音楽療法のライブ日記

音楽療法士がお届けする、日々の活動記録と情報発信のブログです。

「歌えること」の尊厳性

2013-06-06 06:59:26 | 研究関連
昨日、大阪中之島の国際会議場とリーガロイヤルホテルにおいて
第28回日本老年精神医学会が開催されました

テーマが「高齢者精神疾患薬物治療新時代」というだけに
シンポジウムや演題発表の多くが薬物治療及び脳画像診断の
内容でした。そんな中で私は質的研究として『「思い出深い音楽」語り
によるBPSD治療の有用性について』を発表させていただきました。
一人に焦点をあて、認知症を患う前の「思い出深い音楽」語りと
認知症を患いBPSDが表出した時の語りを比較した内容です。

ただ、発表する前に送付されてきた老年精神医学雑誌Vol.24増刊号-Ⅰ
「認知症治療と将来を見据えた支援のあり方」(アルツハイマー病研究会記録)に
大いなる同感と感動する内容があり、発表にあたって力をいただきました。

特別講演として長谷川和夫先生の「認知症医療はだれのためなのか」が
掲載されていました。
外来診療において終末期に近いアルツハイマー病の患者さんに出会われた
貴重な体験を述べておられます。
HDS-Rの得点が一桁を重度の指標の一つとすると、アルツハイマー病の
診断を受けてから9年目の患者さんは2点の重度に入り、
ご自身の過去を記憶されていないので、歌を覚えていなかを先生が
お聞きになられたところ、「春が来た~♪」を歌詞も音程も整って歌われたそうです。

その翌年、HDS-R検査が傾眠状態で施行不能になり、
覚醒された時に歌をお聞きになると、民謡を歌い始められました。
長谷川先生は「終末期に近い重度の認知症ご本人の、心の核というか
スピリットにふれて人間の尊厳性にふれたと感じた。」と述べられ、
「認知症医療は市民一人ひとりのためにあり、・・・われわれ一人ひとりが
人の尊厳を守っていく戦いがすでに始まっているとかんがえている。」と
結ばれています。

人生の最期に関わる「その人らしい音楽」についてあらためて考えています
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