温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

福建・広東の旅 その7 五華熱鉱泥温泉 後編(泥湯・食事)

2015年10月16日 | 中国
前回記事の続編です。

●泥湯
 
「熱鉱泥温泉」という名称の通り、泥湯がこの温泉の名物です。園内図によれば泥湯を体験出来る施設は3つあるはずなのですが、私が宿泊した日は閑散時だったらしく、福建土楼のような円形のファサードが印象的な泥湯棟など2棟はクローズされており、この日オープンしていたのは「台湾宮」と称する木造の湯屋1棟のみでした。宿泊客は温泉プールなら無制限で利用できますが、泥湯は1泊につき2回まで利用制限があり、それ以上は別途料金を要します。ま、1泊なら2回体験すれば十分だと思いますけどね。チェックイン時に赤いチケットを2枚発券してくれるので、利用の都度、その券を泥湯棟で待機している係員のおばちゃんに手渡します。


  
あらかじめ水着に着替えた状態で泥湯棟へ向かい、中の待機室にいるおばちゃんに券を手渡しますと、おばちゃんはその奥にある泥湯浴室へ案内してくれました。外観同様に室内も総木造で、前後に泥湯浴槽が2つ据えられています。せっかくなので私はこの晩のうちに2回利用し、1回目は奥側、2回目は手前側に入りましたが、奥側が若干小さいだけで両者に大きな相違はありません。
壁にはなぜかヌード女性の絵が飾られていたのですが、どんな意味があるのかな。こんなところで男を興奮させてどうするつもり? 


 
ヌード絵の隣には泥湯に関する能書きが何枚か掲示されており、血行が良くなる、新陳代謝を促進させる、60種類のミネラルが健康に効果をもたらす云々といった温泉の効能でお馴染みの文章と並んで、人体の磁場がどうのこうの、大地の電位とリンクしているのでどうのこうのと、B級雑誌の広告で見られる怪しい健康商法みたいな文言も踊っていました。そして上画像の2枚で最もスペースを割かれていたのは、泥湯の衛生管理に関する説明。80℃以上の高温の温泉を用いているほか、紫外線装置を定期的に用いたり、毎日時間を決めて泥湯を入れ替えたりと、細かい規定を設けて衛生管理を徹底していますよ、とアピールしていました。言わずもがな中国国民のみなさんは、品質や安全などいろんな面で自国の業者を信用していませんから、そうしたお客さんに向けて不安を払拭すべく、説明の大部分を衛生管理に関する内容に充てているのでしょうけど、それなのに、磁場だの大地の電位だのと、似非科学丸出しな眉唾説明を一緒に載せちゃったら、信用面でプラスマイナスゼロになってしまうのではないかしら。尤も、そのことに気づく人がどれだけいるか、わかりませんけど。


 
上画像は2回目に入らせてもらった手前側の大きな浴槽です。浴槽にはトンボ(板レーキ)が突っ込まれていますが、これは係員が泥を攪拌して表面を均すためのもので、温泉を使った設備ゆえに上下で温度差が発生したり、泥のコンディションにムラができたりするため、お客さんが入る前にこれで入念に捏ねくりまわして、綺麗に均してくれます。また私が見ていた限りでは、私を含む入浴客が泥湯に入るたび、使用後に係員のおばちゃんが泥を排出して入れ替えており(右or下画像に写っている泥面の窪みは、泥の排出口)、後述する温泉のコックを開きながら、泥と温泉をうまい具合にかき混ぜて、泥入浴にベストなコンディションを維持していました。さすが目玉施設だけあり、ここだけは念の入れ方が違います。


 
こちらは奥側の小さな泥浴槽で、私は1回目に入りました。泥そのものが熱いのではなく、前回記事で紹介した源泉で湧出する高温の温泉と泥を混ぜることによって、入浴に適した状態を作り出しています(泥が温泉由来なのか、はたまた別の場所から運んできたものなのか、そのあたりは不明)。そうしたシステムですから、2つの浴槽とも温泉のコックがあり、近づくと火傷しそうなほど熱い湯気を上げながら、ボコボコと音を立ててお湯が吐出されていました。



奥の浴槽に入った際、おばちゃんに頼んで自分の入浴姿を撮ってもらいました。
正直に申し上げれば、入る前は「所詮中国だろ」と侮っていたのですが、実際に入ってみたら、その予測を良い意味で裏切ってくれる素晴らしい質感に、心の底から感激しちゃいました。私がいままで入ってきた泥湯の中で、最も滑らかでクリーミーであり、その極上な質感は他の泥湯とは比べ物になりません。泥湯にありがちな変な匂いや癖は無く、よく攪拌されているおかげで泥湯にありがちな塊も無く、不純物や汚らしさも皆無。粘度の強いトロットロな泥に入ると、まるで自分がフォンデュの食材になったような気分です。

浴槽自体は一般的なお風呂より若干浅めの造り。トロトロの泥が溜められていますので、入る際は滑りやすくバランスが取りにくいのですが、慎重に足を踏み入れれば大丈夫。なぜか底の方に熱いお湯が集まるらしく、仰向けに寝そべって肩まで泥に身を沈めると、お尻や背中の方からジンジンと熱さが体に伝わり、2分も経たないうちに額に汗がびっしりと浮かんで、やがて全身に熱が回ってパワフルに火照ってきます。おすすめ入浴時間は15分とのことですが、結構熱いので15分入る続けるのは辛抱を要するかも。鹿児島県指宿の砂風呂で熱に耐えるような感覚に似ているかな。でも2回の泥入浴において、私はこの15分をしっかり守って入り続けましたよ。15分になるとおばちゃんが教えてくれます。ちなみにこの泥湯担当のおばちゃんはとっても親切。常に笑顔で、いろいろと気を使ってくれました。


 
泥湯の後はシャワーを浴びて泥を落とします。シャワーといっても、シャワーヘッドからお湯が拡散されるようなものではなく、配管の口からドボドボとお湯が垂直に落ちているだけの代物ですが、このお湯からは土類感が得られたので、おそらく温泉に加水などしてから使っているものかと思われます。

浴後に驚いたのは、泥を落とした後の肌の状態!
まるで全身脱皮して皮膚が完全に生まれ変わったみたいに、超ーーーツルンツルンでスッベスベ。時間が経ってもその状態は続き、それでいてモッチモチな潤いも持続します。エステで何かの美容効果を施術をしてもらったかのような泥湯の効果は、掛け値なしで素晴らしく、男ですら自分の肌の美しさにウットリし、極上の夢見心地を楽しむことができました。
ここの泥湯はマジで凄いぞ!


●食事
 
最後にここでの食事について触れておきましょう。おそらく集落(温泉街)でも食事できる店はあるのでしょうけど、中国の田舎ですと、もし店を見つけたとしても開店休業状態だったりする場合が往々にしてありますから、下手に集落へ出てお店を探すのは非常にリスキーだと判断し、ここでは園内の食堂で2食を摂ることにしました。
食堂はレセプション棟の左隣にあり、いくつもの円卓が並べられていましたが、私以外に客が来る気配はなく、蛍光灯から響くジージーという電磁音と、そのまわりをブンブン飛び回って体当たりする虫の羽音が、頭上から虚しく聞こえてくるばかりでした。


 
 
客家の人々が多く暮らすエリアだけあって、食事は客家料理が中心であり、壁には主なメニューが写真とともに紹介されているのですが、閑散時はストックする食材を少なくするためなのか、食堂のおばちゃん曰く、選べるメニューはそのほんの一部に限られるとのこと。前回記事で紹介した筆談を駆使する受付のお姉さんが、おばちゃんと私の間に入って、そうした事情や注文できるメニューを一生懸命メモに書いて説明してくれるのですが、残念なことにメニューに関しては、意味がちんぷんかんぷん。日本のレストランでも、小洒落たお店に入ってメニューに見慣れない横文字や形容表現が並んでいたら、どんな料理が想像できず注文に難儀してしまいますが、あれと全く同じで、料理の名前は雅風にまわりくどく表現するため、漢字を読んだところでストレートに意味が伝わってこないのです。でも悩んだところで先には進めないので、おばちゃんが勧める一品と、部首に鳥の字が入っていたメニューをひとつ、そしてスープをひとつ注文したところ、目の前に出されたのが上画像の品々です。

スープは溶き卵と春菊の葉みたいなものが入っており、葉物のクセが強くて途中で断念したのですが、他2品はなかなかの美味。特におばちゃんがリコメンドした客家料理の代表選手「醸豆腐」は、提供される時点で土鍋がグツグツ音を立てて煮えており、その状況を目にするだけでも食欲がそそるのですが、豆腐はいわゆる普通の豆腐と異なる肉詰め豆腐であり、片栗粉をまぶしてから油で揚げて熱々の餡を掛けたような感じになっており、実に美味で完食してしまいました。一方、頭を含めて丸ごと一羽を皿の上に載せている鳥料理はハトのローストで、見た目のグロテスクさとは裏腹に、肉がとても柔らかくて味付けも良く、小骨が多くて食べにくい部分を除けば、こちらもしっかり食べきっちゃいました。
ただ、私一人でこの3品は量が多すぎです。しかも白米など全て含めて総額87元(1700円弱)という、中国の田舎にしてはかなり高い価格にもちょっと怯んでしまいました。あくまでみんなで楽しくワイワイ過ごすことが前提の宿であり、私のように一人旅で訪れる客なんか少ないんだろうなぁ。


 
こちらは朝食。私の大好物である焼きビーフンと醤油掛けの目玉焼き、そして白米で13元(約250円)ですから、日本の感覚では安いけれども、中国の田舎にしてはやや高いかな。とはいえ見た目は悪いけれども美味しかったので良かったのですけどね。

なおレセプションの裏手には売店があり、水着や土産物などの他、お菓子や飲料なども販売されていましたので、旅先での大きな心配事のひとつである飲料水(PETボトルの水)の確保は問題ありません。


●パンフレット
 

 
フロントに置いてあったパンフレットの両面をスキャンしましたので、ご興味のある方はご覧になってくださいませ。

ちなみに私が宿泊したログハウスは1泊約450元という、田舎の宿にしては結構なお値段であり(都市部のそこそこなクラスのホテル並み)、それでいてハウス内はボロが目につくので、温泉ホテルとしてのコストパフォーマンスはハッキリ言って悪いのですが、泥湯の浴感や効果はお世辞抜きで本当に素晴らしかったので、もし当地へ旅行する機会があれば(且つ車などで自由に動き回れる移動手段があれば)、こちらへ立ち寄って泥湯だけでも体験してみるとよろしいかと思います。


現地までのアクセスに関しては、前々回の記事もしくは次回記事の前半をご参考になさってください。
広東省梅州市五華県転水鎮維竜村
0753-4886388
ホームページ

入場料金(温泉プールや泥湯入浴)98元
水着など販売あり

私の好み:温泉は★+0.5, 泥湯は文句無しで★★★
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