温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台温泉 観光荘

2012年06月28日 | 岩手県
 
ループを描く台温泉街の入口から近い渋い佇まいのお宿「観光荘」で立ち寄り入浴してきました。こちらは日帰り入浴を積極的に受け入れており、玄関の前には日帰り入浴案内の札がイーゼルに立てかけられていました。


 
玄関の右わきには温泉タマゴをつくる枡が設置されており、96℃というほぼ沸騰状態に近い熱湯に卵を浸すと、夏は6~8分、冬は13分で温泉卵ができあがるそうです。


 
帳場のカウンター脇には入浴利用のための券売機が設置されています。また温泉たまごをつくるための卵が販売されていました。


 
帳場前の階段を上がって客室が並ぶ廊下を進んでゆきます。廊下の一角には和風旅館らしい飾りが施されていました。


 
この宿のお風呂は、女湯が「花子の風呂」、男湯が「太郎の風呂」というように、銀行や役場の記入見本みたいな名前が冠されており、廊下を歩いてまず目に入ってくるのが「花子の風呂」前の広間です。広間や廊下の左手に「花子の風呂」が、更にその右奥の階段を上がった先に「太郎の風呂」がそれぞれ位置しており、日帰り入浴の時間帯は太郎=男湯、花子=女湯でFIXですが、朝方には男女が入れ替えられるので、宿泊すれば両方に入ることができるんだそうです。



山の傾斜に沿って建てられているために、階段が多いんですね。案内に従って階段を上がりきった奥に紺の暖簾が掛けられていました。



いくらか年季が伝わってくる渋い外観に反し、内装、特に浴室は改装が実施されたのか比較的新しいように感じられ、お手入れがよく行き届いていることも相俟って、とっても明るくきれいで好印象です。


 
脱衣室の片隅には石の枡が展示されていました。これは源泉からお宿までお湯を運んでくる分湯槽の箱なんだそうでして、温泉成分のスケールが箱の中にビッシリと付着して完全に詰まってしまっています。10年くらいでこんなになってしまうそうですが、そんなに濃いとは思えない台温泉のお湯ですら、わずか10年で目詰まりを起こしてしまうんですね。温泉施設の管理って本当に大変なんだと思い知らされ、関係者の方のご苦労にはただただ頭が下がるばかりです。



お風呂は内湯のみですが、浴槽は重厚感の溢れる檜風呂でして、浴槽まわりの壁もその質感に合わせるような色合いのタイルや建材が用いられており、それでいて窓には見た目が引き締まる黒いサッシが嵌められているので、全体としてシックで落ち着いた、旅館らしい風格が醸し出されていました。
浴槽の手前の左右両側には洗い場が配置されています。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が計5基設置されています。館内表示によればカランから出てくるお湯も源泉とのこと。



窓の外には花壇が据えられ、山の緑も眺められました。大きな窓のおかげで室内空間ながらかなりの開放感が得られました。


 
浴槽は4~5人サイズずつに二分されていて、左が熱いお湯(43℃くらい)、右がぬるいお湯(41℃くらい)となっており、両者の仕切り板は浴槽底までは届いておらず、仕切りの下部1/3でお湯が貫通できるようになっていました。
左端の湯口からチョロチョロと落とされる熱いお湯は、樋を流れてくる間に適度に冷まされ、まず熱い方の浴槽に注がれて、更に熱い浴槽のお湯がぬるい方へと流れてゆく仕組みになっています。熱いお湯をなるべく加水せずに温度調整しようとの配慮からか、源泉投入量はやや絞り気味で、湯口のお湯がはじめに注がれる熱い浴槽のお湯からは抜群の鮮度が感じあっれましたが、熱い浴槽の方からお湯を受けるぬるめの槽はお湯が若干鈍っているようでした。
訪問時には浴槽からのオーバーフローは見られませんでしたが、けだしパスカルの原理によって洗い場の並びに設けられた小さな枡へと排水されているのではないかと、勝手に想像しております。

お湯のフィーリングとしては、無色透明、焦げたゴムのような臭い少々と、アブラ臭にも似た硫黄臭と味、そして微かな塩味が感じられ、特にカランでは硫黄感がはっきり出ていました(一方、浴槽での硫黄感はちょっと弱め)。湯中では微細な白い湯の華が浮遊しており、ふんわりとした硫黄の香りを嗅ぎながら、あまり癖の無い優しい浴感のお湯が楽しめました。脱衣所に掲示されている源泉の分析表によれば、新湯源泉(96℃)の湧出量は毎分38Lとのことですが、さすがにこの量でかけ流しはおろかカランのお湯までカバーするわけにはいかず、新湯源泉の他、74℃、63℃、62℃の計4源泉をブレンドして使用しているそうです。加温加水無し。

台温泉で日帰り入浴といえば「精華の湯」が筆頭候補に挙がるかと思いますが、さすがにこちらは旅館だけあって日帰り専門施設とは違う風格が感じられ、短い時間でしたが優雅な雰囲気の中で気持ち良く入浴することができました。


 
湯上りに源泉のひとつである「寿の湯」を見学しました。「やまゆりの宿」の目の前にあり、脱衣所で展示されていた分湯枡が使われていた場所でもあります。源泉井からはあたりに強い硫化水素臭を漂わしながら白い湯けむりが立ちのぼっており、余ったお湯が道路へと捨てられていました。
その前に立つ御影石の碑には「湯口権者」として、やまゆりの宿(持分131/690, および124/690)、観光荘(持分124/690)、台の湯炭屋(持分124/690)、精華の湯(持分187/690)と記されていました。4軒で分けているのだからといって単純に25%ずつにせず、分母を690にして随分と細かく厳密にお湯の配分量を設定しているのであります。耕作地の用水や温泉など、水の分配って既得権などが複雑に関係してくるために、昔からどこでもシビアに決められていますね。


台温泉(新湯)
含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 96℃ pH8.2 38L/min(掘削自噴) 溶存物質1.203g/kg 成分総計1.209g/kg
Na+:295.0mg(87.34mval%), Ca++:33.3mg(11.30mval%),
Cl-:170.4mg(28.72mval%), HS-:5.8mg(1.07mval%), SO4-:486.7mg(60.48mval%),
H2SiO3:101.2mg, 遊離H2S:6.1mg,

JR東北本線・花巻駅(4番のりば)より岩手県交通バス・台温泉行で終点下車(所要25分)、徒歩5分
岩手県花巻市台第1地割166-1
0198-27-2244
ホームページ

日帰り入浴時間11:00~21:00
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★

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