温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

赤湯温泉 清茂登旅館

2015年07月07日 | 山形県
 
梅雨の只中だというのに、季節外れの雪景色を写した温泉レポートをアップして恐縮です。半年前の某日、山形県の赤湯温泉へ出かけ、数軒の旅館で温泉をハシゴしてまいりました。まず一軒目は飲み屋が軒を連ねる細い路地の角にある旅館「清茂登」です。昭和の表現で言えば三業地のような区域にあり、後背に黄色い外観の連れ込み(廃業済み?)が聳えているため、渋くて地味な建物は、一見すると古風な料亭のようでもあります。


 
あまりにも静かな佇まいなので、営業しているのか不安になりつつ、引き戸に手をかけると、玄関の戸がスッと開いてくれたので、門前払いという事態は避けられそう。上がり框の左手に見えるお座敷には一人のお婆ちゃんが座っていたので、日帰り入浴をお願いすべく声を掛けたのですが、耳が相当遠いのか、いくら呼んでも全く反応してくれません。仕方なく館内に上がって、奥の方に向かって腹から声を出したところ、ようやく2階から女性の方が下りてきて、対応して下さいました。階段下には鷹の羽の家紋が染め抜かれた暖簾が掛かっていたのですが、これってオーナーさんの家紋なのかな。


 
玄関から右手に上がって180度ターンして折り返すような形で廊下を進み、その突き当たりにある浴室へと向かいます。お風呂は男女別の内湯が一室ずつで、男湯のドアは青く、女湯のドアは赤く塗り分けられていました。


 
脱衣室は3畳程度のこぢんまりとした空間ですが、窓から降り注ぐ外光のおかげで十分に明るく、必要最低限のものが揃っており、この規模のお風呂には珍しくドライヤーも備え付けられていました。



アルミの引き戸を開けた向こう側にある浴室もコンパクトで、旅館というより民宿のような規模であり、少人数しか入れない小さな浴槽がひとつ据えられているばかりです。湯気の篭った室内では、湯口のお湯が浴槽へトポトポと落ちる音が響いていました。奇を衒うことのないシンプルな造りですが、床には大きさや色合いの異なる石材がモザイク模様を描くように敷かれており、温泉旅館としての品の良さ、そして非日常感をさりげなく演出しようとする心意気が伝わってきます。


 
洗い場にはシャワー付きカランが2基並んでおり、カランから出てくるお湯は真湯です。ハンドルを捻ってお湯を出すと、裏手からボイラーの運転音が聞こえてきました。備え付けのシャンプー類のボトルに手書きされた名前が、何とも言えず素朴で良い感じ。


 
浴槽はおおよそ1間(約1.8m)四方で、2~3人サイズ。浴槽の側面やステップには豆タイルが貼られていますが、縁には分厚い御影石が、底面にも石材が用いられており、小さいながらも重厚感があって、入り応えもしっかりしています。その縁の上をお湯が絶え間なく溢れ出ており、小さな波を作りながら洗い場の床を流下し、モザイク模様の表面を漱いでいました。


 
男女両浴室を仕切る塀に石造りの湯枡が設けられており、下から噴き上がったお湯は、そこからふた手に分かれて両浴槽へとお湯を注いでいました。こちらに引かれているお湯は、赤湯温泉ではメジャーである森の山源泉と森の山2号源泉の混合泉。
湯枡における温度は55.3℃と結構熱く、直に触ると火傷しそう…。そんなアツアツなお湯を口にすると、薄い塩味とタマゴ味が感じられた他、湯口からは薄いタマゴ臭と弱い焦げ臭が漂っており、その匂いは湯気とともに室内にしっかりと充満していました。また湯枡の中には湯の華がたっぷり溜まっており、その影響で内部は白く染まっていました。


 
お湯の見た目は無色透明ですが、湯中では溶き卵のような形状をした純白の湯の華がたくさん浮遊しており、湯船のお湯を桶で汲むだけでも、上画像のようにたくさん採集できちゃいます。湯口では50℃以上の高温でしたが、湯船では43.6℃と、熱めながらも入浴できる湯加減まで抑えられていました。加温加水循環消毒の無い完全掛け流しですから、お湯の投入量だけで湯加減を調整しているわけですね。とはいえ、決して湯量が絞られているわけではなく、上述のようにお湯は常に縁からしっかりと溢れ出るほどの投入があり、しかも湯船自体もコンパクトサイズですので、湯船に入った際に得られるフレッシュ感は抜群です。更には食塩泉らしい滑らかな浴感も優しく肌にまとわりついてくれます。入りしなこそピリッと熱いのですが、鮮度と熱さのおかげで心身がシャキッとしますし、タマゴ感を有するお湯は温泉情緒を一層高めてくれますから、こうした気持ち良さが病みつきになって、今回の利用では湯船に入ったり出たりを何度も繰り返し、存分に赤湯のお湯を楽しませていただきました。なお、熱くて入れない場合でも、洗い場のカランにはホースがつながっていますから、これで加水すれば大丈夫。

飾り気の無いシンプルでコンパクトな浴室は、鮮度感抜群のお湯とじっくり対峙するのに最適です。赤湯温泉の本質を教えてくれる、素晴らしいお風呂でした。


森の山源泉・森の山2号源泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 61.2℃ pH7.5 蒸発残留物2241mg/kg 溶存物質1972mg/kg
Na+:531.0mg, Ca++:168.1mg,
Cl-:975.4mg, Br-:2.9mg, I-:0.3mg, HS-:2.1mg, SO4--:155.1mg, HCO3-:66.3mg,
H2SiO3:49,3mg, CO2:14.6mg, H2S:0.7mg,

JR奥羽本線(山形新幹線)・赤湯駅より徒歩20分(1.7km)
山形県南陽市赤湯424-5  地図
0238-43-2039

日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品は帳場預かり

私の好み:★★★



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4 コメント

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Unknown (Dan)
2015-07-08 09:13:06
ほんと昭和の香りがプンプンする地域に
この宿はありますよね
まさに「三業地」って表現がパシっとハマります(^o^)v
この宿自体が昭和って感じですもんね
私はここが大好きです
フレッシュなお湯がガンガン注がれ、香りも良しで
夏場は窓がフルオープンされてます(笑)
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Unknown (K-I)
2015-07-09 01:33:38
Danさん、こんばんは。あえて歓楽街と表現せずに「三業地」と書いたのですが、その感覚がご理解いただけてうれしいです(^^) 訳ありな中年の哀愁みたいなものが、この一角には漂っているんですよね。人間だれしも脛に一つや二つの傷は抱えてるもんだろ、みたいな雰囲気…。そんな環境だからこそ、あのお湯のフレッシュさが一層際立っていたように感じられました。Danさんのブログを拝見したことが、こちらのお宿の訪問を決めたきっかけの一つです。いつも参考にさせていただいております。
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Unknown (Dan)
2015-07-09 08:56:53
>いつも参考にさせていただいております。
いやいや、そんな畏れ多いことです(大汗)
隣県ですからウロウロと・・・(o^^o) 
南陽赤湯に最初に入ったのが大型ホテルでして
日帰り入浴客をあからさまに差別した待遇に
いささか腹立たしく思ったものでした(笑)
今じゃ色々な旅館にも入らさせて頂いて、
好きな温泉地の一つです
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Unknown (K-I)
2015-07-10 21:54:48
>Danさん
日帰り入浴対応の良し悪しは、その宿や温泉地の印象を大きく左右するものですよね。大きな宿でも好印象なところは、スタッフ一人ひとりにオーナーの経営方針がきちんと伝わっているんだろうな、と安心して利用できますね。
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