オペラの夜

出掛けたオペラやコンサートを聴きっ放しにせず、自分の中で理解を深める為のブログです。

バッハ・コレギウム・ジャパン西宮公演

2009-07-15 | ピリオド
<一夜のヘンデル・フェスティヴァル!/没後二百五十年記念特別企画>
2009年7月15日(水)19:00/兵庫芸文センター小ホール

指揮&オルガン/鈴木雅明
ソプラノ/松井亜希/緋田芳江
カウンターテナー/青木洋也
テノール/谷口洋介
バス/浦野智行
バッハ・コレギウム・ジャパン(古楽器オーケストラ&合唱)

ヘンデル「合奏協奏曲~アレクサンダーの饗宴 HWV.318/オルガン協奏曲 HWV.289/
Laudate pueri Dominum しもべ等よ、主を称えよ~詩編112番 HWV.237/
Dixit Dominus 主は、我が主に云い給いぬ~詩編109番 HWV.232」


 今日も例によって指揮者の鈴木兄が、開演時間にマイクを持って舞台に現われる。ヘンデルのロンドンでの住居は現在、ヘンデル・ハウスとしてミュージアムになっている。結構広い家で、二階にはリハーサル室が設けられ、ここでヘンデルはオペラの稽古を付けていた。又、一階の通りに面した部屋には、チケット販売の窓口があり、ヘンデル御大自らコンサートのチケットを売っていたそうな。

 オール・ヘンデル・プログラムの最初は、まず小手調べに合奏協奏曲で、ヴァイオリン二本とチェロによるトリオと、トゥッティによる合奏のコンチェルト・スタイルによる曲。若松夏美と高田あずみと鈴木弟の三人は、お互いの呼吸を図って弾いているし、全員による合奏はトリオのノリを引き継ぎ、こちらも勝手に盛り上がっている気配がある。達者な人ばかり揃えた14人足らずのアンサンブルでは、指揮者の仕事の余地は小さそうだ。

 次は声楽曲で、「ラウダーテ・プエリ・ドミヌム」。ソプラノと、17名の五声コーラスの掛け合いを主体とした曲なので、やはり聴き処は、松井亜希によるソロの歌声と云う事になる。松井は古楽系ソプラノらしい細い声ではなく、ロマン派にも適性のある濃厚な音色のある歌手で、これまでの日本人ソリストには居なかったタイプ。勿論、細かいメリスマを揃える器用さもあるし、絹糸を張ったようにピンと張り詰めた高音のピアニッシモを、長く引き伸ばす声の力もある。モーツァルトならスザンナやパミーナよりも、ロジーナやドンナ・アンナに適性のありそうなソプラノで、これは楽しみな人と思う。

 休憩後はオルガン・コンチェルトで、ソロは鈴木兄が兼任する。でも、オケは時々休めるのに、オルガン・パートには休符の殆んど無い曲で、指揮をする余裕は全くない様子。譜捲りとストップを操作する女性が横に座った程だし、鈴木兄はオルガンを弾くのに精一杯で、アインザッツの指示さえ出せない状態。テンポが速過ぎたのかどうか指も回り切らず、モタモタした演奏になってしまった。教会で弾くのなら構わないが、最早コンサート・オルガニストとしては、引退勧告が必要かも知れない。

 最後に持って来た「ディクスィト・ドミヌス」が、今日のメイン・プログラム。実はこの曲を僕は昔、ピアノ伴奏による抜粋ではあるが、コーラスのメンバーとして歌った事がある。もっとも自分で歌った以外に、この曲を他人様の演奏で聴くのは、今日が初めての経験。こんな風に客席に座り、BCJの演奏で聴かされると、やっぱ名曲だよなぁ、もっとドシドシ演奏されて然るべき曲だよなぁ、と思う。この曲を歌った若い頃の思い出が、自然と湧き出て来るが、その辺りは出来るだけ排除し、客観的に聴くよう努める。

 この曲は歌い進むに連れ、段々と頭に血の昇って来る曲で、アマチュア・レヴェルではその勢いに乗って突っ走るのだが、さすがにBCJ合唱団はテノールが叫んだりはせず、軽やかなリズムと柔らかい音色を保ったまま、終曲へ向け盛り上げて行く。BCJ合唱団が、フォルテッシモでも透明な音色を失わないのは、アルト・パートが女声と男声二人づつで軽い音色を作っている事と、テノール・パートの決して力まない、柔らかい音色も貢献していて、内声の充実による全体のハーモニー感の意思統一は、見事と言うしかない。

 蚊帳の外みたいだった合奏協奏曲や、もたついたオルガン協奏曲とは打って変わり、「ディクスィト・ドミヌス」では指揮の鈴木兄も、持ち前の軽いリズム感で楽しい演奏を繰り広げ、僕もヘンデル節を堪能させて貰った。しかし、音楽の充実と比べ、今日の客の入りは今ひとつ。BCJの公演で、四百席の小ホールが満席にならないのは珍しく、やはりヘンデルと云えば、「水上の音楽」辺りをプログラムに加えないと集客に影響するのだと、今日は実感させられてしまった。

 カウンター・テナーの二人のうち、青木洋也はホスト風の容姿だが、上杉直也はトマトみたいに頭髪を逆立てて、もう良い歳だろうが少年っぽい風貌をしている。間宮芳生「ポポイ」初演のタイトル・ロールに上杉が起用されたのは、カウンター・テナーなら誰でも良かった訳ではなく、外見重視で選ばれたのだとは、横に居た青木との比較で、今日始めて気付いた事だった。
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