
2008年12月23日(火)13:30/宮津会館
指揮/成毛敦
ピアノ/乕田倫子
京都府立加悦谷高校合唱部
小林秀雄「落葉松」
磯部俶「時無草」
小倉朗「ほたるこい」(東北地方のわらべうた)
嘉門達夫「五段活用」
中島みゆき「ファイト!」
カッチーニ「アヴェ・マリア」
三善晃「響紋/訓戒による(狐のうた)」
福島雄次郎「色白女童」(道之島唄)
鈴木輝昭「台風」(詩篇)
ヘンデル/加賀清孝編曲「Hallelujah!」(メサイア)
梅原司平「生命の歌」
加悦谷高校合唱部は、顧問として在任35年と云う成毛教諭に率いられ、国内での活動に留まらず、ウィーンで開催されるフランツ・シューベルト国際合唱コンクールに遠征し、四回出場の全てに総合一位の成績を収めている実力派。その声楽的なレヴェルの高さは、変声後のジュニア・コーラスとして特筆すべきものがある。近年は部員数の減少により、その活動範囲は狭まっているが、指揮者が交代した訳ではないので、音楽的な内容には些かのブレもない。僕は今年も鈍行を乗り継いで本州を縦断、年に一度の定期演奏会を聴きに出かけた。
今日の宮津市の天気は小雨が降ったり止んだりで、日本海に面したホールから沖合いを眺めると、天橋立の方角に虹が掛かっている。今日の定演のステージに載った合唱部員は22名で、昨年より漸減。新入部員は六名に留まり、やはり厳しい状況が続いている。
「落葉松」はピアノ伴奏付きで、甘いメロディーを歌い上げる曲。「ほたるこい」はシンプルなアカペラ三声カノンで、この二曲は共に長く歌い継がれて来た、邦人女声合唱曲を代表するレパートリーである。「落葉松」は例によって、加悦谷らしい濃厚な歌い回しだが、まだ声が温まっていないのか、パートの内部が揃わず、ピタリと着地が決まらない印象。「ほたるこい」の方は透明感のある歌声で、幻想的な雰囲気を醸す秀逸な演奏になった。こちらの先入観として、ここの指揮者には「落葉松」のような、甘ったるい曲が合うと云う思い込みがある。しかし、実際の演奏に接すると、「ほたるこい」の抽象的に組み立てられた音楽の方が、指揮者の音楽性に寄り添っているのだと気付かされる。
「ファイト!」は縦をビシリと揃え、リズムを強調しながら終盤に向け盛り上げる、指揮者の手腕が素晴らしい。でも、ギャグ・ソングの「五段活用」は、ちっとも笑えない。このテの編曲物でキレイにハモらせる必要があるのは、ギャグの部分との落差の可笑しさを狙っての事なので、演奏の充実が求められるのは、あくまで笑いを取る為の手段としてなのだ。どうも、成毛先生のマジメに完成度を高めようとする演奏では、腋の下をムリヤリ擽られているような気分になるのである。
「アヴェ・マリア」は全くバロックぽくない、日本の合唱曲みたいな編曲を、何だか「落葉松」と同じような調子で、甘くコッテリと歌い上げる。でも、30余名のOGを加えて演奏された、女声のみによる「ハレルヤ・コーラス」は、日本語歌詞ではあったが、その華やかで快活な音楽は、正統的なバロック様式に則った“メサイア”になっていて、BCJよりも楽しく聴けた。この指揮者にヘンデルが合うと云う事実にも、やや意外の観はあるが、過剰な表情を付ける余地のない曲に、むしろ適性があると云う事なのだろう。
三善晃は、「響紋」を現役のみの20名余りで、「狐のうた」はOG合同の60名足らずで演奏される。「響紋」 の原曲はオケ伴だが、今日の演奏はピアノ一台による伴奏の編曲版。しかし、この曲にはオケと合唱の協奏曲的な要素が強いので、作曲者が最初からピアノ譜を付けた曲と、同じ効果は揚がらない事に気付かされてしまう。合唱の「かごめ、かごめ」のピアニッシモも、張り詰めたテンションではなく、童謡的な緩さで歌われ、僕が期待していたような強烈な演奏とは、やや異なるものだった。
「訓戒」は、司会役の女子生徒も述べていた通り、コンクールで繰り返し演奏され、我々に深い印象を与えた曲。久し振りに聴く、加悦谷の「訓戒」だったが、やはりOG達との合同練習が足りなかったようで、細部のリズムに不揃いが目立ち、これも期待した程にはテンションが揚がらない。でも、加悦谷の演奏で、三善の重量級を二曲も聴けたので、個人的にはそれだけで満足。
この定演の毎年恒例で、卒団する三年生全員が、それぞれ挨拶を述べる。その後、九名のメンバーにより、長淵剛の「乾杯」が歌われたのだが、これを聴くと今年の三年生には、個々の実力のある事が良く分かる。だが、加悦谷の攻める発声法では、二十名程度の少人数を纏め切るのは至難の業で、パート内部のバラつきが聴こえてしまうのは、已む終えない処だろう。
でも、コンクールで成績を残せずとも、加悦谷は加悦谷、キツネはキツネ。これも毎年恒例のエンディング、「マイ・ウェイ」では、ソプラノが元気に最後のハイCを歌い切り、僕は充分にコンサートを堪能させて貰い、家路に着いた。
指揮/成毛敦
ピアノ/乕田倫子
京都府立加悦谷高校合唱部
小林秀雄「落葉松」
磯部俶「時無草」
小倉朗「ほたるこい」(東北地方のわらべうた)
嘉門達夫「五段活用」
中島みゆき「ファイト!」
カッチーニ「アヴェ・マリア」
三善晃「響紋/訓戒による(狐のうた)」
福島雄次郎「色白女童」(道之島唄)
鈴木輝昭「台風」(詩篇)
ヘンデル/加賀清孝編曲「Hallelujah!」(メサイア)
梅原司平「生命の歌」
加悦谷高校合唱部は、顧問として在任35年と云う成毛教諭に率いられ、国内での活動に留まらず、ウィーンで開催されるフランツ・シューベルト国際合唱コンクールに遠征し、四回出場の全てに総合一位の成績を収めている実力派。その声楽的なレヴェルの高さは、変声後のジュニア・コーラスとして特筆すべきものがある。近年は部員数の減少により、その活動範囲は狭まっているが、指揮者が交代した訳ではないので、音楽的な内容には些かのブレもない。僕は今年も鈍行を乗り継いで本州を縦断、年に一度の定期演奏会を聴きに出かけた。
今日の宮津市の天気は小雨が降ったり止んだりで、日本海に面したホールから沖合いを眺めると、天橋立の方角に虹が掛かっている。今日の定演のステージに載った合唱部員は22名で、昨年より漸減。新入部員は六名に留まり、やはり厳しい状況が続いている。
「落葉松」はピアノ伴奏付きで、甘いメロディーを歌い上げる曲。「ほたるこい」はシンプルなアカペラ三声カノンで、この二曲は共に長く歌い継がれて来た、邦人女声合唱曲を代表するレパートリーである。「落葉松」は例によって、加悦谷らしい濃厚な歌い回しだが、まだ声が温まっていないのか、パートの内部が揃わず、ピタリと着地が決まらない印象。「ほたるこい」の方は透明感のある歌声で、幻想的な雰囲気を醸す秀逸な演奏になった。こちらの先入観として、ここの指揮者には「落葉松」のような、甘ったるい曲が合うと云う思い込みがある。しかし、実際の演奏に接すると、「ほたるこい」の抽象的に組み立てられた音楽の方が、指揮者の音楽性に寄り添っているのだと気付かされる。
「ファイト!」は縦をビシリと揃え、リズムを強調しながら終盤に向け盛り上げる、指揮者の手腕が素晴らしい。でも、ギャグ・ソングの「五段活用」は、ちっとも笑えない。このテの編曲物でキレイにハモらせる必要があるのは、ギャグの部分との落差の可笑しさを狙っての事なので、演奏の充実が求められるのは、あくまで笑いを取る為の手段としてなのだ。どうも、成毛先生のマジメに完成度を高めようとする演奏では、腋の下をムリヤリ擽られているような気分になるのである。
「アヴェ・マリア」は全くバロックぽくない、日本の合唱曲みたいな編曲を、何だか「落葉松」と同じような調子で、甘くコッテリと歌い上げる。でも、30余名のOGを加えて演奏された、女声のみによる「ハレルヤ・コーラス」は、日本語歌詞ではあったが、その華やかで快活な音楽は、正統的なバロック様式に則った“メサイア”になっていて、BCJよりも楽しく聴けた。この指揮者にヘンデルが合うと云う事実にも、やや意外の観はあるが、過剰な表情を付ける余地のない曲に、むしろ適性があると云う事なのだろう。
三善晃は、「響紋」を現役のみの20名余りで、「狐のうた」はOG合同の60名足らずで演奏される。「響紋」 の原曲はオケ伴だが、今日の演奏はピアノ一台による伴奏の編曲版。しかし、この曲にはオケと合唱の協奏曲的な要素が強いので、作曲者が最初からピアノ譜を付けた曲と、同じ効果は揚がらない事に気付かされてしまう。合唱の「かごめ、かごめ」のピアニッシモも、張り詰めたテンションではなく、童謡的な緩さで歌われ、僕が期待していたような強烈な演奏とは、やや異なるものだった。
「訓戒」は、司会役の女子生徒も述べていた通り、コンクールで繰り返し演奏され、我々に深い印象を与えた曲。久し振りに聴く、加悦谷の「訓戒」だったが、やはりOG達との合同練習が足りなかったようで、細部のリズムに不揃いが目立ち、これも期待した程にはテンションが揚がらない。でも、加悦谷の演奏で、三善の重量級を二曲も聴けたので、個人的にはそれだけで満足。
この定演の毎年恒例で、卒団する三年生全員が、それぞれ挨拶を述べる。その後、九名のメンバーにより、長淵剛の「乾杯」が歌われたのだが、これを聴くと今年の三年生には、個々の実力のある事が良く分かる。だが、加悦谷の攻める発声法では、二十名程度の少人数を纏め切るのは至難の業で、パート内部のバラつきが聴こえてしまうのは、已む終えない処だろう。
でも、コンクールで成績を残せずとも、加悦谷は加悦谷、キツネはキツネ。これも毎年恒例のエンディング、「マイ・ウェイ」では、ソプラノが元気に最後のハイCを歌い切り、僕は充分にコンサートを堪能させて貰い、家路に着いた。











「オペラの夜」さんは、新春コンサートはまだですか? ところで、先日はオモローなコメント有難うございました。
ホルンはミスが目立ちやすいので、演奏者はきっと緊張するんでしょうね。
加悦谷高校合唱部は、すごい合唱団なんですね。
私は6月に来日する、国立モスクワ合唱団の公演に行く予定です。まだまだ先の公演ですけど、合唱は久しぶりなので、楽しみにしています。
あのソロは技術的難易度が高いらしいし、聴く方も多少は、失敗を期待する気持ちはありますよね。
加悦谷高校の過去の実績は抜群ですが、そのテの強豪にはコンクール曲以外の演奏はサッパリ、と云う団体も多いのです。その点、加悦谷は定期演奏会も充実しているのが素晴らしい、と僕は思っています。