「通夫さんの奥さんが亡くなったみたい。」
泊り明けで大頭にいた僕は大ちゃんママから朝連絡をもらった。僕は急いで通夫さんの孫に連絡した。
今日がお葬式なんよと言う友達の声は小さく、信じれない気持ちが大きかった僕は本当なんだと思うしかなかった。
お葬式でいろんな事を思ったんだけど、おばぁちゃんはきっと通夫さんとおりたかったんだろうなって気持ちが強かった。
あの日から離れてしまってたから。きっとそうだろうと。これでやっと一緒になれたのかもしれないと。
そしてその日の夜、大頭に泊ってる政子さんが廊下の扉をあけて玄関を見ながら言ったらしい。
おじいさんとおばあさんが来とると。その日の泊りはさやかちゃん。
次の日の朝、さやかちゃんにそれを聞き、挨拶に来てくれたんだろうねと言いあった。
そう思える日々が僕たちには存在してる。
じーちゃん美代ちゃんの新盆。
ヒーちゃんにお墓参りに行こうと伝えたら、「新しい靴下を出してくれ。お米を一握りだしてくれ。」と言い、
僕があげた巾着袋にいろいろ詰めてお墓参りの支度を始める。
大頭という場所で井上家とともに過ごした日々。
ヒーちゃんの記憶にはないかもしれない、けど、けど、それは事実として存在してた日々。真実。
誰のお墓なのかはわかってないかもしれない。けど、それはいい。
でも、あの日々を過ごした人たちが、あの日々を過ごした人たちのもとに行ってるのは事実。
最近だんだんと歩くのがしんどくなってきてるヒーちゃんのことを思うと、この坂は無理だろうと思ってた。
だから車椅子は持っていかなかった。車で待ってもらうつもりだった。
でも現地に着くと「無理」とかではなく、
何も考えず一緒に車を降り、そこらへんに落ちてた桜の木の枝をヒーちゃんに渡して歩いてた。
でも、急な坂道。
心配して無理なら背負うからと伝える僕に、「これくらい何ともない。」と言いながら、急な坂道をのぼってる。
最後の急な坂をのぼりきる間際に見えてきたお墓。
あの日々を知ってるその後ろ姿に様々な感情が込み上げてくる。
二人仲良く迎えた新盆。
ただただ大きい存在なんだと思う。
帰りにじーちゃんと美代ちゃんの家に寄った時、娘さんが言ってくれた。
「たぶん、じーちゃんとばーちゃんは大頭に帰ってると思う。」
あの二人からしたら、家は大頭なんだと。
そう思ってくれる家族の凄さ。その思いが心に響く。何よりも。
大頭に戻った僕たちは、じーちゃんと美代ちゃんの部屋にお菓子を甘いお菓子を供えました。
たぶんおるからさ。
今日、ある方のお葬式でした。
それはまたにします。