ねこ庭の独り言

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変節した学者たち - 3 ( 自民党内のハト派宇都宮徳馬氏 )

2017-02-21 22:43:26 | 徒然の記

 宇都宮徳馬氏は、『憲法九条と日本の安全保障』という表題で講演しています。

 「自民党内のハト派」「自民党内の平和主義者」と、朝日新聞で語られていましたから、私は今でも氏が良心的な政治家だという印象を持っています。今回本を再読し、氏の経歴を調べてみますとまた別の発見がありました。

 「明治39年生まれの氏は、父の意志で東京陸軍幼年学校に入学するが中退し、旧制水戸高等学校に入学。」「水戸高校時代にマルクス主義に傾倒し、京都帝大に入学した。」「河上肇に師事し、社会科学研究会に参加した。」

 「同年、日本共産党の一斉検挙が起き、宇都宮は事件後の同会でリーダーを務めた。」「しかし、論文が不敬罪に問われて検挙され、京大を退学した。」「その後、日本共産党に入党するが、昭和4年に治安維持法違反で逮捕され投獄、約1年間にわたり、獄中生活を送る。」

 「獄中で転向を表明して釈放され、その後、株式相場で 満州事変に関係した軍需企業の株式に投資し、大金を得る。」「これを資金に医家向けの製薬会社、ミノファーゲン製薬本舗を設立し、同社社長に就任した。」

 という経歴の持ち主で、父は陸軍大将、朝鮮軍司令官を務めた宇都宮太郎氏です。参議院議員を2期、衆議院議員を10期務め、日中友好協会会長をし、最後には政府から正三位勲一等を受けています。

 中野好夫氏は、敗戦後に一度変節をした人物ですが、宇都宮氏の人生は、簡単に言えば「変節の繰り返し」です。軍人の父に反抗し、軍人嫌いになる子息の話は時折耳にしますが、「会社の社長をしながら、元共産党員」というのは、まっとうな神経では続けられないだろうと、小心な私は敬意すら覚えます。

 似たような人物を探しますと、セゾングループの総帥だった故堤清二氏がいます。もの柔らかな人物として、マスコミで持て囃されていましたが、言行不一致の偽善者の面がありました。

 宇都宮氏は自民党を出て、他の党へ行き無所属になり、またどこかの党へ入りと、このような変節の政治家が、よく選挙民に見放されなかったと不思議でなりません。

 その氏が語る「憲法九条」です。

 「虚心に憲法前文と第九条を読めば、現在の自衛隊が違憲であることは、明白だと思う。」「それに劣らず大切なのは、日本の土地に百数十の基地を持つ米軍と、日本の自衛隊とが、一体化した形で日本を武装しているという事実だ。この武装の事実と、憲法九条との関係をどうみるかという点である。」

 「それは、日本に駐留している米軍やその基地は、日本の防衛のためなのか、それとも米国の防衛のためなのかという問いに他ならない。」「日本に駐在する米軍が、どんな内容のものであるかについては、機密に属することが多いらしく、日本政府でさえ詳しくは知らされていないようだ。」

 「日本政府としてはいずれを取っても、答えきれない問題が出てくるはずで、結局は、日米両国の一体的防衛のためという答えを、選ぶよりほかないのだろうと思う。」

 学生時代の私は、氏の経歴も知らなかったし、日本の歴史にも疎かったので、理路整然とした意見に惹かされたのか、次のような主張にも疑問を持ちませんでした。

 「ここで注意しておきたいことは、米ソがお互いを 、 平和の敵 呼ばわりをしているが、アメリカの言う共産主義の侵略性向は、いわば強盗の論理であるに対し、中ソ側の言う米帝国主義は、マルクス主義的な社会科学分析を背景とした、いわば歴史の論理であるという点である。」

 「歴史の論理として言っているのに、アメリカはこれを強盗の論理としてしか受け取らないという、食い違いが生じている。」

 今ならこんな意見は一笑に付されるのでしょうが、当時は、というより左翼の人間は今でもそうでしょうが、「マルクス主義は科学で、正しい理論だ。」という神話があり、これに基づいて氏が語っています。マルクス主義が科学でなく、正しい理論でもないことは、崩壊したソ連と国民弾圧政府の中国が証明しています。その事実を見て、日本人の多くが目を醒ましました。

 当時の状況を勘案すれば、宇都宮氏のバカ話も、多少は考慮する余地がありますが、左翼反日主義者の歴史的講話として氏の意見を紹介します。 

 「最近まで植民地であった国にとって、その国の真の解放と経済発展につき、いかなる制度が多数の支持を受けるかという点である。」「旧植民地国においては、共産党がそれであり、社会主義制度かそれであるとなっていても、それは少しも不思議ではない。」

 「中国自体がその良い例だが、中国共産党こそが半植民地中国の解放という仕事において、献身的努力を一番実行してきたという事実を、誰も否定できないだろう。もしその点に疑いがあるというのなら、どん底にある貧窮者の地位向上において、共産主義者や社会主義者と競争すればよい。」

 平成12年に93才で氏は亡くなっていますが、存命なら、こんな大見得を切った自分を恥ずかしく思ったのではないでしょうか。亡き氏についてはもうやめますが、忘れてならないのは、マルクス主義の神話が今や、信仰のレベルにまで高まり、反日左翼教授たちに受け継がれているという、今の日本です。

 反日左翼の教授たちは勿論のこと、反日のマスコミもこの信仰にかぶれ、中国やソ連の批判はしません。自分の国である日本を悪しざまに言っても、社会主義国については口をつぐんだままです。

 「東に米国を、西に中国と朝鮮を包し、その両者と深い関係を持つ日本こそが、この地域の冷戦緩和にあけぼのをもたらす地位にある、という感だけはますます強くなる。憲法第九条は、まさにそのためにあるような気がする。」

 これが、氏の講演の結びの言葉です。どういう具合に憲法九条と結びついているのか分かりませんが、こんな意見に、学生だった頃の私は心を動かされていたのです。何度も言いますが、「無知故に騙されることがないよう。」、父として子供たちに心からの注意をしたいと思います。

  今夜はこれで終わりとし、続きはまた明日といたします。

コメント (2)
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