温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

豊富温泉 ふれあいセンター 後編(湯治用浴室)

2016年05月02日 | 北海道
前回記事「豊富温泉 ふれあいセンター 前編(一般浴場)」の続編です


「一般浴場」の温泉で油まみれになった私は、続いて「湯治用」のお風呂も利用させていただくことに。
この「湯治用」のお風呂は文字通り、豊富温泉で長期滞在している湯治客のためのお風呂です。油を多く含む豊富温泉のお湯は、皮膚疾患、特にアトピーや乾癬に効能があると言われており、わざわざ遠方からこのお湯を求めてやってくる方もいらっしゃるほどです。従いまして、基本的に観光客や一般の入浴利用客向けのお風呂ではないことを、あらかじめご承知おきください。


 
湯治用のお風呂は、豊富温泉の各施設にあるお風呂の中でも、最も濃い状態のお湯が張られています。そのため脱衣室の暖簾をくぐった瞬間に、強い石油臭が鼻を突いてきました。脱衣室は「一般浴場」と比べて実用的ですが、まずまずの広さと明るさが確保されており、たくさんのカゴが用意され、ロッカーやドライヤーなども備え付けられています。また湯上がりに休めるようにベンチなども設置されていました。湯治という言葉を聞くと、地味で質素で鄙びた施設を想像してしまいますが、ここは備品類が充実しており、昔からの湯治という言葉が有する固定概念を見事に覆してくれます。


 
室内には油についての説明が掲示されていました。温泉の石油は古くから火傷や皮膚疾患に効能があると言われているんだそうです。後述しますが、浴室内にはお風呂から抽出した石油がボトルに詰められており、任意で肌に塗ることができます。


 
浴室は天井が高くて広々としており、昔ながらの湯治のお風呂にありがちな陰気な印象はなく、明るく開放的です。壁には山を描いたタイル絵が施されているのですが、場所柄、おそらく利尻富士をイメージしているのだろうと思われます。室内には計7基のシャワー付きカランが左右に分かれて設置されており、ボディーソープなども備え付けられています。
また、窓側には2つの浴槽が設けられており、向かって右側の小さな槽はぬるいお湯、左側の大きな槽は10人弱同時に入れそうなキャパを有する温泉槽です。


 
上画像で写っているポンプ式ボトルに詰められているのが、脱衣室で掲示されていた「温泉石油」です。温泉とともに湧いてくる石油を掬って集めたものです。ポンプを押して手に油を取り、皮膚疾患の患部へ塗るわけですね。ただ、濃厚な石油であり、油に対し肌がどのような反応を示すか個人の体質によって様々です。「ふれあいセンター」の2階には湯治の相談に乗ってくれるコンシェルジュがいらっしゃいますから、油を塗る前にはコンシェルジュの方に確認してみると宜しいかと思います。


 
さて、温泉槽へと入ってみましょう。「一般浴場」のお湯と同じく、源泉温度が低いために加温されているのですが、じっくり長湯してもらうため加温は抑えられており、(私の体感で)湯口では42℃前後でしたが、湯船では38℃程の湯加減になっていました。湯口のまわりに置かれている鎖状の黒いソーセージみたいなものはオイルフェンス。湯口から出てくる石油が多い時は、オイルフェンスで湯口周りの湯面を囲うんだそうですが、この日はそこまで多くなかったため、湯口の奥へ片付けられていました。

湯船のお湯はラクダ色に強く濁り、湯面では油がギトギトと浮かんでいます。また湯中では同色の湯の華も浮遊しています。お湯から強い石油臭のほか、アンモニア臭やヨード臭などの刺激臭が放たれ、浴室内に充満しているのは「一般浴場」と同様ですが、やはりこちらはその匂いの程度が強く、入室直後で匂いに慣れないうちは、頭がクラクラしそうになります。苦味を伴う塩辛味もやはり「一般浴場」と同様ですが、こちらのお湯の場合は、口に含むだけで口腔内がギトギトします。また湯船に入ると、槽内に触れた肌が油でベタツキ、この油のため、入浴中の肌はお湯を思いっきり弾いていました。浴感としては、ヌルツルスベなんてものではなく、ヌトヌト・ベタベタ・ギトギトといった擬態語がぴったり。湯上がり後もしばらくは全身から石油臭が漂い続けました。またぬるめの湯加減ですが、濃厚な食塩泉ゆえパワフルに温まり、風呂上がりはダウンコートを着るのが躊躇われたほど、力強い温浴効果が続きました。


●温泉街と源泉設備

この記事の最後に、豊富温泉の温泉街について簡単に触れておきましょう。今回私が訪れたのは2015年12月。圧雪路面の一本道の両側に数軒の宿や民間などが並び、上画像の手前側には「ふれあいセンター」があります。画像の左手奥にそびえるマンションらしき建物は、近年新規移転された「湯快宿」という町営の自炊型湯治宿です。乾癬やアトピーなど皮膚疾患の湯治目的で2泊以上宿泊する方が利用でき、長期滞在するためのひと通りの設備も用意されています。もちろん宿泊料金は安価設定。館内にバストイレはあるものの、温泉は引かれていないため、ここに滞在している湯治客は、「ふれあいセンター」の湯治用浴室へ通うことになります。詳しくは豊富温泉公式サイトをご覧ください。


 
私が訪れた時、「川島旅館」はまだ建設途中でしたが、でも、もうすぐ(2016年7月)オープンの予定です。詳しくは公式サイトでご確認を。公式サイト内の画像を見る限り、かなりオシャレなお宿に生まれ変わるようですね。


 
「ふれあいセンター」に隣接している豊富鉱山は天然ガス採掘施設。町の資料によれば、メタン含有率 92%の良質な天然ガスが1日あたり約7,000立米(灯油換算で7000リットル相当)も産出されているんだそうです。そんなガス田の構内に温泉の源泉もあります。というか温泉と一緒に天然ガスが産出されているんですよね。


 
そもそも豊富温泉は大正時代に油田を試掘していた際、天然ガスと一緒に湧出した温泉であり、それゆえ、温泉に石油が含まれるのはもちろんのこと、いまだに天然ガスも採掘しているわけです。かつて、産出された天然ガスは温泉旅館などで使われていましたが、温泉利用客の減少などにより天然ガス利用量も減り、未利用のガスが年々増えて問題となっていました。そこで町では2010年頃にコージェネレーションシステムを導入し、余剰天然ガスの有効活用を図ることになりました。具体的には、余剰天然ガスでガスエンジンを回し、その熱で温泉を温めて入浴施設へお湯を供給するとともに、エンジンで発電を行い、その電力によって源泉のポンプを運転させています。豊富の地だからこそ可能なエネルギーの地産地消です。


 
敷地内にはこんな感じでいくつもの鉱井が地面から突き出ています。右(下)の鉱井は「R1A号井」。この源泉からポンプアップされた温泉は、他源泉のお湯とブレンドされた上で「ふれあいセンター」のお風呂で使われています。


 
敷地内には緑色に塗られたタンク類が林立しており、その奥には「R-1号井」と書かれた鉱井も見えました。


R-1A号井・R-4号井・R-10号井・R-11号井混合
含よう素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 18.0℃ pH8.0 溶存物質12.29g/kg 成分総計12.37g/kg
Na+:4116mg(98.13mval%), NH4+:16.0mg, Ca++:19.8mg,
Cl-:4536mg(71.02mval%), Br-:11.9mg, I-:11.4mg, HS-:0.3mg, HCO3-:3121mg(28.40mval%), CO3--:23.6mg,
H2SiO3:43.9mg, HBO2:354.0mg, CO2:78.7mg,
(平成27年11月18日)
加温あり(入浴に適した温度にするため)

JR宗谷本線・豊富駅もしくは幌延駅から沿岸バスの豊富留萌線で「ふれあいセンター」バス停下車すぐ
北海道天塩郡豊富町字温泉  地図
0162-82-1777

8:30~21:00(受付20:30まで) 元日および整備日(毎年4月10日前後の4日間)休業、年末年始は短縮営業
510円(毎月26日は250円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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2 コメント

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Unknown (ぬる湯好き)
2018-10-25 00:11:26
先日、川島旅館に1泊した際の翌日朝1番に訪問してきました。湯治用は、朝1番は茶色っぽい湯の花が浴槽の表面一面を覆っており油もかなり濃厚でした。川島旅館の浴槽が比較的あっさりした感じだったので、同じ源泉とは思えない程でした。もっとも、館内の掲示によると、湯治用も濃厚なのは朝のうちだけで徐々に一般浴場と同じになるそうですが。同じ源泉を使用しても、利用の仕方でこんなにも変わるものなのですね。
Unknown (K-I)
2018-10-27 01:35:55
ぬる湯好きさん、こんばんは。
豊富へお出かけになったのですね。お疲れさまでした。私は夜に利用したので、朝の様子を目にすることはできなかったのですが、「茶色っぽい湯の花が浴槽の表面一面を覆って」いる湯舟にも入ってみたかったです。また、私が豊富へ行った時には、川島旅館は建設中でした。新しく生まれ変わった川島旅館にも泊まってみたいものです。かと言って、簡単に行ける場所ではないので、こんど豊富で泊まれる機会に恵まれるのは一体いつになるやら。羨望の念を抱きながら、ぬる湯好きさんのコメントを拝読しました。

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