温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

温泉の街ギョネンを散策

2015年02月26日 | トルコ
前々回前回と連続してバルケシル県ギョネン(Gönen)の街に湧く温泉について取り上げましたが、この街では入浴のみならず一泊滞在しましたので、今回の記事では食事へ出かける際にふらっと歩いた街並みや、実際に止まったホテルのことなどを備忘録的に書き綴ります。


●ロータリーから公園にかけて
 
街中にはいくつかのロータリーがあるようですが、上画像はオトガル(バスターミナル)付近にあるロータリーで、滞在中はこのロータリーや後述する公園を中心に散策しました。ロータリーの真ん中には男性の胸像が埋め込まれたモニュメントが立てられていたので、この街に縁のある人物なんだろうと、漠然とした思いでデジカメにその姿を記録したのですが、改めて画像を確認してみると、1974年・キプロス・戦死者といったワードと並んでフェフミ・エルジャンという人物名が記されていることに気付きました。エルジャンといえば北キプロスの空港名の由来になっている人名(故人)ですし、何しろ1974年といえばキプロス紛争が激化して、キプロス南部ギリシャ側と北部トルコ側の分断が決定的になった年ですから、ノンビリとした温泉地であるこのギョネンと、いまだに解決していないキプロス紛争とは、何やら深い関係性があるのかもしれませんね。モニュメントの裏には碑文が記されていたように記憶しているのですが、トルコ語がチンプンカンプンな私はまったく読み取ることができず、その関係性について理解でいないまま、モヤモヤとした感情を抱きながら、今この記事を書き綴っています。


 
ちなみに上画像は夜のロータリーとそこから伸びる通りの様子です。人口4万5千人ほどの小さな地方都市ですが、一応このエリアの中核なのか、夜間でも車や人の往来が比較的多く、大通りを歩いていれば、あまり寂しさや怖さを感じることはありませんでした。個人的に興味深かったのは、夜中に所謂「走り屋」の若者たちが集まって、ブンブン爆音を立てながら街をグルグルと周回していたこと。改造バイクをぶっ飛ばす連中が夜な夜な活動するという現象は、日本の地方部だけじゃなくトルコでも同様なんですね。騒々しい・おっかないといった感情を通り越して、寧ろ微笑ましくなっちゃいました。人種や宗教を問わず、若い男の子という生き物は、無邪気で無謀で厄介な存在なのです。



 
ギョネンの街の観光拠点とでも言うべき、歩行者専用のバンヨラル通り(Banyolar Cd)。上述のロータリーやオトガル(バスターミナル)の100~150メートル北側にあり、街の北西にある公園や温泉に向かってまっすぐ伸びています。通りの始点から約100メートルほどは商店街となっており、飲食店をはじめとして衣料品店や雑貨屋・携帯電話屋など多様な商売が営まれているのですが、さすが温泉の街だけあり、衣料品店の軒先には、垢すり(画像に写っている白い布)が売られていました。


 
この通りではシミット(胡麻がたくさんまぶされているパンの一種)を頭に載っけて売り歩くお兄さんや、安っぽい子供向けのオモチャを売っている露天商など、大して儲からなさそうな商いをする人々の姿も見られました。こうした商売って一日どのくらいの売上があるんだろうか。


 
バンヨラル通りはやがて商店街を抜け、緑豊かな公園へと入ってゆきます。商店街と公園の境界付近は10軒近い中小規模の宿が集まるホテルエリアとなっており、私もその中にあるホテルで宿泊しました(詳しくは後述)。車の往来から隔てられたこの公園はとても静かで、よく整備されており、美しく綺麗な景観が保たれています。



公園の一角はスポーツ向けの広場が設けられており、バスケ・テニスなど皆さん思い思いのスポーツで汗を流していらっしゃいました。まさに市民の憩いの場です。


 
公園のベンチでは、手芸品を売っているのか油を売っているのかよくわからないおばちゃんがいたり、露天の身体測定屋さんがいたりと、なんとも長閑でのんびりした空気感が横溢していました。露天の身体測定屋さんって、日本では見たこと無いのですが、中国やタイなど海外ではしばしば遭遇します。お客さんはどういう目的で測ってもらうんだろうか…。世の中にはいろんな需要があるんですね。


 
朝に公園を散歩すると、よく見かけたのがリス。すばしっこいので上手く撮れませんでしたが、その愛くるしい姿を見つめているだけでも、思わず目尻が下がります。この公園のリスは日本のものより大きく、タイワンリスに近い体型です。


●4つの温泉ホテル

バンヨラル通りを更に歩いて公園を奥へと進んでゆくと、いつの間にやら温泉ホテルの敷地内に入っていました。緑豊かな環境によって公園と一体化しているんですね。


 
ホテルの敷地に入ってすぐの左側(南東側)には、夏季限定のプールがあるのですが、私が訪れたのは枯れ葉の舞う晩秋ですから、プールの水はすっかり抜かれてゲートも閉ざされており、フェンスの隙間から中の様子を窺う他ありませんでした。


 
ギョネンにある4つの温泉ホテルはいずれも同じ経営母体によって運営されており、価格帯によってセグメントされています。緑色の外観が周囲の環境と調和している「イェシル・オテル(Yeşil Otel)」は低価格帯のホテル。イェシルとはトルコ語で緑という意味なんだとか。だから外観が緑色なんですね。わかりやすい。


 
私が個室貸切風呂を利用した「ギュネシ・オテル(Güneş Otel)」は中価格帯。"Güneş"とは太陽を意味し、そのためか外観も暖色系です。



最もドッシリとした構えの「ユルドゥス・オテル(Yıldız Otel)」は高価格帯で、公園の北縁の通り(その名も「温泉通り(Kaplıcalar Cd)」)をまっすぐ進めばこのホテルの正面玄関へ行き当たるようになっています。この他、「ユルドゥス・オテル」より若干安めの「パルク・オテル」がここに隣接しています。


 
「ユルドゥス・オテル」の裏手をうろうろしていると、木陰の向こうでユラユラと立ち上る湯気を発見。近づいてみますと、そこには巨大な円形の貯湯槽があり、太いパイプから大量の温泉がドバドバ落とされていました。この貯湯槽から各ホテルへ温泉を供給しているのでしょう。ということは、どの施設でも共同管理されたこの温泉が配湯されているってことか…。



4つのホテルと並びつつ、その最奥に位置しているのが、前回記事で取り上げた公衆浴場です。ホテルエリアを宮殿に見立てれば、玉座に当たる位置にこの公衆浴場があるのですが、やはりギョネン温泉においては、この古い公衆浴場こそ主役であるという位置づけなのでしょう。


 
公衆浴場の裏手は川が左右に流れており、この川がギョネンの街の最外縁でもあります。この画像を撮った時、川面は朝霧で覆われていました。


●宿泊先
せっかく4つの価格帯に分かれた温泉ホテルがあるのですから、自分の予算に合ったホテルに泊まって、一晩中温泉に浸かるのも良かったのですが、正直なところ毎日の温泉めぐりが祟って、そろそろ温泉に飽き始めており、また低価格帯の「イェシル・オテル」であってもそれなりの金額を要するので、この日は公園周辺に集まっているホテルを選ぶことにしました。前夜泊まったエイナル温泉と同様に、この日も予約はしていませんから、まずは良さそうな宿を自分で見つけて、フロントで直接交渉です。


 
バンヨラル通りの東側には中小規模のホテルやペンションが10軒ほど集まっており、民宿に毛が生えた程度の小さな宿もあれば、立派なビルのホテルもあって、旅人のニーズに応じたホテルを選ぶことができる環境にあるのですが、その中でも私はバンヨラル通りに面している「セメダンホテル(Semedan Hotel)」を選びました。


 
ホテルの建物は3階建てで、中央の吹き抜けを囲むように口の字形をしています。まず英語で「今夜部屋は空いているか」と尋ねてみましたが、フロントのお兄ちゃんは英語がいまいちなようでしたから、前夜のエイナル温泉の時と同じく、"Boş odanız var mı?" "Bugün, Bir gece, Bir oda"(※)とトルコ語で表記したメモを差し出したところ、即座に理解し笑顔で対応してくれました。
(※)グーグル翻訳で「空室ありますか?」「今日、1泊、1部屋」という言葉をトルコ語に訳してみたら、このような文言が表示されました。文法的に誤っているかもしれませんが、この文で問題なく通じましたので、もしトルコのホテルで英語が通じない場合は、この文章を使ってみてください。


 
フロントのお兄ちゃんが提示してくれたお部屋は、一泊50リラと60リラの2種類。高い方のお部屋は、部屋が広くてバンヨラル通りに面しているとのこと。10リラの差がありますが、高い方でも日本円に換算して3000円弱ですから、60リラのお部屋を選ぶことにしました。
案内された2階の客室は1LDKの立派なお部屋で、キッチンは8畳近い空間があり、清掃も行き届いていて快適です。冷蔵庫やレンジも備え付けられていますから、食材を持ち込めば長期滞在も可能ですね。フロントで説明されたように部屋はバンヨラル通りに面しており、ベランダも設けられていました。Wifiもしっかり飛んでおり、テレビではNHKワールド(英語放送)も視聴できました。


 
ベッドルームはシングルベッドが2台。リネンからはコロンヤの香りが薫ってきました。キッチンと寝室の間にバスルームがあり、シャワーのお湯は残念ながら非温泉ですが、シャワー用のパーテーションがあるので、他の安宿みたいにトイレまわりをビショビショにすることはありません。


 
宿泊料金にはバッフェ式の朝食も含まれており、品揃えとしてはごく普通ですが、通りに面した明るいカフェで、しっかり朝ごはんをいただくことができました。これだけ充実したホテルでありながら、一泊朝食付きで3000円弱という素晴らしいコストパフォーマンスですから、私がこの日に敢えて温泉ホテルを選ばなかったのも、おわかりいただけるかと思います。


●食事
 
上述のようにギョネンの街は、大した人口規模じゃないのに昼夜問わず往来が多く、それゆえ飲食店も多いので、食事には事欠きませんでした。ギョネンに到着した晩の夕食は、ロータリー前にある庶民的な佇まいのキョフテジ(トルコ版のハンバーグであるキョフテ専門店)で、キョフテ・チョルバ(スープ)・ピラフを注文。食中のジュースや食後に紅茶などを含め、〆て19リラだったので、日本円に換算して1000円弱でしょうか。当地で1000円はちょっと食べ過ぎ。お腹が苦しい…。


 
乙女とは縁遠い中年のオッサンである私は、たとえ満腹であっても、まるで乙女のように甘いモノは別腹。お腹の苦しさを解消すべく、食後腹ごなしのために街中を散歩していたのに、たまたまバクラバジ(バクラバというスイーツの専門店)を見つけてしまったら、衝動的にお店のカフェコーナーに入り、大好物であるストラッチ(トルコのライスプリン)を頼んでしまいました。節操のない己の貪婪性には呆れるばかりですが、とはいえ世界の食が集まる東京でも、ストラッチはなかなか口にできませんから、こういう機会を逃して、帰国後に後悔するのもバカバカしい。食べられるときに食べておこうとするのは、人間の本能であります。


 
翌日のランチもギョネンで過ごしました。ロータリーそばで店を構える、カフェテリア式のロカンタ(大衆食堂)で、チキンの煮込み系を半人分ずつ注文。いずれも程よい味付けで美味でした。代金は忘れてしまいましたが、結構安かったように覚えています。


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コメント
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