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吉本さんのおくりもの 6.吉本さん追悼詩(2012.3)

2017年03月19日 | 吉本さんのおくりもの

吉本さんのおくりもの 6.吉本さん追悼詩(2012.3)



 吉本さんが亡くなった ①



隣の家の裏の畑に
満開の梅の花が見える

吉本さんが亡くなった

梅の花が満開だ

ぼくが花などいじるには
世界と和解しなくてはならない
ようなことをどこかで語られていたように思う

時には憩いつつも
上り下りしながら
つっぱった孤独なたたかいの
果てまで上り詰めた言葉たちが
しずかに収束するように
花びらを散らしている

まなうらに
まぼろしの梅の花たちも満開だ
薄紅の白い匂いに包まれて
ひとり しずかに
人界を越え
苦の母を越え
ていく
のが見える

小山に咲く梅 2012.2.8




 吉本さんが亡くなった ②


若い頃
吉本さんちに一度おじゃましたことがある
夏だったかスイカをいただいたことを覚えている
東京大阪博多小倉山口の講演会に出かけたこともある
ふだんの吉本さんはよく知らないけど
言葉の吉本さんとは長い付き合いで
四十年にもなる

高校生の頃
佐世保の本屋で共同幻想論に出会った
なんて横着な野郎だ
と自分を投影してつぶやいたのを覚えている
それからあれこれ読み進んだから
少しずつ自分がほぐれていったのかもしれない
孤独なひと筋の光のように
言葉は染みわたってきた

「吉本主義者」や「吉本信者」
という言葉を発明して得意げになっていた馬鹿な奴がいた
自立思想の吉本さんとは無縁のものである
意味ありげで無意味な言葉が多すぎる
ひと刷毛 ふた刷毛
無数の苦の刷毛で
沈黙の領野にひとつの深淵が浮上する
それはそれは
寂しい「ある抒情」
個の宿運を超えようと
母から国家に渡る無類の時間の旅
たぶんその足跡は匂いや色合いとともに
言葉に記されている

吉本さんは
この列島に限っても無類の人だから
ほんとうは
わたしたちも無類の言葉の風景に出会うことになる
血も滲む

言葉から滴るものがふうっと途切れて
文字が滲んで見える
哀しいというより
しずかな さびしさの滴が
からだ全体に沁みてくる

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