温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

羅臼川の野湯と羅臼間欠泉

2012年12月06日 | 北海道
●羅臼川の野湯
 
羅臼町域の羅臼岳登山道付近には多くの野湯が存在しているらしいのですが、当地を訪れた秋の某日は野湯探検のための準備をほとんどしていなかった上、チキン野郎ゆえにクマさんとの遭遇がとっても怖かったので、登山道へのチャレンジは諦め、その代わりに「あそこならお手軽に野湯を楽しめるんじゃないかなぁ」と希望的観測だけを頼りに、某所にある羅臼温泉の源泉施設へと向かったのでした。その場所は知床峠を通る人でしたら誰しもが目にする場所でして、私が以前から目をつけていたポイントでもあります。


 
周囲には硫黄臭が漂っています。
源泉施設から川へ余り湯が捨てられているのですが、そのお湯の温度を測ってみたら86℃という激熱でした。もちろん入浴なんてできっこありません。



河床は硫黄で白くなっています。上の余り湯が捨てられている箇所の周辺で入浴できそうな場所を探したのですが、入れそうな深さがある湯溜まりは50℃以上の高温か、あるいは川水と同じような冷水のいずれかであり、適温の場所があったとしてもその殆どは浅くてせいぜい尻湯するのが精一杯でして、なかなかうまい具合には見つかりません。そういえば、ネット上でもここで野湯を試みた方のレポートをいくつか拝見した記憶がありますが、確か皆さん結果的には撤退なさっていたはずです。諸先輩方が不可能だったのに、ヘナチョコな私如きにできるはずない…。


 
そんなネガティブ思考を抱きつつ半分入浴を諦めながら、この湯溜りの前に立ち尽くしておりました。ここは深さ大きさともに全身浴には最適なのですが、湯温が60.5℃もあって、とてもじゃないが入浴なんてできません。画像には写っていませんが、湯溜まりの底には、熱湯で茹だったオショロコマの死骸が白い腹を見せて沈んでいました。もしここに入ったら私も同じ状態になってしまいます。


 
でもこの湯溜まりは川の流れのすぐそばにあるのですから、川水を引き込んじゃえば問題は容易に解決しそうです。というわけで早速作業開始。湯溜まりの周りの石を動かして即席の導水路をつくり、加水が過ぎた場合は川水をストップできるよう、水路は細くして且つ手頃な大きさの堰き止め用の石を沢山集めておきました。

その結果、私の思惑通りに湯溜まりの温度はみるみる下がってゆき、湯溜り内では対流が発生して、茹ったオショロコマは浮かび上がって川へと流れ去っていきました。42℃まで下がったところで導水路を閉鎖して…



いざ入浴です。当初は冷たい川水が底に沈んでいましたが、傍に落ちていた木の枝でお湯を撹拌させたら、絶妙な湯加減になりました。うん、なかなか良い野湯じゃありませんか。深さの目測を誤ってしまい、意外にも浅かったために肩まで浸かることは難しかったものの、それでも満足いく野湯を楽しむことはできました。

しかしながら、しばらくすると激熱の余り湯によって再び湯溜まりの温度が上昇 → 川水を加水し温度調整 → 湯溜まり内で水とお湯が上下が分離してしまうので棒で撹拌 → 余り湯により温度上昇…
というループに陥ってしまい、一時は成功を収めたかに思えたこの野湯は、数分おきに加水・撹拌・川水の止水という作業を繰り返さねばならなかったため、悲しいかなあまりゆっくりできませんでした。ま、入浴はできたので、それだけで目的は達せられたわけで、満足度で考えた場合の収支結果としては辛うじてプラスと言えそうです。


●羅臼間欠泉
(以下に記載しているデータは2012年9月下旬時点のものです)
 
続きまして、野湯から歩いて羅臼のビジターセンターへとやってまいりました。


 
知床の自然がとても解りやすく解説されている館内では、羅臼周辺の山の現況(特にクマ情報)に関する情報提供も行なっています。今回こちらを訪れた目的は、最近復活した羅臼の間欠泉に関する情報を得ることです。インフォメーションカウンターでは現地までの案内図や噴出時間がアナウンスされていました。ここから徒歩5分ほどの至近距離にあるそうですが、噴出の間隔が不規則であり、しかもそのインターバルは1時間15~30分とのこと。下手すりゃ1時間以上待たなきゃ見られないかもしれません。


 
とにかく現地へ行ってみましょう。ビジターセンターの知床峠に間欠泉へ向かうトレイルの出発地点があり、そこには見学者が間欠泉を目撃できた場合の時間や高さなどを記録するノートがぶら下がっています。復活したばかりの間欠泉は噴出が不規則なので、まだデータを収集している段階なのですね。私もこのノートに記録が書けるといいなぁ…。



ビジターセンターの裏手へ延びる快適なトレイルを歩きます。


 
歩いて5分もしないうちに、「山小屋峰」の正面へたどり着きました。この宿は羅臼温泉の「ホテル峰の湯」が運営しているもので、湯の沢沿いの源泉を利用している羅臼唯一の施設ですが、最近は一般客の宿泊を受け入れていないようです(ホテルに宿泊すれば温泉の利用は可能らしい)。施設の更に奥には羅臼岳方面への登山道が続いています。


 
「山小屋峰」に向かって左側を流れる沢の対岸に間欠泉の噴口がありました。対岸へは渡れず、此岸には柵とともに解説プレートが立っています。


 
解説プレートからちょっと上流側へ移動して、噴口を拡大撮影してみました。これだけ見ると、単に石や岩がゴロゴロしているようにしか思えませんね。崩れて原型をとどめていない遺跡だよ、と嘘をついたら信じてもらえそうな感じです。周囲には私以外に人影はなく、沢のせせらぎや笹の葉が擦れる音以外には何も聞こえません。もしかしたら鬱蒼としてる森の影からクマさんがこちらの様子を伺っていたかも…と思いたくなるほどの寂しい環境です。
何もないところで噴出を待つのは結構辛いものでして、なにしろ私は一人ですから話し相手もおらず、わずか数分ですら数十分経過したんじゃないかと勘違いしたくなるほどでした。1時間15~30分に1回の噴出ですから、そう簡単に遭遇できるものではないから今回は諦めようと思って、デジカメの電源を切って引き返そうとしたその時でした…。


 
何の予兆もなく突然間欠泉が噴き上がったのです。あまりに急なことだったので、吹き上がる瞬間は捉えることができませんでしたが、辛うじて勢いが最も強かった瞬間を撮影することができました。下品な表現で大変恐縮ですが、男性の射精のようにビュッ、ビュッと断続的に噴出し、その高さは4~5メートルに達し、15秒ほど続きました。


動画も用意しました。はじめの数秒は噴き上がる全容を画角内に収めようとしてカメラを横にしてしまい、天地方向がおかしなことになっています。ごめんなさい。



4~5メートルまで届く勢いは長く持続せず、徐々に衰えてゆき、やがて湯気を上げるのみとなって、収束していきました。
15分待っただけで間欠泉を目撃できたのですから今回はラッキーでした。ビジターセンターへ戻る際には、もちろんノートに噴出記録を書かせていただきましたよ。


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2 コメント

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Unknown (zataro50)
2012-12-06 23:53:54
間欠泉の動画拝見しました。徐々に力が弱くなって、どこかでまたど~んとくるかと緊張して見ていましたが、自然に収束してかえって安心しました。貴重な動画ありがとうございます。
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Unknown (K-I)
2012-12-08 00:39:21
zataro50さん、こんばんは。下手っぴな動画で失礼いたしました。運よく15分待っただけで噴出を見ることができました。噴出する間隔が長くて不規則ですし、その勢いも決して強いものとは言えませんので、観光スポットとしてはいまいちかもしれませんね。
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