時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

ロボットは人間を超えるか

2005年11月06日 | 仕事の情景

トヨタのロボット(ヒュマノロイド)

ロボットは人間を超えるか


高いロボットの出生率  
  最近の国際ロボット協会と国連の統計によると、世界で「働いている」ロボットの数は急速に増加しつつあるようだ。多目的型の産業用ロボットの販売(価額)は、昨年世界全体で17%伸びた。そのうち日本は稼動台数で35万台以上を占めている。世界最大のロボット王国だ。生産性を考えると、100万人を超える数のロボット労働者が働いているともいえる。ドイツなどいくつかのヨーロッパ諸国でもロボットは増え始めた。ロボットの出生率(?)はきわめて高いのだ。

人間の嫌がる仕事をするロボット 
  なぜロボットは増えているのか。この背景にはいくつかのことが考えられる。ロボットが多数働いている国は、日本、ドイツ、アメリカなど先進国が多い。イタリア、韓国、台湾、フランスなどがこれに続く。これらの国では、とりわけ製造業での人件費が高く、人手不足が進行している。ロボットはその不足を埋めているのだ。
  
  この点については、いずれの国でも失業者が多いではないかという疑問があるかもしれない。確かに若者、中高年者などの失業者は多い。しかし、彼らは仕事の空きがあっても、必ずしも仕事に就くというわけではない。自分のやりたい仕事がなければ、働かない。

  1980年代後半に、日本のマスコミが使い、その後世界に知られるようになった「3K労働」という領域がある。若者が就労しないので、使用者は不況下にもかかわらず人集めに苦労する。外国人労働者など不安定な供給源に頼ることにもなる。しかし、安定した操業のためには、安定した労働力の供給が望ましい。

人間のできないことをするロボット 
  このような状況では、ロボットはきわめて頼りがいのある働き手である。ロボットは「誕生」すると、その日から直ちに働くことができる。教育や訓練の期間も必要ない。不満もいわず、ストライキをすることもない。工場の照明が消えていても、黙々として働く。 もちろん、今日の段階では、ロボットが活躍する領域には一定の限度がある。

  ロボット労働者は、今のところ臨機応変な対応が常に要求されるような仕事は苦手だが、仕事の内容が定型化できるような職場は人間以上に得意である。自動車工場の溶接、塗装など、労働条件がきびしい職場は、最初にロボットが導入された職域である。

  ロボットの生産はしばしばロボットが担っている。ロボットがロボットを作っているのだ。人間の労働者がほとんど見えない工場で、ロボットが黙々と?動いているのは、その意味を考えると衝撃的である。  

  こうして誕生したロボットの生産性は高い。人間の労働者の何倍もの仕事をしてくれる。先進国では人間の労働者の賃金は高い。人口も多い開発途上国の賃金と比較すると、他のコストが同じならば、太刀打ちできない。しかし、トータルな生産性を考えると、ロボットが活躍する余地は大きい。中国、ヴェトナムなど賃金コストの低い海外への仕事の移転が懸念される産業でも、再び生産の場が日本へ戻ってくる可能性も高い。 日本の出生率の反転上昇がほとんど見込めない以上、ロボットに期待する部分は大きい。

ロボットに税金をかける日? 
  対人サービスなど、複雑な対応が要求されるサービス業では、ロボットの「職域」はおのずと限度がある。しかし、これからのサイボーグ技術の発展を考えると、数十年後には人間とほとんど変わらないロボットが生まれる可能性はきわめて高い。もしかすると、アンドロイド(人造人間)として、日本のように働き手が少なくなる一方の人間労働者に代わって、ロボットが課税対象になる時が来るかもしれない**。 

  台湾で開催された国際会議で、「新しい仕事の世界の次元」Emerging Dimensions of a New World of Workというテーマで、こうした内容を一部に含めた話をした。時間が短いこともあってか、聞いている人たちは半信半疑、冗談を聞かされているのではないかと思ったようだ。遠い未来の話と思ったのかもしれない。 

  しかし、たまたま目にしたNHKスペシャル番組「立花隆:サイボーグ技術が人類を変える」を通して、技術の最前線は私の想像以上に進んでいるのを知って衝撃を受けた。ジストニア(身体が意思とは関係なく動いてしまう病気)、パーキンソン病などが、脳コンピューター技術で日常生活に支障ないまでに改善されるのだ。人工内耳の発達で、難聴の子供がヴァイオリンを弾けるまでになる光景が示される。その光景は感動的ですらある。


ロボットが人間を支配する時
  そればかりか、脳コンピューター・インターフェイスの発達は、脳を操作することまで可能になっている。遺伝子操作とともに、人類が科学技術をコントロールする力を失うと恐ろしい事態も生まれかねない側面もある。この分野の先端にいる科学者の話では、数年後にはこれらの技術は実用化段階に入るとしている。遺伝子工学も科学技術の進歩の名の下に、次第に規制が緩められている。科学技術の社会的コントロールは可能なのだろうか。TVを見ながら、あまり長生きをしない方が良さそうな気がしてきた。



Reference
NHKスペシャル番組「立花隆:サイボーグ技術が人類を変える」
 2005年11月5日
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/shiryou/soukyoku/2005/10/005.pdf

**「ロボットから税金を取る日は来るか」
http://blog.goo.ne.jp/old-dreamer/e/eb3831765220f8a5d38b7aff405cb0a0

コメント (1)   トラックバック (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 高学歴社会の断面:台湾に見... | トップ | 台湾でも起きた外国人労働者... »
最近の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
相互リンクの依頼 (ノース)
2007-06-25 06:37:40
まことに勝手ながら、この記事に対してリンクを張らせていただきました。よろしければ、相互リンクしませんか?

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

2 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
NHKのスペシャル番組「サイボーグ技術が人類を変える」を見て (KAZHOME\'Skun)
サイボーグというと映画のロボコップを思い出します。 昨夜のNHKスペシャル立花隆
フリーターという職 (フリーターが語る渡り奉公人事情)
 フリーターをしていると、自分が人だか機械だか分からなくなる。牛乳の品出し、荷物運び、パンフレット封入、郵便物の宛名シールばり、チラシまたはチケットを束ねてセットにする作業、焼肉の鉄板洗い……どれも優れた産業用ロボットがあれば間に合う仕事ばかりだ(1)。