温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

キュタフヤ県 ウルジャス温泉 石灰棚と源泉群

2015年02月10日 | トルコ

前回取り上げたムラトダーウ温泉から山を下り、一旦Gedizの街へ戻ってから、幹線道路"D240"を西進して、この日の最終目的地であるキュタフヤ県西部の温泉地であるシマーヴ市エイナルへと向かいます。Gedizからシマーヴへ向かう道中にもウルジャス(Ilıcasu)という湯量豊富な温泉地があるらしいので、どんなお湯に出会えるのか、胸を高鳴らせながら立ち寄ってみることにしました。Gedizから西へ約18km。盆地状の地形が終わって起伏の多い景色へと移ってゆく辺りで、標識に従い左の小路へ逸れると、すぐにウルジャス温泉へ辿りつけました。




 
温泉地の入口に当たる箇所には「アクアパルク」と称する立派な施設があり、その名前から想像するに、温泉を活かしたプール等を擁するレジャー施設かと思われるのですが、目の前を通った時には、広い駐車場に車が一台も止まっていないどころか、人の気配が全く感じられず、道路から見えるドアも窓も悉く閉ざされており、まるで閉館してしまったかのように閑散としていました。単にお客さんがいなかっただけなのでしょうか、はたまたシーズンオフで休館していたのでしょうか。



「アクアパルク」の先には立派な作りの男女別公衆浴場が隣接しており、こちらはちゃんと営業中でしたので、後ほど利用させていただきました。詳しくは次回記事にて。


 
更に道を進むと、道路と川で挟まれた間に公園が左手に広がるようになり、1軒の売店とともに、芝生の上にガゼボが幾棟も建ち並ぶようになりました。そして玉ねぎのような形状をした大きな石灰ドームがドンと鎮座しており、てっぺんからアツアツな温泉が噴き上げられていました。ドームの表面を温泉が滴り落ちることにより、少しずつですが着実にドームは成長してゆくのでしょう。


 
石灰ドームはもう一つあり、こちらはひと回り小さくて、コニーデ式火山のような円錐形をなしています。いずれも頂点から噴き上がる温泉は高温であるため、周囲にフェンスが立てられて立ち入れないようになっていました。


 
このウルジャス温泉でひときわ目を惹くのが、道路を挟んで公園と反対側に続く崖を覆うものすごい規模の石灰棚です。崖の上から温泉が落ちており、それによって斜面の上から下までトラバーチンが形成されているのです。トラバーチンの傍には「お湯が落ちる危険な滝なので注意してね」という看板も立てられています。


 
私がこの石灰棚を眺めていた時、ちょうどバイクが目の前を通過したので、どのくらいの規模であるのかをひと目で把握できるように、石灰棚とバイクを一緒に撮ってみました。高さとしては10メートルほどあるかと思います。



温泉が滴るフローストーンの表面は鮮やかなオレンジ色ですが、その内側はパムッカレのように純白であり、滴り落ちる水滴の向きに合わせて無数のつらら石が出来上がっていて、その姿は手をダランと下げている円山応挙の幽霊がこちらへ手招きしているかのようでした。空の蒼さ、そしてトラバーチンの橙色や純白というトリコロールが非常に美しく、この前で私はしばし呆然と立ち尽くしてしまいました。


 
斜面に踏み跡を見つけたので、そこを辿って崖の上へ登ってみたら、ウルジャス温泉を一望できる展望台に出られました。そしてこの展望台に一本の鉄管が引かれており、その配管からお湯が吐出されていました。つまり、この大規模な石灰棚は、温泉を人為的に崖の上から落とすことによって生み出されていたんですね。なんだぁー、天然の石灰棚じゃないのかぁ。


 
配管口で温度を測ってみますと、60.8℃という結構な高温が計測されました。配管は崖の下から引かれており、お湯が斜面を登ってくるはずもないので、おそらくポンプアップによって吐出されているのでしょうけど、どうしてわざわざこんな配管を敷設してまで、崖の上から温泉を落としているのでしょうか。観光の目玉として、半分自然半分人工である温泉の造形美を作りたかったのかな。


 
崖から公園へ戻って、川岸を散策します。谷状地形であるウルジャスの真ん中には一本の川が流れているのですが、この川の一帯が温泉の源泉地帯となっており、細い流れの両岸では、あちこちから温泉が湧き出て、湯気を上げながら川岸を褐色のリムストーンで埋め尽くしています。


 
川の中から一本の柱が垂直に立ち上がっており、そこから岸へ向かってホースが伸びているのですが、そのホースが途中で寸断されているため、お湯が全量漏れて川へ落ちていました。あぁ、勿体無い。ホースには電線が這わせてありますから、おそらく垂直に立っている柱の下ではお湯を組み上げるポンプが動いているものと思われますが、ホースの切れ端の状況を見る限り、切断されてから相当の時間が経っているものと推測されますので、長い間修繕されずに放置されているのでしょう。放置されているんですから、このお湯が無くても誰も困らないのでしょうけど、それならばポンプの電源を切っちゃえばよいのに…。


 
川沿いにはレンガ積みの四角い枡があり、そこにも熱いお湯が注がれていました。看板には"MİDE SUYU"(直訳すると「胃の水」)と記されていることから、おそらくこれは飲泉をするための設備なのでしょう。でも周囲はやや荒れ気味で、お湯を口にできるような環境ではなかったので、ここでは飲泉していません。


 
公園には対岸に架かる人道橋が2本あり、上流側の橋には施設名を記していると思しきゲートが立てられていました。おそらく対岸にはかつてそのゲートが示す何らかの建物があったと想像されますが、今ではすっかり解体されており、砂利と泥の荒れ地が広がるばかりです。この上流側の橋のたもとでも、当地に余多ある源泉のひとつを発見。湧出地は石で丸く囲まれています。


 
上から覗きこんでみますと、フツフツと音を立てながら熱湯が自噴しており、その内側は温泉成分と藻の付着によって、橙色と深緑色が混色していました。湧出温度は64.6℃ですから、ここに素手を突っ込むと火傷してしまいますね。


 
下流側の人道橋ではかわいい仔犬がのんびりひなたぼっこ。この温泉地のゆったりとした時に流れを体現しているかのようです。この下流側人道橋を渡った対岸には、宿泊用のロッジがたくさん並んでいる他、源泉小屋、そして何やら怪しい雰囲気を放っているボロボロな東屋がありました。このボロ小屋については次々回の記事にて取り上げます。拙ブログで一つの記事として取り上げるんですから、温泉ファン必見の何らかの施設があるんです。


 
ボロ小屋の奥でシューシューと大きな音を辺りに響かせながら、勢い良く湯気を上げている源泉小屋。地面から立ち上がっている配管には、元の姿がわからないほど析出が分厚くこびりついており、下手に近づくと襲われるんじゃないかと怖くなるほど、獰猛な動物の如き迫力があります。

ウルジャス温泉の素朴さと湯量の豊富さをわかっていただけたところで、次回記事ではウルジャス温泉の男女別公衆浴場を取り上げます。



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