杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・「年越し派遣村」から学ぶこと

2010-01-05 17:01:10 | 法律・法制度
明けましておめでとうございます。
12月からずっと書き込めなくて、自己嫌悪に陥っていましたが、備忘録として今年も書いていこうと思います。

年末年始、というと寒空のもとの昨年の「年越し派遣村」を浮かべます。
昨年は、民間の力で展開した年越し派遣村(名誉村長:宇都宮健児さん、村長:湯浅誠さん)でしたが、昨年の戦いは1年かけて、貧困の存在を社会に知らしめ、今年のいわば「官制派遣村」に繋げる嚆矢となりました。

ところで、この年越し派遣村の名誉村長であった宇都宮健児弁護士に、たまたまお話をうかがうことができ、なぜ、この「年越し派遣村なる」一大行事が企画され実現したかについて、その経緯を知ることができました。

もともとは、野宿者を救済するという運動を起こすという目的があったのではなく、労働者のみなさんが派遣切りにあっている背景にある労働者派遣法、つまりこの法律がどんどん派遣労働者の対象を拡大し、簡単に経営者の都合で、労働者が解雇される仕組みになっていったことから、「労働者派遣法の抜本改正が必要だ」ということで、2008年12月4日に日比谷野外音楽堂で集会をやった、というのです。この時に宇都宮さんとか湯浅誠さんが呼びかけ人になって一緒に集会に参加して、国会の請願などにも参加したということでしたが、その後、その集会の実行委員会参加者から「派遣法の改正」より前に、リーマンショックの後、派遣切りされた労働者が大量に生み出されている、その労働者の中には寮とか社宅を追い出されて、野宿を余儀なくされている人がいる、その人たちは、特に年末年始、この寒い冬空の中で、役所も開いておらず、それこそ生命の危険に瀕している、この人たちを助けるのが先だろう。という話になり、労働者派遣法の改正に取り組む労働組合と、反貧困ネットワークの市民団体と、それから弁護士や司法書士などが一緒になって取り組んだのが年越し派遣村だったというのです。つまり、一番の原点は、今、目の前にいる野宿を余儀なくされている人たちに、少しでも支援、救済しようという気持ちから、当面の目標をおいて、この活動が始まったというのです。そして、派遣村のインパクトは、法律を見直すための立法事実(法律を変える必要があることを裏付ける社会の中の事実)を鮮明にしたという効果がありました。つまり、迂路は迂路ではなかったということです。
 いい運動が起こるのは、座して思考していたのではダメで、動いてみてさらに良いもの、必要なものが見えてくるのだと教えられた思いです。また、その時に、何を常に目指すかも大切です。同じように生きている他の人たちが、辛い思いをしているときに、それを支援じようという気持ち、つまり、人のみになって考えると言うことが重要なのだと思いました。

で、今年のそのいわゆる「官制派遣村」はどうか。
渋谷のオリンピックセンターで行われましたが、民間の方のブログによれば、
この派遣村、飢えと寒さをしのぐことはできても、職や住居を失った人たちの生活再建についてはフォローが弱そうだということです。そこで、一昨年の「派遣村」で中心となった労働組合員や法律家などで作る「ワンストップの会」(代表:宇都宮健児)が、「多重債務」「就業」「住宅」について相談に応じたり、また東京都に働きかけて、利用期間を1月4日から、さらに2週間延長させたりした、ということです。

3歩前進2歩後退という感もありますが、でも、ともかく感覚を鋭くして、動くこと。これが必要なんだということを年越し派遣村からは学びました。

私も、今年、感度を鋭くして、決断、実行を心がけていきたいと思っています。
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7 コメント

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おくればせながら (アズキナコ)
2010-01-05 23:36:03
新年明けましておめでとうございます。
TBありがとうございました。
本年も、ご活躍されることを心よりお祈りしております。私も、見習って、決断・実行を心がけていこうと思います。
アズキナコさん、ことしもよろしく。 (瞳)
2010-01-06 00:10:42
決断、実行。
言うは易しですが、何とか、そう決意したことだけでも忘れないで一年を過ごした・・・。
だんだん現実的になってしまいますが、でもがんばりましょう!
結局、セイフティネットが整備されていないということにつきる (yasu)
2010-01-06 14:36:12
もし、無料で入れる公営住宅があったら(たとえ仮設住宅でも)、失業保険や各種職業訓練がもっと使いやすく充実したものになれば、「年越し派遣村」なんて必要なかったのかもしれません。

もちろん、上記の制度には大きな財源が要ります。しかし、道路やダムにお金をかけれるのなら、そちらにまわせます。
お金持ちから(鳩山さんは言うまでもなく)きちんと税金を取って、つまり、所得税の累進課税をバブル期以前に戻して、
海外に工場を移して収益を上げている企業からも、きちんと法人税を取って、取るべきところから取れば、財源はまかなえます。

それをバブル崩壊後、自民党政権は、細川連立政権も村山政権も含めてきちんとやってこなかったのです。
そのつけがまわってきたといえなくもありません。
(彼らには世界大恐慌という、過去の歴史に学ぶという姿勢があったのでしょうか。
その時の政治家の一人、鳩山総理に是非お聞きしたいです。)

もちろん、経済のグローバル化という問題もあります。これは一国だけでなんとかできるものではありません。
しかし、この問題で日本がきちんとした意見を言ったというのは、最近の鳩山論文以外に聞いたことがないのですが、これは私の思いこみでしょうか。

最初に戻りますが、とにかくセイフティネットの早急な整備、これが急がれます。
雇用・労働だけにとどまらない幅広いものにしていかなくては、いつまでも「年越し派遣村」を必要とするという国になってしまいます。
こんな国でいいのでしょうか。


追伸
杉浦先生
お身体の具合でも悪いのですか。
ブログの更新が年末、止まったままなので心配していました。
私も決して良いとは言えないのですが、できることはやらなくてはと、とくに引き継ぎはきちんとと思っています。
yasuさんありがとうございます。 (瞳)
2010-01-06 15:43:47
怠慢で更新ができていませんでした。
ご心配おかけして申し訳ありません。
健康状態はまったく問題もありません。
同感です (多摩)
2010-01-06 19:53:14
一億総中流は、けして悪い事じゃなかったはずです。何故こんな社会になったかはyasuさんの仰るとおりだと思います。
私はむしろ、経営者サイドの思考で想像してみたとしたらと常々考えています。
贅沢は敵ではないですが、日本人のブランド指向とかが悪い事ばかりではなく、むしろ製品の質の維持に多大な貢献をしたと思っています。それには高い賃金水準と言うのが不可欠です。日本の経営陣は旧日経連系統が主流となり、かねてからの持論だった経済運営と経営方針を大きく転換してこの現状を作り出しました。日本経済全体としても全く身動き出来ない有様です。
輸出依存を選択せざるを得ない本質は良いとしても、今は死語となってしまった内需の重要性をないがしろにし過ぎた誤ちを謙虚に反省して貰わなければ、品質の維持が難しくなって、それこそ国際競争力なんてのは絵空事となってしまいます。より安く、より大量になんて方向性は中国ですら転換しようとしている現状です。高い品質とは全てを向いた製品ではなく個性のある製品です。
派遣村が象徴する経済構造は日本の産業の未来をも食いつぶしている事を為政者と経営トップは考え直さなくてはならないはずです。
ただし、ごく少数の有数資産家達はこんな国がどうなろうとも関係ないと考えているかも知れません。資産さえあれば、どこに住んでも構わないだろうし。そうした事が私の空想であれば良いのですが。
実践を伴なわない思想はナンセンス (杉浦公昭)
2010-01-12 14:31:26
 同姓の方のブログに親しみを感じて筆を取りました。
 貴方の「同じように生きている他の人たちが、辛い思いをしているときに、それを支援しようという気持ち、つまり、人の身になって考えると言うことが重要」との指摘に同感です。
 しかも「決断、実行を心がけていきたい」と言われています。
 実践には様々な困難がありますが、頑張って生き抜いて下さい。
 私は、若き日に友人から「実践を伴なわない思想はナンセンス」と言われ、74才の今日まで自らの思想が求める実践を続けてきました。
 これから死を迎えるまで、この生き方を続けたいと思っています。
同姓の先輩へ (瞳)
2010-01-13 01:30:19
自分の持ち物とか、自分が見聞きしたものに対しては、脳が反応するという実験をテレビで見たことがありますが、同じ姓に反応する、というのは、私もそうですが、おもしろいです。
思想が求める実践を心がけてこられた先輩の生き方を同姓の誼もあり、ぜひ、マネさせていただきたいと思います。

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