温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

福建・広東の旅 その9 従化温泉 北渓松林酒店

2015年10月19日 | 中国
前回記事の続きです。

従化バスターミナルから路線バスに乗ること約45分で従化温泉街の中心部にたどり着いたわけですが、まだこの晩の宿を決めていなかったので、まずは豪雨の中をウロウロして宿を見つけなければなりません。バス停の正面には、従化温泉を代表する名門温泉旅館「広州温泉飯店」のフロント棟がありましたので、まずはそこを訪ねてみたのですが、フロントのお姉さんは雨でズブ濡れの一人旅の外国人を見て「こいつは金が無さそうだ。うちみたいな名門宿とは不釣合いだな」と値踏みしたのか、一応空室を調べる小芝居を打たれた後に「満室です」と慇懃無礼に断られてしまいました。


 
温泉街には規模の大小を問わずたくさんの宿があり、その全てを一軒一軒訪ね歩けば、混雑する週末であっても、間違いなく自分の予算に見合った宿が見つかるはずなのですが、なにしろ傘が全く役に立たないほどのものすごい豪雨ですので、この時の私はできるだけ早く屋根の下に入って宿を決めたい心境でした。でもバス停周辺で看板を出している大規模旅館は、みなそれぞれ結構な値段(日本円で一泊10,000円以上)を提示しており、足元を見られて安易に妥協し、相手の思う壺にハマるのも癪に障ります。そんな葛藤に悩んでいると、バス停からちょっと奥まったところに「露天温泉池」と記された大きな看板を出す質素な外観の宿「松林酒店」を見つけ、ここなら何とかなるだろうと、一か八かで訪ねたところ、玄関で客引きをしていたおじさんがこちらへ近寄り、部屋だけでも見てくれと声をかけてきましたので、日光猿軍団の元校長に似ているそのおじさんの後について館内へ入ってみることにしました。


 
通された客室はツインルーム。テレビ・エアコン・冷蔵庫などひと通りの設備が揃っており、中国茶のセットも用意されています。Wifiも飛んでおり、不安定で途切れ気味ですが、とりあえずそこそこ使えます。後述するバスルームにはバスタブが備え付けられており、おじさん曰く温泉のお湯が出てくるとのこと。お部屋の中身はともかく、おじさんが提示した値段が250元(約4,500円)と他宿に比べて安く、何よりも温泉に入れるバスルームが付帯していることが決め手となり、藁にもすがりたい思いも相俟って、ここで一晩を過ごすことにしました。



おじさんは部屋のドア施錠に関する説明で、鍵だけではなくチェーンもちゃんと掛けてね、と念を押していたのですが、実際にフロントで鍵をもらってその意味がわかりました。上画像で、番号札の上に写っている金属の板が部屋の鍵なのですが、鍵にあるべき溝や凹凸がなく、単なる薄っぺらい板に過ぎないのです。これをドアノブの穴へ差し込むだけで簡単に解錠されてしまうため、別にこの鍵が無くても、おそらく穴に入る薄い板があれば客室の中に入れちゃうものと思われます。このため外出時は貴重品のみならず、盗まれたらイヤなものは一式まとめてバッグに詰め込んで携行しました。幸いにして、この時は何の被害にも遭いませんでしたが…。


 

こちらは客室に付帯しているバスルームの様子。洗面台には歯ブラシや入浴剤(女性の写真がプリントされているもの)などのアメニティーが用意されていましたが、いずれも低品質で、歯ブラシは磨いているうちにブラシが口の中でバラバラになってゆくひどい代物。備え付けのタオルも何度洗濯されてきたかわからないほどゴワゴワで、これで体を拭いていると肌にヤスリをかけているかのようでした。
洗面台のカランには、心臓病・高血圧・酒に酔った人は温泉入浴に不向きであるという説明プレートが掲示されていたのですが、これって即ちバスルームのお湯は温泉であるという証拠になるのでしょうか。


 
バスタブにはシャワーのほか、壁に直付けのバルブがあり、それを開くと槽内の穴からお湯が吐出されました。おじさん曰く、これは天然温泉とのこと。


 
穴から出てくるお湯のデータを計測したところ、温度は49.3℃でpH7.8でした。疑い深い私は、入室時、夕方、深夜、早朝と、時間をあけて(施設側がボイラーを止めていそうな時間帯を狙って)何度もお湯を出してみたのですが、その都度この吐出口からはしっかりと安定した温度と量のお湯が出てきましたので、おじさんの言うように、このお湯が天然温泉である信憑性は高いかと思われます。
浴槽は一人がゆったり寛げるサイズなのですが、それに対して吐出量が決して多くなく、バルブを全開にしてもお湯が十分に溜まるまで20分以上要しました。


 
ようやくお湯が溜まりましたので、いざ入浴です。浴槽内部は洗い出しで仕上げた石風呂のように見えますが、底面こそ石板タイルであるものの、側面はモルタルの上に洗い出しの模様をプリントした壁紙(ビニールシート)を貼り付けているだけ。さすが中国、手を抜けるところはちゃんと抜いており、安普請丸出しです。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭。日本の温泉で例えるならば、愛媛県の道後温泉に近い感じで、良く言えば癖が無くてアッサリサッパリしており、悪く言えば掴み所のない没個性な質感であるため、中国という国情もあり、これが本当の温泉なのか疑念を抱かずにはいられません。しかしながら、中国の水道水でシャワーを浴びたときのような硬い感じは無く、むしろ弱いツルスベ感すらあり、湯上りにはパワフルに火照って、長い時間にわたり汗が止まりませんでした。その浴感や湯上り後の温まりから推測するに、やはりここのお湯は本物の温泉なのでしょう。意外に良いお湯だと思います。なお館内に温泉分析表に相当するようなものは見られませんでした。


 
 
雨に打たれながら宿探しをしていた私は、正面玄関横の看板に大きく書かれていた「露天温泉池」という文字に心が揺り動かされたわけですが、てっきり宿泊者は自由に使えるのかと思いきや、利用には別料金が必要で、その金額はなんと150元(3,000円弱)というとんでもなく高い設定だったのです。しかも私の訪問時は豪雨だから使用中止とのこと。それが分かっていれば別の宿を選んでいたかもしれませんが、尤もこの日は他の宿もおそらく悪天候を理由に露天風呂を閉鎖していたでしょうから、この時ばかりは天候を恨む他ありませんでした。見学だけなら勝手にどうぞとのことでしたから、このように写真だけ撮らせてもらいましたが、深夜一時的に雨脚が弱まった頃にこの露天風呂から歓声が聞こえてきましたから、150元支払ってもこんな狭苦しい露天風呂を利用する客がいることに驚きました。利用の都度お湯を張り替えるお風呂ですから、お湯は綺麗なのでしょうけどね。


 
露天風呂の他、館内には別料金で利用できる内湯もあるのですが、こちらの料金は何と200元(4,000円弱)とのこと。もちろん定価ではなく、そこから幾らかの値引きが行われるものと思われますが、それにしても高すぎますね。



このような大きな内湯もありましたが、こちらについては料金を伺っていません。

従化温泉には他にもたくさんの温泉旅館がありますから、もし当地で宿泊なさる場合は、私みたいに雨に負けて妥協せず、しっかり宿探しをして、ご自分のニーズや感性に合ったお宿に出会えるといいですね。


従化バスターミナルから4番の路線バスに乗り「温泉路」バス停下車、徒歩1~2分
広東省広州市従化区温泉鎮温泉東路132号
ホームページ見当たらず
(「北溪松林酒店」ではなく「北溪湖景酒店」でネット検索すると、この宿を紹介するサイトにひっかかります。どちらが正しい名称なのか、よくわかりません)


私の好み:★
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