温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

栃尾又温泉 自在館 その4(うさぎの湯・たぬきの湯)

2015年08月09日 | 新潟県
前回記事の続きです。

栃尾又温泉「自在館」には宿泊客専用貸切風呂が3室あり、2つは内湯、1つは露天風呂と多彩なラインナップ。前回および前々回記事で取り上げた2つの共同浴場を含め、5つのお風呂を楽しめちゃうんですね。連泊する場合でも、今日はこっちで明日はあっち、なんて感じでお風呂を変えれば、退屈せずに過ごせることでしょう。そんな多様な貸切風呂を1泊で全て回ってしまった私は、貧乏性丸出しで無粋極まりないのですが、そんな貪欲過多な湯めぐりの結果として利用できた内湯の貸切風呂「うさぎの湯」と「たぬきの湯」について、今回の記事で触れてまいります。



貸切風呂を利用する場合は、帳場前に貼り出されている台帳に、予め自分で、利用したい時間帯に名前を記載しておきます。なお利用可能時間は1組40分。早い者勝ちですが、明後日分まで予約可能ですから、連泊なさる方はさほど慌てることもないかと思います。予約の時間になったら、台帳の下に掛けられている鍵を手に取り、浴室へと向かいます(利用後は鍵をここへ戻します)。


●うさぎの湯
 
エレベータで地下1階へ下り、掲示に従って更に階段を下りると、その突き当たりに2つの貸切風呂の出入口が向かい合っていました。右が「うさぎの湯」で、左は「たぬきの湯」。この2つの浴室は男女別の内湯として開放される時間帯があり、その場合は「うさぎの湯」が女湯、「たぬきの湯」は男湯となるようです。ウサギとタヌキという組み合わせは「かちかち山」を連想させますね。「かちかち山」におけるウサギを若くて怜悧な女、タヌキを醜く間抜けなオジサンとして捉えたのは太宰治の『お伽草紙』ですが、このお風呂の男女区分は太宰の解釈に倣っているのかもしれません。通常、男女別内湯として開放されるのは22:30~翌朝8:00までなのですが、宿泊した日は混雑していたために、17:00~19:00の2時間のみが男女別内湯として開放された以外は、ほとんどの時間が貸切風呂として設定されていました。利用状況によってフレキシブルに対応しているのでしょう。


 
まずは「うさぎの湯」から入ってみることに。扉の右にぶら下がっている札を裏返して「入浴中」にしておきます。


 
室内の置物や壁飾りなどはウサギで統一されていました。


 
壁にはお湯に関して説明されており、曰く蛇口から加温されたお湯を投入し、加水循環消毒無しの放流式で提供しているとのこと。なお加温せず完全放流式で入浴できる「うえの湯」や「したの湯」の源泉と異なり、「うさぎの湯」を含めた3つの貸切風呂では、沢の対岸で湧く30℃未満の源泉(栃尾又自在館1号)を引いているため、加温が必須なんだそうです。こうした細かな説明によって温泉の情報を開示しているお宿の誠実さに感心します。


 
開放感をもたらす大きな窓、そして若草色とホワイトのチェック柄が印象的な浴室は、現代的且つ実用的な造りです。窓からは谷を見下ろせ、高度感のある気持ちのよいロケーションです。洗い場にはシャワー付きカランが3つ並んでいました。家族みんなで一緒にシャンプするなんてことも、このお風呂ではできちゃうんですね。


 
五角形の浴槽は、最も長い辺で3mほど。槽内には小さく丸いタイルが敷き詰められていますが、縁には木材が用いられ、柔らかで温かみのある雰囲気を生み出していました。壁際に木箱の湯口があるのですが、こちらは現在使われておらず…


 
壁から突き出ている水栓よりお湯が投入されていました。この水栓は析出と思しき白いもので覆われています。湯船のお湯は洗い場へ溢れず、底から立ち上がっているオーバーフロー管から排湯されていました。
ちょうど良い湯加減がキープされており、とても気持ちが良かったので、ついつい時間をオーバーしそうになってしまいました。


●たぬきの湯
 
つづいて「たぬきの湯」にも入ってみました。上述のように「うさぎの湯」の反対側に暖簾が掛かっています。レイアウトこそ若干違うものの、両浴室の脱衣室は基本的に同じような造りであり、2つの浴室が対になるように設けられたことがわかります。


 
浴室名に即してたぬきのタペストリー等が飾られていました。


 
タイル貼りで明るい「うさぎの湯」に対し、こちらはウッディな壁や緑色凝灰岩の床など、シックで落ち着きある佇まいです。大きな窓のすぐ外側では雪がこんもり盛り上がっていたのですが、これは「したの湯」へ下ってゆく廊下の屋根に積もっていた雪のようです。浴室のレイアウトは「うさぎの湯」とほぼシンメトリで、洗い場に並んでいるシャワー付きカランが3基である点も同様でした。


 
浴槽内は淡い緑色の小さな丸いタイルが敷き詰められていますが、縁には岩が並べられており、男性的で岩風呂のような風情です。浴槽の大きさは「うさぎの湯」とほぼ同じなのですが、真ん中に沈められている長方形の岩は「たぬきの湯」だけにしかなく、これに寄りかかって湯浴みすると、体がフィットして姿勢が安定する点が実に素晴らしい。お湯から上がって一息入れたい場合も、この上に腰掛ければ良いのですから何かと便利です。寛いで入浴できるように細かな配慮がなされているのでした。


 
こちらのお風呂も木組みの投入口は使用されず、壁から突き出ている水栓よりお湯が投入されていました。水栓に白い析出が付着しているのも同様です。

先述したように「うさぎの湯」「たぬきの湯」とも、同じ源泉(栃尾又自在館1号)を加温した上で掛け流されており、無色透明でほぼ無味無臭の大変クリアなお湯です。柔らかくてマイルドなのですが、気泡の付着等は見られず、良く言えば癖のなくて優しい、悪く言えば掴みどころが無くて浴感に乏しいお湯でした。お湯のフィーリング、神秘性、長湯の楽しみを味わいたいなら、霊泉を完全掛け流しにしている「うえの湯」か「したの湯」が断然おすすめ。もっとも「うさぎ」「たぬき」の両浴室を貸切利用する場合は40分しか入浴できませんから、長湯できるわけもなく、むしろ実用的な入浴でしたら「うさぎ」や「たぬき」の方が使い勝手ははるかに良好です。お風呂の個性に合わせて使い分けることにより、一層充実した湯浴みが楽しめるのかと思います。


栃尾又自在館1号
単純弱放射能温泉 28.5℃ pH7.9 77L/min(自然湧出) 131×10^-10Ci/kg(35.9マッヘ) 溶存物質226.6mg/kg 成分総計227.1mg/kg
Na+:24.6mg(37.95mval%), Ca++:33.4mg(59.22mval%), Sr++:0.2mg,
Cl-:10.6mg(11.45mval%), SO4--:89.9mg(71.37mval%), HCO3-:25.9mg(16.03mval%),
H2SiO3:39.7mg,

その5へつづく

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