ホルモン屋徒然草~珍しホルブロだ

新米ホルモン屋の親爺の日々。ホルモンのこと、店の出来事、周辺の自然や話題。

満月と狼男

2015-01-19 13:07:56 | 自然、読書、仕事、そして生きている
小学生のころ、「月男」と呼ばれた。
親しい友人たちはさすがに口にしなかったが、意地悪い(そう見えただけかも)上級生やあまり「近しくない(たぶん方言だろう)」子供たちがそう呼んだ。

小さいころの水疱瘡の跡が額にいくつかあり、それが月の「クレーター」を思い起こされることからのあだ名である。
あまり鏡も見ないし、自意識も芽生えていないまじめな少年だったので、そう気にしてはいないが、やはり少し面白くはなかったと思う。
私自身より、母の方がこのクレーターを気にしていたと思う。

幸い、体が巨大化するとともに、否、成長とともにクレーターは目立たなくなり、今は信じられないだろうが風に吹き飛ばされそうな瘦身の中学生時代は、むしろ「キツネ男」みたいな感じで言われたこともあった気がする。
今のように「イジメ」という言葉はおおぴらにはないが、子供というのは時に残酷な態度を平気でとることがある。
確かにワタシもそういう一員であった。

さて、「月」であったり「狼」であったりした事が心の奥底にとどまっていたのか、どちらかというと純文学系の本好きが、たしか社会人に成り立ての頃、違う方面の一人の作家を好きになった。

犬神明/狼男を主人公にしたウルフガイ・シリーズにはまったのだ。

ワタシはどちらかというと作家を追う方で、はまるとその全ての作品を読みあさらないと気が済まないたちだ。
だから、ウルフガイから幻魔大戦へと進むのだが、彼の著作の膨大さについていけず、途中で放り出してしまった感がある。

それにしても、満月をバックに変身した狼男になりたいと、偶像崇拝したワタクシは、今でも満月になると空をしばらく見上げるのです。
額のクレーターは常に進化する巨体とアトピーの薬のせいかまんまるくなった顔に埋没し消えてしまい、今じゃ狼ではなく全く相反する動物にたとえられる姿形になったが、自分自身はその通り、いまだ狼男のつもりなのだ。

さて、その作家、平井和正さんの訃報に接す。
ウルフガイ・シリーズを読み切ったあとは、本屋のハヤカワ文庫あたりに近寄ることも無くなったが、でも時々は新作はないのかと探すこともあった。

自室の本棚の片隅に寄せられた、少し褐色に変わった文庫本を、パラリと読み返そうかと思う。
「変身」は子供だけじゃなく、大の大人でも、いや大人になってこその願望なのかもしれない。

哀悼、