第五十一話 春遠し?
♪トゥルルンルン~
「着たっ!」
瞬の携帯が、瞬にメールが着信したことを知らせた。メールの差出人は真美に違いない。瞬のところにくるメールといえば、たまに千葉の実家からか、未来との連絡用か、登録している無料着メロサイトからだけであり、全くメールの来ない日もよくあるくらいだから、このタイミングでメールが着たということは、真美から以外には考え難かったのだ。
瞬はドキドキと高鳴る胸を堪えながら、携帯電話を開いた。瞬の手がブルブルと震えているのが、誰の目から見ても明白だ。もっともそこには瞬以外の人間はいないのだが。
『瞬君こんにちは! 突然のメールで驚きました。瞬君はあたしと気が合うと言いますが、あたしはまだ瞬君のことをよく知らないし、気が合うかどうかは軽々には判断出来ません。でも、瞬君は未来のいとこだし、あたしが遊びに行った時に、仲良くなれそうだねと言った覚えがあるので、友達になったら楽しいかも知れません。でも、未来に内緒で会うのはどうしてかな? それと、変なことはしませんってどういう意味ですか? そんなの当たり前じゃないですか? 変なことって…。とりあえず、メル友になりましょう! お互いを知ることから始めないとね!』
瞬は真美からの、真面目過ぎる返信を読んで、自分が恥ずかしくなった。そして引いた。なにしろ瞬は、セックスの相手を獲得する目的で真美にメールを出したのだから。
瞬はそのあと、真美にメールの返信を出さなかった。というか、出せなかった。自分と真美の意識のあまりのギャップの大きさに興醒めしてしてしまったからだ。
そして、数日が過ぎたある日、未来が瞬に話があると言ってきた。
「瞬、あんた真美にメール出したでしょ?」
ギクッとする瞬。
「だ、出したけど」
「真美から返事がきたよね?」
「着たよ」
「それで?」
「それでって、それだけだけど…」
未来はため息をつきながら、やや口調を荒げて言った。
「それだけ。じゃないでしょ! 真美ね、ちゃんと返事を出したのに、その後、瞬から何の連絡もないって気にしてたよ! あたしの出した返信の内容が気にいらなかったのかなって、すっごく気にやんでたんだから!」
瞬はちょっと困ったような顔をした。
「別に気に入らないとかそんなんじゃないけど、なんとなくそのままにしてるうちに時間が経っちゃって、ウヤムヤになったって言うか…なんちゅうか、本中華」
未来はかなり声を荒げた。
「あんたには女の子のデリカシーがわかんないのかな!? 突然、仲良しになってって言われて、それから放ったらかしにされてる真美の気持ちを考えてもみなよ! ちゃんと真美に返事を出しな! 謝るのも忘れないようにしてね! それがあんたの責任だよ!」
瞬は、どういう理由で自分が真美にメールを出したのかを全く知る由もない未来の目を、冷めた目で見た。
しかし瞬は、未来に言われた通りに、真美にメールの返事を出した。勿論、詫びの言葉も添えてだ。
真美からのリアクションはすぐにあった。『良いお友達になりましょう! 瞬君はテニスはしないの? 今度、一緒にしようね!』
外は久しぶりに雨が降っている。瞬の部屋の窓から見える紫陽花の葉の上をカタツムリが這っている。
瞬は窓枠に肘をつき、そのカタツムリを見ながら虚ろな目で考えていた。
「あーあ、早くセックスしたいな…」
瞬は、真美と仲良くなれば、直ぐにでもセックスが出来るものだと決めつけていた。しかし、何通かのメールのやり取りからして、それはあまりに無謀な願いであることが判明してきた。
思春期の男女の意識のギャップを思い知らせた瞬。と、思いきや、瞬の春は意外と早くやって来るのであった。
♪トゥルルンルン~
「着たっ!」
瞬の携帯が、瞬にメールが着信したことを知らせた。メールの差出人は真美に違いない。瞬のところにくるメールといえば、たまに千葉の実家からか、未来との連絡用か、登録している無料着メロサイトからだけであり、全くメールの来ない日もよくあるくらいだから、このタイミングでメールが着たということは、真美から以外には考え難かったのだ。
瞬はドキドキと高鳴る胸を堪えながら、携帯電話を開いた。瞬の手がブルブルと震えているのが、誰の目から見ても明白だ。もっともそこには瞬以外の人間はいないのだが。
『瞬君こんにちは! 突然のメールで驚きました。瞬君はあたしと気が合うと言いますが、あたしはまだ瞬君のことをよく知らないし、気が合うかどうかは軽々には判断出来ません。でも、瞬君は未来のいとこだし、あたしが遊びに行った時に、仲良くなれそうだねと言った覚えがあるので、友達になったら楽しいかも知れません。でも、未来に内緒で会うのはどうしてかな? それと、変なことはしませんってどういう意味ですか? そんなの当たり前じゃないですか? 変なことって…。とりあえず、メル友になりましょう! お互いを知ることから始めないとね!』
瞬は真美からの、真面目過ぎる返信を読んで、自分が恥ずかしくなった。そして引いた。なにしろ瞬は、セックスの相手を獲得する目的で真美にメールを出したのだから。
瞬はそのあと、真美にメールの返信を出さなかった。というか、出せなかった。自分と真美の意識のあまりのギャップの大きさに興醒めしてしてしまったからだ。
そして、数日が過ぎたある日、未来が瞬に話があると言ってきた。
「瞬、あんた真美にメール出したでしょ?」
ギクッとする瞬。
「だ、出したけど」
「真美から返事がきたよね?」
「着たよ」
「それで?」
「それでって、それだけだけど…」
未来はため息をつきながら、やや口調を荒げて言った。
「それだけ。じゃないでしょ! 真美ね、ちゃんと返事を出したのに、その後、瞬から何の連絡もないって気にしてたよ! あたしの出した返信の内容が気にいらなかったのかなって、すっごく気にやんでたんだから!」
瞬はちょっと困ったような顔をした。
「別に気に入らないとかそんなんじゃないけど、なんとなくそのままにしてるうちに時間が経っちゃって、ウヤムヤになったって言うか…なんちゅうか、本中華」
未来はかなり声を荒げた。
「あんたには女の子のデリカシーがわかんないのかな!? 突然、仲良しになってって言われて、それから放ったらかしにされてる真美の気持ちを考えてもみなよ! ちゃんと真美に返事を出しな! 謝るのも忘れないようにしてね! それがあんたの責任だよ!」
瞬は、どういう理由で自分が真美にメールを出したのかを全く知る由もない未来の目を、冷めた目で見た。
しかし瞬は、未来に言われた通りに、真美にメールの返事を出した。勿論、詫びの言葉も添えてだ。
真美からのリアクションはすぐにあった。『良いお友達になりましょう! 瞬君はテニスはしないの? 今度、一緒にしようね!』
外は久しぶりに雨が降っている。瞬の部屋の窓から見える紫陽花の葉の上をカタツムリが這っている。
瞬は窓枠に肘をつき、そのカタツムリを見ながら虚ろな目で考えていた。
「あーあ、早くセックスしたいな…」
瞬は、真美と仲良くなれば、直ぐにでもセックスが出来るものだと決めつけていた。しかし、何通かのメールのやり取りからして、それはあまりに無謀な願いであることが判明してきた。
思春期の男女の意識のギャップを思い知らせた瞬。と、思いきや、瞬の春は意外と早くやって来るのであった。