オペラの夜

出掛けたオペラやコンサートを聴きっ放しにせず、自分の中で理解を深める為のブログです。

京都市交響楽団第560回定期演奏会

2012-08-12 | モダンオケ
2012年8月12日(日)14:30/京都コンサートホール

指揮/井上道義
ピアノ・デュオ/瀬尾久仁&加藤真一郎
ソプラノ/谷村由美子
京都市交響楽団
京響コーラス

ガーシュウィン「パリのアメリカ人」
プーランク「二台のピアノと管弦楽のための協奏曲/スターバト・マーテル」


 お盆前の日曜日、京都まで京響定期を聴きに出掛けた。定期での声楽入り大曲(第九を除けば)は、昨夏に大野和士の振ったマーラーの三番以来で、指揮は元常任の井上ミッキー。真夏の八月に、オケ定期の行われるのは珍しい気のするが、今日はプーランクとガーシュインのフランス・プロで、如何にも涼し気な選曲である。

 最初のガーシュウィンは井上好みなのか、クラクションへのキューの出し方等、何時も通りのミッキー・アクションで、このテの曲をやらせると、さすがに盛り上げてくれて楽しい演奏だった。だが、それに引き換えオケのメンバーの、皆しかめっ面なのが気になる。それなりにスィングはしているし、弦楽はタップリ弾かせて貰ってノリは悪くないのだが、どうも管楽器がマジメで大人しい。この曲はジャズなのだから、ソロを取る奏者は勢い良く立ち上がり、吹いて欲しい位のものだ。

 それでも後半テンポ・アップすると、ようやくメンバーの身体も揺れ出したが、これではエンジンの掛かりが遅過ぎる。プロオケの奏者は往々にして、いきなりは曲に入り込まず、お互いの様子を窺う傾向がある。だが、ここはパフォーマンスの積もりで、最初から思い切り飛ばして欲しかった。

 二台ピアノのセッティングの為、暫時休憩に入る。幕間を利用して出たがり、喋りたがりのミッキーが舞台に登場、曲目の解説など行う。次の休憩には出て来ないと言い、「スタバート・マーテル」の話等もした。

 僕にピアノ・デュオの上手い下手は良く分からないが、このコンビはリズム感に秀でていて、それが必要条件なのだろうと云う見当は付く。一楽章は切れ味鋭く乾いた音で進め、最後はミニマム音楽みたいな響きがあり、二楽章ではソナチネ風のピアノと映画音楽風のオケとの対比がある。でも結局、三楽章に至っても僕のイメージするプーランクらしい音楽にはならず、ストラヴィンスキーでも聴いているような気分の内に終わる。まだ若い二人のソリストには、エスプリ表現まで手の回らない様子があった。

 二台ピアノお片付けの休憩後、メイン・プロの「スタバート・マーテル」。棒を持たず指揮する井上には、プーランクの奥底にある非情な冷たさを感じさせない、暖かいニュアンスに満ちた柔らかい音楽作りがある。昼下がりの軽妙洒脱に走るのではない、ヒューマニスティックな演奏と感じる。これを意外と言っては失礼だが、おちゃらけ好きな井上ミッキーにも、真摯に音楽と向き合う姿勢のあるのは当然だろう。

 アマチュアの京響コーラスは、55名のメンバーに12名のプロトラを加え、取り分けバス・パートは七名の内の五名がエキストラでの演奏。トラを含めた全員が暗譜で、なかなか気合の入っている様子は窺える。だが、37名の内に二名しかトラの居ない女声は、音程の怪しい上にオバサン声。パート内部の揃わず、結構個々の声の聴こえて来て、プーランクに必要とされる透明感が無い。でも、平均年齢の高そうな割に、指揮者の要請に応えるフレキシビリティは保っていて、そんなに悪い出来でもない。只まあ男女共に、ガツンとフォルテを張るだけの声の力は無く、オケに支えて貰っている感じで、かなり頼り無さそうではある。

 ソリストの谷村には声量があり、オペラっぽく表現力を前に押し出す歌い振り。冷涼な音色ではなく、暖かい色合いのある声質で、恐らくは指揮者の音楽作りに合わせた人選だろう。彼女が上賀茂生まれで、京都市少年合唱団出身(佐渡裕の後輩だね)だからと云うのが、理由ではなかろうと思う。谷村の歌う「Vidit suum dulcem Natum」を聴き、僕はオペラ「カルメル会修道女の対話」のブランシェを思い起こす。今日、生演奏で初めて聴く「スタバート・マーテル」には、あの峻厳な音楽に対応するものがあると実感させられた。

 井上ミッキーのデビュー当時、彼は何分にもハーフで彫りの深い顔立ちだし、頭髪の薄いのには相当な違和感のあったが、今現在は年齢相応で禿げ頭が馴染んで見える。そして風貌と共に、その音楽性も相応の深みを加えていると、今日の演奏を聴いて知らされた。その踊る指揮姿は何も変わらないだけに、僕としては些かの感慨を覚えるのだ。
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