789年7月14日 晴天 気温やや高し

愛する人の腕の中ではなく、最愛の人を自分に託し、このの腕の中で旅立っていった友、 愛する人を失い、生きる希望も夢も全てを失ったかに思えたあの人は、 それでも尚、民衆の為に闘い、そして友への愛を語って冷たくなっていった。


私も、原作以外のアランのについては、皆さんのSSの中でその後の姿を想像するだけでした。
とくに、二人を失った直後の彼を、彼の目線で追う事はなかった様に思います。アランの心と涙が、ずっしり胸にしみてくる様な気がします。


「出会いの日から」の締めくくりにふさわしい今日この日のお話でした。
ありがとうございました。




まだまだ続く雨の季節、被災地の方々に少しでも早く安らげる日が来る事を祈ります。


そして、かの地でも、どうかどうか凄惨な事件が起こりませんように。
代弁してもらった気分 (依久)
2017-07-14 07:48:29
おれんぢぺこ様

アランは一人生き残って何を想ったのかな?
長年なんとなく感じてきた事をズバリ、このお話で文章にしていただいた気持ちです。

アンドレは、やはりアランに託したのだと思います。
もしも、O様がバスティーユを生き残っていたら、アランとの人生もあったと思います。

それは、許せない、という気持ちもありますが自分も年齢を重ね、そういう人生も有りだと、最近は思うようになりました。

連日、新作アップで嬉しいです。

書きかけて寝かせておくこと、私もよくあります。
急いで出すよりも寝かせた方が良い場合もありますね。

暑いのでご自愛くださいね。
ありがとうございます (まぁこ)
2017-07-14 16:35:53
このサイトに出会って初めてのベルばら3ケ日。
この言葉もこのサイトで知りましたし、マジでどハマリしていた中学時代でも、3ケ日。と思った事はあまりなかったと思います。今年ほどこの日に思いを馳せた日はなかったかなぁ〜なんて。
うん。私も最後アンドレはアランにオスカル様の事、頼んだと思います。きっとあのセリフがあったのではないかと。でも!今回の話を読むまで思った事なかったぁ〜💦そんな独創性のない自分が恥ずかしくもあり、このサイトに出会えた事に感謝もして💖なんだか、本当に今までは何も思わずいた事が、ただあの漫画の中だけだったお話が色んな方向に思いを馳せられる事が嬉しいです。
連日のアップありがとうございました。
これからもまた素敵なお話お願い致します!
Unknown (まみも)
2017-07-14 17:40:36
おれんぢぺこ 様

7月14日 フランス革命という言葉を聞くと原作のO様が剣を持って指揮を執る姿が真っ先に浮かびます。
単純なんですけど…

アランは複雑な想い、感情を抱いて生きていかなければならなかったんですよね。私なら押しつぶされてます。
まだ幼かった頃は、O様とA君が死んでしまった後は切なくてほとんど読んでいませんでした。
SSの世界で気付かされ、いろいろと考え、少しは向き合えるようになってるかなぁと思います。

連日の更新 ありがとうございました!
今日この日 (もんぶらん)
2017-07-14 19:21:11
お久し振りです。この日のために、連日の更新をありがとうございました。お陰様で、季節感を味わいながらの3日間を過ごせました。

原作では、オスカル様、アントワネット様、フェルゼン伯の三人が主人公でしたが、後半になってアンドレが主人公を食ってしまい、事実上主人公の仲間入りしました。一方、おれんぢぺこさまの世界では、どうしたってOAAの三人が堂々の主人公ですね。ですから、アランの再生を示唆するエピソードがこの物語の締めくくりに来るのはもう納得以上の納得です。

そのアランですが、二人の死後、どんな風に人生を生き直したか、私も正直ちゃんと思いを馳せたことがありませんでした。でも、今日はアランの悲嘆と、それでも続く人生に前を向く姿勢を見せていただいて、感動しました。

私の勝手な番付ですが、OAAのうち、もし誰かひとりだけが生き残るとしたら、一番力強く立ち直れそうなのがアランです。勿論O様のことも信頼していますが、アランよりはちょっと時間がかかりそうといった感じです。一番心配なのはアンドレ。

神様は決して乗り越えられない試練を与えない、と言いますが、ちゃんとそれに見合った順番でお呼びをかけたんだなあ、とおれんぢぺこさまの作品を読んで浸っています。

ありがとうございました。
>マイエルリンク様 (おれんぢぺこ)
2017-07-16 21:12:28
ご訪問ありがとうございます

返信遅くなって申し訳ありません。家事雑務に振り回されておりました(;^_^A

>「出会いの日から」の締めくくりにふさわしい今日この日のお話でした
・・・ありがとうございます。本編のああとがきにも書きましたが、この話の大半はもう1年以上前には概ねが完成していたもので、何度か思い出しては修正したり、文章を加えたり…と繰り返しておりました。
アランの、喪失から浮上して行く、はじめの1歩、とでも言いましょうか。やっと完結でございます。

いつもお優しいコメントをありがとうございます。
またお時間のある時にお立ち寄りくださいませ
>依久様 (おれんぢぺこ)
2017-07-16 21:27:27
ご訪問ありがとうございます

返信遅くなって申し訳ありません。

>アンドレは、やはりアランに託したのだと思います。
もしも、O様がバスティーユを生き残っていたら、アランとの人生もあったと思います
・・・アランとの人生、という見方に関して…。私は、アンドレがO様のそばに存在しないならアランもいないと思っておりますので、ちょっと想像もつかないです。

その辺を依久様の所で扱われることがあるのかも、おとちょっと想像してしまいました。

いつも心温まるコメントをありがとうございます。
またお時間のある時にお立ち寄りくださいませ 
>まぁこ様 (おれんぢぺこ)
2017-07-16 21:37:16
ご訪問ありがとうございます

>・・・この言葉もこのサイトで知りましたし・・・
・・・私も数年前に某サイト様で初めて耳…ではなく目、にした時には頭の中『???』でした。でも、良くあてはめた言葉だな、と。『サワサワナイト』や『百合忌』とか…ベルファンにとっては、もはや常識???

私も、昔より今の方がこの時期に対する思いが深くなっている気がします。
中学生くらいの時は34歳になった時、この時期をどう過ごすんだろう、と考えた事はありましたが、実際の34歳前後は子育てに奮闘して考える余裕なかったし…という人が多いのではないでしょうか。

連日のおつきあい、私の方こそお礼申し上げます。
加えてお優しいコメントをありがとうございます。
またお時間のある時にお立ち寄りくださいませ
>まみも様 (おれんぢぺこ)
2017-07-16 21:49:23
ご訪問ありがとうございます

>まだ幼かった頃は、O様とA君が死んでしまった後は切なくてほとんど読んでいませんでした
・・・OA死後の連載は、原作者様にとっても残りの回数を制約されたりとか色々大変だったようですね。実在の人物が多くなってしまった関係で、教科書っぽくも見え、難しくなってしまった感は否めないのでしょうが、その中でも時折出て来る在りし日のO様の姿って、ときめきました。

こちらこそ、連日お付き合いいただきありがとうございました。
併せて、いつも温かいコメントをありがとうございます。
またお時間のある時にお立ち寄りくださいませ
>もんぶらん様 (おれんぢぺこ)
2017-07-16 22:07:28
ご訪問ありがとうございます

我が師匠・もんぶらん様!!
お久しゅうございます。

>・・・どうしたってOAAの三人が堂々の主人公ですね。ですから、アランの再生を示唆するエピソードが・・・
・・・ラブラブOAは好きですが、そこにちょっかい出すアランって、本当に大好きですねぇ( ´艸`)
やっぱり、だからこそ、OAを失った後も生きていかなければならないアランが、どんなふうに再起したのかは、書きたい場面ではありました。

『神は乗り越えられる試練しか与えない』
…聖書の中の言葉と記憶していますが、今やことわざっぽい引用の仕方をされる事の方が多いですよね。
本当だとすると、私のこの多重債務状態の仕事も、きっといつか乗り越えられるのでしょうか?

…などと愚痴ってもしようがありませんね。
お忙しい中、お優しいコメントをありがとうございました。
またお時間のある時にお立ち寄りくださいませ

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