温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

那須湯本温泉 河原の湯共同浴場

2015年11月14日 | 栃木県
 
前回に引き続き、那須湯本温泉の地元民(組合員)専用共同浴場を訪問します。前回記事の「滝の湯」はログハウス調でよく目立つ外観でしたが、今回取り上げる「河原の湯」は浴場名の扁額など出ておらず、地味で渋くて鄙びた佇まいですから、何も知らずにここを通りすぎてしまう観光客も多いことでしょう。しかしながら正面には注意書きがたくさん掲示されており、屋根の上には湯気抜きもありますので、温泉ファンだったら、ここがただものではない建物であることはすぐに見抜けるはず。鄙び系の共同浴場が好きな御仁には「滝の湯」よりこちらの方が断然心の琴線に響くことでしょう。こちらも男女別に入口が分かれており、ドア脇のセンサーにキーをタッチして解錠し、中へ入ります。



「滝の湯」は全体的に大きく余裕のある造りでしたが、「河原の湯」はいかにもジモ専らしい小ぢんまりとした造りで、小屋という言葉がぴったり。入口の戸を開けたらいきなり脱衣室。古くて渋い木造の室内はまさに共同浴場といった風情です。


 
浴室は「滝の湯」の半分あるかどうかのコンパクトな空間ですが、狭いながらも男湯の場合は左側に同じ寸法の浴槽が2つ並んでおり、その手前にかぶり湯用の小さな湯枡が設けられていました。その湯枡に注がれているのは温泉のお湯。枡の内部はレモンイエロー一色に染まっていました。


 
2つの浴槽はいずれも(目測で)1.2m×1.5mの3人サイズで、左側は「熱めの湯」、右側は「ぬるめの湯」というように湯加減別に分かれていました。後述するように同じ湯口からお湯が注がれているのですが、コンディションの相違により、「熱めの湯」は底部まで目視できる透明度がありましたが、「ぬるめの湯」の方は強く白濁していました。


 
施設に掲示されている温泉分析表に相当するものは、浴室内に掲示されている上画像のプレートのみ。これによれば、このお風呂に引かれている源泉は、湯川を挟んで「鹿の湯」の対岸で湧出する「行人の湯」とのこと。「滝の湯」共同浴場と同じく、ボディーシャンプー使用者は入浴禁止。


 
二つの浴槽に跨る木箱の湯口は、すりこぎみたいな栓を突っ込んで、差し込み具合で湯量を調整する那須湯本の伝統スタイル。吐出時点の温度を計測したところ、47.6℃でした。


 
左側(脱衣室側)の「熱めの湯」は上述のように底部を目測できるほどの透明度があり、投入量もオーバーフロー量も多いのでお湯の鮮度感が良好です。お湯の入れ替わりが短時間で行われるため、湯の花が湯船にとどまっていられず、それゆえ高い透明度が保たれているのですね。私が湯船に入ると豪快にお湯が溢れ出てゆき、浴室内が軽い洪水状態になりました。温度計によれば湯温は44.0℃。やや熱いのですが、シャキッとする浴感が気持ちよかったので、個人的にはこちらの方が気に入りました。


 
一方、右側(窓側)の「ぬるめの湯」は源泉投入量が絞られており、41.5℃という万人受する湯加減なのですが、お湯の入れ替わりが少ないため、湯の花が溜まってはっきりと白濁しており、透明度は15cm程度でした。同じお湯でも、供給の塩梅や温度などによって、濁り方がかなり違ってくるんですね。

お湯を口に含んだ途端、アルミ箔を噛んだような違和感が口の中に広がり、その後、那須湯本らしい収斂酸味が口腔内を刺激するのですが、グレープフフルーツ果汁のようなフルーティー感は「滝の湯」より弱く、その代わり渋みや苦み、そして粘膜が痺れるような感覚が強く、味覚に関しては温泉街の各旅館に配湯されている「鹿の湯・行人の湯混合泉」に近いものがあるように思われました。その一方、硫化水素臭や焦げ渋臭は然程強くなく、湯中におけるトロミはあるものの、引っかかり浴感は程々に抑えられており、どちらかと言えばスルスル感が優っているように感じられました。知覚的特徴を総じて申し上げれば、鹿の湯源泉や「滝の湯」の御所の湯源泉とも異なる、独特のフィーリングでした。
燻し銀のような存在感を放つ渋く鄙びた湯小屋で、新鮮なお湯を楽しめる、マニア向けの素敵な浴場でした。


行人の湯 
酸性明礬泉 69.9℃

栃木県那須郡那須町大字湯本  地図

5:00~23:00
組合員および民宿宿泊者以外入浴不可
備品類なし

私の好み:★★★

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