ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

総理大臣の器 - 3

2017-11-04 08:56:57 | 徒然の記

 あまり中身のない本だと分かりましたから、なんとか今回で終わりにしたいと頑張ってみます。

 「戦後、長い間政権の座にあった自民党は、」「官僚の、官僚による、官僚のための政党だった。」「自民党の一般党員は、官僚でない人たちかもしれないが、」「国会議員は、官僚出身者が多くを占めている。」「その原点は、吉田茂である。」

「 " 小説吉田学校 " という本があったが、その生徒は、」「後に総理大臣になる、池田勇人、佐藤栄作ら、」「吉田の薫陶を受けた、官僚出身の政治家のことだ。」「宮沢喜一元総理も、その流れだ。」「別の系統ではあるが、岸信介、福田赳夫も官僚出身だ。」「以降の首相も、福田、大平、中曽根と、官僚出身者が多い。」

 「自民党政権が官僚政権だということは、比喩でもなんでもなく、」「歴史的事実である。」

 自信を持って断言していますが、間違いでないとしても、正しい意見ではありません。官僚政治の原点は、吉田茂でなく、明治の元勲山県有朋まで遡らなければ、正解になりません。彼は高杉晋作が創設した奇兵隊に入って、頭角を現し、明治政府では軍政治家として手腕をふるいました。陸軍の基礎を築き「国軍の父」とも称されていますが、一番の功績の一つは、官僚制度を確立させたことでしょう。官僚が門閥や情実だけで登用されないよう、文官試験制度を創設し、後進の育成に力を傾けました。

 私の雑学の一部ですが、ネットの情報で確かめましたので、官僚制度の原点は山県有朋であると確信します。菅氏も反日左翼の仲間ですから、大東亜戦争の前後でしか日本の歴史を考えていません。切り取った歴史のごく一部を示し、都合の良い資料として使うのも、左翼の常套手段です。山県有朋まで遡れば、「官僚制度」が悪政の温床ばかりでないことが分かりますし、明治、大正、昭和と、困難な時代の国の舵取りをした、立派な官僚たちの存在が浮かび上がります。

 彼らの功績を無視し、一方的に悪と決めつけ、敵視するのが妥当でないこともハッキリします。問題は制度でなく、人なのです。政治家や官僚たちから、武士道精神を奪った敗戦後の教育こそが、語られなくてならないのです。敗戦後の日本が、どれほど占領軍のため、固有の文化や文明を破壊されたか。日本が失つたものは何だったか、それはどうすれば取り戻せるのか。

 「総理大臣の器」と、大上段に構えたのなら、そうした根本のところを語らなくてなんとするのでしょう。「羊頭狗肉」と私が言った理由が、ここにあります。氏の著作は、単なる政界のハウツウ本でしかなく、政権奪取のための技法が並べられているだけです。それならば、政権を奪取した後で、どのような日本を作ろうとしているのか。どのような歴史観を持ち、どの方向に国を向けようとしているのか、大切なことが何も語られていません。

 日本を強い国にするため、地方分権を徹底する。リニアカーの技術で衛星を打ち上げ、淡水化技術で無駄なダムを作らないようにする。あるいは知的ソフト産業を伸ばし、日本をソフト大国にするとか、こうしたものを語れば、総理の器の大きさが分かるのだと、どうやら氏は勘違いをしているようです。語るに落ちるとはこのことでしょう。総理としての氏の器の小ささと、志の低さが如実に表された本ですが、それさえ氏には理解できないはずです。

 日本を強い国にするための大目標と掲げている事項は、それこそすべて優秀な官僚に任せておけば、やり遂げる政策でしかありません。日本の指導者として、総理大臣が考えなくてならないことは、「日本の置かれた国際社会の状況」です。中国とアメリカという二大強国に挟まれた日本は、どのように生きていかねばならないのか。喧嘩もせず、服従もせず、国の矜持を失わず、国民の安全と幸福を守るには、どうすれば良いのか。

 これを考えるのが、政治家というものです。氏の本を隅々まで読みましたが、肝心のことがどこにも書かれていませんでした。これでは国を思う国民に、軽蔑されても仕方があるまいと考えます。年金暮らしの、一介の老人の私ですら憂えることを、総理になろうという人間が思いつきもしないというのですから、お話になりません。

 この本で、政府の内情や、制度の問題点など、知らないことを沢山教わりましたが、ちっとも感謝しないのは、一番大切なことが抜け落ちていたからです。こんな政界の裏話や、ハウツウを知りたいのなら、何も菅氏の著作を読まなくとも、週刊誌の記事でも読んでいれば得られる知識です。

 怒りに任せ、ゴミステーションに捨てるほどの本でもありませんので、今月末の中学校の有価物回収日に、出すこととします。そうすれば。資源は無駄にならず、ダンボールか、トイレットペーパーとして再び社会で活用されます。

 

 明日から読む本は、亡くなった筑紫哲也氏が書いた「若き友人たちへ」です。この人物も、反日のジャーナリストでしたから、楽しい読書にはならないことでしょう。

 

コメント
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