そこに産まれ出でた奇跡 （田中）

今、手元に一冊の貯金通帳がある。
これは僕がまだ小学生だった頃に母親が僕の為に積み立てておいてくれたものだ。
随分と古いし色褪せてるけど大事に扱われてたのが凄くよく判る。

１０年前。
結婚して暫くしてから新婚旅行に出たんです、北海道に。
１０日間だったと思うのですが泊まる先は全てその日に決めると言う行き当たりばったりの旅だったのでお金が随分かかるだろうなと思いました。
でも大金を持ち歩くのも怖かったので郵便局に預けて旅先から必要な分を引き下ろそうと。
銀行でも大丈夫なのですが郵便局なら全国どこからでも手数料が掛からないので郵便局に。

口座が必要だったので子供の頃母親が積み立ててくれてたのを思い出し電話をしました。
「郵便局の通帳あるか？」って。
「あるからいつでも取りにおいで」
数日後僕は実家に取りに帰りました。

当時は一月に一度郵便局と多分農協にいくらかのお金を封筒に入れて先生に提出してました。
多分修学旅行とかの積み立てとか後はその子の貯金だったと思う。

普通は一人１０００円×２（郵便局＋農協）で一ヶ月２０００円だったかな。
裕福な家庭の子は５０００円×２ぐらいだったはず。

僕はいつも５００円×２だったな。
その頃は別にそんなの何とも思ってなかったっけ。

それがだ。
この通帳の数字をぼんやり見てたら泣けてきて泣けてきて。

ときどき４００円の月があるんです。
どうしてもあと１００円が無かったんだな。
でも次の月。
必ず６００円入れてくれてあるんです。
帳尻を合わせてある。
それにね父親のボーナスが入った月（夏、冬）は７００円～１０００円入れてくれてある。

小さな古いこの通帳には切ない親の愛情がたんまりつまってますぜ。
嗚呼、俺は何たる幸せ者だろうか。
この親の許で産まれ暮らせた幸せ。

我が子にも。




明日は母の日ですね。
みなさん、お母さんを大切にね。
贈り物なんて必要ないからさ「元気でやってるよ、そっちはどう？」って明日電話をかけてあげて下さい。
親はアナタが元気で（幸せに）暮せてる事だけをひたすら願ってるはずだから。