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冬虫夏草ー梨木香歩・著 新潮文庫を読む

2017-07-12 16:57:17 | 読書・映画・演劇・舞踊・美術
   冬虫夏草ー梨木香歩・著 



 病院への往復と待ち時間を埋めるには
持ち歩いて軽く、読んで楽しい本が適切
です。
今回持参したのは梨木香歩の文庫本でし
た。梨木香歩さんと呼びたくなるような、
心のやわらかさが随所に滲んでいます。
此の作家の素性をよく知りませんが、此
れ迄「家守綺譚」「からくりからくさ」
「りかさん」「西の魔女が死んだ」「裏庭」
「春になったら苺を摘みに」等。単行本も
文庫本もですが、写実的な小説が好きな
私が何処か幻想的で、ほんとうには有り
得ない異空間と行き来する主人公たちの
物語に惹かれ、毎年のように何かしら読
んでいるのです。此の心境の変化を生み
出したものは、作家の醸し出す暖かい空
気と言葉の紡ぎ方にあるような気がします。
この本「冬虫夏草」=とうちゅうかそう
と読みます。
 実のところ冬虫夏草を知らずにいまし
た。半ば読み進んで行く中で、本来は漢
方薬らしいことが解り、調べました。

《冬虫夏草は蛾の仲間の幼虫に寄生する
キノコの一種。中医学・漢方の生薬や、薬
膳料理・中華料理などの素材として用いら
れる、いわゆる冬虫夏草は、チベット等に
生息するオオコウモリガの幼虫に寄生して
発生するオフィオコルディセプス・シネン
シスを指す。》出典 Wikipediaより


物語は亡き友の生家の守(もり)を託され
ている駆け出し文士、綿貫征四郎は行方不
明になって半年余りが経つ愛犬ゴローを探
す旅にでます。守る約束の家も原稿も放り
出し、耳に入った目撃情報をたよりに、鈴
鹿山中に分け入って行く征四郎です。
現代社会には次々失われてしまったものが
沢山ありますが、征四郎が見たもの触れた
ものは、遠い時代に確かに存在していた自
然や生き物たちです。自然のあるがままに
順応しながら、毅然と生きるということの
意味が、現在に問われているようにも思え
ました。冬には冬に甘んじ夏には夏を受け
入れ背筋を伸ばして生きる人たちと共に
人にはあらざるイワナ夫婦や河童もいる様
子。
 梨木香歩さんには、そうしたものが見え
ているらしい。「家守綺譚」でも見せてい
た彼岸とこちら側をつなぐもの。
むかし、むかしと語られた物語、忘れてし
まった遠い日本が其処かしこに姿を見せて
ゆく。
目次には野原や雑木林に幾らでも自生して
いた草花の名が使われています。

クスノキ オオアマナ 露草 サナギタケ
サギゴケ 梔子 ヤマユリ 茶の木 柿
ショウジョウバカマ 彼岸花 節黒仙翁
紫草 椿 河原撫子 蒟蒻 サカキ 
リュウノウギク キキョウ マツムシソウ
アケビ 茄子 アケボノソウ 杉 タブノキ
ヒヨドリジョウゴ 櫁 寒菊 
ムラサキシキブ ツタウルシ 枇杷 セリ
百日草 スカンポ カツラ ハウチワカエデ
ハマゴウ オミナエシ 茅 

解説を入れて304ページ。
作者は草木名をカタカナと漢字両用していま
す。どちらを目次に使うにしても、それなり
の意味合いがあって選んだのだと思いますが、
そうした辺りを考えながら読むのも面白いと
思いました。
(見えないものでも、見ようとすれば見える
・・・・・)此れだと、はっきり言い表わす
ことはできないのですが、読み終えて残る懐
かしさのようなもの、潤された感情の続きが
あります。


ジャンル:
小説
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