日々の暮らしを記憶に刻む

 日記、詩、短歌、読書録など焦らず無理せず書き続けています。
傍ら移りゆく社会及び地域の有り様を綴るブログです。

夏めく季節なれど座し古本をめくる

2017-04-25 17:08:52 | 詩 エッセイ
  夏めき家に坐していのが惜しい気分
   

 二日続きの家事(衣裳の片付け洗濯、アイロン
がけ)冬物の始末、夏物の出し入れなど押入れの
掃除も念を入れる。
傍らアメリカ在住の姪の頼みを受け、最寄駅近く
にあるビルへ出かける。6月末から7月末まで
日本へ帰国するので、それまでに予約して置く事
が生じたのだ。幸い姪の要望には応えられそうな
運びとなりホッとしました。
踊り終えて三日め、疲れも抜け廃棄するつもりの
雑誌を改めて読んでみました。
1990年代の5年間、全国詩人会議事務局から直接
取り寄せていた「詩人会議」月刊雑誌の殆どは欲
しい方々に差し上げてしまいました。現在も手元
に残しておいた数冊の中に、詩人会議1998年9月
10日発行、9月臨時増刊号「壺井繁治」特集なるも
のを見出しました。
 壺井繁治氏は現在では「知らない」という方々
ばかりだとも思いますが、度々映画やテレビ化さ
れた「二十四の瞳」の作者である壺井栄さんのご
夫君で詩人、反戦の人でした。
昼過ぎからですが、次第に気持ちに余裕が生まれ
本をめくっていると、ついつい引き込まれてしまい
ました。

 現在日本の政治状況は、一段ときな臭さが強まっ
ています。それだからこそ壺井繁治氏の詩が心に
平和を呼びかけ、何かを呼び覚ますのです。
其の何かを共有するには、詩を全篇読んで頂く必要
があると思うのですが、此処では初めの数十行と最
後の部分を主に掲載しようと思います。
反戦の為に手酷く弾圧され、牢獄へ入れられ傷めつ
けられた壺井繁治氏の苦渋を、長く忘れずにいたい
と思いました。

臨時増刊号168ページより 一部分抜粋
1949年・7月26日 作  発表誌 不詳  

   影の国   壺井繁治 

人々は、
最早、昨日のこととして、
忘れてしまったのだろうか。

日の丸の旗がぼくらの太陽を遮り、
君が代と軍歌と砲弾の狂い喚く音楽のなかで、
草木でさえ、のびのびと呼吸できず、
すべてのものが動員されたあの戦争を。

坊主も、神主も
泥棒も、サギも、
気の弱いインテリも、恥知らずの裏切り者も、
正直な百姓も、ずるい商人も、
勤勉な労働者も、怠慢なルンペンも、
肥った肉屋も、痩せた哲学者も。
村正や正宗の銘刀も、
錆びた五徳や鉄瓶も、
宝石も、首飾りも、
金やダイヤやプラチナの指輪も、
スパイも、淫売も、腐ったジャガイモも、
松の根っこも、
石炭も、鉄鋼も、アルミニュームも、
コンクリートも、煉瓦も
砂糖も塩も、
青春も、老衰も、
ありとあらゆる黴菌までもが動員された
あの戦争を。

敵の出血のためにはどんな残虐も選ばず、
生きた捕虜を軍陣医学の材料として、
牛肉や豚肉のように切り刻んだ軍医ども。
「白衣の天使」などと持ちあげられた、
日赤の看護婦までが、
それに手を貸したあの戦争のひとコマを。

人々は
最早、それを昨日のこととして
忘れてしまったのだろうか。

(この後50数行省略)

いたるところに動く影、
平和と自由について熱心に語り合う人々の
言葉を、
ことごとく盗みとって黒い死刑の証文を作ろ
うとする影。
いつも汚れた手にワナを握り、
最上の獲物を捕らえようと動きやまぬ影。

その影の
最後の砦は
真っ黒い夜だ。

影どもよ。
真夜中に
真っ黒い犬のように駆けまわれ!
月に向かってなりと、
星に向かってなりと、
吠えたいだけ吠えろ!

歴史をつくる昼と夜の時間。
つぎつぎと起る大事件の舞台裏。
そこを影たちが頻りに出入りする。
影と影とのひそひそ話。
影と影との耳打ち。
影が影に電話する。
影が影に命令する。

いろいろに歪んだ仮面や、
影たちの不気味な笑いがまだ静まらぬなかを、
選ばれた一つの影が、
自動車に乗ってどこかへ消える。

*大事件とは下山、三鷹、松川事件などを指す。
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