晩酌しようよ

【晩酌】って『大人の愉しみ』みたいな、ちょっとワクワクするような響きがあると思いませんか。今晩あたり、一杯どうです?

ありがとうがない国

2017-01-16 | ノンセクション
(再掲します)


ありがとうがない国

昔々、あるところに、ありがとうがない国がありました。
その国の人々は、ありがとうという言葉を知らないために、人を信用したり、
譲り合ったりすることができず、お互いにいがみ合い、妬み合っていました。
そのため、国はいっこうに発展せず、人々は貧しく、近隣の大国の奴隷となって暮らしていました。

ある日、海洋の国の人々がやってきました。
海洋の国の人々は、ありがとうがない国があまりに貧しくて、汚くて、
かわいそうに思ったので、近隣の大国と戦争をして、彼らを自由にしてあげました。
しかし、ありがとうがない国の人々は、感謝することを知りません。やっと出てきた言葉は
「お前たちと同じ暮らしがしたい。」
というひと言でした。
海洋の国の人々は最初びっくりしましたが、彼らが望むように、畑を耕すことを教え、
読み書きを教え、掃除をすることを教え、立派な道と鉄道を作ってあげました。
そして、ありがとうという言葉とその大切さを教えてあげました。
おかげで、ありがとうがない国はとっても豊かになりました。病気で死ぬ人が減り、
子供たちの笑い声があふれ、生活はとても便利になりました。やがて、海洋の国の人々と
変わらないような暮らしができるようになりました。

ある年のことです。海洋の国は、彼方の大国と戦争をすることになりました。
ありがとうがない国は、自分たちがまた昔の生活に戻ってしまうのではないかと心配し、
一所懸命に海洋の国を応援しました。
しかし、海洋の国はとうとう負けてしまいました。海洋の国とありがとうがない国は、
彼方の大国の奴隷になってしまったのです。
するとありがとうがない国の人々は、海洋の国の教えをすっかり忘れ、昔のようにお互いにいがみ合い、
妬み合って貧しい暮らしに戻ってしまいました。
一方、海洋の国は、彼方の大国の奴隷となったのですが
「ありがとう、ありがとう。」
と何かにつけ彼方の大国にお礼をいってみんなまじめに働きました。
すると、いつの間にか彼方の大国と海洋の国は、兄弟のように仲が良くなり、
奴隷として扱うことが無くなりました。

奴隷の暮らしから抜け出し、再び豊かになった海洋の国は、ありがとうがない国が
もとの暮らしに戻ってしまったことを気にかけて、少しばかりの施しをあげました。
するとありがとうがない国は、感謝することを忘れてしまいましたから、
「もっとよこせ、もっとよこせ。」
と大合唱を始めました。それどころか、今貧しい暮らしをしているのは、
海洋の国が我々を奴隷にしていたからだ、と言い出しました。
これには海洋の国も困ってしまいました。悪気はなかったとはいえ、近隣の大国を追い出し、
代りに政治をやってあげたことに間違いありません。それを奴隷にしていたといわれれば、
そう見えなくもありません。
こうして人の好い海洋の国は、何かにつけてありがとうがない国の面倒を見るようになりました。
しかし、ありがとうがない国は、海洋の国が助けてくれればくれるほど、声を大きくして
海洋の国をなじるのでした。

しばらくの間、海洋の国はじっと我慢していましたが、ありがとうがない国の要求が
だんだんと法外になり、その上、海洋の国の王様を馬鹿にしたり、ほかの国に海洋の国の
悪口を言ったり、海洋の国から物を盗んだりしたので、ある日、とうとう怒って絶交してしまいました。
海洋の国が絶交したのを知って、彼らと仲の良かった彼方の大国も交流をやめてしまいました。
それを見た近隣の大国は大喜びでありがとうがない国を奴隷にしてしまいました。
しかし、海洋の国の援助が無くなっても働こうとしない彼らに呆れてしまい、
国中の財宝を横取りすると、さっさと見捨ててしまいました。


ついに、ありがとうがない国はすべての国から見放されてしまいました。
それから先のことはよく知られていません。
うわさによると、海洋の国を呪う言葉をわめきながら、使い道のわからない銅像を作り続けていて、
さながら狂人の国のようだったとのことです。

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