人形と動物の文学論

人形表象による内面表現を切り口に、新しい文学論の構築を目指す。研究と日常、わんことの生活、そしてブックレビュー。

2012年度センター試験国語について

2013-03-03 13:12:12 | 国語教育と文学
 少し古い話になりますが、今年のセンター試験、国語の難易度が上がったと言って話題になりましたよね。
 小林秀雄のほうは、ちょっと古風な文体やアイロニカルな表現に、受験生が面食らっただけだろうと思います。問題自体はそれほど悪問でも分かりにくいものでもない。

 ただ、牧野信一『地球儀』のほうは、ちょっと…。設問と問題文が噛み合っていない、という印象を受けました。設問と選択肢は従来通りのセンター試験らしいもの。センター試験問題の設問のつくり方として、独自に洗練されてきた方法です。でも、『地球儀』は内容として、ちょっとイレギュラーなんですよね。どんな問題文を課題にしても、同じような設問と選択肢なんだったら、問題文必要ないじゃん、設問と選択肢だけで充分。
 『地球儀』の肝は、「地球儀」という表象の変化を押さえること、そして小説内小説が挟み込まれる二重構造を理解できるかどうか。これが設問を正しく解いた場合に見えてくるようじゃないと、設問としては間違っていると言わざるをえない。千年一日のごとく「傍線部のだれそれの心情の説明として最も適切な選択肢を選べ」とやっているだけじゃ、いつまで経っても小説が読めるようにならない。
『地球儀』にとって一番重要な問題は、「地球儀」とは何か、でしょう。

 日本の国語教育は、どうも(人間以外の)物や場所に注意した読み方ができないようです。いつになったら、ことばをことばとして、例えば算数の文章題を解くときのように小説を読む読み方が、教えられるようになるんでしょうか。

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