パペット劇場ふらり旅 〜広島〜

芝居好きの私がめぐり合った人形劇の魅力、たっぷりとお伝えします。

「かもめ」(第七劇場)  〜広島公演〜

2011-11-06 | 演劇
第七劇場は、公演先ごとに会場に合わせた舞台づくりをすることで定評があるのだという。

今回は、客席を舞台上の奥に設置、ステージ手前に設えられた本舞台のむこうにいつもの観客席が見えるという不思議な空間が出来上がっていた。
幕はなく、そこここで、ぼんやりとあるいは所在無げに、時に思いつめたように4人の女優たちがすでに役柄を演じている。まるで現代美術のようにモノクロでスタイリッシュな舞台だ。
床もテーブルも役者たちの衣装も白一色の中に、規則的に並べられた褐色の木の椅子。天井から吊り下げられたカモメがテーブルすれすれに浮かび、ニーナ役の役者が腰掛けるブランコも天井から吊り下げられている。
舞台背景に落葉樹が3本配され、芝居の後半にはそこに深々と白い雪が降り積もる。

気が触れて精神病院に入れたれたニーナの回想から舞台が始まる。全編の上演ではなく、主にトレープレフとニーナのシーンが中心で、役者は医者のドルーン以外はアルカジーナとトリゴーリンだけ。
「かもめ」の舞台のある部分の台詞が何度もリフレインのように繰り返される。
可憐で初々しいニーナが劇進行に従い徐々に狂気をはらんでくるようすが舞台の上で描かれていく。
舞台の奥で、あるいは椅子に掛けたまま、テーブルの片隅で、執拗にくりかえされる同じ台詞。アルカージーナが内心の嫉妬を隠してニーナを賞賛し、無責任にニーナの運命をもてあそぶ台詞をトリゴーリンが呟く。

彼女が何故狂気に追い込まれ、トレープレフが自殺を選んだのか。繊細な才能と若々しい野心が無残に踏みにじられていく。そのありさまを舞台は淡々と描いている。何一つ変わらず整然とした舞台の上、背景にふりつもる白い雪はどこまでも美しい。

この舞台から、何を感じるか。それは観客しだいである。
いっさいの説明は、舞台から排され、ステージの上は終演までひたすら美しく端正だ。

久しぶりに、演劇を観たなあと感じた。
頭の芯がジーンと痺れるように痛む。ぼんやりと余韻に浸る私とはうらはらに脳細胞は忙しく活動し始める。




ジャンル:
演劇
コメント (0) |  トラックバック (0) |  この記事についてブログを書く
Messenger この記事をはてなブックマークに追加 mixiチェック シェア
« 天辺塔的自求自足... | トップ | 第51回広島県高等... »

コメント

コメントはありません。

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
※文字化け等の原因になりますので、顔文字の利用はお控えください。
下記数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。この数字を読み取っていただくことで自動化されたプログラムによる投稿でないことを確認させていただいております。
数字4桁

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL

あわせて読む