貝がらの小舟

短歌のことや日々のことなどを徒然と。

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未来 2015年9月号

2015-09-08 17:35:56 | 短歌

ひるがおよ 海無き街の夕暮れを閉じてゆくのはさみしいですか

髪に胸に霧雨を受けわたしたち千年前もこの場所にいた

どんな鳥飼う籠なのかきみのむねにしずかに開く胸郭を思う

うつくしくシャツのタックはたたまれて内なる海を透きとおらせる

貝がらを拾えば砂にきみの影、象のかたちに見えたこととか

水紋は、心だからね。六月のみずの昏みに投じる小石

ひとつずつドーナツを買い夕焼けを解き放つよう二人食みおり

長き影踏みつつ歩くこの生に花は記憶の比喩であること

叶うなら一生続く約束を 夜を越えゆく舟を、ひかりを

笑うとき背を反らすくせ今きみは夏の湖水の入り口になる

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未来 2015年8月号

2015-09-05 17:34:47 | 短歌

指先はたぶん冷たい渡されし花鋏の輪のたしかな円さ

火を詠みしうたのいくつか書き写すあなたの弱さなら守りたい

バスタブに濯ぐ水着は真夜中の海無き街に海を呼び寄せ

花殻の心臓を持つ舟である時おり寝息を震わすあなたは

みずいろのゼリーすくえばわたしたち今日やすやすと国境を越え

戦前に書かれし小説読みあえばブラウスの下やや汗ばみて

ヨガ教師の直く倒立するときの背中にひらく三日月の肌

八月はお祭り騒ぎ 草刈りののちのにおいを肺ふかく吸う

受付になされる列の美しく人みな病を運ぶ器か

大きなる国旗の下に雨宿りする少年の健やかな脛




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うたつかい 2015年夏号

2015-09-04 17:36:57 | 短歌

夏の死

細胞の一つひとつに海があり時にはひとを溺れさすこと

角ざとう、葉桜、雷雨 つめたさが集えばそれはあなたの城だ

壊れやすき生ひらめかせ白蝶は舟の舳先に翅をたためり

新刊は書店に並び街中に紫陽花ひらくような夏の死を

通り雨 信じないって笑う目によぎる朝のほのかな光  ※朝=あした


テーマ詠『夜』

惑星の傾きはすべて違うこと聞きぬ夜更けの海の静けさ
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未来 2015年7月号

2015-07-10 19:27:57 | 短歌



ひざまずきペンダントをかけてもらうとき目蓋にしんと花びらは舞う

折り鶴の喉の細りよ眠たげな音引き連れて夏の雨降る

速報の文字の画面に流れおり林檎は朝の喉を冷やして

ジムノペティの楽譜いっきに舞い上がる そういう光だ、きみを指してた

通り雨 きみの病のことを聞くラムネの瓶に唇押し当てつ

たましいの容れ物としてわたしたち額に灯すそれぞれの星

失くしものはそこにいますか七月の昏き水辺に鳥笛を吹く

うつくしき命は羽に包まれて南国鳥の放てる尿  ※尿=いばり

触れたなら燃えだすほどのさみしさをゆりの花粉は花弁にこぼれ

好きだった絵本告げあう真夜中に神様はきっと無数にいるね



今月は、『みらい・プラザ』でした。ありがとうございます。



3月号アンソロジーに、木下こうさんから『苺のかたちの指輪をひろった朝に』として

みずうみの氷の下に眠る魚、その夢のこと、光源のこと

を取り上げていただきました。ありがとうございました。



月旦工房で、守中章子さんから

きみだけを抱きたいと思うストローをくわえたままで辞書をめくりつ

を取り上げていただきました。
動詞のつながりが分かりにくいことを、指摘いただき、初めて気付きました。
ありがとうございました。

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未来2015年6月号詠草

2015-06-30 19:51:31 | 短歌
頬を打つ雨の雫よ六月は花道のごとあかるい場所だ

剥がしつつ天使の羽を思いたりシンクに鱈の鱗はあふれ

すれ違いばかりの日々だ駅前にPomegranateのホールズを買う

モニターに自己責任の字角めける午後、地球儀の浅き傾き ※角=つの

コットンをひたせばあおく滲みくるスキンローションのように夕暮れ

きみからの問いに頷く束の間に髪、はつなつの風に散らされ

口にする前に消えゆく約束の、白桃の実は水を弾けり

うす桃のラナンキュラスのゆるやかに巻く花びらよ あしたの夢よ

たおやかなもの欲しき昼ひだまりに貝のかたちのマドレーヌ焼く

ストローを炭酸水は浮かばせる名も知らぬまま人に惹かれて



『月旦工房』にて、菊池敏夫さんに、3月号の


窓ガラス磨く朝に雨音は滅びのように親しく響む


を取り上げていただきました。ありがとうございました。

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未来詠草 2015年5月号

2015-05-14 21:18:20 | 短歌
薄く焼くLatkasきみは風の朝まちを離れる決心をした

水にしか生きられぬことのやさしさにらんちゅう紅きひれを揺らせり

親友という呼び名宛てればこの海に波はいつでも砕けやすくて

それは死だ 漂流をする帆船の、走り止まない回転木馬の

パンくずを膝より払う来世は日照雨のような場所かもしれず

さんざんに薔薇の花もて飾りたし恋人の髪、五月のまひる

かんぺきなものを見たくて繰り返し湖面に石を投じていたり

礼砲を聞きつつ思う泣くときと祈りのときは同じ姿勢だ

あいづちは歌のようだね美しい待ち針青い布地に刺しつ

はつなつのポストに落とす手紙とは薄きからだで遠く行くもの





今月はみらい・プラザに載せていただきました。
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うたつかい 2015年春号 投稿歌

2015-04-15 18:50:43 | 短歌
マトリョーシカ

友情と呼べば遠くてあなたとは手をつながずに葉桜の道

讃美歌の声を思えばこの夜はマトリョーシカを閉じるさみしさ

痛みなき生などなくて花束のセロファン、音を立てつつひらく

舌先に触れればとけるカラメルの、ひとは内から穢れゆくのに

炭酸水かけあうようなあかるさのふたりだったね もうやめようか


テーマ詠「春」

犬を呼ぶ父の指笛ながく飛ぶ 寒の極まる日に春は立ち
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未来詠草 2015年4月号

2015-04-07 20:00:41 | 短歌
旅先で午睡に覚める 床じゅうが薔薇に埋まる悪夢ののちに


花の雨 忘れずいると決めた日のかげろう燃えるような烈しさ


文鳥は放してしまえ窓ガラスいちまい分のあかりが床に


ヨガマットをバズーカ砲のように持つ 雪道、何にも負けない日々だ


暗闇に満たす水位の不確かなままに告げたき想いを持てり


きみだけを抱きたいと思うストローをくわえたままで辞書をめくりつ


風化とは呼吸のようだ便箋をていねいに折る母の指さき


宇宙ひとつ底に沈めているほどにうさぎの瞳は深く澄みたり


ゆきやなぎ抱いて帰るわたしにはどれほどの数の痛点がある


四月は、と口にするとき凍えゆく光よ、きみは水際に立ち
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未来詠草 2015年3月号

2015-03-13 20:20:05 | 短歌
窓ガラス磨く朝に雨音は滅びのように親しく響む

歌集五冊積み上げて読む雪の日にほたりほとりと家鳴りはして

コンタクトレンズを外す白色のひかりに世界のほどけ際あり

しんしんと手のひら重ね眠る夜の世界すべてに初雪が降る

まひるまも薄闇の日は篝火に古い手紙をくべに行こうか

いくつもの星を吊るすよ雨ののち樹氷となれば黙りこむ木々

いのちから遠ざかりたい 冷たさは月光、本の扉を開き

もう春は来ない気がする水際の舟の骨格渇ききってて

みずうみの氷の下に眠る魚、その夢のこと、光源のこと

オレンジを蜂蜜で煮る夕刻よ遠い灯のような三月





11月号アンソロジーに

夏の雷ふいにはじまり真っ白な水の柱に閉ざされるよう

を引いていただきました。飯沼鮎子さん、ありがとうございました。

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うたつかい 2015年1月号

2015-02-09 18:21:19 | 短歌
花の名前をきく

二杯目のカシスソーダきみのためなんて言葉は聞き飽きており

通り雨 夜には夜の音がある(あなたの背中は森のにおいだ)

花びらような不幸が潜みおり鎖骨がつくる淡い影には

画面には砂に建つ城 くちびるは胸に降るときもっとも熱く

最後だと思いつつ会う週末に比喩とは花の名前きくこと



テーマ詠:毛

毛先だけ切れば冬陽に恋人の髪はひかりの粒のよう散る

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未来詠草 2015年2月号

2015-02-04 18:40:21 | 短歌
望楼より見下ろす街よ ひと冬は手負いの草食獣のさみしさ

浴槽に沈む石鹸 亡き人の記憶は香より遠くなりゆく

異国語の文字やわらかなぬくみ持つ閉書架に置く鳥の図鑑の

いちにちを読書のままに過ごす日の椅子の影にも育つ感情

対岸という儚さをつなぐゆえすべての橋に名はつけられて

ああきみが青い付箋を貼っていたあのうつくしい暴動のこと

サーカスの訪れ、そしてひと晩に降る雪の嵩ラジオは告げる

マロニエの並木を歩くはるばると雪に撓んだ傘をまわして

明け方の鏡よ母の梳く髪は冬の川面のひかりに似たる

傷口を水で洗えば胸にまで二月の冷えは等しく届く



写真:mint blue
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未来詠草 2015年1月号

2015-01-06 19:19:30 | 短歌
待ち合わせに向かうわたしの自由さよ薄水色のマフラー巻いて

信仰に纏わるものはみなきれい象牙に彫られし聖マリア像

輝きの単位はFireで示すこと あなたの指はいつも冷たい

日本語にない発音を記すうち小さなマやムが並ぶレポート

鮭からはピンクのあぶら流れてる難しい本あなたは読んでて

とてつもないどしゃぶりだった窓辺には白い右手が雨を診ている

一人という単位の脆さ千切った手紙は窓を離れて宙へ

毛先だけ切れば冬陽に恋人の髪はひかりの粒のよう散る

死にたいね、死にたいねって笑うとき渡りの鳥のかげ眼によぎる



写真:mint blue
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未来詠草 12月号

2014-12-08 19:01:42 | 短歌
片すみの昏き切手は湿りいて訃報は雨の街より届く

これは歌、これは光源、明け方の夢はすずしい魚のようだ

初恋の終わりを告げるいもうとと百日紅咲く坂をのぼりぬ

ひかりあれ選ばなかった未来にも 雨降りたれば閉じる花びら

ふたりゆえ増すさみしさよ恋人のかたえに胸を真水で満たす

まどろみの中うたうようくり返す遠い南の雨季の話を

他愛ない冗談かわしあう午後の水面に蝶の影は映って

引き金の冷たさをもつきみの指がピアノの蓋をしずかに開く

惑星の傾きはすべて違うこと聞きぬ夜更けの海の静けさ

内臓に触れる気持ちで砂に手を差し入れてみた 夏も終わりだ



写真:mint blue
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未来詠草 11月号

2014-10-30 20:22:53 | 短歌
揚羽の刺青


はるなつを過ごししうちに擦り切れて短くなりぬ紐の栞は

くるしさは麻薬のようだいもうとの肩に濡れいる揚羽の刺青(タトゥー)

夏の雷ふいにはじまり真っ白な水の柱に閉ざされるよう

ビニールの傘たたみつつ落雷に倒れし大樹見たことを言う

かばんから二冊画集を取り出せる恋人の髪まだ濡れていて

秋はまだ遠いよねって鳥瞰の夜明けの森を描いてくれた

嘘ひとつ問いただせないままでいるソーダの泡に舌を刺されて

抜けがけが好きと笑いぬパレットに青い絵の具を絞ってきみは

ひと雨が通りし後も雷鳴は遠く響いて祈りのようだ

鉛筆を指で回しつ来週のバルテュス展への約束をせり






工房月旦で、本多真弓さんが八月号の

ひだまりに開くページは明るくて小さな文字を捕らえきれない(さとうはな)

 
を紹介してくださいました。ありがとうございます。
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うたつかい10月号 投稿歌

2014-10-13 19:33:03 | 短歌
花火の火をうつす


路地裏に迷えば塀にしなだれるノウゼンカズラの赤が静かだ

野葡萄を枝からはずす もう逢わぬ人みな淡きひかりを放ち

許すとか許さないとか言っている驟雨あかるく爆ぜる日曜

水に置く花びらまるく反るように約束という言葉はきらい

花火の火うつすみたいなことだったきみはくちびる離して笑う




写真:mint blue

テーマ詠(魔法)

お互いに呼び名をつけた秋の日の夕陽にひそむかすかな魔法






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