温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

高瀬温泉 古川舘

2014年07月10日 | 新潟県
梅雨の真っ只中である1ヶ月前の某日に一日だけ休みが取れたので、早朝に自宅を出発して関越道を飛ばし、新潟県下越地方にて日帰り弾丸温泉めぐりを敢行しました。本来ブログというものは日記的な要素が強く、記事に盛り込まれる情報の鮮度がそのブログの良し悪しを左右する大きな判断材料となるのですが、半年前のことを平気で書いちゃう鮮度感の乏しい拙ブログでは珍しく、今回からは連続でこの下越地方の温泉を巡った際のことをを書き綴ってみます(まだ数カ月前のネタはかなり溜まっているのですが…)。


 
高瀬温泉で営業する旅館の多くは県道308号の旧道に沿って並んでいますが、この日訪れた「古川舘」は片側2車線の現道沿いに玄関を構えています。お宿の前には田植えからまだあまり日にちが経っていない田んぼが、苗の隙間に梅雨の中休みの青空を映しており、後背の山々の緑と相俟って実に美しくて長閑な光景が展開されていました。


 
正面には「入浴のみの方大歓迎 源泉かけ流しの湯」と記された看板が立っていました。私のように日帰り入浴がメインに湯めぐりする者にとってはとても有り難い文言です。この看板に甘えて入浴のみで利用させていただきました。
この時はお昼前という時間帯でしたので、お客さんの影は見当たらず、清掃もちょうど済んだところかと思われ、帳場前は静寂が支配していたのですが、「ごめんください」と声をかけたところ、帳場脇の小座敷で横になっていたおばあちゃんが起き上がって対応してくださいました。お昼寝をお邪魔してしまったことをお詫びしつつ入浴をお願いしますと、「お風呂はさっき掃除が終わったところで、男湯はお湯を溜め始めたばかりだから、女湯に入ってください」とのことでした。ということは、おそらく私はこの日の清掃後初めての客だったのでしょうから、言い換えれば一番風呂に入れるわけですね。こりゃ嬉しいぞ!


 
浴室は男女別の内湯が一室ずつ並んでおり、露天風呂はありません。浴室前の廊下には「貸しタオル」が用意されており、籠の上の張り紙には「1人1枚でお願いします」と書かれていたのですが、私は単なる日帰り入浴客ですので、貸しタオルの使用は遠慮し、自分のタオルで湯浴みさせていただきました。


 

おばあちゃんの案内に従い、この時は女湯を利用しました。脱衣室内にはピンク色でハート柄のマットが敷かれていたり、窓ガラスがささやかながらデコレートされていたりと、古風な旅館ながらも女の子っぽい雰囲気を演出しようとする努力が垣間見れます。また1台据え付けられているユニット型の洗面台にはコットンやメイク落とし、ローションなどといった女性向けアメニティが所狭しと並んでいました。



2方向に窓が設けられている明るい浴室は、日中でしたら照明なしでも入浴に十分な照度が確保されており、陽の光をキラキラと反射する湯面に向かって湯口のお湯がトポトポと落とされる音が室内に響いていました。またお湯から漂う出汁のような芳ばしい匂いとタマゴ臭が、ふんわり香っていました。壁面はタイル貼り、床は鉄平石敷きというやや武骨な趣きでして、女湯と言えどもさすがにここには可愛らしい要素を織り込む余地は無さそうです。


 
洗い場は左右に分かれて配置されており、シャワーは左右に1つずつ、その他にお湯と水の蛇口のセットが2組並んでいます。なおカランから吐出されるお湯はボイラーの沸かし湯(真湯)でして、実際にシャワーからお湯を出しますと、建物の裏手からボイラーの作動音が聞こえてきました。


 

浴槽にお湯を注ぐ蛇口の先には、硫酸塩の白いトゲトゲした析出がコンモリと付着していました。こうしたビジュアル的に個性を主張してくれる温泉は私の好みに合致するので、つい嬉しくなって指先でツンツン触りながらニヤニヤしてしまうのですが、でも迂闊にこのお湯に触れるのは危なく、熱さに驚いて自分の温度計で計測してみたら65.5℃と表示されました。館内表示によれば季節のより加水しているそうですが、少なくともこの蛇口から吐出される時点で水は混ざっていないものと思われ、もし湯船が熱ければ湯口の右側の冷水蛇口で適宜加水するのでしょう。なお私は入室した時にはお湯がチョロチョロと注がれており、加水せずに投入量を絞ることによって温度調整が図られていたのですが、絞っているといっても流石に65℃のお湯ですから、湯船はどうしても熱くなってしまい、仕方なく水で薄めてから入浴することにしました。なお湯船を満たしたお湯は、縁の上から溢れ出て洗い場へ向かって流下しており、循環などとは無縁の放流式となっています。

浴槽はおおよそ4人サイズのタイル貼りで、清掃後の一番風呂とあって、お湯は実に綺麗でした。そしてお湯に含まれる硫酸塩の影響か、底面のタイル目地は日光を受けると虹色に輝き、湯面では青白く光っていました。なおこの浴槽はなぜか浅い造りになっており、ちょっと寝そべらないと肩まで浸かれません。
お湯は無色透明で一見すると澄んでいますが、陽の光が槽内に差し込むところでは白く細かな浮遊物が湯中を待っていることを確認できます。匂いは上述の通りでして、味覚に関しては塩味と弱い出汁味、芒硝味、そして微かなタマゴ味が感じられました(ちょっと美味しいかも)。食塩泉的なツルスベ浴感と硫酸塩的な引っ掛かりが拮抗しており、相対するパワーは伯仲していてどちらが優勢であるかは判断に苦しむ所です。そして湯上がりはなかなか汗が引かず、長い時間にわたって熱が体内に篭り続けました。なかなかの実力を有する素晴らしいお湯です。


 
お風呂から上がった後は、本来私が入るべきであった隣の男湯を見学。女湯とはシンメトリな造りになっているようで、大きさなどに大差は無いようでしたが、洗面台に並んでいるアメニティ類はシェービングクリームやひげ剃り後のローションなど、明らかに女湯と異なっていました。



そしてこれが男湯の浴室。私がお風呂から上がった後でも、まだ浴槽の半分程度しかお湯が溜まっていませんでした。早くお湯を溜めるなら、加水しながら熱いお湯をドバドバ入れちゃえば良いのですが、敢えて加水せずに、投入量を絞りながら源泉100%にこだわっているんですね。そうした湯使い一つとっても、お宿の温泉に対する誠実な姿勢が伝わってきます。


高瀬混合(1号・2号の混合)
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 69.1℃ pH7.9 362L/min(動力揚湯) 溶存物質2722mg/kg 成分総計2733mg/kg
Na+:811.8mg(84.35mval%), Ca++:77.4mg(9.22mval%),
Cl-:1053mg(70.86mval%), Br-:3.2mg, I-:0.6mg, S2O3--:0.3mg, HS-:0.4mg, SO4--:431.3mg(21.43mval%), HCO3-:160.2g(6.28mval%),
H2SiO3:76.9mg, HBO2:12.8mg, CO2:11.0mg, H2S:0.1mg,
加水あり(季節により温度調整のため井戸水を使用)
加温循環消毒なし

JR米坂線・越後下関駅より徒歩30分(2.4km)
新潟県岩船郡関川村高瀬温泉231-24
0254-64-1251
ホームページ

日帰り入浴時間不明(私が訪れたタイミングから察するに11時か12時以降なら大丈夫か)
400円
ドライヤー・シャンプー類あり

私の好み:★★★
コメント (2)
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